刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は捜索側の視点から綴っていきます。
なお途中、匂わせた描写は出てきますが本編は共通ルートですので、彼は誰とも(恋愛面での)付き合いは持っておりません。

とじともでは、親衛隊メンバーの伍箇伝各校に在籍していた時代の衣装が出てきますが、なかなかエモいですね。
…最近引いた水着のエレン、戦闘終了時の動きにあざとさを感じるのはなぜなのか。(個人の感想です。)

それでは、どうぞ。


⑧ Deadlock

 ー神奈川県相模原市 某サーキット場ー

 

 薫達が天候悪化に伴う雨対策の実施のため一度撤収した、その少し前のこと。

 里奈や彩矢などを乗せた指揮車両の一隊は、相模湖の湖畔に立地する小型カートのサーキット場の一角をお借りして、ここを拠点に山間部や廃屋の捜索を行っていた。

 このサーキット場は秋山川側から相模湖に注ぐ位置にあり、モータースポーツを楽しみながらも風光明媚な景色を眺めることができる。…晴天であればの話だったが。

 

「あー、これは降るわね。水無月さん、天気予報はどうなっているかしら?」

「今からの降水確率は90%。間違いなく、雨ですね。もっと言えば、大雨です。」

 

 葵は里奈からの疑問に対して、比較的悪い情報であることを伝える。

 ここ数日、梅雨入りしていることもあってか雨天の割合が高い傾向にあった。これはこうした捜索活動においては、二次遭難の危険も増すために好ましい状況ではなかった。

 

「ただ、幸いにしてガソリンスタンドは近くにあるから、燃料を気にしながら捜索活動を行わなきゃならないってことにはならなさそうで良かったわ。」

「…それで里奈。私は他の学校の子と特祭隊の人を連れて、聞き込みと建物の確認をしていけばいいんだよね?」

 

 里奈は彩矢からの確認事項を聞いて、すぐに首を縦に振る。

 

「ええ。大多数の方は今回のことに関してあんまり関係ないだろうから、聞き込みをして特に怪しい話とかもなければ、その場からすぐに引き上げるわ。…それに、地中探査用の超音波測定器とサーモグラフィーカメラも持って行くから、聞き込みの間の数分で建物や周囲の状況がどうなのかがはっきり分かるわよ。」

「まさか、警察官になろうと勉強していることを活かす機会がくるとは、全然思わなかったなあ。」

「ま、彩矢みたいな人当たりのいい女の子を邪険に扱うような人間がそう多いとも思えないし、その辺は気楽にいきましょ。」

「…できれば見つけたいよね。私達の手で○○君ともう一人の娘を。」

「……ええ。そうね。彩矢、お願いね。」

「里奈も、指示頑張ってね。」

 

 里奈と彩矢は、それぞれの役割を果たすべく動き始めた。

 

 

 

 

 里奈達が核となる捜索隊の第六班は、後述のようなやり方で捜索活動を展開する。

 まず刀使は、居住地域では各地域の状況を一通り確認し、自治会などの方がいれば話をつけて捜索の助力(と言っても、他の住民に聞き込みがあるという話を事前に周知してもらう)をしてもらう。そうでない場合は、透覚を使いながら地上にいる人の数をカウントし、指揮車両へと報告する。山間部の捜索を行う時は、先行して危険な野生動物あるいは荒魂の捜索を優先して進めてもらうようにしている。

 次に、彩矢達のように一般人で構成される本隊は、聞き込みと各種測定装置を用いながら、人と建物の確認を進めていく。山間部の捜索時は、金属探知機と地形スキャナーを活用しながら、不自然な窪地や竪穴などがないかを確認していく。

 このような二面的なやり方を採ったのは、彼女達に残された時間と担当場所の問題であった。あまりにも捜索範囲を広げ過ぎると、兵站時に問題となる補給線同様に捜索漏れや範囲の無制限化が起きやすくなることが挙げられた。少なくとも二人が生きていることを前提にするのならば、捜索漏れは絶対に避けねばならないのだ。

 

(しかしまあ、厄介なのはこの雨ね。機械には天敵である水が、ここまで捜すのを面倒なことにするなんて。)

 

 山間部の捜索では木々が生い茂っている関係上、ドローンや無人航空機(UAV)が使えないため人の手に頼らざるを得ないのだが、その人もこの大雨では動かしにくい状況にあった。

 

(…彩矢、ごめん。かなり頼ることになるかもしれないけど、どうにか見つけて。)

 

 人海戦術が功を奏するのかは、各地に散る捜索隊全員の手に掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ー捜索隊第四班 野営拠点ー

 

 相模湖より下流側を捜索する薫達。天候の悪化を受けて、一行はレインコートを着るなどの防水・防寒対策を行っていた。

 

「おう、お前ら。準備はできたかぁ?」

「私は準備できましたよ、益子隊長。」

「私も、準備完了です!」

 

 葉月と美弥は終わった様子だったのだが、

 

「……えぇ~、嘘でしょ…。」

「どうした?麻美。」

「薫さん、このレインコート入りませんよ…。」

「うーわ。胸はともかく、サイズも合ってねえなこれ。他に無いのか?」

「男性ものでも、バストのサイズが合わないんですよぉ…。」

「……智恵も大概だったが、お前っていわゆる着痩せする人間だったのかよ…。」

 

 とは言え、班員の命を預かる以上は、麻美を危険な状態で捜索活動に充てる訳にはいかなかった。

 

「それなら、大型のゴミ袋はどうでしょう?45ℓサイズのものは。」

 

 悩む二人に助け舟を出す葉月。

 

「それでどうするんだよ?」

「隙間ができてしまうのなら、ゴミ袋でそれを塞いでしまえばレインコートとほぼ同じくらいの耐水性はあると思いますよ?」

「なるほどな。麻美、それでもいいか?」

「はい、構いませんよ。…まさか、この身体が仇になるなんて…。」

 

 当の本人は若干凹み気味ではあったが、麻美の問題も解決し、薫ら刀使達は再び捜索活動へと戻る。

 この日の捜索限界時間は午後十時までであった。その時間一杯を二人の捜索に費やす。

 

 

 

 

 捜索活動を続けているなか、薫と美弥とで彼についての話を挙げる。

 

「益子さん、なんで○○さんってこうも狙われやすいんですか?」

「さあなあ。というか、お前の相方*1が一緒に来なかったことの方がオレは意外だったぞ。」

「仕方ありませんよ。歩、鎌府で突っ込んだ時にちょっと怪我しちゃったみたいなんで。…それに、私にも○○さんを捜す理由がありますから。」

「ふーん、そうなのか?」

「益子さん、綾小路が今は刀使の立て直しをしていることは知ってますよね。」

「まあな。だからこそ、お前もここにいるんだろうが。」

「その前に、歩がおかしくなってから病院での治療を受けている時に、○○さんから色々とお世話になったんですよ。」

「それだけでか?アイツの捜索に関わろうと思ったのは。」

「いいえ。…○○さん、歩のことや他の綾小路の人に対して、一生懸命に当たってくれました。歩が一時目を覚まさなかった頃に、私の体調も気に掛けてくださいましたから。……東京中が大変だった時に何にもできなかった、あの時の自分のようなことは、もう嫌なんです。」

「美弥…。」

「それに、綾小路での○○さんの人気って結構高いんですよ?卒業した先輩達や、私が知っている直近の方だと鈴本先輩とかでしょうか。」

「……あの男は、一度自覚ってものを知れって話だな…。」

 

 半ば呆れ顔を浮かべた薫。美弥の話を聞いていた麻美も、無線越しから会話に加わる。

 

『薫さん、私の兄ってやっぱりモテモテだったんですか?』

「おう、聞こえていたか麻美よ。そうだぞ、アイツ自身は全く気付いていない感じだったけれどな。……呆れるほどにな。」

『…その沈黙が別の意味に捉えられるようで、私はどう反応していいか悩みますが。』

「ま、お前は特に気にするな。何たって、アイツの妹ってだけで一部の人間からは嫌な目線が付いて回るんだからな。」

『それ、嬉しくないです…。』

「…心配するな。何かあった時はオレもお前を守るからな。」

『その時は、お願いします。』

 

 省エネ型の薫が珍しく、麻美に向けて姉御肌な姿勢を見せる。会話から離れかけていた美弥が、再び薫に声を掛ける。

 

「あ、あの~、益子さん?」

「ん?ああスマンな、美弥。」

「益子さんから見た、○○さんって、どんな人だったんですか?」

「そうだな…。…アイツと出会った最初は、変な奴だとは思ったぞ。それこそ、エレンと同じようにな。」

「古波蔵さんみたいな、ですか。」

「美弥、オレ達舞草の考えがどんなものかは知っているよな?」

「えっと確か、『かつて荒魂が人々から畏れられ、刀使達によって祀られていた古き時代へと戻していく』ために行動していた、とかなんとか…。」

「おおよそは当たっているな。まあ、ここにいるねねのように、荒魂にだって色んな奴がいる。刀使にとっては、荒魂をとっとと祓うってのが大半の認識であることもな。…だが、当時のアイツはそうしたことに対して、そんな風潮にすら歯牙にもかけないことを言ってきたな。」

「一体、何て言ったんですか?○○さん。」

「『人間の業によってもたらされた被害者であるのに、さも悪者扱いされるというのはどうなんでしょうか。』とな。あくまでもあの爺さん、ああ、美弥達にはフリードマン博士の方が分かるか。あの爺さんから大まかな話を聞いたうえでそんなことを言ってのけたんだ。あのおば…じゃなかった、真庭学長からそれを聞いた時は、正気を疑ったぞ。」

「…ん~?でも、舞草の人って○○さんのような考えを持っている方が多いんじゃないんですか?」

「ま、舞草って言っても色んな奴がいるからな。…中にはオレ達とそりが合わない連中だっている。」

 

 主に日高見派のような派閥のことを念頭に入れて言っているものの、彼女達もそれなりの正義・大義を持って行動しているので、真っ向からの対立をしたいわけでもない事情は、主流派の中にもある。

 

「んで、まあ変な奴って言ったのは、そんな組織的対立、あるいは荒魂そのものが悪っていう前提条件を多くの人間が抱いているっていう、そうしたオレら(舞草側)の思い込みをストレートな言葉で砕いてきたからな。後で聞いた話だが、荒魂と刀使の関係やあの相模湾岸大災厄のことを調べてきた上でのその言葉だったってのが、より一層『コイツ、マジか』って感想を持たせるくらいには、アイツなりの重さがあると思わされたよ。それにだ。」

「まだあるんですか?」

「…アイツ、ねねを全く怖がらなかったんだよ。というか今でもそうだが、アイツ、荒魂をきちんと敬っているんだよ。刀使が荒魂を祓ったあととかも。」

「……そう言えば、確かに私達が討伐を終えた時に、一人静かに合掌なさっている姿を見掛けたことがあります。もしかして、そのために…。」

「かもな。自然界に存在する小さな荒魂を見掛けた時は、あんまり怖がらずに『おいでーおいでー』とか言っている人間は、男だったらアイツくらいなものだろうよ。」

「…ブフッ。…すいません、ちょっと想像したら吹き出しちゃいました。」

「ま、それだけ荒魂に対して変に怖がったりしないことは珍しいからな。ただ同時に、オレ達刀使の直面する問題にもずっと関わってきた。……休めとは言ったが、意味が違うだろうが……。」

「益子さん…。」

「悪い、辛気臭いのはオレも嫌なんでな。捜索に戻るぞ。」

「はい。」

 

 美弥との話を終えた薫は、彼女に先行捜索を指示する。

 

(…お兄ちゃん、やっぱり凄いね。妹の立つ瀬なんか無いや。―だけど、絶対に見つけるから。)

 

 無線越しから盗み聞いていた麻美は、自分の知らなかった兄の考えやその行動論理をまた知る。彼女は今度、舞草の人間から兄のことを色々と聞いてみようと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 ー県立相模湖公園 臨時指揮所ー

 

 もう間もなく、一日目の捜索終了時間を迎える。雨天に見舞われたものの、捜索予定範囲の四割は回ることができた。だが、未だに発見の報告はない。

 真希と寿々花は、指揮を統括する和歌子とともに打ち合わせを進める。

 

「刀使や特祭隊を投入しても、ここまで見つからないものなのか?」

「とはいえ、まだ六割は残っていますわ。すぐに見つかっているのなら、これほど大規模な捜索を行う必要はありませんもの。」

「住民の避難はどうなっている?」

「捜索予定範囲での避難要請は、約八割の世帯で承諾を得ております。が、これ以上は難しいでしょうね。」

 

 和歌子からの情報を聞き、真希は何とも言えない表情を浮かべる。

 

「そうかい。時間を過ぎ次第、ここに近い捜索隊は戻ってきて仮眠を、遠い部隊は兼ねてからの指示通り野営を行うように指示を出してくれ。早く見つけ出したいのは皆同じだが、今は休息も必要だ。」

「第一班から第三班はこちらへ。第四班から第八班までは各地で野営をお願いしますわ。」

「…彼の捜索のために来てくれた和美たちには、感謝しきれないね。彼女達が居なかったら、今頃てんやわんやな状況になっていただろうから。」

「さて、真希さん。明日はどう進める予定ですの?」

「周辺の道路と家屋の捜索を進めようと思う。山間部の捜索は、それらが終わり次第だね。ただ、問題は…。」

「この雨ですわね。……状況が悪化しなければ良いのですが。」

「いずれにしても、荒魂が見つかった時に備えて御刀の整備は怠らないようにするよう、各班への通達を頼む。」

「はいっ!了解しました!」

 

 オペレーターとして派遣されていた梢*2が、マイク越しにその明瞭な声音で各班へと注意喚起した。

 

「寿々花、僕は少し先輩達に挨拶をしてくるよ。その後、そのまま一度横になる。」

「こちらは私と苗場さんに一任なさい。綿貫さんには特に、真希さんからお礼を言っておいたほうがよろしくてよ。」

「ああ、分かっているよ。それじゃあね。」

 

 寿々花達の居る天幕から静かに去った真希。そのまま、和美や奈緒などがいるテントへと向かったようだった。

 

 

 

 

 真希が去った後、和歌子が寿々花に近寄って話しかけてきた。彼女の物憂げな表情が気になったからだ。

 

「寿々花様、良かったのですか。綾小路の先輩方もいらしたんでしょう?」

「私の場合は、最悪家の力を使えば会うことは叶いますもの。今急ぎで話す内容はありませんわ。」

「アッ、ハイ。……確かにそういうことも可能ではありますよね。」

「まったく、皮肉な話ですわね。彼が居なくなったことを聞いて、一度は現場を離れられた方と再び話す機会を持つことが得られるようになるなんて。……こんな雨、早く止んでしまえばいいのに。」

「寿々花様…。」

 

 和歌子は、夜雨の支配する相模湖を遠く見つめながら悲しげな顔を浮かべる主人の姿を、ただ静かに眺めていた。今の言葉は天候に関してのことだったのか、それとも…。

 そんなことへ意識を向ける前に、彼女は再び捜索隊への指揮へと戻る。苦々しく、そして自身にとってもあまり得意ではない人間である彼が、主人から心配されるような人間であったことを、彼女は改めて羨ましく思えるような気がしてならなかった。

 それと同時に、寿々花は自分が同じような目に遭った時に、果たしてこうして捜してくれるのだろうか、と要らぬ想いを抱くのであった。

 

 

 

 

 

 

 寿々花の元から離れた真希の方は、彩矢以外のOG組、特に和美との間で思い出話にふけっていた。

 

「こうしてじっくり話をするのは久しぶりだね。和美。」

「真希様も、いつもと変わらぬ凛々しさで安心いたしました。…ですが、やはり落ち込まれていますね。」

「…ふっ、君とは長い付き合いだったから、流石に分かるよね。」

「彼のことを気に掛けていらしているのですね。…こう言うと失礼に当たるかもしれませんが、正直意外でした。真希様、彼のことはあまり意識していらっしゃらないものかと思っておりましたので。」

「僕が責任者としてこの作戦を統括していることかい?」

「ええ。他の方、例えば此花様が責任者ならば多少なりとも分からなくはないのですが、移動道中で中島さんから真希様が率先して責任者として名乗りを上げたと聞きまして。」

「…あの先輩*3はぁ…。…確かに、朱音様へは僕が責任者として事態に当たると言ったさ。勿論、理由はあるよ。」

「というと、一体どのようなものでしょうか?」

「一番大きいのは、刀使達の士気だね。賛否両論あった対刀使制圧装備や御刀を使わないで実行した近衛隊の鎮圧など、彼が関わった負の側面もある。一方で、自身の危険を顧みることなく刀使達を救援しに向かったり、常日頃から僕達も含めて多くの人間へのフォローをずっとやってきたりしていた。…死んでいることがはっきりしていれば諦めの一つや二つつくだろうけれど、生死が不確定な状態というのが長引けば、それを気にする人間を増やしていき、ひいては刀使全体への問題に繋がりかねない。」

「つまり、事故防止対策、でしょうか。」

「まあ、そうとも言えるね。まして今回の事態が引き起こされたのが、彼ともう一人の娘には全く落ち度のない拉致であったこともね。僕も含めて、彼でなくとも誰かが同じような目に遭っていた可能性があったわけだから、その恐怖心を払拭したいっていう狙いもある。」

 

 だいたいこんなところが、真希からすると彼らを捜す理由だったりする。士気の上がらない部隊ほど、後々どのような惨事が起こりうるのか予測が付かないことも、歴史上幾度となく起こってきた話でもある。彼が死んでいるならば死んでいるで、まだ気持ちの整理もつくが、彼自身が色々な意味で多くの人間の心や記憶に残る人間であったことが、この事態に嫌な影響をもたらしていたのである。

 和美は、彼との関わりがまだあった頃のことを思い返していた。

 

「……思えば、彼は不思議な人でしたね。馴れ馴れしい雰囲気でもなく、かといって極端に距離を空けて私達に接してきたわけでもない。私、本部で詰めていた時には他の男性からはつり目がちな表情から話し掛けられにくいと言われることもありましたが、彼だけはいつも下手に出て話しかけてきてくれていました。」

「和美はクールな印象を持たれがちだからね。…確かに、君に男性が寄って来ていた記憶は殆どないな。」

「真希様はご存知ないでしょうが、貴女がタギツヒメを追われて出奔されていた時に、自分の在るべき姿が見えなくなったことがございました。…大体は、真希様が突然いなくなってしまわれたことに起因するものではございましたが。」

「うぐっ。」

 

 バツの悪そうな顔を浮かべた真希。確かにその節は多方面に迷惑を掛けまくったため、反論の余地がないのだが。

 

「そんな時に、○○さんの方から助言をもらって、一度自分の剣と向き合ってみることにしました。その際には苗場さんにもご協力いただきましたが。…此花様のことでショックを受けられていたのに、あの時付き合っていただいたのには申し訳なく思いましたが。」

(苗場、済まなかった!!)

 

 真希は、長い付き合いであるからこそ和美の剣の付き合いの意味を理解し、当時の和歌子にはそれがかなりの負荷になったのでは、などと思ってしまった。

 

「ただ、そのお蔭でより一層、戻ってこられた時に貴女のもとで恥のない剣技・剣術を魅せることこそ、私の在り方であると再確認させられました。…『年の瀬の大災厄』の際に共に戦えなかったことは、私の中では未だに残念なことではありました。ですが真希様のご無事な姿を見た時には、つい涙を溢したものです。」

「……なんか、本当にゴメンね。和美。」

 

 真希もまさか、半年以上前のことをこんな時に打ち明けられるとは思ってもみなかった。かなりの申し訳なさを感じて、今度何らかの形で和美へお礼か食事にでも誘おうと思うのであった。このような風に、話し終えた二人は翌日に備え、それぞれの仮眠用のテントで一時の眠りに就くことにした。

 

 

 

 

 

 

 この晩、日付変更が迫る頃には相模湖周辺でも更に雨脚が強まっていった。未だ首都圏壊滅の危機が迫っていることなど知る由も無い、刀使達であった。

*1
内里歩のこと。

*2
長船女学園の西梢(とじともサポメン)のこと。

*3
平城時代の学年をそのまま適用した場合、真希の方が里奈よりも一つ下の学年に当たるため。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

なんで本話のタイトルがデッドロックかと言えば、和訳では「行き詰まり」という意味もあるため、なかなか進展しないという状況を充ててこのようなことになりました。

後半は主に真希と寿々花にそれぞれ仕える(仕えた)とじともサポメンとの話を綴らせていただきましたが、最後の和美は真希の出奔していた期間にどう過ごしていたのかは気になるところではありますね…。

それでは、また。
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