少し間が空きました。
今回は彼の舞草の人間としての変遷を追いつつ、色々と物事を振り返る話となります。
時系列はアニメ本編24話での可奈美と姫和の帰還後、四月下旬頃です。
本話の一部は、主人公編『舞草との出会い』などをなぞる部分もございます。なお、今話及び次話も共通ルートを想定して執筆しております。(恋愛面での交際無し)
それでは、どうぞ。
維新派との戦闘が繰り広げられ、世界そのものが存亡の危機に立たされた『年の瀬の大災厄』から、早くも四ヶ月が経とうとしていた。
隠世から無尽蔵に湧き続けてくる荒魂から、民間人や展開中だった自衛官らを避難させるべく、刀使達とともにその最前線に立ち続けた彼。絶体絶命の状況下でも、あの戦場から無事に帰還した。
全て元通りになるとは思っていなかったが、それでも前に進もうとする者達は、一歩ずつ着実に日々の職務へと向き合い続けていた。
ー刀剣類管理局 官舎内新自室ー
タギツヒメや維新派との最後の戦闘、ここではそれを『東京決戦』と書き表すが、彼はその際における作戦行動の功績を評価され、再び昇進の話が舞い込んできた。出世街道を自ら離れてもなお、またチャンスが巡ってくるようなことは、はっきり言ってかなり稀なことだ。一度ならず二度目のチャンスともなれば、普通の感覚でいけば迷いなく昇進を受け入れるだろう。
だが彼は前回同様、自分よりも他の優秀な人材へとその席を譲ることが組織運営に最善であることを、昇進辞退の理由として挙げてその話を蹴った。その代わりに、彼が昇進者の推薦選択を行うことに加えて、朱音や紗南、紫へとある条件を提示した。
その条件こそ、この官舎での新しい部屋だ。部屋数も増え、少し広くなったことで他の誰かを泊めるのにも苦慮せずにすむ。ただ少なくとも、現状では誰かしらと寝食を共にする機会も予定もないという。
可奈美と姫和が消息を絶って以降、明らかな無茶が祟って何度も倒れ続けていた彼のことを心配し、このまま過労死されても困るという朱音達首脳部の判断もあり、彼の要望はあっさり通ることとなったわけである。
そんな彼は今、湯呑に淹れた緑茶をこの新しい住居で満足げに飲み干していた。
「…ああ~、やっぱり地元のお茶は和むなあ。葉菜も一杯どうだ?」
「僕はいいよ、……と言いたいところだけれど、君の折角の厚意だし、もらっておこうかな。」
「そう言ってくれると思ってた。ちょっと待ってくれ。今、湯呑と急須を持ってくるから。」
現在彼の部屋には、同じ舞草の人間である
彼女は今、静岡の特祭隊病院にて治療を受けつつ、リハビリを続けている。今日は担当医師から外出許可をもらって、私服姿で彼の部屋を訪問していたのだ。折角の外出許可だったというのに、わざわざ自身の部屋に来るというのは、彼女も物好きなのか、あるいはこの部屋が本部敷地内にあるため、もしも彼女自身の体調が悪化した時に備えての保険だったのかまでは、彼も判断に困るところではあった。
「…それにしても、新しい部屋はだいぶ広くなった印象があるんだけれど、住み心地はどうなんだい?」
「上々、だな。まあ、昇進と労働条件がよっぽどいいとされている再配属先を蹴る以上、その代替案は出しておく必要があったからな。空き部屋があって幸いだった。」
「…こうして聞くのは失礼だと思っているんだけれど、昇進を蹴ったのは、その、……僕達の件があったからなのかい?」
「確かにそれもあるが、一番の理由は提示された新しい場所だと、今みたくのびのびと仕事ができない可能性が高くてなあ。過労で止められることもあるが、今の職場が一番自分の性に合っているような気がして、な。それに、葉菜達を含めた綾小路の人間のことを放っておくことは、俺の性格的にはできなかったし。最後の一人が回復するまでは、やることをやり遂げるつもりだったからな。」
「……そっか。」
「んで、葉菜。身体のほうはどうだ?やっぱり、まだ軋むか?」
「軋みそのものはなくなってきているよ。ただ、取り込まれたノロの分離は、やはりそう簡単にはいかないみたいでね。身体的な調子は入院し始めた頃よりもだいぶ良くなったけれど、時々、喉が渇いたような感覚に襲われるよ。あと、身体のだるさもね。まだまだ、本調子とはいかないようだ。」
「…真希達と同じ症状か。……あとは、精神的な方の問題か。」
「……そう、だね。由依は僕のことを時々気に掛けて、病室まで来てくれるよ。……でも、僕は調査隊の皆に御刀を向けた。実際に殺そうとまでした。幾ら洗脳状態にあったからって、そんなのは理由にならない。…こんな僕に、皆のもとへ戻る資格なんて…。……あるわけがない。」
ノロを使用した際の反動は、未だに彼女を悩まし続けている。体内のノロとの完全分離ができるのには、途方もない時間が掛かることも遠因としてあるだろう。
(まだ、気持ちの整理はつかないよな。……無理もないか。いい加減な俺と違って、葉菜は生真面目だから。)
「…葉菜、俺が葉菜自身の気持ちにあれこれ口出しすることはできないが、時間はじっくりある。自分で納得するまで考え続けることもまた、一つの答えだ。それまではきっと、調査隊の皆も待ってくれるだろうよ。身体も心も万全になった、そう思った時に踏み出せばいい。」
「…ありがとう。」
俯きながらも、葉菜はお礼の言葉をこぼす。彼は、きっと彼女なら再び立ち上がれることができるだろう、と信じている。
ピーンポーン
突如、呼び鈴とともにインターホンが鳴る。
「誰だ?一体。」
「…御刀は抜いたほうがいいかい?」
「……ん?―いや、大丈夫だ。葉菜はそこで座って待っていてくれ。」
「あっ、うん。分かったよ。」
「…おかしいな。俺まだ、極限られた人間にしか部屋が変わったことを伝えてないんだが。」
そう思いながらも、彼は玄関前にいる人物へ挨拶をしようと考えた。
「やー、やっぱりお前は話が分かる人間だなあ。匿ってくれるたあ、本当に気が利いているぜ。」
「はあ…。まーた、本部長に怒られそうだな。俺も含めて。……その無言の圧力は止めてください、益子さん。」
「―!!益子さん!」
「おっ、葉菜じゃねえか。元気にしてるか?」
「ねえっ!」
彼が玄関から戻ってくると、薫とねねを連れて戻ってきた。どうやら、また任務拒否でもしたのか、ここへと逃げ込んできたようだ。
「ねねっ!」
「ねねも、元気そうだね。…まあ、近寄ってはもらえないだろうけれど。」
「…あー、葉菜の言っている意味が分かった。」
ねねは、ノロを取り込んでいた人間に対しての拒否反応を示すことがある*1。葉菜もまた、その側の人間に入るため、ねねが近寄ってこないと思ったのである。体内のノロの分離ができていない以上、これは仕方がないのだが。
「っと、よっこいせ。○○(彼の苗字)ー、《祢々切丸》はここに置かさせてもらうぞー。」
「フローリングを傷つけなければいいぞ。」
「へいへーい。…んじゃ、座るとするか。」
そう言って、敷かれていた座布団の上に胡坐をかいて座る。ちなみに葉菜も座布団に座っているが、彼女は正座の姿勢だ。
「薫の分も何か準備するから、少し待っていてくれ。」
「悪いな、助かる。」
彼はキッチンに入り、少しガサゴソと茶請けを探しているようだった。
「しかし、久しぶりだな。葉菜とこうして話すのは。」
「僕もですよ、益子さん。……去年は、多大なご迷惑をおかけしました。ごめんなさい。」
「いいって、いいって。少なくとも生きて帰ってこれたんだから、お前が謝る必要はねえよ。…美炎たちからも話は聞いてる。とんだ災難だったな。」
「…そう言ってくださるだけ、僕にとってはありがたい限りですよ。」
「…とはいえ、やっぱりお前も真面目だなぁ。半年前の沙耶香を見ている気分だぜ。」
「まあ、僕の取り柄って真面目さくらいしかありませんから。」
「どうだかなあ。舞草の諜報員として、かなりバリバリ活躍していた記憶があるんだが。」
「あくまでそれは、去年までの話です。今は…。」
「…今は、舞草が堂々と活動できるようになったんだ。ゆっくり休んで、また動けるようになったら活動に加わってくれりゃあいいさ。今の局長も本部長も、そううるさくは言わないだろうしな。」
「……の割には、えらく反抗的だけどな。薫は。」
「何をぅ―って、お前かよ。」
「ほい、羊羹と水まんじゅう。あと薫の分の湯呑だ。葉菜も食べてくれ。」
「では、お言葉に甘えて。」
彼も座布団に座り、テーブルに置いた茶菓子や湯呑に手をつけていく。彼の座った場所は、配置的には向かい合わせの葉菜と薫の間に座るような形だ。ちなみに、ねねはテーブル上でごろんと寝転んでいる。
「そういえば○○、お前も確か、元々は諜報員じゃなかったか?」
「今は他の奴に引き継いでもらったさ。現状は単なる一構成員に過ぎないぞ、俺は。」
「…そうは言うけど、フリードマン博士や朱音様に近い舞草の人間って、あまり多くはない気がするんだけれど。まして、数多くの刀使との関わりまであるとなれば、ね。」
「それこそ、それはたまたまに過ぎないと思うぞ。別に俺がいなくともどうにでもなっただろうし。」
「どうだかなあ。…葉菜、お前はコイツのことを日頃どう思う?」
「えっ、僕ですか!?」
まさか、彼の存在意義に対しての質問を振られるとは思っていなかった彼女。
「…う~ん、確かに『舞草の人間』としては微妙な位置だったかもしれませんが、僕たち『刀使全体に関わる人間』という意味でなら、欠かすことは出来ない存在だと今でも思っていますよ。…勿論、僕個人の意見ではありますが。」
「…だとよ。○○。」
「そうか。…俺個人はそんなことはないし、そんな影響を及ぼすような力も無いと思ってはいるんだがなあ…。」
「そうそう、今の益子さんのお話しで疑問に思ったんですが、○○さんって、舞草で一体何やられていたんですか?諜報とは聞いていますけれど、どうもそれだけじゃなさそうなので気になって。」
「あー、まあいいか。過ぎたことだし、この場には舞草の人間しかいないから、話しても問題は無えな。」
「おうおう、聞かせてくれや。○○さんよ。」
「若干悪巧みしそうな表情で、喜々として聞こうとするの怖いんだが。薫。…ま、だったら舞草に入って以降の話をしていくか。」
こうして、彼は二人に、舞草で何をやってきていたのかを話し始めた。
ちなみに、葉菜は送りたい先があると言って、ボイスレコーダーを取り出した。話すうえで特に疚しいことも無かったため、彼もこの録音を許し、自身の過去を振り返っていった。
「まず、全ての始まりは俺が美濃関に入ったその日のことだ。」
「あ、早くね?…もうそん時から、あの爺さんに目を付けられてたのか。」
「まあな。放送で羽島学長からの呼び出しを受けた俺は、その日のうちに退学を勧告されたものとばかり思ってな。恐る恐る学長室に向かったんだ。勿論、羽島学長は俺の怯えた表情に対して、目が点になっていたけれどな。」
「…あの羽島学長が、ねえ。」
「言っておくが、その時の羽島学長は何も悪くないからな。本部に移って以降も、美濃関に寄った時とかは俺の相談事にも乗ってくれるし。生徒から好かれるいい学長だと思うぞ。ホント。」
「…僕のところの相楽学長も、多分羽島学長と人柄は同じだろうね。療養の時には、直接謝罪に来てくれたから。」
「……なんか、お前たちの学長が羨ましく思えてくるぞ。なんでオレは、必死に働いているのに休みすら貰えねえんだよ…。」
「まあ、少なくとも俺の部屋に逃げ込んでいる時点で、そりゃそうだろとしか。むしろ本部長、薫のことはだいぶ贔屓にしているように思えるんだがなあ。」
「まさかぁ…。」
「人伝に話を聞く限りでは、僕もそう思うけれどな。その証拠に本部長は、益子さんに無理難題は押し付けていないんじゃないかな?」
「…本当か、それ?」
「まあ、その辺の話は一旦置いておくとしよう。話を戻して、この時羽島学長からは舞草への参加を促されたわけだ。」
舞草への参加という意味では、この頃がそのきっかけになっている。
「二人がどのタイミングで舞草に入ったかまでは俺も詳しく知らないんだが、少なくとも俺はこの時の話は保留したんだ。」
「保留?一体なぜなんだい?」
「羽島学長から告げられた話が本当なのかを、自分なりに確かめようと思ってな。それに当時、刀使や荒魂の関係性だけでなく、歴史そのもののバックボーンが全く掴めていなかった事情もあったんだ。」
「あー、確かにそれは痛いな。オレは婆ちゃんやおっかあから散々聞かされてきたこともあって、特に大まかな歴史には何の疑問も持っていなかったからな。…んで、どうしたんだ、お前は?」
「全部調べた。」
「……ん?」
「全部って、具体的には?」
「刀使と御刀の関係、荒魂とノロの関連性、そして『相模湾岸大災厄』までの歴史。特に、あの大災厄はかなり慎重に調べたな。新聞記事や書籍、学術論文から写真集、更には公文書に至るまで。」
「……お前、この当時から何でもかんでも調べまくってたのか。どおりで、早くからオレ達の話に違和感なくついて来られたわけだ。」
「…その勤勉さのおかげで、助かった人間も大勢居ますけれどね。」
「結論から言えば、『舞草という組織は信頼に足る情報を持っている』、ということが把握できたからな。舞草に参加することを決めたのは、その調べが終わってからのことだ。」
彼はそう言い終えると、湯呑みを口に近づけ茶を飲む。
そこから先は、江麻の紹介で長船で紗南とフリードマンに接触した後、加入試験をぶっつけ本番でやらされることになった。
「散々なもんだったなあ…。拳銃を渡されて撃って見ろと言われるわ、いきなり筆記試験を受けさせられるわ…。試験に合格したと思ったら、舞草のブレーンにやたら管理局本部に来るよう勧誘されるとか、今考えても本当に訳の分からない流れだったなぁ…。」
しみじみとそんなことを思い出す彼。
「オレはエレンの誘いに乗っただけだが…、お前はお前で、出だしは難儀なもんだったんだな。」
「…でも、僕の記憶が確かなら、君が本部に来たのはまだ少し後だったような気がするんだけど、そこはどうなんだい?」
「その通りだ、葉菜。まあ、本部に飛ばされるたった数ヶ月のうちに、中学二年生までの学習指導要領範囲の完全な履修と、荒魂と刀使との基本的な関係性や法令等々色んな知識や基礎学力を勉強する羽目になったけれどな。…ま、吐きそうにはなったがあの時に頑張ったからこそ、今はだいぶ楽になっているしな。」
「…つっても、お前は一般人なんだから、今は任務の合間に勉強とかやらなくて済むだろうに。」
「まあな。とはいえ、俺もその方針が確定して以降は妥協無しで色々学びまくったからなぁ…。流石にエレンや由依のように、何か秀でた分野があるわけではないが。あっても精々、社会科分野が強いってことくらいだ。」
「つまり、記憶力はいい方ってことなんですか?」
「ああ…、良くも悪くもそのおかげでどうにかやってこれたからな。…単に運もあったのかもしれないが。」
運がいいで片付けられるならいいが、それだけでは説明できないことも多い。
特に、あの大惨事に遭遇した時はそうだった。
「んで、美濃関から本部に移って以降は?」
「本部に移ってからは事務作業を手伝いつつ、現場をもっと知りたいのもあって前線派遣を要請していたんだよ。……『あれ』に遭遇したのは、この頃だったな。」
「あれって…、『秩父会戦』のことか?」
「ああ。薫も葉菜も知っているだろうが、あの時に俺は、刀使と生存して動けそうな特祭隊員を率いて対処にあたったわけだが…。…結果はまあ、周知のとおりだ。」
「…今でも思いますけど、よくあんな無茶な作戦を押し通しましたね。しかも、当時は中等部一年だったわけじゃないですか。」
「単純に時間が無かったって話しなだけさ。荒魂を放置していたらしていたで、被害は雪だるま式に膨れ上がる。無論、圧倒的に数的優位な状況で討伐したほうがいいのは、言うまでもないことだけどな。」
「オレなら、一度撤退を進言するような状況だけどな。…よく、あの場の特祭隊員が反対しなかったもんだ。」
「同僚や仲間をやられたことで、むしろ士気は上がったさ。犠牲を出しているのにも関わらず、皮肉なもんだが。…俺自身を囮にするって言った時には、流石に皆反対したさ。指揮官が率先して前線に出たら、誰が指揮を執るんだってな。」
「いや、それは皆さんそう言いますって。…ただ、君は結局、前線に飛び出ていったんじゃないかな。以前戦闘記録を見直した時に知ったけれど、確か負傷したよね。」
「瓦礫に埋もれて、一月昏睡状態だったがな。その時にはホント、出会いたてだった彩矢*2に、かなりの迷惑と心配を掛けたもんだ…。未だに任務とかあれば心配のメールとかもくれるし。個人的に、親友と言って差し支えないくらいの仲だな。……思えば、この頃から刀使との関わりが増えてきてたな。」
「心配を掛けさせるのは、今も昔も変わらず、ってことだな。」
「ねえっ!」
薫とねねの気持ちは同じようなものであった。
「小池さん本人からも聞いた*3けれど、あまり彼女の気を揉むようなことは止めた方がいいんじゃないかな?僕はそう思うけれど。」
「…まあ、そう言われると返す言葉もないんだがな。」
葉菜に痛いところを突かれる彼。最も、自覚はしていても時々回避不能な案件にぶつかることもあるので、悩ましいところではあるのだが。
「で、それ以降、特祭隊員と刀使が任務から無事に帰って来られるようにはどうするべきか、そう考えて陸自や空自、海保とかに短期出向という形で色々と勉強しに行ったんだ。…あんなことはもう、二度も経験したくはなかったからな。」
「それは、舞草じゃなく、君自身の意思でかい?」
「ああ。誰かを守るにしても、俺はあまりにも弱かったからな。全ての面で。」
「……別に、お前が完璧超人である必要もねえだろ?それだと、何のための組織なのか分からなくなるじゃねえか。」
「薫の言葉も一理ある。が、俺はどうも加減を分かっていない人間のようでな。やれる範囲はとことんやろうって考えたわけだ。…で、その結果が今に至るってことだ。」
「舞草での活動は、その頃どうしていたんだい?」
「一旦休んだ後、戻ってきた時に再開したな。出向のおかげであちこちに地縁もできたし、情報を仕入れることはだいぶやりやすくなったさ。今試作とかをしている装備のヒントも得られたし。」
「君にとってそれは、意味のある行動だったと思っているのかい?」
「ああ。…遠巻きにだが、葉菜たちを救う事にも繋がったからな。キツかったが後悔はない。」
「…清々しいくらいの笑顔だな、お前。まあ、色々と助けられていることもまた、ホントのことだしな。」
「ねぇっ。」
うんうんと頷くねね。
「で、出向から戻った時に、当時の紫様から新設部署の責任者として着任するように頼まれたわけだ。…まあ、面倒事を避けたくて最初は粘ったんだがな…。それが今いる部署の始まりだ。」
「お前のところの人間って、確か普段はお前を入れて四人、それ以外に補佐的な人間が何人かいるって聞いたことがあるんだが…?」
「ああ。常駐部隊と、実働部隊だ。そのうち、同じ舞草の糸崎と、平城から本部に引っこ抜かれてきた中島が、最初の常駐部隊のメンバーとして着任した。…ただ刀使だった中島には、しばらくの間悪いことをしたと未だに思うぞ。書類仕事とかの裏方ばっかで、常に前線に立てたわけじゃなかったし。姫和や可奈美達が紫様とやり合うことになるまでは、応援で討伐にあたるくらいだったからなぁ…。」
後で彼女が自身の親友の親友であったことを知って、お詫びするしかなかった彼。舞草とは別として、一緒に活動してきたなかで迷惑を掛けた人物の一人である。
「…中島さん、それでよく文句を言わなかったね。」
「言うには言っていたさ。ただ、派遣された時の戦闘への参加は許可しまくったから、そこまで憎まれるようなほどのことにはならなかったな。……それに、彩矢の親友と分かって以降、余計に申し訳なくなってなぁ…。今は刀使としての任務ができるよう、色々と手回しすることが多いな。主に三原と組ませているけど。」
「そんな繋がりが…。いや、僕も驚きです。清香も小池さんと知り合いだったはずだから、あの人がそれだけ多くの人と関わりを持っていることに凄さを感じますよ。」
「まあ、彩矢って人に好かれやすい娘だしな。…それだけに、半ば騙すような時期が続いたのが心苦しかったが。」
そう言って、彼はまた湯呑みの緑茶を啜る。
話はまだまだ深まりそうだ。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
次回は後編になります。
これが終われば、いよいよ可奈美編に戻ります。
それでは、また。