「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」   作:べれしーと

3 / 25
ヤンデレとは言ってないです。


病んでる森久保 前編

コンコン。休憩室の扉を叩く。もしかしたら彼女が寝ているかもしれないので、弱くそっとを心がけて。

 

「はい……げほっ。」

 

「俺だ。今入って大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です。どう……ゴホッゴホッ。」

 

小さく失礼しますと言い部屋に入る。そこには、仮眠用のシングルベッドに横たわる俺の担当アイドル、森久保乃々がいた。

 

「体調はどんな感じだ?多少でも良くはなったか?」

 

「そうですね。多少だけ……げほっ。」

 

「咳、止まらない?」

 

「そろそろ落ち着いて来たので、止まると思います……」

 

「そうか……吸入ステロイドは?」

 

「もうやりました。」

 

「わかった。」

 

乃々は慢性的な咳喘息患者。ここ最近は症状が軽くなり、そこそこの運動も多少なら出来る様になってきた。

それでもやはり来るときは来てしまうもので、その結果がこれだ。自分の管理ミスで彼女を苦しめてしまうなんて、申し訳無くて心が痛くなる。

 

「ごめんな。俺の管理ミスだ。俺のせいで苦しい思いさせちまって本当にごめんな。」

 

「……気にしないで下さい。別にプロデューサーさんのせいじゃないんですから。」

 

「でも、過度な運動は禁物なのに、ライブがどうとか、そんな理由で乃々を苦しめてしまったと考えると、」

 

「違います。プロデューサーさんは悪くありません。誰も悪くありません。悪いのはこの病気です。」

 

「……けど、」

 

「トレーナーさんは症状が出た時適切な処置を施してくれました。輝子ちゃんはプロデューサーさんを呼びに行ってくれました。美玲ちゃんは私を落ち着かせようとさっきまでずっと側に居てくれました。プロデューサーさんはもりくぼをここまで運んで、こうやって心配して見に来てくれました。」

 

「……」

 

「皆優しくて、誰一人として悪くなんてないんですから。そんなに自分を責めないで下さい。」

 

「……わかったよ。乃々がそう言うなら。」

 

彼女はとても優しい。自分が一番辛いはずなのに俺を励ましてくれるんだ。

 

(乃々のためなら、俺は何だってやれるかもしれない。そう思ってしまった。)

 

 

 

 

 

「…………ふう。大分収まりました。」

 

「本当か?」

 

「はい。元通りです。」

 

もう動ける状態まで回復したらしい。でもまた同じ事を繰り返すつもりはない。不安だし、もう少し休んでいてもらおう。ライブよりも乃々の身体の方が大切だ。

 

「まだ休んでろ。直ぐに動いてぶりかえしたら本末転倒だ。」

 

「……ふふっ。心配性ですね。」

 

「当たり前だ。乃々は大事な俺の担当なんだし。心配しすぎるなんて事は無いよ。」

 

「……そうですか。」

 

「ああ。」

 

「ここは、窓から見える景色が綺麗なので好きです。」

 

「ああ。」

 

「…………」

 

「…………」

 

それっきり二人の間に会話は無くなった。乃々は外を見つめ、俺は乃々を見つめる。静寂。寂しさを感じさせない暖かい静寂。

 

小鳥の囀りは季節の彩りを二人に伝えてようとしていた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ふと浅い息遣いが聴こえ、そちらに注意を向けると。

 

(……プロデューサーさん、寝ちゃったみたいですね。)

 

温い春の日射しと弱い春風にあてられ熟睡中の彼。どうやら心身の疲れが溜まっていたようで。

 

「お疲れ様です。」

 

私は身体を起こし、彼の頬にかかる髪を指で上げながらそう言いました。

 

「……徒労、とも云えるんですかね。」

 

 

 

 

 

『耳に付けられたイヤホンから流れ出る情報に集中。

 

「プロデューサー、ねえ、答えて?」

 

なんで、彼以外の声が?

 

「……無理だ。」

 

「なんで?」

 

それはもりくぼの台詞なんですけど。

 

「俺らの関係を考えれば分かる事だろう?」

 

「分かんないよプロデューサー。分かんない。」

 

……ああ、耳障り。

 

「そんなの関係無い。」

 

彼を困らせないで。

 

「アイドルとプロデューサーである前に、私達は男と女。」

 

これ以上、その穢らわしい声を彼に聞かせないで。

 

「男として、こたえて?」

 

彼が可哀想じゃないですか。

 

「私は__」

 

……早く、もりくぼが助けてあげないと。』

 

 

 

 

 

プロデューサーが起きてる時後ろ手に隠していた吸入器をベッドの近くのゴミ箱に捨てます。

 

(症状なんて出てないのに吸う訳ないんですけど。治っちゃったら、彼が悲しんじゃいます。弱いもりくぼが好きな彼を悲しませるなんて万死に値します。)

 

「にしても人って簡単に騙せるんですね。」ボソッ

 

 

 

 

 

『「だ、大丈夫ですか乃々ちゃん!?えっと、こういう時は……」

 

「ボ、ボノノちゃん?あっと、えっと、ぜ、喘息……プ、プロデューサーを呼んでくる!」

 

「ノノっ!お、落ち着けよ。呼吸を、意識して、するんだ。大丈夫だからな!」』

 

 

 

 

 

「演技も大変ですね。」

 

私は彼の頬をそっと撫でます。大事に、大切に、慎重に。

 

(でも、その大変さに見合うモノは貰えますから良いとしましょうか。)

 

そして私は自分の顔を彼の顔に近づけて。

 

「……愛してます。プロデューサーさん。」

 

唇が___




ヤンデレじゃないとも言ってないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。