「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」   作:べれしーと

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饒舌なのは気のせいだと思います。し、下ネタ?そんなのはないよ?(目そらし)

ハロウィン要素皆無だけど許せ。


ノスフェラトゥな森久保

「はっぴーはろうぃーん……」

 

そう言って付けている羽をヒラヒラと揺らす乃々。彼女にしては珍しくロングスカートではない。

 

今日はハロウィン。町中が騒ぎ、仮装等を行ってトリックオアトリート!する日だ。

 

乃々も例に漏れずお菓子を俺からせびる気満々である。

 

コスチュームはノスフェラトゥ。日本語で吸血鬼を表す語だ。らしくマントを羽織り、髪は結わずストレート、白のショートスカートとベージュのブラウスを着用してピアスと小物で装飾を施している。

 

「とりっくおあとりーと、お菓子をくれなきゃ悪戯するんですけど。」

 

ハロウィンの定型句を話し、そして。

 

鋭い、『本物』の牙を俺に見せつけた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

森久保乃々は吸血鬼である。

 

元来、夜に生きる者である。

 

しかし彼女は伝承や言い伝えにあるような吸血鬼ではなく、俗的な吸血鬼らしい。位が下だとかなんとか。

 

人とほぼほぼ同じで、日光に当たっても影響は無いし、ニンニクは普通に食べれるし、十字架も平気だし、特別な力とか不死の能力とか魅了の能力とか大きな羽も無い。

 

吸血鬼らしいなにかがあるとすれば、血を吸うというただ一点のみである。

 

「お菓子あげるって言ったらどうするんだ?」

 

「血を吸います。」

 

「悪戯でお願いしますって言ったら?」

 

「血を吸います。」

 

「ええ……」

 

彼女はハロウィン関係なく、いつもお菓子感覚で俺の血を吸ってくる。首筋に歯を立てて見た目は淑やかに実際は情熱的に吸血するのだ。血を吸われている間は頭がぼーっとして気持ち良くなる。思考が覚束なくなる。中毒性があって危険だ。因みに俺は中毒になりかけててヤバいです…………

 

「ヴァンパイアは面倒臭いなあ。」

 

そう俺が言うと、

 

「違いますノスフェラトゥですけど!」

 

こう彼女に返される。いや、同じだろ。

 

「あのさぁ、ノスフェラトゥとか言われても分かんないんだわ。ヴァンパイアでいいでしょ?」

 

「え……でもノスフェラトゥの方が格好良くないですか……?」

 

牙を光らせながら首を傾げて俺に問う。仮装姿ってのも相まってその仕草がクソ可愛い。それと妖艶。ほんとに貴女十四歳?

 

「まあそれも解るけどさ。」

 

理解を示す。語感はいいよねノスフェラトゥ。

 

「それは兎も角、折角はろうぃんという大義名分があるんです。吸えないだなんて、有り得ないですよね……?」

 

そう発言してじりじりと近寄ってくる乃々。赤い瞳に見竦められ身体が硬直する。

 

「……トリック・オア・トリート?」

 

下舐めずりしながら彼女はそう問うた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

トリックでもトリートでも変わらない。少しの押し問答の末、結局は吸血に帰結した。

 

俺はソファーに座り首筋を差し出す。

 

装着していた羽や小物を外した乃々は俺の膝上にあまり遠慮もなく腰掛け、右腕を俺の左肩にのせた。向き合う体勢である。

 

彼女は左腕を使い、俺の顔をちょっぴり傾けさせる。

 

乃々が徐に口を開く。リップノイズが嫌に大人らしく聴こえた。

 

「いただきます。」

 

囁くように呟いた。直後、鋭いその牙を俺の首筋に近付けて、ゆっくりと刺した。

 

吸血が始まった。ちうちう、と音がなる。

 

蚊の吸血と違って良い所は痒くならない所である。それどころか乃々の吸血は快楽であると言っても過言でないのだ。

 

血の抜けていく感覚。少しずつ体から力も抜けていく。

 

乃々によって自由が奪われているようで、拘束されているようで興奮する。気持ち良い。

 

頭が回らなくなってくる。思考が覚束ない。

 

乃々によって知性を奪われているようで、原始に戻されているようで興奮する。気持ち良い。

 

ぼーっとしてくる。意識が朦朧とし、呼吸が深くなる。

 

乃々によって生命を握られているようで、この快楽に逆らえないようで興奮する。気持ち良い。

 

段々と乃々の吸血は激しくなってくる。

 

肩を抱く力が強くなり、身体が更に密接し、彼女は吸血でじゅるじゅると音をたて始めた。

 

んっ、という声も漏れて聴こえてくる。吸血に夢中でいつもなら出さない様なはしたない声を抑えず存分に公開する乃々。喘いでいるかの如く繰り出されるその嬌声ははっきり言って扇情的だ。

 

「ちゅっ……んっ……ちゅるじゅる…………」

 

乃々はその淫蕩な表情を包み隠さず、吸血鬼に与えられた『人の征服』という悦楽を嬉々として受け入れていた。

 

既に俺と乃々は、密着していた。

 

柔らかくてすべすべのその肌を、ひんやりとした小柄なその全身を、惜し気なく密着させていた。

 

ドクンドクン、という鼓動が俺に伝わってくる。ドキドキしているらしい。

 

彼女がとても可愛く思えてくる。いつもなら恥ずかしくて甘えられないけど吸血の時だけは思い切り甘えられる、なんて思っているだろう彼女がとても可愛く思えてくる。

 

だから、俺はそっと自分の腕を乃々の腰にまわした。独占欲だった。

 

ビクッ、と乃々の体が震えた。一瞬吸血も止まる。

 

「トリックだよ。気にすんな。」

 

なんて気取ったことを伝える。

 

すると、乃々はまた、おずおずと俺の血を吸い始めた。

 

抱き締めていて思う。『人の征服』者である割にやはり乃々は小さいな、と。これなら、俺みたいな奴でも簡単に襲えてしまえそうだな、と。

 

ほんの少し、このように乃々に対して汚ならしい欲望を抱いてしまったのは誰にも秘密の事である。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

吸血が終わり乃々と離れる。や、やばい……気持ち良かったけどフラフラする……貧血だ……

 

と、頭をかかえている俺に彼女は発言する。

 

「……あ、あの、美味しかったです。ごちそうさまでした。」

 

口の端から薄く赤い液体を少量滴らせ、まるで男を挑発する様に乃々は笑った。

 

今日はハロウィン。

 

俺と彼女が何度目かの退廃の悦びを享受した記念日である。




欲望の捌け口にしてごめん……ごめんよ乃々……俺も乃々に吸われたい(意味深)……うっ…………ふぅ。
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