今回は結芽編その6-2、その5での□ルートになります。
今話は前編です。…だいぶざっくりした書き方になりそうな予感が。
それでは、どうぞ。
ー綾小路武芸学舎 休憩所横 某個室ー
「…まだ、生きたいよ。私の凄さ、全然伝え切れてないもん…。」
そう告げた結芽の暗めな表情を、じっと見つめる彼。その言葉に嘘がないことくらい、彼自身も分かってはいたが。
「―よし、分かった。結芽、時間が無いから先にこれを渡しておく。」
結芽の決心が変わる前に、早々と手を打つ彼。
彼が手渡したのは、明日出発の関西国際空港発の国内LCCの航空券の搭乗チケットと、京都からの関空連絡特急「はるか」の切符。その行き先は。
「那覇?…沖縄に行けって、ことなの?」
「もう既に、向こうでの結芽の滞在場所は俺の方で手を回してある。結芽の荷物は、今結芽が滞在している部屋の前にスーツケースを置いてあるから、その中に入れていってくれ。…ああ、あとこれも。」
彼が机上に置いたのは、ジュラルミンケースにも似た外観の細長いトランク。そう、御刀運搬用の刀ケースだ。
「これって、《ニッカリ青江》を入れるための?」
「それは結芽の相棒だろ?なら、ずっと一緒にいさせるべきだしな。…流石に、御刀の機内への持ち込みは、結芽の行動を知られる可能性があるから、これが必要なわけだ。まあ、親衛隊の服はスーツケースの中に入れておく以上、飛行機に乗るときは私服になるけどな。」
秘密裏に本土から遠く離れた沖縄へ向かわせてしまえば、そう簡単には結芽を連れ戻すことができない。更に加えて、那覇から他の島・国へも向かう船や旅客機の数を考えれば、追跡するにも難度が上がる。
「本当なら、俺も一緒に行きたいところだが、まだ俺にはやることが残っている。だから、先に行って待っていてほしい。」
「……お兄さんがそう言うってことは、何か理由があるんだよねえ?」
「ああ。しばらく、刀使ではなく普通の女の子として過ごしてもらうことになるが、《ニッカリ青江》は持っていたままでいいから。…あと、激しい運動は控えてくれ。それだけでも、後のことが全然違うし。」
「……うん。分かったよ。」
彼氏の言葉をしっかりと耳に入れる彼女。
少なくとも、彼は本気で彼女を救うつもりでいるのだ。それに協力しない理由などなかった。それに、彼は結芽を「刀使」として再び力を振るえるように、今が踏ん張りどころと思って動こうとしているのである。
(…やっぱり、お兄さんには甘いなぁ…。私。)
そうは思っても、彼女を想うが故の行動であることは、そのまま理解できたのである。そして、それならなおのことまだ、死ぬわけにはいかないということも。
「とまあ、手筈はこんなところか。あとは、このファイルのプランに従って、那覇空港まで行ってもらいたい。向こうの協力者が、結芽を待ってくれているだろうしな。」
「協力者?」
「ああ。…結芽、一人で向こうまで行けるか?」
「もう~、お兄さんってば、心配性なんだから~。…大丈夫だよ。結芽も、頑張るから。お兄さんは絶対、私のことを見捨てないって知っているから。」
「…そう評価してもらえて、俺は嬉しい限りだ。」
別れ際、彼と結芽は再会を誓うキスとハグを交わす。
少しの間だけ離ればなれになるが、彼女は自分に生きる希望がまだ残されていること、そして刀使として再び戻ってくることを強く想い、沖縄へ飛ぶ準備を始める。
ー綾小路武芸学舎 学長室ー
数時前まで、結芽のことで突っ込んだ話し合いが行われていたこの部屋。
結月はノック音とともに、先ほどまでそれを話していた彼が戻ってきたのを確認する。
「◯◯(彼の苗字)、話はついたか?」
「ええ。結芽は、生きることをまだ諦めてませんでした。」
「……そうか。」
「相楽学長。急にはなりますが、明日、結芽を沖縄へ逃がします。」
「本当に、随分と急だな。」
「まあ、予約していたチケットのこともありますので。その後、沖縄にいる舞草繋がりの協力者やらDARPAの人間と会わせます。…ただこれは、紫様を止めてからの話にはなりますが。」
「その間の結芽は、どうするつもりだ?」
「沖縄の信頼できる人に頼んであります。後で、舞草が掛かった諸経費を支払うとも言ってありますし。」
「……驚くほどに、博打だな。」
もし復活しつつある大荒魂の討伐に失敗すれば、結芽の新薬開発も含めて、全てが御破算だ。
それでも彼は、
「どっちみち、可奈美達や朱音様などの他の舞草の人間が止められなければ、この国は終わりですから。だからこそ、俺は舞草の人間を信じるんです。」
と答えた。
結月はため息を吐きながら、
「…本当に、考えているのか、そうではないのかお前の思考はよく分からなくなるな。」
と呟いた。
「よく言われます。」
苦笑する彼。
「では、俺もそろそろ動きます。結芽をもう一度、貴女のもとで元気な姿を見せられるように、あれこれ踏ん張ってみせますよ。」
「…幸運を祈っているぞ。」
「はい!…失礼しました。」
閉じられた扉を見つめながら、結月は
「私にはできなかった結芽の治療、もしかしたら、お前なら…。いや、希望的観測に頼るのは止めるか。」
と、こう呟いた。
結月自身も医療現場に携わる人間であるからこそ、結芽の病が治らないものであることを理解していた。だが、彼女を救う可能性もまた、ゼロというわけではない。科学というものが、そうであるように。
(お前がどこまで足掻いてくれるのか、見させてもらうぞ。)
彼の繋いだ縁が勝つのか、結芽の疾患がそれよりも前に彼女を絶命に追いやるのか、結月は今後も注視していこうと思った。
ー京都駅ー
急ぎ足で京都を離れる彼。書類仕事全てに片を付け、鎌倉へと全速力で帰る。
「…しばらく、結芽とは会えないのが残念だが、結芽の寿命を伸ばすことができるのなら、こうした時間も耐えねばならないしな。やむなしだ。」
京都駅を発車した新幹線は、一路東京へ向けて走り出す。
「…メール、送っておくか。」
彼が送信履歴から引っ張り出したのは、沖縄での任務でお世話になったホテル経営者の男性だ。苗字が『古波蔵』とつき、エレンの遠い親戚にあたる。ただ、彼女との面識はないそうだ。
『古波蔵さんへ
先日お話ししていた訳アリの少女を、其方で保護していただくことになりそうです。つきましては、明日午後に那覇空港まで迎えに来ていただければ幸いです。便名は以下の通りです。
(結芽の搭乗する旅客機の便名と、那覇空港到着予定時刻)
それでは、よろしくお願い致します。
◯◯××(彼の名前)』
「……これで、よし。」
送信を確認し、続けてある人間へと連絡を入れる。
『もしもし?どうかしたのかい?』
「悪い葉菜、今移動中だったか?」
『いやまあ、構わないけど。』
連絡相手となったのは、同じ舞草の諜報員である葉菜。鎌倉へと向かっていた彼女は、調査隊に合流するべく先行していた由依を追う形で、東海道新幹線に乗り込んでいた。
「今どの辺りだ?」
『小田原は過ぎているから、そろそろ新横浜に着く頃かな?』
「なら、手短に伝える。『親衛隊の一人は無力化した』と。智恵を含めた調査隊には、そう伝えておいてくれ。そう言えば、少なくとも隊長の木寅と智恵にはこの言葉の意味が分かるはずだ。」
『えっ!?一体、どうやって?』
「それはまた後で話す。取り敢えず、そっちは合流を急いだ方がいい。」
『……分かった。ちゃんと、僕が納得するような説明を頼むよ?』
「悪いな、手間を掛けさせる。」
『こういう時くらい、後輩を頼ってくれる方が有り難いよ。…あ、そろそろ着きそうだから切るね。』
「ああ。そっちは任せた。」
『それじゃあ、またね。』
これを最後に、一度彼女との連絡を絶つ。
「…あとは、可奈美達や朱音様達の方にも連絡だな。多分、攻略時の状況が大きく変わるだろうし。」
鎌倉に戻り次第、重要事をとっとと伝えようと思った彼。
日が沈み、車窓は暗闇が広く支配しようとしていた。それはまるで、今から訪れようとする危機的状況を指し示しているようにも、彼には思えた。
ー折神家・特別祭祀機動隊本部 作戦指揮室ー
大急ぎで帰還した彼は、真希や寿々花から渡された舞草の諸情報を纏めた書類を受け取る。里の襲撃、制圧と連動して各地の構成員が抑えられていたのは、どうやら本当だったようである。
「…ここまでの組織だとは、いやはや、逆に感心するな。」
お前もその組織の構成員だろうが、などと突っ込んではいけない。
「むしろそれだけの規模であるからこそ、紫様、いや刀剣類管理局そのものをひっくり返すことも可能だったとも言えるわけだ。…全くもって、僕達からしてみても鮮やかな作戦だったよ。」
「まあ、これで舞草も組織としては崩れたでしょうし、あとは、反逆者の首魁たる折神朱音を捕らえれば、紫様の後背を狙う者はほぼいなくなるでしょう。」
「そうだな。」
(…灯台下暗し、って諺を知らない二人ではないだろうが…。)
真希と寿々花も、一連の検挙作戦からすっかり落ち着き払っているが、実際のところは完全に舞草を仕留められたわけではない。
彼も長年諜報員として、この本部でだらだら仕事をし続けていたわけではないのだ。やろうと思えば、一時的に指揮系統の混乱を引き起こすことさえ可能なのである。ただ、それはやらない。それをする時は本当にどうしようもなくなった時だ。
(…ま、俺ができることをやっていくだけだな。)
結論としては、そこに尽きる。目の前の二人には、事実上の敵対関係という点においては、人の良さを知るが故に半ば申し訳ないとは思ったのだが。
「そう言えば、綾小路から戻ったのは君だけかい?」
「ん?―ああ、そうだが…。」
その導入から、何となく真希の二の句が想像できてしまった彼。
「結芽は、一緒に帰ってこなかったのかい?」
「…それなんだが、悪い知らせがある。結芽の病気が思っていた以上に重篤らしくて、今は向こうで治療中だ。だから、一日二日で鎌倉に戻ってくるのは難しいらしい。…俺は向こうで初めて、結芽の病状を知ったくらいだし。まったくもって、自分が情けないな。」
「…そっ、それは…。」
「まさか、結芽の命が…。」
「いや。担当医師からは、単に今までの無茶が原因の過労も体調悪化の一因としてあるらしいから、まとまった休養を取れば少し良くなるとのことだ。だから、二人の考えているような心配はない。」
もちろん、これは嘘である。確かに彼女の病状そのものは悪いが、その治療を前進させるべく、翌日には那覇へと向かう。ぶっちゃけ、結芽を今このタイミングだけ鎌倉から遠くに離しておくことこそが、舞草にとっては最も重要な出来事である。
「結芽のことは相楽学長に任せてあるから、心配はしていない。何時のように、また元気な姿で戻ってくるだろうよ。」
「…そうか。分かった。」
「結芽と連絡はできますの?」
「いや、舞草との戦闘中に端末が壊れたらしくてな。しばらくは修理に出さないといけなくなった。なんで、こっちからは精々メールができる程度か。」
「…幸いにしてこの状況ならば、結芽がいなくとも、僕達だけで舞草を確実に制圧することはできるだろう。そういう意味なら、今のうちに結芽も休ませておくべきだろう。」
「同感ですわね。夜見さんも、そう遠くないうちに復帰されるでしょうし。今回の功労者は間違いなく結芽でしょうから、相応の報奨は与えるべきだと私も思いますわ。」
結芽の休養を認める方向に流れが向き、彼も一安心した。
「…ま、それは結芽が病気から復帰した時に、労いの言葉は掛けてやってくれ。俺が言ったところで、あんまり効果はないだろうし…。……なんだ?二人とも、そんな顔を浮かべて。」
彼を見る真希と寿々花の表情が、ポカンとしたようなものだったのが気になった。
ただ、その理由はある意味で至極当然とも言えるものであった。
「い、いえ。何というか、その。……貴方が結芽の意中の殿方、と言われて以降、貴方と話している時にはどうも調子が狂うような気がしてなりませんの。」
「………あれ?―俺、確か結芽とのことは、本部の誰かへ漏らした記憶は無いぞ。」
「それはそうだろうね。…結芽本人が、それを口にしていた訳だし。」
「……へ?」
思わず、間の抜けた声が出た彼。それも無理はなかった。
「結芽から、何も聞いていませんの?」
「…それ、今初めて聞いたぞ。」
「結芽の口からまさか『彼氏』なんて言葉が飛び出すとは、あの時の僕は、まだまだ頭が固いのかもしれないと思わされたよ。」
「普段あまり話されないはずの夜見さんですら、体を震わせたくらいですのよ。…その場の空気たるや、まるで空間を凍りつかせたようなものでしたわ。」
「……何故だろう、効果音まで再現してそのシーンか浮かんできた。」
例えるならば、氷に亀裂が入ったような、ピシッという音だろうか。その発言を聞いた時の、結芽以外の人間が軒並み沈黙してしまった姿すら容易に想像できてしまう。
「んで、二人はどう思った?俺と結芽の関係に対して。」
「もちろん、僕は反対したさ。親衛隊とは何たるか、刀使が恋愛などに現を抜かしている場合か、とか僕なりの意見を容赦なく言わさせてもらったよ。…でも熱を込め過ぎてしまって、結芽を泣かせることになってしまったけれど。」
「…あー、真希の言わんとしていることは、理解できるんだがなぁ…。」
死の迫る結芽の内情を知っているからこそ、敢えて彼女に刀使としていられる時間をもっと長くしていくべきだ、という真希の考えも彼には分かる。
「その後、寿々花や夜見にだいぶ叱られたけれどね。」
「本当にあの時はどう宥めればよいのか分からず、大変でしたのよ?どうやら、結芽は真希さんに嫌われたと思ったようでしたから。私は賛成でも反対でもありませんでしたから、結芽自身の考えで動いてみれば良いのでは、と助言をさせていただきましたわ。」
その時に結芽が、
『寿々花お姉さんも私の味方~♪』
と調子を戻したのは、また別の話ではあるが。
「…ちなみに、この時に夜見は何て言ってたんだ?」
「ただ一言、『燕さん、おめでとうございます。』とだけですわ。…文言からすれば、夜見さんは賛成なのかもしれませんが。」
「……綺麗に三人で意見が分かれたな。」
反対、中立、賛成、とディスカッションなどではいい参考例になりそうだが、これが自身の関わる話でのことだと思うと、彼個人としては複雑である。
「…ただまあ、僕はああは言ったけれど、結芽が親衛隊の職務を完全に放棄したわけでもないし、むしろやる気は上がっていたようにも思うから、今となっては一概に男女交際をするな、とは僕も言えないな。」
「意外ですわね。真希さんはこうした話だと頑固な部分があるかとお思いでしたのに。」
「僕にだって、考え直すことくらいあるさ。」
「…まっ、もし結芽の親衛隊の仕事に影響が出るようならば、少し付き合い方は俺も考える必要があるな。色恋沙汰がもとで注意散漫、結果的に殉職とかなったら目も当てられないし。」
「……その極端な思考はどうにかなりませんの?」
「無理だな。最悪の最悪くらい、考えておくのが軍事での鉄則だし。考え過ぎくらいがちょうどいいんだよ。」
「何にせよ、結芽との話は本人が戻ってからまた、深く話し合おう。当然、君も交えてだけれど。」
「分かった。…まあ、とにもかくにもまずは舞草の完全制圧が先、だろ?」
「そのとおりだ。」
ともあれ、彼は真希と寿々花との会話を済ませ、いつもの職場へと戻る。その後、同僚達にも迫りくる危機と事情説明を果たし、起死回生の時に備える。
ー翌日 関西国際空港 JR側乗り場ー
彼が鎌倉へ戻った次の日、結芽の姿はここにあった。南海電鉄も乗り入れている本空港だが、彼女が乗ってきた特急「はるか」はJRの列車であるため、この改札から出てきたわけである。
空港内の増えゆく外国人観光客の多さに目を惹かれつつも、国内LCCの集中するカウンターを目指す。
搭乗手続きは電子化されており、搭乗チケットをリーダーにかざすと、今から乗り込む那覇行きの搭乗確認の画面が表示される。
「いつもなら誰かが一緒にやってくれるけれど、今日は私だけだもんね。…これがお兄さんの言うところの、成長、ってことなのかな?」
少しずつ搭乗手続きを進めていくと、搭乗者の名前の画面を確認する。
「……あれ、私のチケットの名前って『燕結芽』じゃないんだ。」
実は、結芽の移動を悟られないようにするため、彼女の苗字であり、比較的珍しい『燕』ではなく彼の苗字の方を、チケット予約の際に登録していたのである。
「◯◯結芽、かあ。…なんか、新鮮だなあ~。」
もちろん、今の苗字が嫌いというわけではない。むしろ珍しい名前でもあるので、個人的には覚えてもらいやすいとも思っている。ただ、結婚などの際には苗字が変わることもあり、こうした表示だと改めて彼との関係を感じさせられることもある。
「…次、戻ってくるときには、紫様や相楽学長、真希お姉さんや寿々花お姉さん、夜見お姉さん達に元気な姿を見せたいな…。」
飛行機に乗り込む前、そう呟いた彼女。
結芽を乗せた旅客機は那覇を目指し、一路南へと進路を取った。
ー数時間後 那覇空港 到着ロビー付近ー
綾小路時代にも訪れたことのある、沖縄。その時は米軍の普天間基地内にある研究施設に用があったのだが、今回はまた別である。
「やっぱり、あっつーい。…こんなだったら、もうちょっと薄着でも良かったなあ。」
南国の気候は、既に夏場の気温に匹敵するほど高温多湿であった。もちろん、結芽もそれを分かっていたのだが、やはり暑かった。
「お兄さんからのメールだと、そろそろ迎えの人が来るって言っていたんだけどなぁ。」
スーツケースとトランク型の刀ケースをまとめ、黒いワンピース姿で待つ彼女。
それからしばらくすると、彼女に声を掛ける人物が現れる。
その人物は、よく鍛えられた身体をした中年の男性であった。
「失礼。君が、ミス・ツバクロかい?」
「…おじさん、誰ぇ?」
「あれ、彼から聞いていないかい?迎えに来ると言っていた。」
「あ~、おじさんがそうなの~?」
「古波蔵
「…まあ、お兄さんが信頼している人だから、大丈夫だとは思うけれど。」
完全に心を許したわけではないが、凌蔵の言葉を聞き入れる彼女。
「ちなみに、ミス・ツバクロ。そのケースの中にある《ニッカリ青江》だけれど、後で僕の知り合いの刀匠に点検させてもらってもいいかな?もちろん、今日中には君のもとに返す。」
「…う~ん、分かったよ。ちゃんと返してよね?」
「こう見えて、約束は守るほうなんだよ。さて、宿泊先まで君を乗せていこう。」
「お願いしま~す。」
こうして、沖縄での再治療に向けた一歩目を歩み始めた結芽。この日は凌蔵のほか、凌蔵の家族や結芽の容態をモニタリングする医療関係者達と顔を合わせた。
この時に、彼女は彼の持つ人脈とその縁の深さに驚かされることとなった。最も、これはまだ一端に過ぎないのだが。
それからしばらくは激しい運動を避けつつ、沖縄観光や腕を鈍らせないようにするべく基本的な鍛錬を重ねる。天才と言われた彼女と言えど、無意識にでも基礎を固めていることに変わりはない。
時々、写シを張るなどして刀使の能力が落ちていないかなどを確認はするが、本格的な復帰までは彼の言いつけを守りつつ、技をもう一度見直していく。
(今、刀使として凄いところを見せられなくても、戻った時に強くなった、凄くなった、って言ってもらいたいなあ。)
結芽を動かす承認欲求。ただそれは、自分だけでなく
結芽が沖縄に渡った数日後、鎌倉では大荒魂・タギツヒメの復活を阻止できた。その結果として、ノロの大量漏出による混迷の日々が始まろうともしていた。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
後編へ続きます。
感想等ございましたら、感想欄・活動報告へお気軽にご投稿頂ければと思います。
それでは、また。