刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は夜見編 その1です。
恐らくこの話で、刀使の主要メンバーの話が出揃うことになるかと思います。
…全員出揃うまで、長かった。(約2ヶ月)

祝UA10,000、全話PV24,000越えを達成致しました!!
読者の皆様方、ありがとうございます!
今後も、少しずつ邁進していきます。

短めですが、お付き合いください。
それでは、どうぞ。


夜見編
① 米騒動


 ー鎌府女学院 食堂兼レストプレースー

 

 夜も少し更けた午後9時頃。

 親衛隊第三席 皐月(さつき)夜見(よみ)は、少し遅めの夕食を摂っていた。

「いただきます。」

 白米マシマシのお茶碗に、味噌汁と鯖の味噌煮、ほうれん草のお浸しと筑前煮という、一汁三菜の揃った御盆と向き合う。

「はむっ。」

 白米を箸で掴み、お米の味をしっかりと噛みしめる。

(…今日も美味しいご飯ですね。…えがっだ。)

 

 米は噛む回数が多ければ多いほど、デンプンから糖分が生み出されより甘くなる。

 無論、炊き方が良いという前提条件がつくが、多くの人間が利用する食堂の炊飯の仕方が良かったことは、彼女にとっても嬉しいことだった。

(大規模施設の炊飯釜では、どうやっても炊き方にムラができるため)

 

 お米の量が多いとはいえ、和食メインのこの献立だと、当然のように彼女の箸は進んでいった。

 

 そして、山盛りだった筈のお茶碗の米が、半分ほどまで削られた頃。

「おっ、夜見。お相席、いいか?」

 今晩の仕事を一通り片付けた彼が、机を挟んで彼女の前の席に座ろうとする。

「…どうぞ。」

「前失礼。…結構食べるんだな。」

 半分ほどにまで減った彼女のお茶碗の米を見て、思わす呟く。

「しっかり食べておかなければ、紫様に何かあった時に対処できませんから。」

「まあ派手に動き回るなら、それくらい普通に消費していてもおかしく無いか。というか、単に俺が少食なだけだな。」

 

 彼の今日の夕食は親子丼とワカメのお吸い物だったが、米の量は小盛りだった。

「…お米がお嫌いなのですか?」

「いや、元々これくらいしか入らねえんだ。折角農家の方達が作ったものを、食べきれない量ついでおいて食わないのは、その人たちに失礼だろ。食べ物は尚更粗末に出来ない。」

「…そうですか。」

 彼が、分かるか分からないかの笑みを浮かべる夜見。

「ん?なんか嬉しそうに見えるが、気のせいか?」

「気のせいです。」

「おっ、おう。…いただきます。」

 遅れて、彼も親子丼に箸を差し込む。

 

 

 

 

「時に夜見。」

「はい。」

「お米の固さって、どれくらいが好みだ?」

「…そうですね。」

 少し考える素振りを見せた後、彼女は口を開く。

「…もっちり派ですね。お米の旨さを、最大限引き出しているように感じますから。」

「ふぅむ。…俺は少し硬めくらいがいいな。…もっちりは餅や赤飯など特殊な時で食べたいからな…。」

「…つまり、普段のお米でもっちりは邪道と、そう仰りたいのですか?」

 彼は夜見の語気が、ほんの僅かだが強まったように感じた。

「いや、そういうわけじゃない。硬めなら、米がたっている実感があるしな。それに、こういう丼ものだと、他のものから水分を吸収するから、ちょうどいいくらいに米が柔らかくなるしな。好みは人それぞれだ。」

「…なるほど。そういう食べ方もあるのですね。」

「…そう言えば、夜見の出身は秋田だったよな?」

「はい。…ですので、お米にこだわる面があるのは確かですね。」

「暇が出来れば、東北を回ってみるかな…。」

「いいですね、それ。…最も、私がここを離れるわけには行きませんが。…紫様のためであり、あの御方のためですから。」

「そうか…。…普段から思っていたんだが、高津学長から手酷く扱われてないか?」

「…いえ。問題ありません。」

「…どうにもならなくなったら、何時でも声を上げていいんだからな。話したくなったら、声を掛けてこいよ。」

「お気持ちだけ、受け取っておきます。」

 そう言うと夜見は、食べ終わった食器類を返却口に運ぶため、立ち上がる。

 

 

「それでは、失礼致します。」

「ああ。あまり無理はするなよ。」

「お気遣い、ありがとうございます。」

 スタスタと、去っていく彼女。

 離れていきながらも、彼のことを思い返す。

(…毎晩、夜遅くまで職場で作業している貴方が、一番無理をしていると思いますが…。言うだけ野暮でしょうね。)

 以前、夜間に彼の所属する部署の横を通った時に、扉の隙間から見えた、もがくように頭を抱えながらも、刀使や特祭隊の被損害率を軽減させるための提案を考え続ける姿が、彼女の印象には未だ強く残っていた。

(…あの人は、自分の意思で組織全体のことを考えているのですね。…私とは異なる…。)

 夜見自身の思いは、誰かに伝わることはない。

 それでも、彼女は今の立ち位置でもいいと思っていた。この感性を誰かに理解されようとは思っていない。

 自分の生き方をするだけだ、と。

 

 

 

 

 一人ぽつんと食い進める彼。

 だだっ広い食堂に一人居れば、充分目立っていた。

「あれ?こんな時間に食事かい?」

 少し遠くから、声が聞こえた。

 声の主は、真希だった。隣には寿々花も居た。

「貴方がここで頂いているなんて、そう多くないですものね。」

「まあな。…二人とも休憩か?」

「そんなところだね。腰掛けてもいいかい?」

「どうぞ、お嬢さん方。」

「…相変わらず、変わっていますのね。」

 夜見が先ほどまで座っていた向かいに、二人は座り込む。

「いや、さっきまで夜見も居たんだがな。向かいあって食ってた。ちらっと話しもしたな。」

「!?…それは本当かい?」

「えっ?」

「…夜見さん、私達以外でお話しているのをあまり見かけませんから。因みに、何を話していらしたのですか?」

「米の硬さ(について)。」

 

 

 

 

「「…はっ?」」

 前の二人は、少し時間を置いて口を揃えて驚く。開いた口が塞がらないというのが、リアルで再現された。

 

 

 

 

「ん?そんなおかしなことだったか?」

「い、いや。そんなことは無いけれど…。」

「……鈍感気質、ここに極まり、ですわ。」

 呑気な彼と、驚嘆のあとの二人のガックリぶりが対になる瞬間だった。

 

 

 机上に置かれていた三つの茶飲みは、中身のお茶がうっすらと湯気を立てていた。




ご拝読頂きありがとうございました。

夜見は、離脱するその最後の瞬間まで高津学長に尽くし続けた、言わば悪臣の忠臣だったと思います。
行動理由が終盤付近まで分からなかったこともあり、『どうして、彼女はあそこまで高津学長のため動くのか?』というのが釈然としなかったのですが、その最後の辺りで全てが繋がった時には、『はーっ、なるほど。だからだったのか。』と納得出来ました。
高津学長は、彼女が亡くなるその最後まで想いに気がつくことはありませんでしたが、夜見個人は最後まで尽くせて本望だったのではなかろうか、とは思うところです。(個人談)

刀使ノ巫女を知ってくださる方が増えていけばいいな、と思って書き始めた今作ですが、気がつけば20話を飛び越して更新を続けています。
アニメが終わって久しいですが、まだまだ刀使ノ巫女は終わらないぞ!と思いながら、つい筆が進みます。
今後は番外編等挟みつつ、イチャイチャにウェイトを置きながら執筆を続けていく所存です。

感想等ございましたら、感想欄・活動報告で対応させて頂きます。
次回から変則的な投稿になりますが、ご容赦ください。
それでは、また。
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