刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。
九州北部の大雨が酷くなってきておりますが、毎年のように襲い掛かる水害からは自分で身を守るほかないのだろうか、と思わされる近況であります。

話を戻しまして、今回は人質奪還作戦終了後の状況を綴っていきます。
時系列派は作戦終了後、同日夕方から夜にかけての頃になります。

それでは、どうぞ。


⑳ 届かぬ嘆き

 ー刀剣類管理局 医療施設ー

 

 朝方の『男性排斥運動』との戦闘で負傷した刀使や特祭隊員達は、同じ本部の敷地内にある医療施設へと運びこまれていた。

 雪那が学長時代だった時には、ノロの投与による刀使の身体能力増幅などの人体実験が行われていた。だが、現在は特務警備隊となった真希達からのノロの除去治療が、医療研究の中心となっている。なお、夜見は本人の意向によりノロを取り込んだままである。

 今は、銃創や銃撃による擦過傷など、外科的な治療が必要な人間が送り込まれ続けていた。

 

 

 

 

 そのうちの一角、集中治療室(ICU)脇の透けガラスから、中を覗く男子がいる。その視線の先には、酸素吸入機が取り付けられた少女がベッドに横たわっていた。最後の作戦において、場の流れを生み出した早希であった。

 

「……早希。」

 

 ヘリポートでの人質奪還作戦、その最終段階に早希は、『男性排斥運動』の戦闘員から背中へ複数発の銃撃を受けた。銃撃後に意識不明となり、医療施設へと緊急搬送された。数ヶ所の銃創からの大量出血が彼女をショック状態一歩手前へと追い込み、弾丸の摘出や傷口の縫合といった十数時間に及ぶ緊急手術を余儀なくされた。

 腕のよい外科医が執刀したこともあってか、手術そのものはなんとか成功した。しかし、彼女の容態は未だ予断を許さない状況が続いており、あのベッドの上で生死をさまよっている。

 

「糸崎さん!」

「糸崎!」

「……おう。中島に、水沢も。」

 

 作戦上の一連の後始末が終わり、誠司と合流した二人。誠司は、同僚達の姿を見ても力無く応対する。

 

「早希さんの容態は、…どう?」

「……手術は上手くいった。だが、銃弾のうち一発は心臓と肺の近くで止まってなあ。…周りの細かな血管を傷つけているらしく、今後早希が助かるかは三割の確率らしい。」

「……!そんな!」

「…まあ、奇跡みたいなもんだよ。写シの無い状態で銃撃を受けて、心臓近くを含めて胴体に数発撃ちこまれたにも関わらず、今の今まで生き長らえている状態なんだからな。早希は。」

 

 半ば放心状態のなか、そう話す誠司。

 

「……早希、なんで、何で俺を庇ったりなんかしたんだよ!?―お前が死んだら、折角死者もなく皆助け出せたっていうのに、皆悲しむだろっ…。」

「糸崎…。」

「悪い、中島。頼むから、今だけは泣かせてくれよ。…死ぬ時は一緒だって、撃たれる前言ったじゃねぇか。……早希ぃーっ!!……クソォッ!」

 

 誠司は泣き叫ぶように、通路上でへたり込んだ。本当なら彼女の手を握って、生き続けろとすぐ傍で励ましていきたい。だが、それは叶わない。今の早希の身体は、過冷却された水のような状態だ。何らかの激しい衝撃が加われば、体内で縫合した血管の傷口が開いて、今度こそ本当に助からない可能性が高まる。なので、誠司は早希自身の持つ治癒力に賭けるしかなかった。

 

 

 

 

「……糸崎、アンタは一度休んだ方がいいわよ。ここは私らが見ているから、少し寝てきなさい。何かあれば、すぐ呼ぶから。」

「……分かった。ちょっと頼む。」

 

 誠司は少しフラついたような足取りで、休憩スペースへ向かおうとした。

 その姿をみた姫乃が、誠司のもとへ駆け寄った。

 

「糸崎さん、私の肩を借りていってください。…多分ですが、ただの疲労だけじゃないですよね?そのフラつきようは。」

「……やっぱ、お前には適わないな。水沢。…ほらよ。」

「ああっ!アンタ!」

 

 里奈は驚いていたが、姫乃はなんとなく察しがついている様子だった。

 誠司の右腕上腕には、医療機関向けの絆創膏があてられていた。

 

「早希と俺の血液型は一緒だったからな。他の負傷者の分で輸血パックも足りてないって聞いて、緊急措置で俺の血を早希の分の輸血用として採ってもらったんだよ。もちろん、血液媒介の感染症やRh型も問題ない。」

「……そんな状態で、アンタ、今の今までずっと立ち続けてたの!?」

「はははっ、悪いな…。…でもな、早希を死なせたくないってのは、俺自身譲れないんだよ。命を懸けて俺を守ろうとした早希を救う手立てがまだあるなら、な。」

「……本当に、お似合い過ぎるほどの方達ですよ、貴方がたは。」

 

 つい、目が潤む姫乃。

 その後、誠司を連れて休憩スペースへと向かっていった。

 

「……早希さん。どうか、生きるのを諦めないで。」

 

 一人残された里奈は、ガラスの向こうの彼女へとそう呟いた。ベッド脇に置かれた心電図は一定のリズムを保ちながら、早希が今も生きようと足掻くその鼓動を表していた。

 

 

 

 

 

 

 ー折神家・特別祭祀機動隊本部 局長室ー

 

 局長室では、朱音や紫、紗南を中心とした首脳部が、本部や鎌府敷地内での被害状況の報告を受けていた。

 そのリスト*1をめくる度、朱音と紗南を目眩が襲う。

 

 

「……はあ、困りましたね。人的被害もそうですが、物的損害も激しいのが。」

「…水沢さんの作戦案は、被害を減らすうえでもよく練られた作戦だったと、私も思っています。…ただ、その代償もまた、大きなものです。」

「朱音、あまり言ってやるな。私も途中から傍で見ていたが、あの男と同じ、いや、それ以上に的確な指示を出していたと思うぞ。むしろ、荒魂討伐ではないにも関わらず、急に組まれた作戦を混乱なく指揮することがどれほど大変か、お前も分かっているだろう?」

 

 紫も姫乃へのフォローを行う。ただ、確かに損害も大きかっただけあり、現場に居なかった人間からすれば、姫乃が糾弾されかねない作戦内容であったことも確かだ。

 それでも。

 

「水沢はあの混乱した状況のなかで、作戦をほぼ完璧に遂行せしめてみせた。その技量を責めることが、果たして建設的であるとは私には思えない。」

「まあ、前局長ならそう仰るとは思いましたよ。目下の問題は、セキュリティーホールが生じた原因と、今回我々を襲撃した集団のことですから。」

「『男性排斥運動(ブルー・パージ)』、と言ったそうだな?その団体は。」

「はい。警察庁公安部や神奈川県警とも協力しながらの解明となるでしょうが、これほどの武装が国内にあったと考えると、某国、いえ複数国家・団体の関与も疑われてきます。」

「……ああぁ~っ!!どうして肝心な時にアイツは居ないんだ!」

 

 紗南は、失踪中の彼の不在を嘆いた。彼ならば、何だかんだ多くの人間と縁があるため、不審な情報の類いは拾い上げて探せそうにも思えたのだ。……どうにか早く彼が見つかってほしいと、一同思わずにはいられなかった。

 

「…ところで、鎌府の三原さんの容体はいかがですか。真庭本部長。」

「……最悪の場合、彼女の容体の峠は明日の夜だと医師からの報告を受けています。縫合箇所の自然治癒が失敗した場合、という話ではありますが。」

「糸崎さんは今、どちらに居られますか?」

「彼女の傍に居たいと、医療施設で彼女の回復を待っているようです。……ですが、見通しは厳しいということも彼に伝えています。」

「……そう、ですか。」

「…刀使が殉職するという事態は、避けたいものだ。…まして、荒魂討伐ではない時となると、な。」

 

 紫は、相模湾岸大災厄での惨状や昨年末までのタギツヒメの絡んだ衝突から、近年では減少傾向にある刀使の死亡案件が、再び引き起こされるのではないかと内心危惧していた。

 勿論、彼女も夜見が引き起こした綾小路での大規模な刃傷沙汰も知っていた。あの時は、近衛隊の強制組成と刀傷の治療を合わせるように、結月や雪那が長年の研究で生み出したノロのアンプルがあったからこそ、(モノの良し悪しはともかく)綾小路の生徒達に死ぬ人間が現れなかったわけだ。

 しかし、今回は違う。粗暴な人間から向けられた悪意が、彼女の身体へ突き刺さったのだから。それによって現在、命の燈火を消しかねないような状況に追いやられているのだ。

 

「……捕らえた者達の処遇は今、どうなっている。」

「負傷して治療を受けている者を除いて、多くの方は大人しく従ってくれています。…ですが、男性の刑務官や警官では証言を拒否することも間々あるそうで、動機の解明などにはまだ時間が必要です。」

「……男を嫌う、だから『男性排斥運動』なんて名前を団体に付けたのでしょうね。」

 

 

 コンコンコン

 

 

「……お話し中、失礼致します。紫様、朱音様。真庭本部長。」

「夜見か。どうかしたのか。」

「綾小路の相楽学長からお電話です。」

 

 夜見は持ってきたタブレットを紫に渡し、結月との会談に移る。

 

『紫、聞こえるか。』

「ああ、聞こえている。何かあったのか。」

『手短に話す。其方の作戦終了後の点呼確認時に分かったことだが、どうやらウチの生徒が一人、行方不明になったようだ。』

「……?それは事前に報告されていた、四条千里ではないのか?」

『いや、また別の生徒だ。行方不明になった生徒の名は、高等部一年、祇園真奈美だ。後方要員の支援と経験を積ませるために、私の指示で刀剣類管理局本部の◯◯がいた部隊との兼務をさせていた。……それで、だ。』

「まだあるのか。」

『先に失踪した四条千里とは同学年の友人だったと、複数の生徒から証言を受けている。最も、ここ数ヶ月間は何かトラブルでも抱えていたのか、あまり仲の良い関係性ではなかったようだな。ただ、ここ一年ほど、私達からすれば気になることをずっと呟いていたそうだ。』

「なに?」

『男が嫌いだ、というのをな。今回鎌倉を襲撃してきた者達と関連があるかは分からないが、万が一の時はそれを見抜けなかった学長の私の責任だ。…綾小路としても、今回の件に関して積極的に協力したいと考えている。』

「結月。情報に感謝する。それと、一つ頼みがある。」

『言ってみてくれ。』

「四条千里、及び祇園真奈美の寮室を確認したい。何か手がかりがあるかもしれないからな。此方から二、三名派遣しても構わないか?」

『それくらいは構わない。到着次第、対応させてもらおう。』

「すまないが、よろしく頼む。」

 

 結月から調査員の派遣を承諾してもらったところで、通信は終わる。

 

 

 

 

 通信が終わると、朱音は襲撃前の案件を話題に上げる。

 

「今回の襲撃で少しおざなりになっていましたが、◯◯(彼の苗字)さんと四条さんの捜索はどうなっていますか?」

「水沢が何か情報を得たとは聞いていますが、襲撃の影響で情報整理がままならないそうです。明日以降、また◯◯や四条の捜索活動に戻るとのことですが。…それと、神奈川県警からもNシステムの情報を回してもらっていますが、成果は芳しくないようです。」

「二人が既に死亡している、ということは考えられるか。」

「その可能性もあると思っています。ですが、もしお二人を連れ去ったのが内部犯であるならば、次の被害者を生まないためにもいずれにせよ見つけ出す必要があります。…姉様も、信じておられるのでしょう?◯◯さんが生きていることを。」

「まあ、そうだな。」

「……取り敢えず、ウチの情報部隊を◯◯と四条の捜索にあてます。それならば、今は大変な状況にある糸崎達への負担も軽くなるでしょうし。」

「頼む。」

 

 紗南の提案に賛成する紫。朱音も静かに頷いた。

 とはいえ、今回の襲撃により刀使達をはじめ多くの者達が傷つき、施設の損耗も激しい以上、多方面への即座の行動を起こすのは難しかった。少なくとも、最優先される荒魂討伐に支障が出ないよう、早期の建て直しが求められることになった。

 特に、刀使達へのメンタルケアは最優先事項として取り組むべきものとなった。翌日からは多数の心理カウンセラーが鎌府女学院や刀剣類管理局本部などに派遣され、生徒や職員たちの心を少しでも癒す試みがなされていった。

 なお、相手側の死者が発生した場所に関しては一週間以内に丁寧にお祓いを行ったうえで、本部の敷地内にある神社で魂鎮めの儀を後に行うこととなった*2

 

 

 

 

 

 

 ー刀剣類管理局本部 彼の部署ー

 

 建物の損傷が少なく済んだため、刀剣類管理局本部では比較的早期に通常どおりの業務再開がなされた。ただ、彼の部署に関しては、騒動前から行っていた彼や千里の捜索活動と情報収集がメインの業務となっている。

 刀使達へのメンタルケア要員も数名、ここの実働部隊から派遣されているとのことだ。

 

「◯◯さんも四条も、一体どうして失踪なんか…。」

「詮索は後にして。ともかく、内部犯行の疑いが拭えないとの話だから、慎重にお願い。」

「ねー、圭吾っち。疲れた。」

「我慢しろ、愛実!ただでさえ、糸崎さん宅でお世話になってるんだからな。三原さんのことで大変な糸崎さんの精神的負担を、少しでも減らす努力をするのが筋ってものだろ!」

「…分かってるよー。あ、今の画像、ナンバーが言われてたやつと同じかも?」

「…っ、ほんと目はいいんだよな。愛実。」

「やー、それほどでも。」

 

 四月で新たに実働部隊へ加わった、倶晴ら四人が解析作業などを行っていた。彼らは普段、彼や里奈などが常駐している部署の部屋の、その隣にある部屋で作業を進めている。

 その部屋へと、朝方まで大規模な作戦指揮を行った姫乃がやってくる。

 

「皆さん、お疲れ様です。」

「水沢さん!ここに来て大丈夫なんですか?」

「水無月さん、昨日今日はご苦労をかけました。少しの間だけでも寄ろうと思いまして。あとで里奈さんも来ます。」

「…水沢さん。休まれていかなくて、大丈夫ですか?」

「北野さん、お気遣いありがとうございます。…でも、三原さんのことをずっと気に掛けている糸崎さんに比べれば、私なんて全然…。」

「…お水ならありますから、一杯飲まれていってください。」

「ありがとうございます。」

 

 倶晴は姫乃の背後に何か良くないモノを捉え、コップへ清めの塩を少し混ぜた天然水を渡す。

 彼女のその飲みっぷりは、よほど喉に飲み物を通していなかったのか、圧巻であった。

 

「はあっ~。ありがとうございます。ちょっと生き返りました。」

「いえいえ。」

(あ、黒い靄が離れた。)

 

 倶晴は、姫乃に憑いていたモノが離れていったことを確認した。

 

「水沢さん。そういえば、相模湖あたりまで行った時のことを情報共有しなくて大丈夫なんですか?」

「……あ、すっかり忘れてましたね。水無月さん、後で私の送ったファイルから、必要な情報すべてを皆さんに共有してあげてください。本格的な捜索は、明日以降に持ち越しになるでしょうから。」

「あっ、はい。」

「他のお三方も、あとをお願いします。」

 

 姫乃は今回の作戦指揮への検証を含め、数日は特祭隊本部の方で拘束されることになった。また、マスコミなどへの応対も控えているため、二人の捜索活動に加わるのはまだ時間が掛かりそうであった。

 

「では、また後日よろしくお願いします。」

「「はい!」」

 

 姫乃は再び、特祭隊本部へと戻っていった。

 それと入れ替わりに里奈がやってくる。彼女も正直、早希が目前で撃たれた精神的ショックもあり、実働部隊の面々にもなるべく早く仕事から上がるよう求めた。進展がない以上、下手に残って作業することは悪手であると考えたからだ。

 非日常に満ちた大波乱の一日は、定時より数時間遅れで室内の照明が落とされた。

 

 

 

 

 

 

 ー鎌府女学院 学生寮内休憩スペースー

 

 銃撃による物損はあったものの、寮の生活そのものには支障がないため、多くの生徒達が部屋へと戻っていた。

 寮近くにある大浴場から上がった可奈美は、ソファーでくつろいだ様子の姫和を見つけ、声を掛ける。

 

「姫和ちゃ~ん!」

「あっ、可奈美!―聞いたぞ、燕結芽とともに戦闘員を倒しまわったと。」

「まあ、ね。…あんまり、気は進まなかったけれど。」

「だろうな。私も正直、いい気はしなかった。今回機敏に動けたことが日頃の鍛錬の賜物だと思えば、まだ納得のいくものではあるがな。」

「…でも、あの人達、どうしてあんなことを起こそうとしたんだろう。」

「さあな。…ただ、私もある意味ではあの連中の意図を読むことはできる。何かを変えようという、その意識をな。最も、それは少なくとも私達に受け入れられるものではなかったようだが。」

「…確かにね。姫和ちゃんの時は、私もいて、朱音様達や舞草の人たちもいて、みんなが状況を変えようとして、って感じだったしね。」

「……アイツがもし居たら、今回の事をどう見たんだろうな。」

「○○さんのこと?」

「…私がアイツというのは、その男しかいないだろうが。」

 

 紫とのわだかまりも解けた今では、姫和が固有名詞以外で呼ぶ人間というのは限られる。それだけ彼は可奈美や姫和達との関わりが多かった、という事情も絡んではいるのだが。

 

「―でも、あの時は嬉しかったなあ。○○さん、私達が現世に還ってきた時には皆に連絡を取り回って、自分が会うのを一番後回しにしていたし。私達に会いたい衝動だってあったはずなのに、それは自分よりも他の人を、って感じだったのが戻っても改めて感じさせられた瞬間だったよ。他の人から伝え聞いた時には、やっぱり驚いたし。」

「そうだな。…ただ、その時が過労による看病と重なるのはどうにかならなかったのか、とはつくづく思わされるがな。」

「あー、うん、そうだね。…なんか私達が見つかった途端、今までの緊張とストレスの糸が切れて、一気に疲労がきたみたいだったらしいし。」

 

 舞衣や沙耶香、エレンや薫だけでなく、多くの伍箇伝の人間は可奈美や姫和の帰還をずっと待っていた。途中で彼女達の生存を諦めそうな人間も出る中で、彼は刀使以外の仲間達へ執念にも近い意志を示し続け、二人の帰還への希望を見出し続けていた。

 そんな人間が突如として居なくなったのだ。何の前触れもなく。

 

「…姫和ちゃん。私、○○さんのことを探してみたい。」

「なんだ、急に藪から棒に。」

「だって、ずっと○○さん、私達刀使のために、伍箇伝の人達のために頑張ってきたんだよ。…姫和ちゃんも知っているでしょ?今までやってきたこと、自分の身を顧みず何が何でも私達を守ろうとする姿を。」

「……そうだな。」

「真庭本部長に明日、荒魂討伐の合間に○○さんの捜索へ加わらせてもらえないか、訊いてみるよ。」

「…なら、私も共に訊きに行こう。岩倉さんや、舞衣達も一緒に連れて。どうだ、可奈美?」

「うん!皆で探せば、きっと見つかるよ!」

 

 本人の知らないところで、刀使達からの揺るがぬ信頼を勝ち取っていた彼。このことが彼や千里の捜索へどのように影響するのかは、後に分かることだろう。

 

 

 

 

 悲嘆にくれる者もいれば、現状を整理しようとする者もいる。あるいは、前を見据えようとしている者もいる。

 理不尽な暴力に屈さず、それを撥ね退けた彼女達は次なる道へと歩みを加速させようとしていた。

 理想だけでなく、今まで以上に地に足のついた現実的な刀使の在り方を見出すために。

*1

[刀剣類管理局側の被害状況](簡潔に)

 

《物的被害》

・ヘリポート『使用不能』

(破壊したヘリ四機の撤去&駐機場・離着陸場の点検や散布された油の分解作業など。復旧に最速5日)

・刀剣類管理局本部『使用可能・業務再開』

(銃撃戦などの偶発的衝突が軽微だったため、早期に復旧)

・特別祭祀機動隊本部『使用可能・復旧作業中』

(銃撃の被害確認&スプリンクラー使用の影響で一部水浸しに。電気設備の点検などに時間を要す。)

・折神家の建物全般『損傷軽微・居住可能』

(無差別射撃による銃撃痕は残るものの、ちょっと修理すればいい程度。)

・正門・大門付近『通行不能・短期復旧不可』

(クレーターが生じた一帯の整地&地下通信・送電ケーブルの複数損傷部の要交換、通行可能まで8日)

・鎌府女学院『一部損壊』

(銃撃による被害と立てこもり現場となった体育館の被害が激しい。学校運営自体には支障なし。)

 

《人的被害》

・特別祭祀機動隊員(刀使含む)重体を含む重傷/11名、軽傷/67名、死者/なし(朱音への報告時点)

(この中には重体である早希も含まれる。全体的な傾向では銃撃による負傷者が多い。)

 

[男性排斥運動側の人的被害](ご参考までに)

 

・死者/52名、行方不明者/4名、重体を含めた重傷/23名、軽傷/22名、無力化後拘束/33名

(死者の多くはコンテナ着弾時や誤射によるもの。行方不明者は、全て正門付近で展開中だった部隊の人間である。また、ヘリポートでの相討ちにより負傷者数が拡大。)

*2
刀使自体が霊的な存在であり巫女でもあることから、本部の敷地内で悪霊の類が生まれるようなことは避けたかった事情もある。この時の銃口を向けてきた相手への弔いをきちんと行ったことが、刀剣類管理局に向けられてきた世間のバッシングの嵐を弱めていく一因になった、と後世では考えられている。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

今回で鎌倉での出来事が一通り終わるわけですが、後の話では時系列が一旦巻き戻り、姫乃が相模湖付近へと赴いた理由などを綴りつつ、もう一波乱書いて参ります。

次回からは二話か三話程度、閑話を挟みます。
…筆者も一旦シリアスから離れたいので。

それでは、また。
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