刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今話より本編での起承転結の「承」にあたる部分に入って参ります。
昨日のとじとも生放送を見ていたら、来月のコラボが魔法科高校と聞いて半ばびっくりしている筆者ではございます。
ちらっと日高見さんの情報が出てきましたが、イラストからは隙のなさそうな雰囲気が伝わってきましたね。(なお不穏なワードがちらほらありましたが。)

前置きが長くなりました。
それでは、どうぞ。


⑧ 男性排斥運動(ブルー・パージ) 前編

 ー鎌府女学院 学生寮某室ー

 

 事情聴取後、再び事実上の軟禁状態に置かれた真奈美。しかし、室内への監視などは特に行われてなかったことから、引き続き彼や千里の動向の確認と、次の計画を実行に移すための準備を既に終わらせていた。

 

「あーあ、折角これから面白い事が始まるってのに、そこのお二人さんは知ることも無いもんねえ。…さて、世界が変わる感覚ってのを、出た時に分からせてあげなきゃね。」

 

 真奈美が事前に想像していた姿とは裏腹に、映像中ではのんびりと過ごす二人。それに少し苛立ちながらも、室内のパソコンへ色々と打ち込んでいった。

 そして、カーソルをある表示の上へ動かす。

 

 

 

 

「グッバイ、無能な男共。そして、ハロー、プリンセスの楽園(パラダイス)。これが、新時代の幕開けとなりますよーに、と。」

 

 

 

 

 ピンク色に四角く彩られた『作戦開始』の表示を、彼女はワンクリックする。

 待つよりも、動こう。そして、全てを女子達の色で染めてしまおうと。

 

「オペレーション『陽はまた昇る(Rising Sun)』、さて、上手くいってくれるかしら。」

 

 そうして、『相模湖擾乱』は第二局面へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 ー静岡県牧之原市・島田市 富士山静岡空港ー

 

 舞台は大きく離れ、暗闇に包まれる静岡空港。

 間もなく夜九時を回ろうかという頃に、複数のヘリコプターがその翼を回していた。

 既に民間のヘリを飛ばす最終運航時間からは、何時間も経った後である。それなのに、メインローターの回転速度を全開にし、今にも飛び立とうとしているわけである。

 

「こんな時間にヘリを飛ばしては危険だ!今すぐに出発準備を止めてくれ!」

「煩い、男は黙ってどっかに行け。死にたくなければな。」

 

 空港職員の男性がヘリの離陸を阻止しようとしたのだが、機内から向けられた複数の銃口により、命の危険を感じたため即座に逃げた。

 

「アイツ、撃っちまおうぜ。あんなへっぴり腰には、良い薬だろ?」

「止めろ。作戦中、発砲は正当防衛以外では許可されていない。私達の目的が果たせなくなる障害は、極力避けろ。」

「……了解。」

「準備が整ったのならヘリを出せ。目的地は鎌倉、折神家と刀剣類管理局本部、そして特別祭祀機動隊本部だ。」

「ラジャー。…ランウェイクリアー、テイクオフ。」

 

 隊長役の人物がパイロットに指示を出すと、黒色に塗られたAW139タイプのヘリ計四機が次々と離陸していった。空港職員の制止を振り切ったこれらは、当然ながら管制塔からの離陸許可をも得ていない一団だった。だが、一度空中に繰り出されたら最後、それを止めることができるのは物理的な撃墜手段を持つ自衛隊くらいなものである。

 空港職員や管制官達は唖然茫然、そしてすぐにレーダー監視と国土交通省航空局への緊急連絡を行う次第となった。

 

 

 

 

 当たり前の話だが、この夜の東京ACC*1やヘリ群の進行方向にある羽田空港の管制官達は皆気が気でなかった。

 航空無線が切られる、あるいは無視されているため、万が一空中衝突でも起きたらという恐怖が過ぎっていたからだ。そのため、ヘリの巡航高度には絶対に到達しない高度まで運行中の航空機・離着陸機の誘導を行うことになった。

 結果として、鎌倉付近でヘリの着陸が行われたために空中衝突の危険性は除かれたものの、これらの出来事が後々重大インシデントとして運輸安全委員会からの調査が行われることになったのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

 

 ー刀剣類管理局本部 彼の部署ー

 

 時系列は前後し、姫乃が相模湖方面へと赴いてから約三時間ほど経った頃。

 部署を仕切る誠司も、少しずつ疲労の色が濃くなり始めていた。

 

「糸崎君、大丈夫?」

「あっ、ああ。悪い。ちょっとな。少し休むか。」

「まったくもう、頑張るのはいいけれど、無理してもダメだからね?」

 

 作業を手伝っている早希は、誠司が無理をし過ぎないよう定期的に休むよう声掛けしている。姫乃が車両確認に向かっている間、黒い業務用バンの動向のほかに、不審車両がまだいないかなどの特定を進めていたのだ。

 

「十五分だけ、休ませてもらうとするか。」

「糸崎君、なら私のココ使ってよ。」

「お、頭を置きやすい枕がこんなところに。」

 

 ソファーに先に座った早希の誘惑に乗っかり、誠司は身体を横たえると共に自身の後頭部を彼女の太ももに乗せる。

 

「…あ~、癒されるわあ…。」

「もう、大袈裟なんだから…。…でも、こうして仕事中に揃って休憩するのは久しぶりだね。」

「確かにな。…ただ、俺的にはそれ以上の時間の過ごし方をしたいから別になあ。」

「ふ~ん?それって、他の女の子に対して色目が付けられなくなるから、とか?」

「そんな訳ないだろ。俺が早希一筋なの、知ってるだろ?日頃のことといい。こういう時といい。」

「ホントかなあ?」

「なら、その証拠。」

 

 そう告げると、誠司は起き上がった途端に彼女の口へと顔を差し出す。そして、いつものように舌を絡ませたディープキスへと移る。

 

 

 

 

 その傍では、少し前に休憩を取ったことで作業を進めていた圭吾と愛実の姿があった。この二人は、誠司から徴用を食らった人間のうちの一部だった。

 

「……作業している、俺達忘れられてるよなこれ…。」

「圭吾っち、私らも今度やってみる?」

「な、何を行ってる!?おっ、俺はやらないからな!」

「…そんな全否定しなくてもいいじゃん。」

「あっ、わ、悪い!」

 

 そんな空気に触発されたにも関わらず、作業続行という不発に終わったのが圭吾や愛実の関係性を物語っているようだった。

 

 

 

 

 そんな外野の空気はさておき、名残惜しい雰囲気を残しながらも、誠司は早希の唇から顔を離す。

 

「…なんか、新鮮だね。こういう場でするのって。」

「まあな。…いつもなら、アイツがいるからする気も湧かないんたけどなあ。つくづく、居るだけで自制心を生み出させるってのも凄いもんだと気付かされるよ。」

「…そうだね。こういう時でも突っ込んでくれるから、邪魔されたとしても楽しいもんね。…やっぱり、寂しいよ。」

「…さて、そんな男をとっとと探しだそうかね。早希、黒いバンが鎌倉に入るまでに立ち寄った場所を探してくれ。無ければ、車が登記上の場所から出庫しているかも確認頼む。俺は出てからを追う。」

「分かったよ。…取り敢えず、目を通すべきはオービスとNシステム、それと防犯カメラかなぁ…。」

 

 イチャイチャした空気からトイレなどの僅かな休憩を経て、再度分析と探索にかかる二人。

 

「…俺は夢でも見ていたんだろうか、さっきまでデレデレしながらキスし合っていた人間とは思えないんだが。」

「圭吾っち、魂を戻してきてー。もう現実だからさあ。」

 

 傍観者の圭吾と愛実も、半ば意識がそちらに向いてしまったと言えど、姫乃から託された情報の数々を振るい分けし続けていた。

 

 

 

 

 そして、夜九時半を過ぎる頃だった。

 突如外から耳をつんざく程の騒音と、窓が震えるほどの振動が室内に襲い掛かる。

 

「何だぁ!?」

「糸崎君、アレ!」

 

 音に驚いた誠司が早希の指差す先に見たものは、サーチライトを地面に向けて放つヘリコプターの姿だった。

 

「い、糸崎さん、あれ!」

「―おい、嘘だろ!?」

 

 圭吾が気付くまで分からなかったが、ヘリからはラぺリング降下を続ける人間たちが続けざまに降りていた。…しかも、奇妙なほどに黒い。

 

「…早希!すぐに御刀を抜け!これは何かマズいことが起きてる!」

「えっ、うん!―写シ!」

 

 今まさに恐ろしい事態が起こっているのではないか、直感的にそう思った誠司は彼に黙って隠し置いていた、試験運用待ちの新型小銃を引っ張り出す。弾は89式小銃と同じものが使えるため、弾倉が準備できていれば問題は無かった。スコープがこの場には近距離用しかないのが、少し痛いところではあるが。

 

「嵯峨野、それと亀岡。二人とも拳銃は扱えるか?」

「わ、私はちょっと…、無理っぽいかなぁ…。」

「講習で撃った程度なら、ですが。」

「なら亀岡、嵯峨野を守れるように構えておけ。…もしかしたら、今やってきたのは武装組織かもしれないからな。」

「ぶ、武装…!?」

「嵯峨野、何か武道はやっていたか?」

「えっと、薙刀と弓道なら…。」

「仮眠室に刺股があるから、万一はそれで自分の身を守ってくれ!」

「りょ、了解っ!」

 

 愛実が仮眠室へ向かうと、誠司からの指示に従っていた圭吾はその入口で彼女を待った。もし探している時に銃撃などがあれば、扉を閉めて彼女だけでも守ろうと思ったからだ。

 

「早希、ちょっと廊下に出てみる。…もしもの時は、二人を連れて外から逃げろ。」

「…っ。分かったよ。でも、死ぬのだけは許さないからね。」

「なんで婚約者(フィアンセ)残して野垂れ死にしなきゃならないんだよ、全く。…荒魂の時以外で死ぬ気は無えよ。死ぬ時は、早希に看取られる時だ。」

「…ふふっ、流石、私の愛している人。…取り敢えず、立て籠もるね。」

「ヤバい時はツーノックする。間隔がかなり短いなら、それは俺の合図だ。…五分経っても戻って来なかった時も、すぐに逃げるように。頼んだ。」

「……無事でね。糸崎君。」

「早希もな。」

 

 そして、部署と廊下を仕切るドアが、閉じられた。

 

 

 

 

 ー同刻 刀剣類管理局本部 屋上出入口ー

 

 ヘリからの降下に成功した武装する集団。

 防弾チョッキだけでなく、サバイバルナイフやアサルトライフル、更には手榴弾を抱えた十人ほどが突入しようとしていた。

 

「…作戦開始(Mission Start)。」

 

 階段を下りながら、ヘルメット上に表示される赤外線情報やリアルタイムの仲間の位置などが浮かび上がる。

 

「…リーダーが一体どこでこんな伝手を得たのかは知らないが、おかげで作戦がやりやすい。チームαは上層階から、我々チームβは一階から制圧していくぞ。」

了解(Yes,sir)!」

 

 部隊を二分し、建物内の主な設備を制圧していく。

 

 

 

 

 ある階にチームαが到達した時だった。

 

「…おい、あそこに何か居るぞ。…人か?」

 

 暗闇の中でも赤外線映像により、熱源を持つものがはっきりと映し出される。

 

「もし男なら、無力化しろ。ただし、殺しはするな。それが制圧の絶対条件だ。」

「了解。」

「ラ、ラジャー…。」

 

 人らしきものを制圧するため、二人が向かう。

 幸い、向こうはまだ此方の動きに気付いているわけではなかった。そのため、音を殺しながら近づく。

 

 廊下は真っ暗であった。しかも、連日の降ったり止んだりの天候により月明かりなどは入らないという、武装集団側にはかなりの好条件が揃っていたのだ。

 

(そろそろか。α2、アレを無力化しろ。)

(はあ…。α3、了解。)

 

 ヘルメット内の無線で指示が伝わる。α3とコールされた隊員が、ゆっくり近づく。

 

 その時だった。

 

 

 

 

 突如、視界が真っ白に染まる。

 

 

 

 

(な、何だ!?)

 

 赤外線モードの弱点として、強力な熱源や光源があった場合、一時的に画面が白くなることがある。今回は、強力なライトの光がヘルメット目掛けて向けられた。

 

「オラァッ!!」

 

 その隙を突かれ、α3は大きく前に一回転する。

 

「カハッ…!」

 

 受け身も取れず、そのまま身動きが取れなくなる。

 そして、胴体をホールドされるとともに冷たい感覚が首筋に当てられる。

 

「暴れるなよ。暴れた瞬間に、その口から鉛弾が飛び出すからな。コイツに火を噴かせたくなかったら、大人しくしな。」

(―はっ、しまった!?)

 

 α3は僅か十秒以内に制圧されていた。あまりに突然の出来事に、手を挙げるしかなかった。

 

「…ん?……あ、すまない。お前さん、女の子か。手加減できなかったようで悪い。」

 

 その声の主は、制圧しようとしてきた対象に謝った。

 

(…ええっ、嘘だろ。普通、謝るところかよ…。)

「ただ、悪いがこのまま抑えた状態でいてくれ。どうせ、お仲間がいるんだろ。」

(―!?気付かれているのか!?)

「何が目的か分からんが、此方も撃たれてもたまらんし、このまま盾にさせてもらう。お互いのためだ。」

(…隊長、すみません。しくじりました…。)

 

 

 

 

 彼女を抱えたまま、ずるずると後ろに引き下がる男。この男こそ、誠司であった。

 

(…ったく、何でアイツが居ない時に面倒事が殺到するんだよ!こういうのはアイツが抱えてなんぼのもんだろうが!?)

 

 とはいえ、武装する女性がいたということは、侵入してきたのはある程度のレベルでの統制が取れた組織であるということだ。

 

「…はあ。どうしてこうなるのやら。」

 

 せめて彼が居たらどのような動きを取るのかを示してくれるだろうに、そうは思っていても誠司は自分で状況を考える頭を持っていた。

 

(恐らくそろそろ、この人の仲間が確認に来るはずだ。…そうなった時が問題だな。)

 

 あのヘリからの降下人数を見れば、少なくとも十人単位で行動している可能性が高い。それを一人で相手にするには荷が重すぎる。

 

(……来たか。)

 

 誠司は、暗闇に紛れた複数の足音を聞き分ける。盾に取っていた女性へ向けていた銃口を、音源の方向に向ける。

 誠司が持っていた新型小銃には、残念ながらグレネードを発射できる機構は備わっていない。が、マズルフラッシュによる閃光弾代わりの使い方はできる。

 

(弾数が心配だが、やむを得ん。)

「暗闇の中で来ているところ悪いが、今から数発其方に撃ち込むぞ。当たりたくなければ、すぐに廊下の壁に避けろ!」

 

 そしてそれから数秒で、十発ほどをバラまく。相手側への警告射撃と、踏み込みへの躊躇いを狙ったものだった。ただ、α3の至近距離で発砲したこともあり、モロに発砲音を聞いた彼女はあまりの高音で気絶してしまった。

 

「…くっ、こりゃ押し切られるのも時間の問題か。」

 

 勿論、これが単なる時間稼ぎであることは分かっていた。しかし、この女の子を解放すると、自身を守る盾が無くなることは間違いなかった。

 

(わりぃ、早希。どうやら、俺の天の迎えは思ったよりも早そうだ。…許すなよ、俺を。)

 

 体感で約数m。人数はだいたい三~四人ほどか。金属の擦れる音から、彼は相手が銃火器を所持していると判断する。

 

(最後くらいは、男らしいところを見せて終わるかね。…あーあ、短い生涯だったなぁ…。)

 

 そして、白色のパイロットヘルメットのようなものを被る人間を数人視界に捉えた。

 

「あー、俺を撃ち殺す前に、この女の子はあんたらに返したい。あんたらのお仲間さんだろ?」

 

 背面でのほふく前進という、通常よりも遥かに遅い速度で進んでいたこともあり、あっさり追いつかれることになったわけだが、暗い空間ならではの作戦を取ったわけである。

 早希や他の二人を逃がす時間稼ぎくらいはできたと思えば、自身の犠牲は無駄ではなかったと考えられる。

 誠司は、盾に取っていたα3を相手に引き渡し、新型小銃を床に置いて両手を挙げた降参のポーズをとる。

 

「……さ。これで思い残すことは無い。」

「ならばお望み通り、すぐ楽にしてやる。」

 

 部隊の一人が、誠司の眉間に銃口を当てる。どうやら先程からおちょくられたことが、癪に障ったらしい。そして、彼に向けられた引き金が弾かれようとした、まさにその時だった。

 

『折神家、刀剣類管理局本部、ならびに特別祭祀機動隊本部に居られる全ての職員の方々、鎌府女学院にいる刀使・生徒の皆さん。刀剣類管理局局長、折神朱音です。夜分遅くこのような放送をお送りさせていただいたこと、深くお詫び申し上げます。』

(…朱音様?…まさか、この武装集団のことか。)

 

 朱音からの生放送により、誠司に向けていた銃口は一度離された。

 

『既に遭遇された方もいらっしゃるでしょうが、現在この管理局本部の敷地内には、多数の武装した方々が巡回しておられます。不測の事態を避けるため、見かけた場合は抵抗せずにヘリポートの方へと向かってください。また、刀使の方や鎌府女学院の生徒の皆さん、鎌府女学院の学生寮で生活をなさっている方は、一度鎌府女学院の体育館へとお集まり頂きますよう、ご協力お願い申し上げます。…私は、皆さんの安全を第一に考えております。どうか、その事だけは信じていただければと、心より願っています。放送は以上です。』

 

 建物内に流れた音声は、それで終わった。

 

 

 

 

「…チッ。命拾いしたな、お前。」

「α2。だから言ったではないか、殺しをすることはナンセンスだと。」

「そんな問答よりもαリーダー、この男はどうしますか。」

「取り敢えず、ヘリポートへ連れて行くか。あそこで男と女を分けるらしいからな。」

「了解。α3はどうしますか。」

「今は寝かせておけ。…どうせ、明日からまた忙しくなるぞ。何たって今日は、『新秩序』の始まりの日なんだからな。」

「そうですね。私らは、どこの階級に属することになりそうですかね。」

「計画の初期から加わっているんだ。そりゃ、それ相応だろう。…何せ、ウチのリーダーは、女であることと自分に従うならば高い地位を約束するって言ってたからなあ。もし実現すれば、刀使へ一々ペコペコ頭を下げる必要も無い。…ちょっと御刀が扱えるからって、私らを顎で使って調子に乗ってくるような奴には、キツいお灸が必要だな。」

「やっと、やっと実現するんですね。男もいない、普通の女が刀使以上に力を持てる時が。」

「ああ。それまで、あともう一踏ん張りだ。」

 

 武装集団のメンバーがそれぞれに口に出していた断片的な情報から、誠司はこれから恐ろしい事態が進もうとしているのではないかと気付いた。だが、それを止めるべく行動することは、今の彼には叶わない。

 去年の混乱を再び引き起こすような真似は避けたかったが、現状武力を持たない自分には無理があった。

 結束力の強い彼の部署の面々は、彼という指揮官を未だ欠いたまま引き裂かれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

(…頼む、◯◯。どうか、俺達の、いや早希や刀使達の未来を、救ってくれ。…出来れば、とっとと見つけ出したかったんだがな…。力及ばず、すまない。)

 

 未だに見つからない上司。明らかに悪い方向へ進行しようとしている管理局本部の現状。

 誠司は、せめて武装集団が、彼が護ろうとし続けてきた刀使やサポートを行う人間へ、危害を加えないことを願うしかなかった。

*1
Tokyo Area Control Centerの頭文字より:東京航空交通管制部のこと。日本国内で最も多くの航空機管制を行っている、縁の下の力持ち。ここが無ければ日本の航空・物流網は機能しなくなる。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

次話で事態の詳細をより明かして参りますが、いよいよ狂気じみた真奈美の行動の真意が表面化してきます。
…筆者も彼女の描写を執筆していくなかで、こうしたキャラを書くことに抵抗感があまり無かったという自身の心理面に対して、つい不安に思う節がございましたが。

それでは、また。
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