刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は番外編の閑話編をお送り致します。
主人公は登場しませんが、その代わり同僚の刀使とその友人(とじともサポメン)の話になります。
時系列上では紫編『最強刀使の愚痴』の少し後、御前試合前の頃になります。

それでは、どうぞ。


ガールズトーク

 ー奈良県奈良市 某喫茶店ー

 

 平城学館にほど近いこの店。ここには非番の刀使や平城の生徒が来店することも多く、一種のホットスポットになっていた。

 

 そこに、鎌府女学院の制服に身を包んだ黒髪の刀使が入店する。現在は本部に勤める里奈だ。

 今日は休暇をもらって、久しぶりに奈良に戻ってきていた。この店で先に待っているであろう友人を探す。

 

「彩矢が言っていた店って、ココよね…?」

「里奈~。ここココ。」

「あっ、居た。」

 座って手を振る彼女に気がついた里奈は、二人席の通路側に腰掛ける。彩矢の座る席はソファータイプの長椅子だ。

「久しぶりね。元気にしてた?」

「私は平気。そういう里奈はどうなの?」

「まあ、倒れない程度には。」

「そっか。あっ、先に何か頼もうか。」

「そうねぇ…。じゃ、これにしようかしら。」

「決まったみたいだね。すみませ~ん!」

 店員を呼び、二人は注文を告げる。

「出来上がるまで、お待ちください。」

「「ありがとうございます。」」

 

 

 注文が終わり、水を口に含む里奈。そのまま、彩矢との会話に移る。

「しかし、警邏課でのんびりやっているとは聞いていたけれど、もう今年はインターンとはねぇ。どこに行くとかは決めたの?」

「どこの都道府県警でもいいようにはしているんだけどね。今のところは関東の方、かな。」

「そしたら、向こうでまた会えそうね。」

「そうだね。もし採用が決まったら、刀使やってた時以上に頑張りたいな。」

「でもさ、彩矢。今更だけど、別に御刀を返納することは無かったんじゃないの?もしかしたら、余所の伍箇伝の学校には適合する御刀だってあったかもしれないのに。」

「いいの。刀使の仕事が嫌になったとか、そういうのじゃなくて、私以上に力のある人が振るえるなら、その方がいいかな、なんてね?…今でも、自分が使っていた御刀を使っている娘のことを気にかけちゃうことはあるけれど。」

「そう…。」

 刀使であった彩矢は、未だに御刀自体を持つこと*1も可能だったのだが、その性能をフルで扱うことの出来るものは、平城在学中無かった。

 里奈がそれを他人事と思えなかったのは、ある意味当然の話であった。

「でも、後悔はしてないよ。今は、後ろから支えることも大切だってことを理解出来ているし。」

「なら、いいのだけれど…。」

 丁度会話が途切れたタイミングで料理と飲み物が運ばれてくる。二人は一度食事に徹することになった。

 

 

 

 

 食事を終え、ジュースを口に含む二人。

 ここで話は、本部でのことに移る。

「私の方が年下なのに、こうしてタメ口でも聞いてくれるのは彩矢くらいなものよ。…あっ、一人居た。年下だけど。」

「…彼のこと?」

「まあ、ね。…彩矢は、まだアイツのことを諦めてないの?」

「色々あったからね。…まさか現役の時は、守る側から守られる側になるとは思ってもなかったけれどね。」

「そーよね。…最もアイツ、未だに彩矢の好意に全然気づいてないみたいだけど。」

「…ウソッ!里奈、それ本当!?」

「落ち着いて…、取り敢えずジュース飲んで。」

 ジュースを口に含み、落ち着きを取り戻す彩矢。

「…は~っ。ごめんね。」

「いや、大丈夫。…アレは鈍いというのか、頑固というのか…。正直、大胆な告白でも振り向くかも怪しいわ。」

「えっ、本部の任務であちこち色んな女の子と一緒になってたりするのに?」

「アイツの至近距離で一緒に仕事している私が言うんだから、まあ、そうよね…。」

 苦笑する里奈。

「ちなみに、里奈はどうなの?」

「私?…異性としては嫌いじゃないんだけどねぇ。アイツ、仕事人間だから。仕事の同僚としては、この上なくいい奴よ。…色々ズレてる気もするけど。」

「…ちなみに、里奈は彼氏出来た?」

「…男縁、全く恵まれないこの身の上よ。」

「大丈夫。いつか、貴女の魅力に気付く男子は出てくるはずだよ。」

「本当かなぁ~。だといいけれど…。」

 

 ちなみに、彼自身の評価としては里奈を魅力的な女性だと思っているものの、それはそれとして、彼女の恋路は支援に回るという厄介な方向に転がっていたりするのだが、彼女にはそのことを知る由はなかった。

 

「彩矢自身は、アイツのことをどう思っているの?」

「…う~ん。なんだか惹かれちゃったというのが、正直なところかな。」

「秩父での話*2は私も知ってるけど、あの時って確か彩矢がアイツを守ってたんじゃなかったっけ?」

「…最後までは守りきれなかったけれどね。あの時、自分と刺し違えるつもりで、私を送り出して荒魂に発砲し続けたのかもしれないけれど。」

「結果オーライ…、ではなかったわね。ある意味、あの出来事に囚われ過ぎてる気がしないでもないのよねぇ…。」

「確かに、そうかもしれないね。…里奈、私の目は本部まで届かないけれど、彼が死に急ぎそうな時は私の代わりに止めてね。」

「…まあ、アイツが思っている以上に、刀使達への存在感が大きいのは確かだろうしね…。約束は守るわよ。」

「ありがとう。」

 その時が来るかは分からないが、友人と約束を結ぶ里奈。

 

「…まあ、惹かれた理由はそれだけじゃないんだけどね。…結構、助けてもらったし。」

「彩矢、多分アイツはいつも助けてばっかだし、それを仕事だ当然だと考えているみたいだから、それが理由でも気付かないかも。」

「…一体、向こうで何が起きてるのよ…。関東、コワイ。」

「もういっそのこと、既成事実でも作っちゃえば?私以上に男受けするそのスタイルなら。」

「…う~ん。絶対に阻止すると思うんだよね。しかも彼のことだから、それをするとより距離を置いちゃうと思うんだ。」

「……彩矢、よくアイツを分かってらっしゃる。」

「伊達に一、二年も、通話しながら特祭隊のことを彼に教えつつ、意見を交換し合ったのは私だからね…。」

「そうねえ…。もういっそ、適当な理由を付けて二人で旅行にでも行ってみるのは?そこまで薄情な奴でもないでしょ?」

「旅行か…。彼と二人っきりで…。」

 

 良い案だと思えた彩矢だったが、彼のことを考えた場合、幾つか壁があることに気付く。

「…いや、よく考えると、彼のことだから別々に部屋取りそうな気がするんだけれど…。」

「大丈夫でしょ。ウチのところの糸崎・三原(カップル)に任せなきゃ、ホテルとかの予約は大丈夫だと思っている節がアイツにはあるし。行く時は私に頼めば心配ないわよ。」

「そ、その時はお願いするね。」

 恋路を支援してもらえるのはありがたいが、まさかそこまでするのかと、友人に対してそう思った彩矢だった。

 

 

 

 

 ふと里奈は、平城の生徒達がこちらをチラチラと見てくるのが気になった。

「な~んか、目立つよね。私。」

「まあ、鎌府の人が来ること自体が少ないからね。何も制服で来る必要は無かったんじゃない?」

「そうなんだけどね。制服でこっちに帰ってくることもないから、偶にはいっか、とね。それに、彩矢にこの姿を見せられる機会はそう多くないから。」

 チラチラ見てくる平城の生徒に、にこやかに笑いかけながら手を振る里奈。

「在籍していたとはいえ、今は他人扱いというのもなんか寂しいわね。」

「本部に行ったこと、後悔してる?」

「まさか。…でもあの時、彩矢も一緒に連れて行けたら良かったな…。私以上に実力があったのに。」

「でも、私はこれで良かったと思っているよ。里奈を正当に評価してくれる人がいて、今じゃ本部で彼と共に戦場を駆け抜けているし。彼のことの土産話もしてくれているから。」

「そういや、アイツと連絡は取ってるの?」

「たまにね。最も、プライベートで話すよりも仕事絡みで相談を寄せてくることの方が多いけれどね。…仕事熱心なのはいいけれど、無茶はしてほしくないな…。」

 想い人の心配をする彩矢。だが、それは次の里奈の発言で一層の不安材料を孕むことになる。

 

「…彩矢、知ってたら悪いんだけど、アイツ、年一回か二回は過労で数日休むことがあるのよ。最近はそこまでだけど。」

「……えっ。………ええ~っ!!」

 目の色を白黒させる彩矢。思わず机に両手をついて、里奈の眼前に迫った。

「彩矢、近いから。はい、アイスティー。」

「ご、ごめん。」

 ジュースが飲み終わったこともあり、ついさっき頼んでいたアイスミルクティーを冷却材のように口に入れる。

「…んっ。さっきからごめんね。…里奈と彼、一緒の部隊じゃないの?」

「本部内でも、ウチの部署は変わっているからね…。書類仕事と荒魂対処のウェイトが同等だし、加えてアイツ自身が刀使じゃない特祭隊員向けの試作装備をちょこちょこ扱うもんだから、色々とカオスなことになっているのは確かね。」

「…つまり、それに比例して仕事量が多くなりがち、ってこと?」

「半分正解、かな。…ほら、彩矢もアイツの性格を知っているでしょ?超が付く程の他人優先、お人好しぶりを。」

「…まさか。」

「…そのまさかよ。困っている他人の仕事も引き受けていったら、たまに自分の処理能力と許容限界見誤って、それが蓄積されていった結果がさっきまでの話に繋がるというわけ。」

「大丈夫、なの?」

「アイツの言い草じゃ、『後方支援しかできない俺は、死に直結する中島(とじ)達の諸々の負担を減らすことでしか、何もしてやれることがない。なら、俺は無茶してでも頑張り抜く。』と、文字通り精神力だけでやり抜くことも多いわよ。…他人は休ませる癖して、自分の身を大事に出来ないんじゃ本末転倒よ。全く。」

 はぁ、と溜息をつくと手元のコーヒーを口に寄せる里奈。

「無論、その無茶のおかげで助けられたこともあるから、一概に止めろとは言えないのよね。…先日も荒魂討伐に必要な物資を夜通し確認してたらしくて、医療キットとかの物資不足に気付いたのよね。で、いざ戦闘となったら想像以上に難敵だったみたいで、民間人や刀使達の治療に使う医療キットの数も結構ギリギリだったのよ。当初の数だったら、死人がもっと出てた。」

「…里奈は、その荒魂討伐の現場に居たの?」

「応援で呼ばれてね。無論、アイツも。…全員怪我しても、皆無事に帰ってこれたのが奇跡みたいなものよ。」

 その時のことを少し述懐する彼女。

 

 

 

 

「鎌府にも凄腕の刀使は居るんだけどね。その娘達でも時間が掛かるくらい、あの時は大変だった。」

「…その言い方だと、荒魂は一体だけだったんだね?」

「まあね。…ともかくサイズがバカでかいもんだから、被害の比もそれ相応だったってこと。」

「ちなみに里奈。彼はまた、秩父でやったようなことはしてないよね…?」

「…確か、特祭隊の銃火器部隊の指揮を現地本部でやっていた気が…。…彩矢の思うような無茶はしてないわよ。」

「そっか。」

 あの時のようなことを再び目にするのは、彩矢とてもう嫌であった。

「…でもまあ、秩父での一件を私らに語ることはほぼ無いのよね。アイツ。あの戦闘の評価は、管理局内でも結構高いんだけどねぇ。…少なくとも、特祭隊内でも話題になるくらいには。」

「彼にとっても、色々なものを失くした戦いだったしね…。生まれて初めて、人の命を預かる判断を急に迫られたし、それは精神的にかなり負荷が掛かったのは自然なことだと、私はそう思うよ。…まして、彼は一般人だよ。」

 彩矢自身も里奈には細かく話してはいないが、その時の彼の動揺と判断を直に目にし、その時の会話も未だに憶えていた。彼女もまた、当事者であったと共に目撃者でもあったわけである。

 

 

 ふっと顔の表情を切り替え、真剣な眼差しで彩矢を見つめる里奈。

「ねえ、彩矢。もし、アイツがその時とまた同じ状況に追いやられた時、似たことを繰り返すと思う?」

「…う~ん。」

 こちらも真剣に考える彩矢。

「……正直、私にも分からないかも。でも、一つ言えることは、彼は死地から絶対に皆を助け出すってことかな。」

「…まあ、私と同じ結論みたいね。」

「今度彼と会った時に、今日出てきたこととか色々と話をぶつけてみるね。…脈、あるといいな。」

「彩矢、むしろそれは早くやるべきね。…まだ、チャンスはあるはずだから大丈夫でしょ。…多分。」

 自信なく返す里奈。なお、彼と彩矢との再会が実現するのはこれより少し後のことになるのだが、ここでは省かせてもらう。

 

 

 

 

 会計を済ませて退店後、里奈はこのまま県内の実家に寄るため、彩矢との別れの時がやってくる。

「今日は彩矢と色々話せてよかった。あ、これ酢昆布。」

 彩矢がハマった酢昆布。里奈のカバンから、小箱の大量に入った大きめの箱が彼女に手渡される。

「カートンって…。でも、ありがとう。今度、何かお返しするよ。」

「じゃ、アイツとの仲が進展した時に惚気話でも聞かせてよ。それで目を瞑るから。」

「…うん。頑張ってみる。」

「じゃ、また。」

「本部でも、頑張ってね。」

 互いにハイタッチを交わし、里奈は彩矢のもとを後にする。

 

 

「…それにしても、まさかチョコ贈ったのに気づかれていないとはね…。ちょっとショックだったな…。」

 里奈が去ったあと、バレンタインデーに思いの丈を込めたつもりの贈ったチョコが、彼には全くそれが伝わっていなかったという事実に衝撃を受けた彼女。

「次会った時に、ちょっと意地悪でもしてみようかな?」

 そんなことを考える彩矢であった。

*1
当然ながら写シを張ることが可能。

*2
詳しくは番外編の主人公編『死線を越えて』前後編参照。




ご拝読頂きありがとうございました。

閑話編は基本的にオリキャラの視点からの話となります。
とじとものサポートメンバーも話に絡ませられたらなあ、とも思いつつ執筆していきます。

もう数話ほど番外編を挟みまして、真希編に戻ります。
感想等ございましたら、感想欄・活動報告にて対応させていただきます。

それでは、また。
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