今回は様々な視点からの話となります。時間軸は彼や千里が失踪した翌日となっております。
それと今話は、舞衣とエレンが少し登場してきます。
それでは、どうぞ。
ー鎌府女学院 学生寮某室ー
さて、二人の拉致監禁に成功した真奈美だが、彼女的にはまだ目的の四分の一も達成していなかった。最も、そう単純にコトが運ぶとは全然思っていなかったようだが。
「あー、まさか兼務中の部署から目を付けられるとはねえ…。当たり前とはいえ、そう上手くいくわけもないか。」
彼女がそうボヤいた理由。それは、事情聴取のために綾小路への帰還が後ろ倒しにされたためだ。二人が失踪した昨日に非番や休暇であった、刀使を含めた伍箇伝や本部の人間の多くは順次聴取されることが決まっていた。それと同時に、部屋からの外出が厳しく制限されることになったのだ。食事も、弁当か食堂で配膳されてきた物が提供されるという。身内の犯行を疑っている以上、厳粛な対応へ傾いたわけであるが。
「…ただ、少なくとも私がやったということはバレていない。でなければ、こんな大掛かりな面倒をするはずないもの。」
そうして悦に入っている時に、彼女は二人を監禁している空間のカメラとの接続を起動させる。
「さて、どうしてるのかしらね。あの男は。…さぞかし、千里の死体にビクビクしながら生活しているのかしらね。」
そう思って空間の様子を見ようとするが、…何か変である。人間のシルエットが二つあるではないか。
「……は?……しぶといわね、千里。生きてたのね。」
というか、勝手に死んだと決めつけていたのは真奈美の方なのだが。
「……ま、生きてたとしても、一週間と経たずにあの男も獣になるわよ。わざと脱出できない環境にして、最低限の生活は送れるようにしているわけだから。」
真奈美は、二人がいずれ欲にまみれ爛れた生活へと変貌していくまでには、そう長い時間は掛からないと予測していた。
刀使ほど戦闘の最前線に立つわけではないのだが、彼や千里も生死の境に身を置いている時があるのはその通りだ。死に対して生じる無意識下の将来への危機意識、そして子孫を残そうとする生存本能。刀使達にも、その意識が程度の差はあれ存在していることは、逃れようのない事実だ。ましてや、戦う覚悟が比較的希薄になる後方支援では、よりその意識が強くなりやすい傾向にある。
軍隊などで嘗て存在していた慰安制度も、そもそもとして軍人たちの戦場下での高ぶる生存本能をいかに抑えるかという点では、現場の苦心が伺い知れるものでもあった。まして、様々な面において活動的な中高生であれば、性的欲求の解消というものはなおのこと注意すべき問題でもある。
刀使は巫女でもあるが、そんな建前を言っていられない場合が時には存在することも、特に彼をはじめとした本部の人間は理解し、彼ら彼女らへの対策を日々考え続けていたわけだ。
その心理状態を強制的に適応させているのが、今の二人の環境というわけでもある。
「さ~て、千里。貴女の言っていたその男は違うという理論を、そんな空間の中で証明できるかしら。…ま、余程のコトが無ければ、絶対に無理でしょうけどね。…男なんて、全員同じよ。」
一線を越えないように耐えられるのか、それとも真奈美の望むような結果になるのかは、二人や彼らを捜す姫乃達次第、とも取れるのが彼女の狡いところである。ストレス環境に追いやったのは彼女だとしても、淫らな行為に及んだ場合は本人達の我慢ができなかったから、という自己責任へのすり替えが容易にできるためだ。
そして事情聴取のために、二人の映る空間内のカメラ映像を一度遮断したうえで、真奈美は部屋を後にするのだった。
ー鎌府女学院 食堂兼レストプレースー
ところ変わって、鎌府女学院の食堂では多くの刀使や生徒達が集まっていた。無論食事のため、でもあるのだが、やはりその多くは真偽不明な彼などの失踪についてのことを話す目的だった。既に噂レベルではあれど、鎌府内では彼の失踪が伝わりつつあった。
「…何でも、◯◯さん、蒸発したらしくて失踪したらしいよ?」
「えーそれ本当?私が聞いたのって、ヤ◯ザから女の子を守るために攫われたって。」
「うわー、それもありえそう。で、私が聞いたのは―」
「あー、確かにありそ~。」
何せ公式な発表が無いため正確な情報が分からない、…というか捜索している側も情報が錯綜しているため、どの情報が正しいものなのかよく分かっていないという、迷走状態に陥っていたわけだ。このためフェイクニュース紛いの情報も上がっては消えていく状況であったので、姫乃を中心として確実に裏が取れているものを中心に、三日後の情報公開を進める算段であった。
それでもなお、こうして刀使や多くの生徒達からの言及があるように、彼が彼女達からの注目を浴びていたことが顕在化してくるのも、こうした状況でしか分からないことだろう。
そして、この空間には舞衣やエレンも混ざっていた。後で可奈美達も合流するという。
「…みんな、○○さんのことで持ちきりだね…。…何が本当のことなのか、私もよく分からなくなってくるよ。」
「マイマイはダーリンがいなくなったことを、どう考えていますか?」
「…何も言わずに行方が分からなくなったっていうことは、間違いないと思ってるよ。でも、エレンちゃん。○○さんって、元々は舞草の諜報員だったんだよね?―それに絡んで、巻き込まれたってことはあるのかな?」
「ウーン、どうなんデスかね。少なくとも、今の彼は諜報の任務からは外れて、舞草内と旧折神紫派の人たちの調整役も一部で務めてマシタから。ソレに、薫も言ってマシタが、ダーリンが近衛隊の無力化に成功したことと、自分を責任者とした刀使向けの制圧装備の公表をして以降、色々な人間から目を付けられていたことは事実デス。…だからこそ、絞り込めないのかもしれませんネ。ヒメノン*1やリナリン*2達が死に物狂いで探していますが、なかなかGoodな情報は掴めていないようデス。」
「…○○さん、大丈夫かな…。」
「今は、ヒメノン達を信じましょう。ダーリンがずっと頼ってきたMembersなのデスから。」
エレンがそう言うと、舞衣も納得したように一度その話題からは離れた。…彼女達も彼の行方を気に掛けていたことは、それだけ彼が心配されるほどの人間であったことの表れでもあった。皮肉にも、それを彼が直接知ることはないのだが。
しかしふと、舞衣が昨晩感じたとある違和感を、同じ場に居合わせた彼女へ投げかける。
「そういえばエレンちゃん。」
「何です?マイマイ。」
「昨日の夜遅くに学生寮に帰ってきた、綾小路の娘が居たよね?」
「そういえば…、確かに居ましたネ。…人が失踪していたことに対して、酷く無関心ダナー、なんて思いましたガ。」
「…でも、こう、変じゃなかった?居なくなったのって、同じ学校の人だよ?…それに、あれだけ多くの人が騒いでいたのに、真っ直ぐ部屋に帰ろうとしていたよね。昨日の娘って。」
「…確かに、普通なら何かあったかを聞くなり、人が騒いでいる方向に首を向けるなどしそうデスが、そんな素振りは一切ありませんデシタ。ちょっと不自然デスね。」
「うん。…後で、水沢さんのところに気になったことを送っておこうかな。」
「何かの手掛かりになるカモしれませんし、マイマイが気になるなら送ってイイと思いマスよ。」
「そうするね。」
(……まさかとは思いマスが、あの時のgirlがダーリンや同じ学校の女子生徒を攫った?……憶測で物事を決めるな、客観的事実を立証してから行動しろ、と言われそうデスね。ダーリンからは。……きっと、大丈夫デスよね?ダーリン。)
舞衣に向けては普段通りの表情を浮かべるエレンだったが、彼女もまた彼が心配であることに変わりはない。今はただ、相次ぐ荒魂討伐の任務数に歯噛みしながらも、姫乃達を信じて必要な時に動けるよう備えるのだった。
それは声に出していた舞衣もまた、同じ気持ちであった。
ー刀剣類管理局本部 彼の部署ー
一方、エレンから期待の眼差しを向けられていた姫乃達。深夜のうちから神奈川県警の協力を得て、どうにか刀剣類管理局や特祭隊本部などの各門と接続する周辺道路の昨日の防犯カメラ映像を、数十台分確保することに成功する。
その映像をもとに神奈川県警の科捜研*3などとの間で、車種やナンバープレートの解析と持ち主の照合を分担しながら進めていた。…とはいえ、この数が膨大であることに変わりはなかった。
「クソッ!対象車両が多すぎる!一体何台の車両を解析すりゃいいんだよ!」
「糸崎さん、落ち着いてください。まず、捜索対象からバスやトラック、タクシーは外しましょう。そうすれば、一割か二割くらいは減るはずですから。」
「…だが、映像中の延べ通行車両台数は数万台のなかで、守衛さんの情報を組み合わせて減らしてもなお、あと数千台は該当するぞ。」
「ともかく、各車両のナンバープレートの特定を進める必要があります。…もし、お二人が何も飲まず食わずの状況ならば、72時間*4が一つのボーダーになります。それまで、あと60時間もありません。急がなければ、取り返しがつかなくなりますから。」
「糸崎君、姫乃さんも頑張っているから、あんまり強く言ってあげないであげてね。」
「…あーっ、もう仕方ねぇ!埒があかねぇから、応援の人間をあと何人か呼んでくる!」
「お気をつけてー。」
そう言って、誠司は実働部隊の何名かを引き抜く決断をし、呼び出しに向かう。事情聴取により業務から外された真奈美を含めた三、四人以外は、彼や千里の失踪による精神的動揺が激しかったこともあり、一時的にスタンバイ要員として待機状態に置かれたためだ。
そんな中、姫乃と誠司から頼まれて映像解析を一緒に手伝う早希が、こんなことを口に出した。なお、早希に関しては、紗南からは一時的に普段の討伐業務からは外れることを了承してもらえた。
「……でも、変ですよね。」
「えっ、何がですか?」
「いや、もしお二人を誘拐したとして、犯人の目的は一体何なのでしょうか?」
「…確かに気にはなりますけれど、身代金とかの類ではないことは確かだと思いますよ。そのつもりなら、昨日の夜の時点で身代金を要求する電話がくるはずですから。」
「……ますます、不安になってきますね。お二人のことが。万が一のことがあったらと思うと…。」
「…早く見つけ出しましょう。それしか、私や皆さんの不安を取り除く方法はありませんから。」
時間は刻々と過ぎ行くなかで、姫乃は目を皿にするように一台一台の車種とナンバープレートを確認していく。…そして、彼女達のもとへ気になる情報が寄せられたのは、それから更に約八時間が経過した頃のことだった。
ー??? 某建造物地下ー
食事として準備した缶詰の鶏飯や鍋を啄みながら、千里と彼はこの閉所での生活に徐々に慣れ始めていた。様々なところで環境を過ごしてきた彼も彼だが、あっさり慣れる彼女も彼女である。
「…え、祇園に襲われた?」
「はい…。…山城さんが部屋に来るのを待ってた時に、です。チャイムが鳴ったあの時に、誰が来たのかの確認を怠った、私の落ち度です。」
「…今は、それを悔いても仕方ない。次戻って、同じ事を繰り返さなけれぱいいだけのことだしな。気にはするな。」
「はい…。」
「…となると、俺を襲ったのも祇園ってことになるのか。襲われた方法はどちらもスタンガン、同じスーツケースに入れて同じ部屋に監禁、か…。」
自身が気を失うまでの経過と千里の証言から、今回の大筋の経緯は掴めた。だが、千里は真奈美の行動に疑問も感じていた。
「でも、不思議です。真奈美が、◯◯さんのことを直ぐに殺さなかったことが。」
「ん?どういうことだ?」
「私も不思議に思ってたんですけれど、○○さんのことをかなり毛嫌いしていたんですよ。真奈美の視界に入る度、極端に憎むほどに。」
「……こう言うとアレなんだが、俺と祇園の面識自体は今年の四月からだぞ?…それでいて、俺自身が祇園へ何かしら不味い対応をとった記憶がないんだよ。」
「それはそうですよ。◯◯さんに落ち度は全くありませんから。―あれは、一方的な逆恨みだと私は考えています。」
「逆恨み、ねぇ。」
「◯◯さん、今は確か、私達綾小路の刀使や生徒達の戦力立て直しに携わっていますよね?…だいぶ終わりかけではありますけれども。」
「ああ。…本部から指示を受けたのが半分、友人や知り合いも多かったから自主的に助けたかった、ってのが半分だな。それに、綾小路そのものは共学だろ?…単独な女子校なら俺よりも女子の方が感覚的にいいと思って断ったんだが、共学だからこそ俺も引き受けた次第なんだよ。まして、相楽学長からも許可や了承は貰っているぞ?」
「…その共学ってところなんですよ。私も甘くみてました。真奈美の男性嫌いが、ここまで酷いとは思ってなかったばっかりに。」
「……過去、祇園が綾小路で男性とのトラブル、もしくは家族間でのトラブルがあったとか、聞いてはいないか?」
「さすがにそこまでは…。役に立てず、すみません。」
「いや、四条に罪はない。…せめて、糸崎達に居場所を伝えることができればなあ…。状況が動くかもしれないってのに。」
折角得られた情報を伝達する手段が無いために、歯痒い思いをする彼。
「……そういえば。真奈美、◯◯さん自身というよりは、男性そのものを嫌悪していたような気がします。男は簡単に女を襲う、とかそんな感じのことを日頃から言ってましたし。」
「…まあ、事実だろうよ。残念ながら、俺もその手の案件を何度も扱ってきているしな。…合意の上ならまだしも、そうでないケースも間々あるのが、な。俺も男だから、起こした側の気持ちは分からなくないにせよ、時にはブチギレることもあるぞ。…やっていることは、倫理的にスレスレのものや紛れもない犯罪だしな。…とはいえ、時々俺自身も相手のことを考える機会も多いから、ただ相手を責めることばかりではダメだとは思うぞ。」
「……ふと思ったんですけど、◯◯さんって女の子とのその…、恋愛のように深い付き合いをしている事はないんですか?こう、言いにくいんですけど、◯◯さんて結構女の子が周りにいることが多いですし。」
「無いな。」
即答である。
「えっ?意外です。彼女が一人くらい居るのかと。」
「ないない。そもそも、こんな得体のしれない素性で、かつ刀使達に危害を加えかねないような人間のことを、一体誰が好きになるってんだよ。公開された情報だけでも近づこうとは思わんだろ、普通は。…業務に携わるならまだしも、な。」
「……あのー、そう言っておられるところ悪いんですけど、説得力がないですよ。だいたい、刀使の方も◯◯さんにそこまで悪く言っておられる方も少数ですし。それに、綾小路以外の方からも◯◯さんのことを伺う時は、概ね良い方という話でしたよ。」
「…それは結局、外面がいいってことなんじゃ…。」
「外面も含めての○○さんなんですよ。…というか、自分で言っておいてなんですけれど、○○さんから見て私は女性として見られているんですか?」
「それはまあ、うん。見ているつもりではあるがな。…ただ、敢えて意識を削るようにしてる。幸いなことに、俺自身の性欲はますます減退の一途をたどっているらしいから、無理にでもゼロにする気ではいる。…でないと、四条は不安になるだろ?寝てる時、襲われるかもしれない恐怖に晒されるのなんか。」
「…あー、○○さんが他の人と何か違うなー、っていう感覚が、間違ってたわけではなかったのか~。良かった…。」
自身の感性が狂っていたわけではないことを、改めて確認できた彼女。千里は知らないが、伊達に財務課から信用という名のお墨付き(彼としては嬉しくないが)を得て、かつそれを取り下げられないほどの人物なだけはある。…手を出さないからこそ得られる信用、と聞くと多数の男からすればそれは果たして良いことずくめなのだろうか、と考えてしまう者も現れてくるだろう。
「…確かにな、俺も男だし、異性愛、つまり女子との恋愛がしっくりくるタイプの人間ではあるさ。だがな、それを同僚やら仲間やらに向けるのは違うだろ、という人間でもあるのはそうだな。妹なんざ、もっての外だ。…まあ、異論は認めるけどな。」
「……本当に真面目な方ですね、○○さん。いや、公私の分離ができているというか。…私にはとても…。」
「…ただ以前、真庭本部長にもさっき四条が訊いてきた、全く同じ内容の質問をぶつけられたことがある。あれって、結局何だったろうな。ホント。」
(―世の中には知らなくていいこともあるとはいえ、○○さんの場合はもう少し自覚を持った方が良いのではと思ってしまうのは、何故だろうか。)
彼女の身近な人物で挙げるなら、里奈などがいい例である。彼に向ける言動は厳しいものも多いが、時折言葉の節々に見せる優しさや若干照れ隠しのように振る舞う姿勢を見ると、ただの同僚で留めるには少し違う印象を受けることもある。
(……ないない、と口で言うのは簡単だけど、本当に好きな人がいた場合、その方は気付いてすらもらえないってことなのかな…。私がこう思うのもどうなのかもしれないけれど。)
この千里の考察は、彼の人間関係を紐解くうえでは重要な視点となってくる。が、こればかりは当人の意識改革を勧めるほかないという、従来の流れそのままとなるのだ。
「○○さん。仮にですが、この場で私が貴方のことが好き、といった場合、○○さんはどうされますか?…もちろん、肉体関係まで持っていいと言った場合も含めて、です。」
「……う~ん、どうだろうな。」
頭で色々と考えているのか、少し鍋の具材を取り分けながら口を開く。
「…少なくとも、はい喜んで、とはならないな。むしろ、早まるな、と返すだろうよ。」
千里は、ある程度の予想は立てていたものの、それが彼が単純な人間ではないことを裏付ける回答であった。
「それは、どうして、ですか?」
「だってなぁ、こんな空間で、しかも二人きりに強制的にされたわけだろ?…勇気を持って言ってくれた事は嬉しいと思うし、そりゃ自分を好いてくれる人間がいたことに感謝するさ。ただな、状況に流されてやむにやまれず告白したのかもしれない、もしかしたら四条…いやこれは他の人間でも一緒か、祇園とグルになってこうした環境に追いやって、俺へ何かしらのコトをさせるつもりがあるのかもしれない。等々、どうもネガティブな方向性で考えちまって、素直に受け取れないんだよ。俺、捻くれてるし。」
「…一世一代の勇気かもしれないのに、ですか?」
「こんなことになってから使うっていうのは、俺自身はそれこそもったいないと思う。なら相手が万全な形で、ちゃんとした形で気持ちを受け入れたい、そう思っている。…本当に好きならば、何度でも挑もうとするだろうし、そうでなくとも別に疎遠な関係にわざわざなる必要性を、俺は感じない。…まあ、これはあくまで俺の考え方だ。他の男なら即答で受け入れるかもしれないし、両想いの場合は吊り橋効果で、ということだって考えられる。…十人十色の回答が出るだろうよ。」
「…今までの話を聞いて、○○さんが堅物だとは思いました。でもそれは、○○さんなりの相手への配慮があったからなんですね。」
「俺の考えが保守的で前近代的な発想なのは認めるさ。…でもな。相手と長く続きたいなら、慎重であるべきなのは、そうおかしな考え方なんだろうか。」
「―それを決めるのは、私ではなく、○○さん自身だと思いますよ。」
「…それもそうだな。さ、とっとと食事をすませて、物資の確認と服の洗濯だな。」
「はい!」
異常時であっても、相手を気遣おうという姿勢を崩さない彼。千里は、彼が今までどんな苦労を重ねてきたのかは分からなくとも、意見の一つ一つに芯の通った人間であることを、この食事中に理解できた。
この時、彼女は彼が自身の信頼を置くに足りる人間であることと、できる限り背中を追っていきたい人であるという、決心を固めるに至った。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
…事態発生二日目ですが、意外と前に進まないという…。
男と女、二人きりで閉じこめられたにも関わらず、平然としていられる精神状態がベストなのかな、などと考えてしまう筆者でごさいます。
本節、『Silent Abduction』は次話で終わります。
二話先からはまた、動乱気味な話となります。ちなみにですが、真奈美はまだまだ大暴れます。
(書いてた本人がごちゃごちゃしかけたのは、内緒です。)
それでは、また。