刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

ホラーテイストな回が続きますが、本話は彼の失踪が発覚してからの経過話となります。
今話はちょっと短めになります。

それでは、どうぞ。


③ Silent Abduction 前編その2

 ー刀剣類管理局本部 彼の部署ー

 

 そして、彼が羽田空港での用事を済ませるために職場を発ってから、二時間ほど経過した時だった。

 

 

 ピコン

 

 

「…あれ?四条さんからメールが届きました。」

 

 たまたまメールの受信画面を開いていた姫乃が、そのメールを開いた。…このメールこそ、千里が襲われる直前に送信されたものだった。

 

「………うそ、これは…。糸崎さん、里奈さん!ちょっと来てください!」

「どうかしたのか、水沢?」

「急に声を荒げて、どうしたの?」

「そっ、それどころじゃありません!これを見てください!」

 

 姫乃の並々ならぬ動揺ぶりに異変を感じ、二人は彼女が指し示していたパソコン画面を見る。

 

 

 

 

『◯◯××様 及びその同僚の方々へ

 

 日頃はお世話になっております。綾小路の四条です。こうしてメールを送らせていただいたのには訳がありまして、◯◯さんの身に危険が迫っていることをお伝えしたく行動させて頂きました。

 実は、ある生徒が◯◯さんに対して危害を加えるのではないかと危惧しています。本当ならば実名を挙げてお知らせしたいところですが、当人が行動に移していない以上、注意喚起でしか対応ができません。申し訳ありません。

 もし、◯◯さんの身に何かありましたら、このメールが送られていたことを覚えておいてください。現時点で役に立てず、申し訳ありません。

 

綾小路武芸学舎 高等部一年 四条千里』

 

 

 

 

 直ちに内容を確認した三人は、千里の携帯へ複数回連絡を入れる。しかし、彼女のもとに繋がることは無かった。

 

「…里奈さん、誰かもう一人を連れて四条さんの部屋を確認しに行って貰えませんか?―今日は四条さんは非番ですので、もしかしたら学生寮にいらっしゃるかもしれませんから。」

「え、私?構わないけれど。」

「…万が一のことですけれど、戦闘が起き得るかもしれませんので。四条さんの状況が分からない以上は尚更です。」

「わ、分かったわ姫乃。糸崎、三原さん借りるけどいいかしら。」

「あー、うん。何か言われるようなことがあったら、俺が後で何か言っておく。」

「お願いね。」

 

 こういう時には動きが早い三人。これも、彼が三人へと求め磨き上げてきた、危機管理時におけるスピード対応だった。

 実は姫乃の中では、千里のメールから事態が一つ先に進んでいるのではないか、という危機感が生まれていた。しかしそれは、まさかとは思うが彼の方も同じではないのか、そう考えた彼女はある人に連絡を入れる。

 

 

 

 

「もしもし。お久しぶりです、恩田さん。」

『あら、姫乃ちゃん?久しぶり~。元気にしてた~?』

 

 彼女が繋いだ先は、彼が迎えに行くであろう舞草のスゴイ人こと、累であった。

 

「はい。恩田さんのおかげで、今では舞草の情報網がだいぶ役立っていますから。」

『そうなんだ。…そうそう、私に電話を寄越したのって何か困り事でもあったの?』

「実は二時間ほど前に、◯◯さんが恩田さんを迎えに羽田空港へと向かったはずなんですが、◯◯さんはまだいらしていませんか?」

『◯◯君?…変ね。彼、迎えに来る時は出発するタイミングで必ず私の方に連絡を入れるんだけれど、今日はまだ連絡が来てないのよ。』

「―!?恩田さん、申し訳ありませんが刀剣類管理局の羽田空港事務所へ向かってもらえますか?もしかしたら、ヘリが必要になるかもしれませんので。」

『えっ、ああうん。分かった。真庭本部長に後で繋いでもらえるかな?』

「私の方から言っておきます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」

『オッケー。じゃあ、また後でねえ。』

「はい。それでは。」

 

 聞くべきことを聞いた後、即座に通話を切る彼女。この瞬間、彼が既に何らかの事態に巻き込まれた可能性があると悟った。

 

 

 

 

「糸崎さん、○○さんの携帯に連絡を入れてもらえませんか?」

「俺がか?別に構わないが。」

「お願いします。なるべく早く。」

「ん?あっ、ああ。」

 

 普段の彼女とは異なる気圧された声に少し驚きながら、誠司は彼の番号に連絡を入れる。…しかし、基地局から先が繋がらない。普段なら一分以内に出るのだが。まして、出られない時は何かしらメッセージを送ってくる。だが、幾ら待っても彼からの返事は無かった。

 

「…水沢、○○が出ないぞ。」

「…糸崎さん、麻美さんに繋いでもらえますか。確か今日は、美濃関から鎌府へといらしていたはずですから。」

「分かった。」

 

 続けて、彼の妹である麻美に連絡を行う。その間、姫乃は彼の携帯とスペクトラムファインダーのGPS信号を辿ろうとしていた。

 

「出てくれよ…。」

『はい、もしもし。』

「麻美ちゃんか?○○の同僚の糸崎だ。」

『どうも、いつも兄がお世話になっています。…以前はありがとうございました*1。』

「ああ、それは気にしないでくれ。…それと、今からウチの部署のほうに来れるかい?」

『はい。大丈夫ですよ。…何か、ありましたか?』

「いや、ちょっとな。君のお兄さんがトラブルに巻き込まれたみたいでね。情報を開示しておきたい。来れるかな?」

『ええっ、分かりました。そちらに向かいます。』

「んじゃ、後でなぁ。」

 

 麻美との連絡を切った誠司。

 

「そんなっ!?…ありえない。」

「どうした、水沢。」

 

 声を荒げた姫乃のもとに近づくと、青ざめた表情を見せる彼女を視界に捉える。

 

「……◯◯さんの携帯とスペクトラムファインダー、どちらも探知できません。そんな、ついさっきまではきちんと追えていたはずなのに…。」

「落ち着け、水沢。追えないってどういうことだよ。」

「◯◯さんが出発する前までに、普段使われている携帯とスペクトラムファインダーのGPSの設定をONに切り替えておいたんです。…なのに、なのに探知不能って…。」

 

 誠司も確認するが、彼女が扱っていたデスクトップの画面には、確かに『探知不能(No detection)』の表示が浮かんでいた。『困難』ではなく『不能』というのが、より深刻な状況であることを非情にも示していた。

 

「……◯◯。一体どこに消えちまったんだ…。」

 

 その後、彼の部署に入った連絡によると、彼が本来累を迎えに行くはずだった車が、運転席側のドアを開けた状態のままで見つかったという。彼が理由もなく、誰にも告げずにどこかへ行くということは、彼を知る者としても客観的事実からしても考えにくかった。

 状況証拠と併せて姫乃は、いよいよ彼が何らかの事件に巻き込まれたのだと、そう確信を持たざるを得なかった。…そして、同時に考え得る彼の最悪な可能性を、この段階で想定せざるを得ないことも理解してしまった。

 

 

 

 

 

 

 ー鎌府女学院 学生寮某室前ー

 

 姫乃から依頼された千里の緊急の安否確認を行うべく、里奈は早希と共に、途中で自分達の部署へと向かっていた由依も引き連れて、千里が滞在していた部屋へとたどり着いた。

 

 ガチャガチャ

 

「クソッ!鍵が掛かってる!四条さん!四条さん!居たら返事をしてっ!」

 

 全力でドアを叩くも、部屋からの応答はない。

 

「中島さん!ここの部屋の鍵です。寮の管理人さんから借りてきました!」

「ありがと!山城さん!」

 

 事前に千里の部屋から返事がないことを知っていた由依は、先んじて行動を移していた。

 

 ガチャンッ!

 

「開いた!…三原さん、御刀を抜いておいてもらえる?」

「!?…はっ、はい!」

「山城さんは私らの後ろに下がってて。…荒魂討伐から帰ってそんな経ってないから、疲れているでしょ?」

「―っ!?で、では、お言葉に甘えて…。」

 

 すぐに里奈の指示に従い、抜刀した早希。なお、由依の御刀である《蛍丸》は大太刀であるため、室内で扱うには難がある長さだったことから、里奈は由依に御刀を抜くことを頼まなかった。もしも、立てこもり犯などが居た場合、御刀を抜いていない彼女が真っ先に狙われる可能性があったためだ。

 

 

「……突入。」

 

 

 そして、ドアの開扉とともに御刀を抜いた二人の刀使が、部屋へ進入した。

 

 

 

 

「……居ない?」

 

 里奈と早希は拍子抜けした。戦闘も想定していたものの、誰もいないという状況であることが判ると、緊張状態だった肩の力が少し抜けた。

 

「…荒らされた形跡は…無いわね。」

「里奈さん、これ!」

「ん?パソコン画面?……これって…。」

 

 そこにあったのは、メールの下書き画面に打ち込まれていた、端的には探さないでほしいという内容の文面だった。

 

「…あんなメールを送った直後でこの内容ね…。…どうも変よね。」

「千里さん、やっぱり居ませんでしたか?」

「そうみたい。…そういえば、どうして山城さんは彼女のところに来ようとしてたの?」

「―実は私、本当なら千里さんと色々おしゃべりやスキンシップを図ろうと思って、約束してたんです。千里さんの部屋で。」

「……え?」

 

 里奈は、目を丸くして素で驚いた。由依の話が事実なら、本来なら千里は部屋にいるはずだったのだ。だが、その約束をしたはずの彼女の姿は消えていた。彼の身の危険を知らせるメールを送ってから、僅か三十分ほどしか経っていないのに。

 

「…山城さん、ちなみに何時頃にその約束をしていたの?」

「え?―確か、今からだいたい一時間ちょっと前くらいを、訪問する時間としてお伝えしてましたけれど。」

 

 やはり、おかしい。

 

「山城さん、ごめんけど私達の部署まで一緒に来てもらってもいいかしら。」

「えっ、はい。構いませんよ。…もしかして、アタシ、中島さんに見染められちゃいましたか?」

「…大真面目な話よ。多分、山城さんが会おうとしていた四条さんは、何か事件に巻き込まれたかもしれないから。」

「…事件、ですか。」

「ええ。…三原さんも、ついて来て。現場保全は他の人間に任せるから。」

「分かりました。里奈さん。…三角コーンだけでも立てていっておきますか?」

「…そうね。管理人さんに鍵を返すついでに、お願いしておこうかしら。」

 

 連続して起こる不可解な出来事。里奈は、女の勘というものなのか、言葉には表せないような不安に心を覆われる。

 

「…何だか、酷く胸騒ぎがする。…刀使としての嫌な直感かしら…。」

 

 一先ずここでの用を片付けたあと、由依と早希を連れて自分の部署へと戻った。…そして、衝撃の事実を姫乃の口から聞かされることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が神隠しにでも遭ったように、忽然と姿を消したのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがこれは、これから引き起こされる事態に比べれば些細な出来事であったことを知るのは、全ての事態が収拾してからのことだった。

*1
閑話編『武蔵野の守護者』参照。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

今編は大まかな経過としては四段(+細々した話)の構成で綴る予定です。
早いところ刀使達との絡みに戻りたいところですが、お待ち頂ければと思っております。

ついに『琉球剣風録』からプレイアブルキャラとして、伊南さんが(恐らく後で朝比奈さんもでしょうが)加わるとの情報が。
筆者個人としては、新たに追加される娘が増えていくのは嬉しい反面、葉菜などのメンバーはまだまだ先になりそうな感じですかねえ…、などと複雑な心境でございます。
(プレイアブル化したいサポートメンバーの二度目の投票があるまで、待ちましょうか…。)

それでは、また。
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