刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は親衛隊二人目、寿々花編 その1になります。

それでは、どうぞ。

※2019/9/3 更新時のトラブルにより、前書きと後書きが執筆当時と文言が異なります。


寿々花編
① 差し入れと一息


 ー刀剣類管理局 医療施設ー

 

 日本の未来が終わるギリギリの瀬戸際まで追い込まれた、鎌倉での一件から約二ヶ月。

 関東一円にぶち撒けられたノロの回収体制も整い、各伍箇伝の方から刀使や支援メンバーが派遣され始めてきた。

 南は千葉県館山、北は群馬・栃木・茨城といった広域に跨がるエリアを、人海戦術で鎌府一校に任せるには、負担がかなり大きくのし掛かることが目に見えていたためでもあった。

 自治体との調整役に加えて、各校の派遣要員の現場調整も遣らなければならなくなった俺は、隠世に引っ込んだタギツヒメに恨み節を吐きながら、忙しく奔走していた。

 

 

 

 

 そんななか、空けられそうな時間を見つけて、ICUのように配された病室に向かっていた。

 目的は、この中の人物である。

 

 コンコン

 

「どうぞ。」

「邪魔するぞ~。」

 中に居たのは、元親衛隊第二席 此花(このはな)寿々花(すずか)だった。

 病院服に身を包んだ彼女が、ベッド上で出迎える。

 

「まあ、貴方でしたの。それで、ご用件は何ですの?」

「ちょっと差し入れをな。」

 そう言って、土産物の紙袋からモノを取り出す。

「一応、元気そうではあったから流し込みやすいものにはしてある。」

「これは…。確かに食べやすそうではありますわね。」

 彼が持ってきたのは、北海道土産の一つである生キャラメル。

「口に合うかは分からなかったが、良かったか?」

「せっかくですし、いただいていきますわ。」

「ありがとう。それとこれ。流石にまだ、紅茶は持ち込めなさそうだったからな…。」

「…銘柄的に狭山茶ですか。また変わったところを選んできますのね。」

 寿々花の手元には、狭山茶の茶缶が渡されていた。

「元々、俺もお茶は飲むからな。意外と知られてないが、狭山茶も宇治や静岡と並んで、日本の三大銘茶何だよな…。」

「鹿児島の方がよく見かけますが、そうですの?」

「……生産地と量がな…。そこまで多い方じゃないしな…。甘めの味だが、品質は保証できるぞ。」

「時間はまだ御座いますの?」

「大丈夫だ。わざわざ、何も無い時間帯に来ているしな。」

 腕時計をチラッと見る彼。

「でしたら、少しお付き合いできます?」

「元よりそのつもりだったからな。色々、話し合うこともあるし。」

 

 

 病室に備え付けてあるポットからお湯を汲み、先程の茶缶からお茶を急須にぶっ込み、茶葉が開くのを待つ。

「本来なら、私がやるべきことでしょうに…。申し訳ないですわ。」

「なに、病人にあれこれして貰う方が申し訳なくなるからな。安静第一だ。…君が全快してから、色々して貰うさ。」

「その程度で許して貰えるなら、お易いご用でしてよ。」

 段階を踏んでお茶を紙コップに注いでいく。

「少し熱いから、持つ時は気を付けてな。」

「ホントですわね。」

 茶菓子に生キャラメルとは、変わった感じもしなくなかったが、二人きりの空間ならこんなのも悪くないな、と感じる彼。

 

 

 少し時間をおいて、寿々花が口を開く。

「そういえば、真希さんの動向は掴めまして?」

「ソレなんだが…。正直お手上げ状態だ。無事に見つかってくれればいいんだがな…。」

「全く、あの人は一体、どこで何をやってらっしゃるのかしら。」

「そう言ってやるな。真希にも、色々思うことがあったんだろう。」

「…そうですわね…。」

 

 今度は、逆に彼の方から質問する。

「寿々花。身体の方は、今どんな感じだ?」

「…だいぶ、ノロの方は抜けてきていますわ。ただ、身体がまだ軋みますわね。」

「無理もないか…。長期間に渡って、ノロを摂取し続けたんだからな。」

 コクッ、と頷く彼女。

「私はまだいいですわ…。ですが…。」

「結芽、か。……俺はあの時の判断は、間違っていなかったと思う。その場に居なかった俺が、言える話でもないが。」

「…いつかはこんな日が来ると、腹は括っていましたわ。」

「……君は、強い人だな。…俺は、結局何も出来やしなかった。」

 

 コップの波紋に顔を落とす彼。寿々花は、彼の両手の上に自身の手を重ねる。

 彼女は、寿々花の行動に驚いた彼の顔を、真っ直ぐに見る。

 

「貴方は貴方で、やれることをやったのでしょう?なら、それを悔やむ必然性は無くては?」

「そうかもしれないが…。…いや、やめよう。結局、過ぎたことをいくら言ったところで、過去は変わらない。」

「…貴方も、大概思い切りがいいですわね…。」

「ウジウジしても、不毛なだけだ。…それに、俺がこんなことを言ったところで、故人が生き返るわけもない。」

「…皆、気持ちは一緒ですわよ…。」

 親衛隊の参謀的立場だった彼女らしからぬ、悲しげな顔を浮かべていたのが、彼の目に映る。

 

 

 

 

 暗い話題から切り替わって話が弾んだ後、椅子から立ち上がり、ここを発つ準備を始める彼。

「さて、そろそろお暇するかな。」

「次はどちらに向かいますの?」

「京都と熊本だ。一度綾小路に寄ったあと、長船の刀使を連れて八代の荒魂討伐に加わる。…よく倒れないよな、俺。」

「親衛隊と接していた時以上に激務ですのね。」

「無理はせんようにはするさ。…ただ、倒れた時はいっそ君の隣で治療して貰うのもアリかもな。」

「寝言は寝て言え、ですわ。…でも、わざわざ会いに来てくださったのは、感謝いたしますわ。」

「時間があれば、また来る。キツいかもしれないが、治療、頑張れよ。」

「ええ。」

 病室から、彼が去っていく。

 

 

 

 

「なんだかんだ、あの時会ってから、ずっと気にかけてくださりますのね…。」

 そう言うと、寿々花は瞼を下ろし、短い眠りにつくのだった。

 その言葉が向けられた者は、もうこの場には居なかった。




ご拝読頂きありがとうございます。

寿々花は、アニメ本編中では親衛隊の参謀的役割を果たしていた一方、真希が戻ってきた時の叱責場面から、彼女の女房的立ち位置であったことも垣間見ることができました。
筆者の中では、個人的に好きなキャラクターでもございます。

感想等ございましたら、感想欄などで対応させて頂きます。

それでは、また。
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