「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」 作:べれしーと
「森久保はどうなん、チョコ。」
プロデューサーさんの机の下で一人、膝を抱えながらぼーっとしていると彼はそんな風に話を切り出しました。
カタカタというキーボードを叩く音に日常を感じながらうとうととしていた夕方頃。
今日は二月十四日。バレンタインデーです。
日本では女性が男性にお菓子をあげる日で、けれども最近は性別に関係無くワイワイする日と化してきています。
暖房の効いた部屋でぬくぬくしていたもりくぼに人によっては凍りつくであろう質問を投げ掛けれるプロデューサーさんはコミュ強ですね……
そう思いながらもりくぼは言葉を返します。
「沢山です。ふふん。」
そう。もりくぼ、こう見えてモテます。何故かは知りませんがモテます。ドヤ。
義理も本命も友も兎に角沢山貰えます。毎年消費に困ってます。羨ましいですか?ふふ。
二桁を下回る事はありません。チョコ以外にもキャラメルやキャンディやラムネ等々。凄いでしょう。
というかこれからアンデスで集まる予定があるのでそろそろ待ち合わせ場所に行きますね。では。
そう言ってもりくぼは机の下から這い出ます。面倒臭そうな雰囲気を感じ取ったからです。別に冷たくはない……ですよね?
だって、大人の男性なら一つくらいは当然……ねぇ?(煽り)
と、突然右腕をプロデューサーさんに強く掴まれます。
驚いて声を絞る。
「ひぃ!?……な、何ですか……?」
見れば、彼の表情は、暗い。シベリアのように寒々としています。
……そういえば同級生にもいますね。こういう人。
「プロデューサーさんはどうなんですか、チョコ。」
察した私はそう訊いてあげます。多分今のもりくぼは慈愛に満ちた顔をしてますよ。
彼は掴んだ私の右腕を離して小さく言いました。
「……世界は…………残酷なんだ………………」
(うわっ、めんど。)
×
「今までゼロって、まゆさんや凛さんは?」
「担当してからまだ一年経ってないから今回が初めてのバレンタインデーだ。」
「……それじゃあ心配ありませんよ。」
「……何で?」
鈍感……!あの分かりやすい好意に対する鈍感……!
男の身からすればすごく腹の立つ、ハーレム主人公的鈍感。殴りたいです。キレ久保。
「そ、そもそも、そもそもですよプロデューサーさん。」
声が上擦る。言うんです森久保乃々!
「はい。」
「……も、もりくぼがいるじゃないですかっ。」
「…………はぇ????」
悶々と抱いていたそれをプロデューサーさんに伝えます。
彼はただ唖然として口を開きっぱにします。面白い顔をしている。
どうやら男の好意にも鈍感らしい。生粋の主人公体質に戦きを隠せない。当日にアンデスで集まると言った時点で分からないもんですかね(呆れ)
そうしてわざわざもりくぼは直立不動の彼に言ってあげます。
「ど、同性同士がこの日を楽しんじゃいけないなんて、誰も決めてませんし……感謝の気持ちを伝えるいい機会です、よね……」
「乃々……ああ心の友よ……」
「勿論恋愛的なモノじゃありませんよ。手作りですけど。」
手作り。そう口にした瞬間彼は何かを噛み締めるような顔になり、そして天井を見上げて両手を掲げました。
「見てるか高校のクラスメイトォ!俺は人生に勝利したぞォ!甘い甘い手作りチョコレイトォ!世界にたった一つ、アイドルからの贈り物ォ!最高ォ!」
ええ……(困惑)
「後で他の人からも貰えますからそんなに喜ばなくても……もりくぼのチョコなんて大した事ないですし……」
そう言うと彼は私があげたチョコを大事に鞄の中にしまい、大きな声で叫びました。
「初めて(のチョコ)が乃々だからこそ良いんだよ!それに乃々は(お菓子作り)上手いんだし気にすんな!(心配で)ビクビクしちゃって!もう!」ゴトッ
「「ゴトッ?」」
「なんか」クルッ
「既視感が……」クルッ
「乃々と初めて……上手……ビクビク……?あんた乃々とナニしてんの……?」ゴゴゴゴ
気づくとそこには怒髪天の凛さんとニコニコの志希さんがいました。
「二人とも顔赤いし。なに、バレンタインだから舞い上がったとか?は?」
つかつかと足音を大きくたてながら彼の元まで行き、胸ぐらを掴む凛さん。
(……?)
距離の離れているもりくぼはそれを不思議そうに見つめながら近くに寄ってきた志希さんへ質問します。
「状況が掴めないんですけど凛さんどうしたんですか?」ボソボソ
「あー……勘違い、的な。直ぐ収まるだろうし放っておいてもいいんじゃないかな。」ボソボソ
「ねえプロデューサー、弁解は?」グググ
(首が絞まって喋れねえ……っ!殺意しかねぇぞこの女!)ジタバタ
「ていうかマカロン渡しに来たの間違いだったかにゃー……まさかプロデューサーがいたなんて思わなかったよ。まあいいや。はい。」
そう呟きながら志希さんはあの二人を尻目にもりくぼへ包装の施されたマカロンを手渡してくれました。
赤、白、黄と多種多様の色で彩られたマカロンは一つ一つが個性的で、なんとなく、志希さんらしいなと私は思います。
「初心者ですが頑張りました。えっへん。」
可愛い。
「えっと、もりくぼからもささやかながら……」
そう言って懐から取り出したキャラメルを渡します。
「へー……キャラメル……へー……(震え声)」
部屋の暖かさに彼と私があてられたのと同じよう、彼女も顔を赤くします。
「受け取っておくね。ちゃんと。」
「は、はあ……」
志希さんの様子がおかしい。まるで恋する乙女みたいで……
「あんたにあげるつもりだったチョコやっぱりあげない。」
「あえ!?マジ!?」
×
物語の終演は近い。
森久保のキャラが書けなくなってくるという異常事態。担当なのに。好き過ぎてクレイジークレイジーしちゃったかもしれない。おかしくなっちゃうよ。