「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」 作:べれしーと
森久保乃々、彼女が仕事の日。そしてあたしが休みの日。
あたしは本女子寮から離れた乃々ちゃん専用のお部屋にやっと到着する。
あたしは思考する。
(不思議なんだ。彼女。)
森久保乃々とはあたしから四つ歳下のアイドルの事である。
彼女は一ヶ月前に突然、事務所に来た子。アイドルになるための
別段あたしはこの事について何かしらの異論を唱えたいわけじゃない。
その後の待遇と彼女の香りについて異論を唱えたいのだ。
この事務所所属のアイドルになると専用の女子寮へ移住するかしないかを決めなければならない。
もし移住するとしてもお金はかからない。大きい会社の特権であろう。
大体の子は移住を選択し、彼女もそうした。ここまではいい。
さて、そうなると彼女はあたし達と一緒に過ごす事になる筈。なのに。
(特別個室待遇……VIPかな?)
本女子寮から十分程歩いた先にある346の社員が管理している小さいマンションの一室。
そこを彼女は住まいとして分け与えられている。
わざわざ、だ。
なんでわざわざ?
これを乃々ちゃんに訊いても大体逸らされる。話も目線も。悲しい。
そうそう、それと香りね。香り。
あたしは鼻が平凡な人よりきくから、こう、特殊能力?って感じの事ができるらしい。
あたしからしたらそれが普通なんだけどね。
まあその出来る事の一つに男女の類別があるの。
香りだけで相手が男か女か判断できるってやつ。
(乃々ちゃんからはどちらもする。深く濃く、する。)
男っぽいし女っぽい。フシギな香り。
魅惑的で彼女自身の存在には陰がかかってる。
キョーミそそられるー!
だから乃々ちゃんの家の鍵をあたしが持っていてもそれは合法。うん。ヌスンデナイヨ。
ここは新築ではない。というかはっきりいって古い。鍵はまんまキータイプ。あたしの新築借家とは違う(自慢)
防犯に関しては心配してないけど。
(管理人さんが、その、結構アレな人みたいだし。)
「待て。」
「はい?」
「おい、誰だあんた。」
「一ノ瀬志希、乃々ちゃんのオトモダチ。」
「え!?志希にゃん!?」
(うお、急に叫ばないでよびっくりした。)
「一ノ瀬って、志希!?」
「う、うん。」
「お、俺大ファンなんです!!マジかよ!!マンションの管理人って最高だな!!上から通達された通りにこの孤島へ異動してきてよかった!!」
(それ異動じゃなくて左遷じゃない……?)
「どうぞどうぞ!!チャン乃々のお部屋は二階の右から二つ目です!!」
「あ、ありがとう……」ヒキッ
「あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''!!か''わ''い''い''な''あ''し''き''に''ゃ''あ''あ''あ''!!」
(well,well,well.)
……うちの会社ってヤバいかもしんない。
(それはおいといて。とりあえず乃々ちゃんのお部屋に侵入、じゃなくてお邪魔できたし。)
特別待遇と香りの原因を探るよ……!(建前)
それと暇潰しもするよ……!(本音)
×
狭い部屋を探索しているとそこそこ大きな箪笥を発見した。
お洒落さんだしあたしとは違って服が沢山入ってるんだろーなーなんて思いながらそれを開ける。
そこには予想を裏切らず多種多様の衣類が仕舞われていた。
そう。多種多様。
(どう見ても男用の服があるんですが……)
女性服:男性服=4:1くらいの比率。
(男装趣味があるからどっちの香りもするのかな。)
でも向こうにいた時にもそういう人いたし……香り違うし……んー?
男性服のスメルを堪能しながらそう思った。
洗濯かごを発見。中を凝視する。
(下着が男用多くない……?)
今度は1:1くらいの比率。ええ?
シャンプーとかも男用のものを使用しているみたい。
(男に憧れてる……)
いやもしかして、
(乃々ちゃんに彼氏がいる……?)
寝室のスメルは特に深くて濃い。男と女がない交ぜになったフシギな香りが甘ったるく鼻にかかる。
ベッドが大きい……
(あ、あわわ……)
ここで乃々ちゃんとその彼氏さんがまさか……(妄想中)
(まだ早すぎるっ。駄目駄目!)
まあ一線超えた感じは無いしそこはあたし、気にしてない。匂いで解る。便利。
乃々ちゃんに限ってそういう現実的でカレカノ的な色恋は絶対あり得ないだろう。
彼女のアイドルへの態勢は真摯でいて真剣そのもの。
恋愛にうつつを抜かしてはない筈。
……でもだからといって本棚に入ってるエロチックな本はあたしでも見逃せない。てか女子中学生が何をしてるのさ。
(完璧
淫乱じゃん……(七割正解)
たとえアイドルに真摯であったとしても家にこんなのあったらびっくりだよ。
顔が熱い。
気になって中身見だしてから顔が熱い。プレイも熱い。
うわそんなの入らないでしょ、って、入るの!?
(乃々ちゃんが更に分かんなくなっちゃったよ……だって倒錯しきってるんだもん。)
と、その本に夢中だったせいで何かに足をぶつけてしまった。
本を棚に仕舞い、そちらを見ると、ゴミ箱がゴミを散乱させて倒れていた。
やらかした。
(元に戻さなきゃ……)
熱い顔を冷ましながら、先程の情事を頭から追い出しながら、ゴミを箱に入れていく。
すると。
鼻をツンとさす強い男の臭いがした。
(……)
初めて嗅ぐ臭い。刺激的な臭い。本能的な臭い。
今掴んでるこの丸められた紙くずからそんな臭いが。
一ノ瀬志希は好奇心旺盛。どういうものか知りたくて、それを開いて鼻に近づけた。
……あ。(察し)
…………
…………
…………(純粋乙女、故に思考停止)
別にトリップしていた訳じゃないらしい(一ノ瀬志希のウワサ)
×
数分後、そのマンションを離れていく一ノ瀬志希の姿を目に焼き付けていた有能変態管理人はこう残した。
髪の如き赤面。
味を知った乙女。
と。
一ノ瀬志希が森久保乃々を男だと知った日。
×
愛海「偽乳は悪。廃絶すべき悪。あるがままを受け入れ誇るべし。」
乃々(今日初めて会ってこれなんですけど……)
愛海「よって貴様は男である。」
乃々「!?」
人類の叡智であり我らが師匠、棟方愛海が森久保乃々を男だと知った日。
初心な一ノ瀬。こういう志希にゃんも可愛いよね。愛海はもう敬愛してます。