刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は、襲撃を受けた本部周辺の各施設の詳細を明かしていきます。
突然の混乱に巻き込まれる、本部内の人々の動きが少しずつ見えてきます。

それでは、また。


⑨ 男性排斥運動(ブルー・パージ) 中編

 ー折神家・特別祭祀機動隊本部 作戦指揮室ー

 

 

 誠司が武装集団と遭遇していた頃、荒魂指揮の中枢とも言えるこの場所でも、突然の出来事に動揺が広がっていた。朱音のほか、本部長である紗南も居合わせていたが、すぐに状況の把握に努めたことは初動としては正しかった。

 

「敷地内の映像は?」

「復旧作業が今日中に終わりましたから、フルで活用できますよ。…ですが、これはマズそうな感じですね。」

 

 重要な情報を取り扱う男性職員が、寄ってきた紗南に対して示すように、管理局本部などのリアルタイム映像を大型スクリーンに表示する。が、やはり旗色は悪い状況へと進んでいた。

 

「まさか、空からの招かれざる客とはな…。ただ、これを予見していたかは分からんにせよ、アイツ()の提案がこうした形で活きるとは思わなかったがな。」

 

 

 

 

 昨年末に近衛隊が、防衛省本庁舎や東京駅周辺で積極的に取った戦術がある。ヘリコプターからの空挺降下戦術、つまりヘリボーンだ。

 刀使や特祭隊ではヘリコプターを移動手段として活用することはあっても、荒魂の真上を飛行するなどは本来あり得ないことであった。パイロットや搭乗者の安全が確保できないことが大きな要因だからだ。だが、対人戦が多かった近衛隊はそのセオリーを無視し、機動力と展開力に一長のあるヘリボーンを取っていた。結果、可奈美達がタギツヒメの襲撃などに際して苦しめられることのあった方法だけに、また同じことが起こられても困るため、その対策が協議されることになった。

 

 その対策例の一つが、早期警戒システムの構築であった。これは荒魂討伐の任務を除いた場合、基本的に刀使や特祭隊員は鎌倉の本部や伍箇伝各校など、ある程度固まった場所で過ごしていることが多い。このことから、彼女達が襲われる事態などに備え、昼間は現行の警備体制を維持しつつ、夜間は警備ロボットを使いながら人手不足に対応した。これにより、迅速にかつ効率的な警備体制の再構築が進んだ。

 また、本部の上空には、彼の発案で性能比較として移動式とドローン型の警戒管制システムが組まれることとなった。近衛隊のヘリのように、管理局側で許可を出していない航空機や車両を識別できるように、姫乃や情報課の面々に依頼していた。後々、不審者の識別もできるような検討を行っている最中に、今回の騒動が起きたのだ。

 ただ、現状の警戒管制システムでは、不審な航空機や車両を発見したとしても警報を発するだけなので、即座に迎撃に繋がることにはならないというのは留意する点ではある。…なまじ普通の人間で組まれた軍事組織であっても、理論上は歩兵よりも戦闘力が上回る刀使が控えている以上、攻め込むという選択が外れやすいという慢心があったことは否めないだろう。

 

 

 

 

 結果論としてはだが、彼の提案した警戒管制システムにより複数のヘリの侵入に気付くことができたのは、不幸中の幸いであったように思えた。

 

「侵入したヘリの機数は?」

「四機です。どうやら、乗っている人を降ろしつつ、管理局のヘリポートに駐機するつもりですね。」

「鎌府女学院に現在いる刀使達に一斉送信、抜刀状態のうえ、他の生徒・職員を連れて体育館へ立て籠もるように。アナウンスはするな、相手の目的が分からない以上は気付かれる恐れがある。」

「了解。」

「次いで、刀剣類管理局局員などの一般職員には、ヘルメット、防弾チョッキの着用と駐車場への避難指示だ。直ちに取り掛かれ。」

「はっ!」

「朱音様、貴女はどうなさいますか?」

「私はここに居ます。刀使の皆さんや、まだ残っておられる方達を置いて、ここを離れるわけには参りません。…それに、どちらにしてももし話し合いを行うことになるのならば、私は必要になりますから。」

「…分かりました。」

 

 朱音は、相手側の次の行動をある程度予測していた。ヘリボーンを行ったということは、指令部のあるこの部屋を抑えにやってくるはず。ただ、外部を繋ぐ扉の閉鎖は間に合わなかったことも分かっていたため、無闇に抵抗せず相手を招き入れることを選択した。…自分の命に代えてでも、刀使達を守るために。

 

 

 

 

 ドガアッ

 

 

 

 

 乱雑に、そして勢い良く作戦指揮室の扉がこじ開けられる。

 

「全員動くな!!」

 

 突入してくるや否や、半円状に展開した武装集団はその構成員全員が室内に向けて、鐡色にその銃身を反射させる。朱音達の脱出口は、もう無い。

 

「お前が、折神朱音か?」

「ええ。」

「このような形で荒事を立てたこと、誠に申し訳ない。だが、少しこの場に留まってもらおう。我らのリーダーが来るまでな。」

「『リーダー』?貴女がそうではないのですか?」

「私はこの隊を率いる一兵卒に過ぎない。本当のリーダーは、遅れてやってくるそうだ。…こちらもあまり手荒な真似はしたくない。折神朱音とそこの黄色い女、それ以外は固まってそこへ集まるように。…無駄なことはしない方がいい。他の仲間にも情報がすぐに飛ぶからな。我々も無益な殺生など御免でな。ただ、この銃に入っているのは実弾だ。それはよく考えておいてくれ。」

「…皆さん、彼女達の指示に従ってください。少なくとも、話す意思がある以上、相手に逆らうことは私達にとっても不利益です。…お願いします。」

「…はっ。」

「畏まりました、朱音様。」

 

 不承不承ではあったものの、武装集団を下手に刺激してこの場を血の池地獄に変えるわけにもいかないことを悟った職員達は、朱音の指示に従う。

 

 

 

 

 そして、言われた通りに集まっていたのだが、突然武装集団の態度が悪化する。

 

「おい、固まって集まれとは言ったが、男女が混じってとは一言も言ってねぇぞ。…撃ち込まれたくなければ、とっとと男女別に固まれ!」

 

 二、三人の構成員が、職員の男性達に向けて銃口を向ける。

 

「わ、分かったから命だけは!?」

「早くしろ!死にてぇのか!」

 

 降って湧いたこの状況に、朱音も急ぎ彼女達の言葉に従うよう檄を飛ばす。

 

「早く、早く分かれてください!」

 

 目前で死者を出すわけにはいかない。彼女も必死だった。

 

「落ち着け、お前ら。威嚇したところで、余計に悪化するだけだ。」

 

 幸い、武装集団のリーダー格は冷静だったことで、一触即発の事態は避けられた。

 

(…これと同じことが、他の場所で起きていなければ良いが…。)

 

 沈黙を貫く紗南は、そう懸念していた。また、荒魂討伐の指揮が一時的に現場任せになっているため、彼女としてはこの状況から早期にカタを付けたいところであった。緊張状態は、未だ続く。

 

 

 

 

 ー鎌府女学院 某学生寮ー

 

 四機のヘリに分乗していた武装集団のうち、誠司と交戦した刀剣類管理局本部エリアの制圧部隊、朱音達首脳部を無血確保した特祭隊本部の制圧部隊は、目標を完了しつつあった。

 これとは別に折神家を取り囲むように展開中の制圧部隊、更に鎌府女学院を制圧に向かった部隊は、侵攻に足止めを受けながらも着実に目的を遂行しつつあった。

 

「動くなぁ!!」

 

 多くの生徒が談笑や勉強、就寝準備をしている時に、不意を突かれる形で巻き込まれることとなった。

 

「な、なに!?」

「あれ、映画か何かの撮影?」

「ちょ、やだ!」

 

 まだ現実を受け止めきれない生徒達は、不思議そうな雰囲気で武装集団を眺めていた。

 …だが。

 

 

 

 

 ババババッ ババババッ

 

 

 

 

 この複数の閃光が、全ての空気を一変させた。

 休憩スペースに設置されていた、壁掛け式の液晶テレビに向けて集団の一人が発砲。

 発砲後にそれを生徒達が確認すると、液晶画面は粉々に砕け、それからは火花を散らしていた。

 

「いいか!これは本物だ!死にたくなければ、我々の指示に従え!従わない場合、射殺も辞さない!」

 

 撃たなかった別の人間がそう告げると、恐怖のあまり泣き出す者やあまりの衝撃により呆然とする者など、ストレス状態に置かれた時の人間が示す例が揃っていた。

 

 

 

 

 結論から言えば、生徒達は大人しく従った。銃を向けた状態での説得は、刀使を除いた無力な生徒に対して非常に効果的であった。正に恐怖が支配する、というものだった。

 たまたま休憩スペースの出来事を知らなかった刀使の中には、抵抗を試みようとした者もいた。だがその対策は既に取られており、武装集団側は休憩スペースに居た生徒を二人連れ出していた。武装集団のうち、二つの三人一組のグループを作り、そこに逃げられないよう両手に手錠を掛けた、先述の生徒を一人ずつ伴わせた。部屋にいた刀使達に対し、指示に従わない場合はその生徒の頭や胸に銃口を突きつけ撃つぞ、とこう脅した。

 大粒の涙をこぼす生徒の姿を見せつけられると、多くの刀使は戦意を喪失せざるを得なかった。また、御刀を持とうとした刀使へ向けて、本当に発砲したケースもあったが、この時はたまたま御刀の柄に銃弾が当たり、それが刀使から離れた位置に落ちたため、二度と取り返しのつかない事態になることは無かった。

 

 結局、学生寮にいた生徒・刀使合わせて四百人弱は、鎌府女学院の体育館へと押し込まれた。先に体育館へと避難済みだった職員らもこれに巻き添えを食らい、武装集団が男女別に分けて固めたことで、一斉に逃げるという方法が取れなくなってしまった。

 そして、体育館内に設置されていた非常時の隔壁が下ろされたことで、武装集団が抑える狭い通路を除いて、生徒・職員らの逃げ場は失われた。携帯などの通信機器も制圧の早い段階で没収されたため、外へ伝える手段は無い。

 折角紗南が伝達した抜刀命令も、多数の人質の前では意味を為さなかった。体育館内で先に御刀を抜いていた刀使達も、武装集団の指示に従い、御刀を引き渡すことになった。これにより、反撃手段は失われた。

 進展の無い限り、銃口を向けられ続けるハイストレス状態に、四百人を超える者達は晒され続けることになる。…しかし、一人だけこの場に抑え込まれることが無かった人間が居た。だが、それに気付いた者はほぼ居なかった。

 

 

 

 

 

 

 ー鎌府女学院 学生寮某室ー

 

 そう、その人間こそ、今回の事態を計画した真奈美であった。

 

「…そろそろ、かしら。」

 

 各施設の制圧情報がリアルタイムに伝えられる。ヘリの突入に前後して、正門を二台の大型セミトレーラーが強行突破した。正門は、二台のうち後続車の方から降りてきた武装集団が占拠したことから、通信手段を除いて外部との物理的なアクセスが遮断された*1。また、トレーラーの牽引車がバリケードのように正門付近の敷地側道路を塞いだため、車両の進入も不可能となった。これは、本部周辺が孤立状態と化したことを意味した。

 

「結構あっさり制圧できているのが、私からすれば驚きだわ。…案外、男共って役立たずなのね。」

 

 肩透かしを食った真奈美だが、朱音の避難指示を守っていた隊員達からすれば、不本意な結果であっただろう。平時なら守られる、人命優先の指示が仇となってしまったのだから。

 

「さ、あとツーステップかしら。折神朱音との交渉次第で、ここの男共の命運も決まる。……ウフフフフッ、あー、楽しっ、人間の命がこうも簡単に扱えるなんてっ!」

 

 これを彼が聞いたらブチ切れること必至だろうが、当の本人の命も自身の掌の上にある以上、暴走する彼女を止められる者はいない。

 

「さて、合流前に指令を出しておこうかしら。『ヘリポートに逃げた男達を集め、周囲に油を撒け』と。『ただし、交渉決裂まで火を放つことは厳禁だ』、これでいいかしら。…ま、日本で見つけて思想に賛同した中で、アメリカで鍛えてきた娘達だし、上の指示には従うでしょ。…従わなければ、一緒に燃やせばいいだけだし。」

 

 何が彼女をここまで変えていくのだろうか、それは後々綴らせてもらうが、今の彼女に掛かれば人命などゴミ同然なのだろう。

 

『失礼致します。女王。お迎えに上がりました。』

「さ、後は私の、私達の悲願成就、私の時代の始まりよ。…千里が邪魔してくれたおかげで、その間に作戦も人材も揃えられたのは、ほんとその点においては感謝ね。お礼は言わないけど。」

 

 そして、綾小路の制服から上下を桃色のスーツに着替えた彼女は、顔面に偽装傷代わりのタトゥーシールを貼り、赤い伊達眼鏡と自動拳銃(オートマチック)を身につける。武装集団の先導のもと、朱音達の居る特祭隊本部へと向かう。

 今からの交渉事には、相手へは『はい』か『Yes』しか言わせないつもりである。それだけの脅迫(カード)は持っている。

 

(それに、ここの(・・・)刀使は既に全員制圧済みだ。もし武力奪還でも試みようものなら、死なば諸共だ。女も関係なく殺せばいい。…それに比べれば、あの方がどちらを選ぶかなど火を見るよりも明らかだわ。)

「…あー、この愉快な光景を見られなくて残念ね。千里も、◯◯××も。…これで、私は歴史に名を残せるわ。どのような形であれ、ね。」

 

 そうして、待機していた二人の構成員と共に、前を見て進む。チェックメイトまであと少し。彼女の目的達成までの気分は、最高潮に達そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ー神奈川県鎌倉市 鎌倉駅付近ー

 

 誠司が決死の覚悟で赴いた、刀剣類管理局本部での戦闘。その直前に彼の指示を聞いていた早希は、圭吾と愛実を連れて、秘密裏に本部を脱出していた。

 

「二人とも、ここまでくれば大丈夫だから。」

「あっ、ありがとうございます。三原さん。」

「ちょっと~、圭吾っちデレデレじゃん。」

「そっ、そんなことは!?ほ、本当ですって、違いますからぁ!」

「何が違うかはさておき、…これからどうしようかな。」

 

 三人は武装集団が部屋に突入してくる、その間一髪のところで屋外に脱出した。数階建ての建物から地面に落ちたのだ。普通なら死も覚悟する。だが、早希の八幡力により、その落下エネルギーを敷地から脱出するための前進に変えた。武装集団に発見されながらも、迅移を使ったことで辛くも逃れられたのだ。

 

「変だね、パトカーのサイレンが聞こえない。」

「…確かにおかしいですね。ここは本部からそう遠くもないのに。」

「…!?圭吾っち、三原さん!これ、機動隊本部じゃない!?」

「「え!?」」

 

 愛実が見せたのは、某動画サイトのリアルタイム映像だった。SNS上の注目を浴びるワードに混ざって、『男性優位の世に鉄槌を!』というものや『女は今こそ立ち上がる時』、『神聖な刀使を、男達の汚い手から解放しろ!』など、ここには書けないレベルでの書き込みが場を支配していた。その中の一つに、動画サイトへのリンクがあったのだ。

 

「…何、これ。私達、一緒に仕事したり任務をこなす男性の方から、そんなことされたことないのに。…誰が、こんなデマを。」

「…三原さん。これ、水沢さんに一刻も早く伝えないとマズくないですか?」

「私も同感だよ~。…でもさ、水沢さん、出るの?」

「あっ。そっか、今警察の人と一緒なのかもしれないのかあ…。」

 

 即座の連絡は断念し、姫乃へメッセージを残すことにした早希。

 

「後は、姫乃さんが連絡をくれればいいはず。…私達は里奈さんと早く合流しようか。」

「「はい!」」

(……糸崎君、どうか無事でいてね。必ず、戻るから。)

 

 三人は本部から距離をさらに取り、神奈川県警本部まで事情聴取の書類を渡しに行くべく横浜市へと向かっていて難を逃れた、里奈との合流を目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 ー神奈川県横浜市 神奈川県警察本部ー 

 

 鎌倉から電車に揺られ、最寄り駅から歩くこと計一時間ほど。里奈は二つのスーツケースに詰め込まれた大量のコピー書類を、県警本部で彼や千里の失踪事件を担当する人間に引き渡し終える。

 

「もー、昨日の今日だからホント疲れるわよ。…さて、夜遅くなるけど帰ろうかしら。」

 

 今日の仕事は一旦終わりではあった。無論、彼や千里を探しに出たいところだが、目立った手掛かりが無い以上は黙々と仕事をこなし、邪魔な情報を一つずつ削っていくしかなかった。

 

「さってと。早く鎌倉に帰ろうかしら。…あー、この時間にここを出るってことは、帰り着くのは23時過ぎくらいかー。…横浜駅で何か買って帰ろうかしら。」

 

 鎌府の食堂もそう遅い時間まではやっていないため、里奈は久し振りに持ち帰りでもしようかと思っていた。同僚の失踪やそれに伴う急な取り調べなど、たった一日二日で状況がコロコロ変わるというのも、正直気が滅入るところではあった。

 このような精神状態のなか、鎌倉へ帰るべく馬車道駅を目指して歩いていた、そんな時だった。

 

 

 

 

 ピリッ ピリッ ピリッ

 

 

 

 

 彼女の携帯に着信が入る。

 

「誰からかしら。…三原さん?…何かあったのかしら?」

 

 特に何の構えもしていなかった里奈は、早希からの連絡を気負うことなく出た。

 

 

 

 

「もしもし、三原さん?どうかしたの?」

『里奈さん!たっ、大変です!』

「大変?何が大変なのよ?」

『鎌倉が…、本部が襲われました!』

「……は?」

 

 気の抜けたような返事をした里奈をフォローすると、早希の言葉に現実味が持てなかったことがその理由だった。だが、早希は続ける。

 

『い、糸崎君が逃げろと言って…、そしたらあちこちからヘリや銃声やらが聞こえてきて……。私、私どうしたら…。』

「おっ、落ち着きなさい!三原さん、そこには貴女一人だけなの?」

『嵯峨野さんと、亀岡君も一緒です。糸崎君の指示で、この二人を連れて脱出しました。』

「姫乃に連絡は?」

『まだできてません。メッセージは残しましたが。』

「…了解。どこかで落ち合いましょうか。」

『なら、糸崎君の実家でどうでしょうか。』

「え、糸崎の実家?」

『はい。横浜の郊外にあるお家なんですけど、私と糸崎君の仲は互いの両親に明かしてありますから。事情を説明すれば、何とかなると思いますよ。』

「…しれっと惚気話を持ち出さないでよ…。」

 

 とはいえ、彼女の話を聞く限りでは恐らく今の状況下で鎌倉には戻れないことも分かっていたので、早希の提案に乗ることにした。

 

「何か買っておいた方がいいものってあるかしら?」

『出来れば、三人分の飲食物、二食分をお願いできますか?後で、緊急避難時の経費として財務課に叩きつければいいですし。』

「…そうするわ。じゃ、また後で合流しましょ。」

『後で糸崎君のご実家の住所を送信しますから、どうにか向かってください。私達は先に行って待ってますから。』

「りょーかい。」

 

 通話を切ると、里奈は大きく溜め息を吐いた。そして、鬱屈した率直な気持ちを吐き出す。

 

 

 

 

「あーもう!早く見つかりなさいよ!◯◯~!!」

 

 

 

 

 夜のみなとみらいに、里奈の声がこだまするのだった。そして気持ちを入れ替えた彼女は、再度横浜駅を目指した。

*1
本部の各門のうち、夜間は決められた時間以降は正門のみが通行許可の下りる、かつ唯一の車両通行路となっていたため。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

次話で本節は最後となりますが、今回の武装集団側の襲撃目的を明かしていきます。
…応戦が良かったのか、本話の流れのように武装解除のち投降が良いのかは、なかなか難しい点ではあります。
しかしながら、前提として刀剣類管理局は警察組織であるため、このような人質事件を受けたらどのような解決方法が良いのか、そのノウハウは持っていないようにも思います。本編ではそれを踏まえたうえで、作戦を練ることとなります。

私事ですが、先日Amazonで頼んでいた可奈美のフィギュアと刀使ノ巫女のサウンドトラックである「音綴リ(壱・弐)」が届きました。
可奈美のフィギュア、クレーンゲーム向けの物だったとは思えないほどクオリティが高かったので、結構驚きました。サントラの方も聞いていこうかと思っております。

それでは、また。
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