UAが3000近くまで上がってきて、ちょっとパニックになっていたところです。(執筆当時)
今回は可奈美編 その2です。前後編形式の投稿となります。
今話は前編です。
それでは、どうぞ。
ー神奈川県鎌倉市 JR鎌倉駅ー
刀剣類管理局本部・鎌府女学院、そして刀使たちの羨望の的である折神家が構える、古都鎌倉。
かつて幕府が置かれたこの地では、観光名所も複数ある。代表的なのが鶴岡八幡宮だろう。
近年では、東京からのアクセスの良さも相まって、多くの外国人観光客も訪れるようになってきた。
だが、少し前には封印されかけたタギツヒメの悪あがきによって、約二十年分のノロを大量放出してしまう、言わばノロの爆心地を生み出すことになった。(鎌倉特別危険廃棄物漏出問題)
それに伴う風評被害も一時期ひどかった。現在ではこれは持ち直したものの、折神家敷地内の山腹に空いた穴がそれを未だに思い起こさせる。
話を戻し、最近の激務にしては珍しく非番が決まった俺は、これまた珍しいことに、同じように休暇を貰った可奈美と休みの日がバッティングした。
そうしたこともあり、どこか息抜きしにいくか?とこちらが提案したところ、可奈美の方も、たまには良いかな?と考えて、その提案に乗っかることにした次第だ。
今日がその当日。
…とはいえ、
「誰かと一緒に出かけるなんて久し振りだな、ましてや同世代の異性とは。」などと彼は考えていた。
可奈美は、いつも通り朝の鍛錬である、素振りや今日出動待機中の刀使たちとの手合わせをしてから来るとのことだったので、もうそろそろ来るだろう。
休みの時でも剣術に明け暮れる…、そんな彼女を剣術バカなどと揶揄する者も居るが、少なくとも彼自身はそうは思わなかった。
「正直、何かに熱中できる人、特にそれがこの先の人生を懸けてでもやりたいという人を、俺は羨ましく感じる。」
というのが、彼の見解だ。そして、
やりたいと思うことを、出来る間に最大限させてやりたい、という彼の考えも往々にしてあったのだろうが。
可奈美がやって来たのは、彼が鎌倉駅に着いてから三十分後のことだった。
「お待たせー!ごめんね!みんなとの打ち合いに熱中しちゃってて。」
「いや、俺も今来たところだ。…普段の制服と違って、私服姿は新鮮だな。似合っているぞ。」
「へっ!?そっ、そうかな…?…ありがとうございます。」
まさか褒められると思っていなかったのか、思わず他人行儀になる可奈美。
そんな可奈美をよそに、彼は言葉を続ける。
「さて、それじゃあ行くか。目的地に。」
「そういえば、まだ私どこに行くか聞いてなかったんですけれど、どこまで行くんですか?」
「それは着いてからのお楽しみだ。ほい、ICカード。」
「切符じゃないんですか?」
「切符だと、どこに行くか見当を付けられるからな。あっ、もうチャージ済みだから、あと改札通るだけでいいぞ。」
「…準備いいですね。」
「舞衣ほどじゃないがな。…そういえば手帳は持って来たか?」
「あっ、はい。ポーチの中に入れてますよ。」
「よし、なら行くか。」
二人は、総武・横須賀線快速のホームへと上がる。
ちょうど、東京行きの電車が滑り込んできた時だった。
ー横浜駅ー
拡張工事や改修工事がなかなか終わらないことから、東洋のサグラダ・ファミリアなどと言われる横浜駅。
最も、その比較対象のサグラダ・ファミリアは完成の目処がたったため、こちらの方がいつ完工するのか分からないことになったが。
日本(どころか世界)の駅別乗降客数の中でも屈指の多さを誇るこの駅は、新宿ほどではないとはいえ、なかなかのダンジョンめいた構造をしている。
「一体どこに向かっているんだろう?」
可奈美は、わらわらと人が群がる中、彼に手を引かれるがまま歩いていった。
「可奈美、済まんがまたICカードの準備をしておいてくれ。」
「あっ、はい。」
彼の握っている手の力は弱過ぎず、かと言って強いものでもない、絶妙な力加減だった。
(…この人、たまに考えが読めない時があるんだよね…。私なんかよりも、舞衣ちゃんとかと居た方が楽しいと思うんだけどな…。)
可奈美は、誘われたこの機会に彼を試そうと考えた。といっても、彼がいい人であることは彼女も分かっていたので、人間性という点で試すという訳ではない。
(どうして、私に構ってくれるんだろう?)
その疑問が、彼女のなかで晴れていなかったのである。
その疑問の答えは、もしかしたら彼の今日の行動に出るのではないか?と考えた訳である。
そんなことは露知らずの彼。可奈美の手を引きながら、JRの改札を抜けて少し歩き、京浜急行の改札を通る。
思わず、可奈美が問いかける。
「…?どこまで行くんですか?」
「もう少しかかるかな?だが、そう遠くはない。」
じれったいなぁ、そう思った可奈美だったが、自然と悪い気はしなかった。
むしろ、そうであるならば、自身のもつ超感覚が不快なものに変わる筈だからだ。
ー京浜急行電鉄 金沢八景駅ー
三崎口行きの快特電車を降り、コンコースを歩く二人。
「さて、あと一回乗り換えれば目的地だな。」
「そろそろ教えて下さいよ。今日の目的地。」
「そうだな。ここまで来たら、もういいか。…八景島だよ。」
「八景島って…、あの八景島ですか?」
「そりゃまあ。…たまには癒やしもいいかと思ってな。」
「えっ、今日、お金そんな持って来て無いんですけれど?」
「ああ、それは大丈夫。特祭隊向けの割引券あるから。入館料くらいこっちで出すさ。」
「そんな、悪いです。」
「どちらかと言えば、こちらが提案したことだから。これくらいさせてくれ。これから一日付き合って貰う訳だし。」
「…分かりました。それなら、全力で楽しみますね!」
可奈美の笑顔を見て、誘ってきた甲斐があったと感じた彼であった。
ー神奈川県横浜市 横浜・八景島シーパラダイスー
水族館を含む複合型遊園地であるここ八景島は、横浜市の造成した人工島である。
周囲が海で囲まれていることもあり、荒魂の出現も少ない方だった。荒魂の危険性も低いこともあり、多くのカップルや家族連れで島内は賑わっていた。
「これ見て下さいよ、この子スゴイ大きい!」
「可奈美、飛ばし過ぎるなよ。…にしても、デカいな…このジンベエザメ。」
八景島と言えば、イルカとジンベエザメ。とまでは言わないにせよ、訪れるべき場所の一つである。
「…大人しいんですね。もうちょっと、こうバシャバシャ動いているのかと思いましたよ。」
「サメ科の中でも大人しい方だからな。千差万別という点では、人間と同じだ。」
「…ただ、少し寂しそう。」
可奈美の言葉に、彼は何も言わず首肯した。
可奈美自身の今の状況と、水槽の中のジンベエザメを重ねたのかまでは、彼には分からなかった。
ただ、可奈美が一瞬見せた、もの哀しげな顔が彼の頭から離れなかった。
ひと通り各水族館を回りきり、二人は海洋生物とのふれあいが出来るエリアを訪れる前に、先に腹ごしらえを済ませようとフードコートへ向かっている時だった。
「キャー!助けてー!」
「ウアァァァ!来るなぁ!」
「みんな逃げろー!」
突然、本土との連絡橋の方から人々が押し寄せて来る。
「何だ?一体。」
「…っ!まさか荒魂じゃ!」
意識を、休日モードから仕事モードに切り換える二人。
「…テロではなさそうだな。可奈美、スペクトラムファインダーを!」
「間違いない。荒魂だよ!」
可奈美の持つスペクトラムファインダーには、二体の荒魂の反応があった。
「可奈美、先に行ってくれ!」
「えっ!?」
「俺は先に一般人を避難させる!本部にはこっちから連絡を入れておく!今、荒魂に対応出来るのはお前しかいない!急げ!」
「わかったよ!また後でね!」
彼は、連絡橋に向かう可奈美を、ここは大丈夫だ、と言わんばかりの顔で見送る。
可奈美も、それを見て走り出す。荒魂の下へ急ぐ。
非番だったとはいえ、御刀を肌身離さず持っていた可奈美は、鞘から《千鳥》を抜刀する。
「写シ…。行くよ、千鳥。」
可奈美は、他の刀使たちが着くまでの間、時間を稼ぐか斬り祓うかの選択を迫られた。
「大丈夫、あの人やみんなは必ず来る。その間、力を貸して。」
本土側からやってくる二体の荒魂。
可奈美は、迅移を駆使し間合いを詰める。
「はあぁぁぁっー!!」
孤立無援のなか、戦端は開かれた。
日常は、突如として非日常と化す。だが、これを守ろうとする者たちが居る。
少女もまた、その日常を守るため身を投じる。
仲間たちが来ることを信じて。
ご拝読頂きありがとうございました。
ふと思いつきで浮かんだネタでしたが、いかがでしょうか?
おかしい、関係性が進展するかと思ったら荒魂に分断されたよ…。
後編でちゃんと話を回収するので、その辺はご勘弁下さい。(_ _)
人物描写がなかなか大変だ…。
感想等ございましたら、感想欄などで対応させて頂きます。
活動報告を投稿させて頂きますので、ご意見等ありましたら、よろしくお願い致します。
それでは、また。