今回は、事態が大きく動き始める話となります。
時系列は重点捜索の二日目に当たります。
投稿当日はとじらじ生!の放送日にあたりますが、さて呼吹役の中の人(五十嵐さん)と本渡さんのトーク内容は、一体どのようなものになるのでしょうかね?
それでは、どうぞ。
ー男性排斥運動 相模湖拠点ー
視界不良に拍車を掛けるほどに雨脚が悪化する、日の出前の相模湖。
刀剣類管理局側は彼と千里の捜索活動が難航するなか、この拠点で各地に散る構成員へ指示を出し続けている真奈美は、腹心の高鍋へと声を掛ける。
日付が切り替わった直後に、海外のサーバーを経由して日本政府と刀剣類管理局に対して、鎌倉事変時に提示した要求が再度呑まれない場合は事実上の報復措置を取るとの文書を送っていた。
「高鍋、現時点で政府側、あるいは刀剣類管理局側からの返答は?」
「残念ながら、現在までに回答は来ておりません。いかがいたしますか?」
「…ま、仕方ないわよね。予想通りの反応ではあったようだし、手始めに多摩湖の爆破と、同時並行で手懐けてきた荒魂の放出を行うわよ。」
「…いきなり実行されるのですね、山崎様。―いえ、女王。」
「何事も先手先手よ。現に、鎌倉では待っていたことが反撃される原因になったわけだし。…なら、もう躊躇うのは無駄でしかないわ。」
「分かりました。直ちに命令を下して、同時に荒魂を放ちますね。」
「ええ。なるべく、湖から離れた位置で解き放ちなさい。…あ、何匹かは市街地で放っていいわ。このあたりの地形は、時間稼ぎにはもってこいの場所じゃないの。」
「はい。それでは、伝えて参ります。放出時刻は何時頃になさいますか?」
「そうねえ…、午前5時40分頃でお願いね。6時だとどうも失敗する気もするし、何なら最も人間が活動するのに向かない時間帯に攻撃を行うのは、有効な手段よ。」
「承知致しました。では、コマンドに指示を出しますね。」
「ええ。戦闘の指揮は割子に任せるわ。貴女は私が呼ぶまでは彼女の補佐をお願い。」
「ご期待に沿ってみせますね。」
「頼んだわよ。」
高鍋は、真奈美からの言伝を他の構成員へと伝えていった。拠点内は慌ただしくなり始める。
(……まあ、荒魂が出現するなら刀使は動けない。そりゃそうよ、彼女達の存在意義を否定するような行動なんてできるわけない。世間は同情的みたいだけれど、ここでしくじればその流れは解体の道へと進んでいくわ。悪いけど、私の願いの為に世間からの非難を浴び続けなさい。そして、絶望しなさい。貴女達は何も守れやしないのよ。男と一緒なら特にね。……お望みならば、徹底的に潰してあげるわ。)
そう言って、プランCの立案書を改めて読み返していた。理想主義者であっても現実主義者は兼ねられる。諸外国から付け入れられる隙もできるだろうが、無能な政府と至近距離に居たにも関わらずこの作戦を止められなかった刀使達が動けなくなるのならば、鎌倉事変での犠牲は決して無駄ではなかったことになる。
「さて。活きのいい荒魂達は、どう暴れてくれるかしらね。楽しみだわ。」
相模湖上流側の複数の秘匿施設で増殖させていた荒魂達の、その放出の時は近い。
ー神奈川県相模原市 相模湖周辺ー
里奈達、第六班はサーキット場を野営の拠点にしている。ただし、夜明け前のこの時間帯にも関わらず、一部の人間が既に他の班に先駆けて捜索活動を再開していた。
前日同様、二段に分けての捜索を行うのだが、前日とは異なる点がある。それは車で移動しながら、捜索のための機器を建造物に向けて照射するという方法だ。避難している住民もいるものの、一部には生活を営んでいる家庭も存在することから、日の出前のこの時間帯に関しては彩矢達一般人で構成される小隊で、広域捜索を進める。雨が降りしきるなかでは、体温と体力を温存できるやり方でもあるため、一石二鳥の方法でもある。
「中島さん、大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫よ。…水無月さんと嵯峨野さん、亀岡君には迷惑をかけるけれど。」
「私はモニタリング係ですのでそんなに負担はないですよ。」
「私は変なモノとかあった時に言うだけだから楽だねぇ。」
「おいおい愛実。ちゃんと仕事はしてくれよ。」
「分かってるよお、圭吾っち。」
刀使であるものの、隊長でもある里奈は自分の部署の人間を連れての捜索を進めている。捜索に当てているのはキャンピングカー改造の指揮車両であるため、居住性は高い。なので、愛実などは普通にくつろぎつつ捜索に関わる。
少し遅れて、里奈と同じ部屋で寝ていた彩矢も起きてくる。
「おはよ、里奈。」
「起きたのね、彩矢。どう?寝れた?」
「うん、結構調子いいよ。…里奈も凄いよね、こんな個性の濃い子たちを部下に持つなんて。」
「まー、本当ならアイツが担うはずの人材育成を、今じゃ動ける私が担ってるからかしら。…お蔭で、胃はキリキリしまくりよ。」
「大丈夫なの?」
「…まあ、聞き分けいいから大丈夫よ。……しかしまあ、私らの部署ってなんでこうもトラブルや災難に見舞われるのかしらね。」
「○○君だけが原因であるとは、私はそうは思わないけれどなあ。―里奈も、それは分かっているんだよね?」
「むしろそうなら、とっくの昔に私はアイツとの縁を切ってるわよ。恐らく、アイツ自身が抗い切れない何らかの要因があるような気がするのよねえ。何かまでは分からないけれど。」
「…今回のこととは別で、ってこと?」
「そう。今回に関しては明らかに作為的なものよ。しかも、アイツは何も悪くない。…今回の事を起こした人間の目星は、もう付いてるわ。同時に、それがウチの部署と兼任している人間であることも。」
「もしかして、○○君への逆恨みとか?」
「そこまでは何ともね。困ったことに、その人間はあの鎌倉の占拠事件以降は行方を眩ましているのよ。どうにか、アイツに繋がりそうな糸は見つかったのだけれど、まだ全体像は見えてこないわね。」
「……こういう時ほど、漫画みたいに人の記憶や心が読めればいいと思うのにね。」
「彩矢、その考えは止めておいたほうがいいわよ。……アイツが好きなこと、アイツが生きていたらあっさりバレるわよ。そんなことが実現したら。」
「――!?―もっ、もう!里奈っ///」
「ゴメンゴメン、そんな顔を真っ赤にしないでよ。」
内心ではとっとと伝えりゃいいのに、とは里奈も言いたくなった。ただ、彩矢は心が優しい人間なので周囲の人間の想いも知っているからこそ、あまり抜け駆けのようなことはしたくないと考えている部分があるように思えた。…ぶっちゃけ、大人の余裕とでも言えば、年下の彼を落とすことはそう難しい話でもないようには思うのだが。
「…この車、色々と手を加えられているみたいだけれど、全然うるさくないね。」
「元々はこの車、舞草の人達が指揮用で改造していたものだったからね。高速処理能力を持ったパソコンを載せても大丈夫なように、発電機を大出力なものにしておいたみたいだし。加えて、安心安定の国産静粛性の高いものだから、車内も快適ってわけ。」
「それを私達が使っても問題ないの?」
「ま、真庭本部長には既に許可貰っているし、問題ないわよ。捜索用の各種機械を積んでいる以上は、キチンとその義務を果たしているわけだし。」
「里奈っち、あの建物をちょっと見た方がいいかも。」
「分かったわ。運転手さん、左に曲がって停車してください。照射作業を行いますから。」
「了解。安全な場所に停車します。」
「…なんか、私が知っていた頃以上に、指揮官としての能力が上がっているような気がするね。」
「彩矢には遠く及ばないわよ。…それに、私以上にもっと指揮官向きな情報処理のプロがウチにはいるから。最も、色々あってここには来られないけれど。」
里奈としても、眼前で友人が銃撃を受けて精神がすり減っている状況のなかでも、他に指揮を執れる人間がいないならば、必然的に彼女がその役を受け入れるほかなかった。まして、直接的な関係者であるならば逃げる選択肢は存在しなかった。
だが、そんな自分の弱いところを親友に見せるわけにはいかなかった。彼が見つかるまでは、倒れるわけにはいかないのだ。彼女の精神を紙一重のところで持たせていたのは、執念とでも言うべきものだろうか。
先ほど指示を出した、立ち寄った建物への赤外線スキャンや超音波測定による調査を行う。
葵の前に置かれているディスプレイから表示される結果と睨めっこする里奈へ、彩矢があるものを手渡してきた。
「…里奈、顔怖いよ。これでも口に含んで、リラックスしてね。」
「んっ…。これ、酢昆布?」
「そうだよー。少し舐めて、落ち着いてね。」
「…ありがとね。……やっぱ、懐かしい味よね。」
「ちょっとは元気が出てきてくれたみたいで、良かった。」
里奈が未だ精神的な動揺を残していることを、肌で感じ取っていた彩矢。
(里奈もやっぱり、○○君のことが心配なんだね。…私は、足で調べることしかできないけれど、見つけたい。私にとっても、大事な人だから。)
彩矢にとっても、彼の失踪は大問題である。冗談ではないほどには、である。彼女はふと、外の様子が気になった。それが、何らかの気を感じ取ったのかは分からないが。
「それにしても、雨が酷くなってきてるよね。昨日の夜よりも悪化しているようだけれど。」
「山間部の捜索は難しそうね。ともかく、道という道を捜索した方が有意義かも。」
「……!?―スペクトラムファインダーのレーダー表示が変化している…?」
葵が、ディスプレイに表示された情報の異変に気が付いた時だった。
ビービービービー!!
ほぼ同時に、今まで聞いたことがないほどの大音量の警告音が車内に鳴り響く。
「どうしたの!?」
「スペクトラムファインダーが荒魂の出現を捉えました!しかも、近いです!」
「―っ!!出現エリアは!」
「えーと、…相模川上流部、中央本線上野原駅の北西方向1.7㎞付近で多数の荒魂の反応を検知。位置情報からだと、ここは上野原市役所近くですね。数は……!?―う、うそ。」
報告を続けていた葵の言葉が止まる。
「どうしたの!?」
「…これ、本当に正しい値なんですか。」
「は、それってどういう……!?」
葵の発言の真意が読めなかった里奈も、彼女が固まった理由を理解し、そして青ざめた。
「何よこれ…、推定100個体以上って…。しかも数はまだ増えてるじゃないの!」
「―!!中島さん!再び荒魂の反応を確認!今度は国道20号線付近の河川で、推定30体の荒魂が出現しています!」
「…おかしい、おかしすぎる。これほど多数の荒魂が同時多発的に出現するなんてこと、大荒魂が出現した時以外にはあり得ないわ。まして、もし大荒魂が復活するのなら、私達刀使に何かしらの異変が起こるはずよ。…こんな前置きのない荒魂の大発生なんて、どう考えてもおかしい。」
だが、現実にはスペクトラムファインダーの表示は過去に例のない大量の荒魂の反応を捉えていた。それこそ、あの『年の瀬の大災厄』を彷彿とさせるものであった。
「里奈、どうする?」
「彩矢、すぐに野営先の人間に連絡入れて。『荒魂討伐時における準備をすぐに開始しろ』って。…よりにもよって、率先して動いていたことがこんな結果に繋がるなんてね。」
「中島さん、鎌倉の本部に協力を仰ぎますか?」
「そこは心配しないでも大丈夫よ。幸いなことに、このあたり一帯には私以上の実力を持つ手練れの刀使も、たくさん派遣されてきているから。それに、特務警備隊のあの二人もこの情報を掴んでいるなら動き始めるはずよ。」
「里奈っち、私らはどうすんのさ。」
「一旦捜索は打ち切るわ。戦力を整えて、荒魂討伐の支援に向かうわよ。」
「りょーかい。」
各々が急遽起こった大規模な荒魂出現への対応に追われるなか、里奈は嫌な可能性を頭の中から引っ張り出していた。
(…以前、高津学長下の鎌府では、刀使達が実際の戦闘データを収集するために必要な大量の荒魂を、あのノロの地下貯蔵施設から生み出していた、なんていう話があったわよね…。だいたいの荒魂達は適切な処置が施されたって話があったけど、……もしそんな荒魂の一部が何者かによって今の今まで隠されていたのならば…。…まさか、考えすぎかしらね。)
だいたい、どうやってそれだけの荒魂をバレないように隠し続けるというのだ、と現実的に考え直したところで、里奈は自身の御刀に目を落とした。
(ま、私は私のできることをやるだけよ。…○○、できれば見つけたかったけれどなあ…。)
里奈達は拠点としているサーキット場へと戻り、臨時指揮所からの指示を待つことを余儀なくされた。
ー捜索隊第四班 相模湖下流域ー
里奈達が、上野原市付近での大規模な荒魂出現の反応を捕捉していた頃。
薫達は、前日では捜せていなかった薄暗い道路の捜索を進めていた。日の出前であったこともあり、まだ周囲は暗かった。更には周辺は鬱蒼と生い茂る竹や茂みが、よりこの場に与える恐怖感を増幅させているように思えた。雨も降り続いているので、ホラーゲームなどではかなりの確率でトラブルに巻き込まれそうな、そんな雰囲気が漂う。
「益子さ~ん、本当にこのあたりに建物とかあるんですか~?」
「さあな。ともかく、怪しげな建物があればとっとと見つけて捜索だ。」
「…益子隊長、行き当たりばったり、なんてことはありませんよね?」
「心配するな、桐生副隊長。一応これでも、ある程度の目星はつけているんだぞ。…こういう暗がりな道沿いほど、犯罪の温床になりかねないようなものがゴロゴロ転がってたりするからなあ。ほれ、現にそことか不法投棄のゴミの山だぞ。」
「……あんな風にはなりたくないですね…。…桐生さん。薫さんの言葉はもっと信用してもいいと思いますよ。もし兄が近くにいるのなら、この携帯に積まれた電波受信機能も反応すると思いますし。」
鎌倉事変以降、身動きの取れない姫乃が彼の位置情報を発していた周波数や、GPS信号などのデータを麻美の携帯へと取り込むように手配していた。家族間で使用する携帯の情報も取り込んでいるため、もし彼が所持していたのが私用携帯のみであっても、麻美の携帯が発する電波を捉えればその居場所を探知できるという寸法だ。イメージ的には、潜水艦の発するアクティブソナーがそれに近いだろう。勿論、地中の音を捉えるなんてことはスマホ程度の機器能力では難しいため、あまり期待はできないところもあるが。無いよりはマシである。
「しかし、一寸先は闇ですね。ライトがあるのでまだ方向感覚が取れますけれど。」
「しゃーねぇだろ。…お、車か?こんな時間にこんなところを通るなんてな。」
薫達の後ろからやってくる、一台のトラック。サイズからして、2tトラックであることが分かる。
薫達の脇を通り過ぎた途端、トラックは急加速を始めた。
「―!?…おい、あのトラック、何か変じゃないか?」
「薫さん、私追いますね!」
「あ、おい!麻美!」
薫の制止を聞かず、麻美は持ち前の脚力と八幡力を組み合わせ、トラックにあっという間に追いつき、そしてそのリアバンパーを掴んだ。
「そーれっ!」
リアドアにあった開閉用のノブを両手で持ち、麻美はその際に八幡力を解除した。
「葉月、美弥。麻美を追うぞ!」
「はい!」
「え、益子隊長!今私のことを葉月って、…隊長ー!!」
いきなり呼び名が変わった葉月は慌てながらも、二人の後を追う。ちなみに薫は、少し大きくなったねねに跨りながら《祢々斬丸》を抜ける準備をしていた。美弥の方はそんなねねの姿に驚いていたものの、そんなことを気にしていられるような状況では無かったため、全速でねねと並走する。
薫達が追い越された地点から、およそ1㎞ほど東側へと進んだ位置でトラックは急制動を掛けた。トラックから降りた男は、ため息を漏らしながら後方のドアへと向かっていた。
「…一体なんで、あんなところに刀使が…。危うく、職務質問されるところだった。とっととこの荷物を置いて、ずらかろう。」
「何か見られたら困ることでもあるんですか?」
「そりゃそうだ、なんせこの荷物は……。うわぁああああ!!―な、なんでさっきの刀使があああ!?」
男は腰を抜かしたようにその場に倒れ込んだ。それもそうだ。つい先ほど歩いていた姿を目撃し、しかも全速で離れたはずの刀使の姿が目の前にあったのだから。ましてまだ夜であったことが、この男性を思わず失禁させることに繋がってしまったようだ。
「それよりも、私の質問に答えてください。この荷物は一体何なんですか。」
「お、教えてどうする。何も不審なものは入っていないぞ。」
「……本当にそうですか?」
「ああ!生活物資しか積んでいないぞ!」
「なら、その荷台を点検しても構いませんね。」
「おう、そうしたければそうしろ!」
ものの見事に麻美の誘導に乗せられるがまま、男性は積荷の確認許可の言質を取らせてしまった。それに気が付いた時には、もう遅かった。
「薫さん、当該トラックの運転手さんから積荷の確認許可を貰いました。取り敢えず、運転手さんが逃げないように監視しますね。」
『手回しが早くて助かるぜ…。…っつても、オレ達ももうすぐ着くから、麻美は抜刀して待機してろ。お前一人じゃ、何が起こるか分からないからな。』
「了解です。では、後ほど。」
無線を介して、薫に現状報告を行った麻美。
(うわあ…、最悪だ。ただの生活物資を運ぶだけで割のいいバイトだと思ったら、刀使に追いつめられるとは…。)
運転手は、ほとんどリスクのないバイト感覚でもらえた収入源を絶たれることに対して、絶望した。
大雨の降りしきる中、薫や美弥も合流し、数的有利に持ち込まれたことで運転手は完全に逃げ場を失った。
「で、このおっさんはなんでオレらを見た途端に逃げ出したんだ?」
「まだ、そのあたりは何も話してくれません。ただ、トラックに乗って逃げ出さなかったので、何か良心の呵責に苛まれて停まってくださったのでしょうし。」
(いやいや、それは違う!あの娘、こっちが発進するつもりだったら、問答無用でこの車を両断する気だったぞ!)
「…あのー、益子さん。あの人、物凄く真っ青な顔をしていると思うんですけれど。おまけに何かガタガタ震えてますし。」
「気のせいだ。」
「いや、でも」
「気のせいだ。」
薫には分かっていた。麻美がかなり怒りを溜めこんでいる状況であると。顔ではにこやかにしていても、その御刀の剣先は微妙に震えていた。もしかすれば、自身の兄を攫った人間の一味かもしれないとなれば、耐えて正気でいろというのも難しい話ではあろう。
最も、隣にいる美弥は麻美の空気の変化に全く気が付いていない様子ではあったが。
少し遅れて、葉月も薫や麻美たちに追いついた。
「…はあっ、はあっ。…益子隊長、酷い…ですね。…はあっ、私を置いてけぼりにするなんて。」
「おう悪い、桐生副隊長も追いついたか。」
「特祭隊員の方達もあとで車で追い付くそうです。…それが先程のトラックと、運転手ですね。」
「ああ。なんでか知らねえが、積荷のこととか全然口を割らねえんだよ。」
「…じーっ。」
葉月が明眼を用いて車内を透視してみたものの、特にこれといった危険物は載っていなかった。
「益子隊長、本当にこの人は無関係なのでは?」
「まー、疑いはなさそうっちゃ無さそうなんだがなあ…。」
とはいえ、だったら何故刀使を見た途端に急発進をしたのかという、運転手の行動がいまいち腑に落ちない。
そんな時だった。
「益子さん、ここの建物、何か変じゃないですか?」
トラックの周囲を歩いていた美弥が、不意に近くにあった白い建物を指差した。
この夜明け後に何が起こるのか、知る者は未だいない。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
薫達からの視点は次々回に触れていくことになりますが、補足として彼女達はまだ荒魂が大量出現したことにまだ気付いておりません。
それでは、また。