刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

先日とじとものメインストーリーが分割更新(三回目)されて、あるキャラの伏線を回収しに掛かったことに驚いた筆者でございます。
あんなことが目の前で遭ったんじゃ、憑りつかれたようなあの行動にも合点がいきましたが。

話を戻して、今回は編の佳境に差し掛かり始める話となります。
湖上の銃撃戦の結末は果たして…。

それでは、どうぞ。


⑱ 潰える野望

 ー神奈川県相模原市 相模湖湖上ー

 

 相手の行動が予測不可能ななか、彼は船首側に立ち、真奈美達が居るであろう船へ拡声機を向けた。あくまでも形式的なものではあるが、やらなければならないことを果たす。

 

『航行を続ける船舶に告げる!君たちは既に包囲されている!無駄な抵抗を止め、直ちに停船せよ!繰り返す、直ちに停船せよ!』

 

 停船勧告は行った。これでもなお逃げるというのならば、力尽くで止めさせるしかない。

 そう思っていた時、後ろから声を掛けられる。

 

「○○さん、スピーカーを貸してください!」

「えっ、ああ、分かった。」

『真奈美!聞こえる!?―私、千里!』

 

 千里が、『男性排斥運動』の残りのメンバーが乗る船へと呼び掛ける。彼はその間に、各船へ無線で万一の場合を除いての発砲を禁じた。

 ただ、この千里のアナウンスは、その後に起こった意図しない悲劇の引き金となった。

 

 

 

 

 

 

 並走していたなかで聞こえた千里からの声が、乗っていた三人に届いたのは彼からの交代よりすぐのことだった。

 

『お願い真奈美!いたら、返事をして!』

「…『真奈美』なんて人物、此方には居ないはずでは…?」

「宮原、貴女の名前が真奈美なの?」

「いーや、私の名前はあくあ。漢字なんて使ってないわよ。」

「私も美恵だから…。女王はそもそも『圭』だから違うはず…。」

 

 残った二人のメンバーはかなり不思議がっていたなか、当のご本人である真奈美は、むしろ千里がこの場にいることに愕然としていた。

 

(な、なんで千里が居るのよ!?―ということは、あの男も既に刀剣類管理局側に戻っているってことじゃない!!)

 

 一体いつの間に、という思いも浮かびはしたが、それよりもずっと自分の名前が呼ばれ続けていることを止めさせようということに対し、思考が移った。

 

「高鍋!あの拡声機を持っている女目掛けて、ともかく撃ちなさい!!」

「ですが女王!彼女はスピーカー以外何も持っていません!相手が丸腰なのに、私は撃てませんよ!」

「…分かった。なら私が撃つ。相手が此方の動揺を誘うのなら、それを断ち切るまでよ。」

「じょ、女王!正気ですか!?」

 

 真奈美は、千里が見えない角度から消音器(サイレンサー)付きの9㎜けん銃を向けていた。着ている服自体が黒いこともあり、相手は全く気付いていない。

 たまたまそれが分かった高鍋は、自身の慕うリーダーが非武装の人間を撃とうとするのを避けたかった。彼女は知らなかったが、スピーカーを向けている千里は、目の前に立つ真奈美の友人であった。いくら拘束する相手側の人間であったとしても、彼女には武器を持たない人間を目前で撃ち殺すようなほどの、残虐さと短絡さを持ち得ていなかった。それが、取り返しのつかない罪を犯した、彼女に残された最後の良心であったからだ。

 

「千里!死ねぇ!!」

「ダメです!女王!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンパーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 その銃声は、雨足が弱まってもなお降り荒れるなかで、湖全体によく響き渡った。

 

「な…」

「―ハフッ、ゴホッ!?」

 

 口からは血を噴き出し、自らの腹を抑えた高鍋。

 真奈美が発砲した自動拳銃の鉛弾は、吸い込まれるかのように高鍋の腹部へと命中した。そのまま、彼女は膝を落とすように前傾で崩れ落ちた。彼女が防弾チョッキの下に着ていた白い服は、じわじわと赤黒く染められていく。ライフジャケットを着ていたため、窮屈さを避けようと少し前側に隙間を空けていたことが仇となり、弾丸がそこに深く入り込むことになってしまった。

 それを見た真奈美は、銃を落とし、茫然とした。そして、倒れた彼女の傍に寄る。

 

「高鍋…、貴女、なぜ…。―なんで私の前に立ったのよお!‼」

「……女王。本来、私達が果たすべきは、社会的地位が低く、厳しい環境に置かれている女性を、助けることだったはずです。その手段が急進的なものであれど、…私自身が手を汚そうとも、急速な社会変革をもたらすことができるのなら、私は、それでいいと思っていました。…ですが、女王。貴女が今やろうとしたのは、本来守るべき立場であるはずの、無抵抗の女性を、撃とうとしたことです。…丸腰の女の子を、射殺するのは、絶対にダメです…。ガハッ!」

「高鍋!!」

 

 どうやら命中した二発の弾丸が、腹部に集中する動脈を傷つけたようである。このまま逃走を続けたなら、間違いなく高鍋の命はない。しかし、だからと言って真奈美はあっさり投降するつもりもなかった。

 真奈美はすくっと立ち上がると、千里の乗る船を酷く睨み付けた。

 

「…女王、どうするっ、おつもりで?」

「…手榴弾が数個、まだあったわよね?」

「…何をなさる、おつもりですか…。」

「…そこにずっとへばりつく、うるさいハエ共を叩き落すだけよ。しつこいアイツらを先に消し炭にしてあげる。その後に、ちゃんと貴女を治療しに向かうわ。」

 

 そう言って、リンゴ型とパイナップル型の手榴弾を手に持つと、安全ピンを抜いて各方向を航行する特別祭祀機動隊の船舶へと投げ込んでいく。

 高鍋は撃たれて以降、段々と頭の中から血の気が無くなるような感覚を持っていた。思考力も判断力も下がるなかで、彼女が相手への攻撃意志を誇示する行動を目撃する。そして、自分が今まで懸命になって女王こと圭(正確には真奈美なのだが)に仕えてきた意味は一体何だったのか、と過去の自分の在り方が無に帰すような脱力感と、生気の漏れ出る感覚が体内にまわっていく。

 雨に打たれ続け、自身の体温が下がっていく感覚だけが更に研ぎ澄まされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……結局、私って、最初から人を見る目が無かったんだね。……でも、それでも最後に、あの女の子を守れて、良かっ…た…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 遅すぎる後悔と懺悔、そして僅かばかりの報われた気持ちが、美恵の心の中で広がり、そして萎んでいった。残虐な行為に加担した一員ではあっても、彼女の絶対に越えたくない一線は、彼女自身の体をもって守り通した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すぐそばの光景を目撃していた彼と千里は、真奈美であろう黒ずくめの人間が、態度を改めず手榴弾を投げ込んできたことに対して絶句し、余計に信じられないといった表情を浮かべた。

 

「仲間を撃った挙句、此方への攻撃を止めないだと!?精神がどうかしてやがる!!」

「○○さん、私ではもう…。…真奈美には、もう私の声は届きません!」

「……クソッ!!全員、飛んでくる手榴弾を躱した後、操舵者へゴム弾による集中攻撃を行え!!何としてもあの船を止める!!」

 

 たとえ敵であっても、手遅れであったとしても、目の前で息絶えようとする命を見捨てるようなら、それは今まで続けてきた自分の生き方に反する。他の仲間に周知してきたことを自らでやらずして、どうして人を率いていけようか。

 

『ヤマメよりメダカ、手榴弾を投げてくるヤツへの発砲はできないのか!?』

「メダカよりヤマメ、むしろそれは逆効果になりかねない!当たればいいが、当たらない場合は弾の無駄撃ちになり、むしろこちらの被害を増やしかねない。それにまだ、相手は銃を所持している疑いもある!先に相手の逃げ場を無くし、足も奪えば、こちらは動きながらでも相手を封じることができる!」

『りょ、了解!』

(―ヤマメ班の言いたいことも分かる。が、あの操舵者が自爆用の手榴弾か爆弾を持っていないとも限らない以上、祇園らしき人物を抑えるよりは先に無力化するほうがベストだ。)

 

 何より、あの船は12.7㎜対物ライフル弾が命中して以降、取舵をずっと取り続けている。必死に操船を行っているならば、それが無駄と分かった時に何をしでかすのかが、あの手榴弾を投げている者以上に予想が付かない。であるならば、不安要素はとっとと無くした方がいい。この場合、距離を取りながらのアウトレンジ射撃戦法は有効な手段として足りうる。まして、事実上の静止目標を狙い撃ちするならば、これが確実な方法であることには違いなかった。

 

「手榴弾が飛んできたら、新型シールドで防げ!―守り切れなければ、直ちに飛び降りることも頭に入れておくように!」

 

 彼は再度、人命優先の指示を厳命した。

 

「あとは、向こうの手榴弾がどれだけあるか…。」

 

 双方の忍耐の時間が続く。なお、千里には被弾を避けるため、先にシールドを渡して防爆体勢を取るように指示した。彼は真奈美らしき人物を睨みつつ、攻撃の途切れるタイミングを見計らう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 投げても、投げても、弾は遠くにすり抜けていく。

 直撃コースだと思っていても、それは鉄板を持った人間によって弾かれていく。そして、手榴弾は後方で水柱を上げていく。

 

「宮原、燃料は!」

「…あと、三十分持てばいい方です。ただ、燃料も微妙に漏れているようで、それよりも早く無くなりそうです!」

(…た、高鍋さんが撃たれて私が無事な理由って、今は船が扱えているからってことよね…。…あれだけ忠誠心の高かったあの子が撃たれるってことは、私が撃たれる可能性はもっと高いじゃないの…。ど、どうしようかしら。)

 

 後ろを見ていなかったので、宮原にはあの発砲が半ば事故であることを分かっていなかった。このため、宮原は真奈美がいつ此方に銃口を向けてくるのか、ということで未だ怯えていた。操船で手一杯だったことで、逆襲のために彼女へカウンターを仕掛けるというところまで、思考が向かなかったのである。

 

「……!?相手が増速した!?」

「マズい!宮原、エンジンを止めて!」

「え、はっ!?」

 

 真奈美は銃撃を悟り、その場へ瞬時に伏せた。しかし、操船中の宮原の反応はほんの少し、遅かった。

 退避に失敗した宮原の体へと、多数のゴム弾が殺到する。

 

「ア、アガァ…!?」

「宮原ぁ!」

 

 呼吸困難なほどの弾数が、避け切れなかった宮原の防弾チョッキ越しの身体を酷く震わせ、そして意識を途絶えさせる。昏倒する彼女の姿を見て、真奈美は一瞬呆然とした。しかし、彼女は手榴弾と銃を携え、また立ち上がった。

 船内は高鍋の血と黒いゴム弾が散らされるなかで、未だにしぶとく残る真奈美が無意味な臨戦態勢を継続していた。既に、勝敗は決したというのに。

 

「……グッ、まだだ!私はまだ、ここで倒れるわけにはいかないのよ!」

 

 操舵者を失った船は、今なお取舵を続ける。しかし、その舵輪に再び手が掛けられることもない。目的を失った船は、今の真奈美のようにフラフラとその航跡を定めない。

 

「ダアァァァーッ!!」

 

 乱射できるほどの弾薬がまだ残っていたトミーガンを、真奈美は並行する特祭隊船舶へとヤケクソ気味に撃ち込む。その際、彼女の船の後方側にいたアユの隊員が二名ほど被弾、負傷した。また、武装がアユと同じであったヤマメも、操舵室に大量の銃弾が飛び込み、船の操作の一部ができなくなった。図らずも、彼女の攻撃は成功していたのだ。

 しかし、そこまでだった。

 

 

 

 

 

 

 手榴弾もほぼ投げ尽くし、トミーガンの弾も撃ち尽くした真奈美は、遂には狂ったように笑い出し、最後に残していたリンゴ型手榴弾を持ち出す。そして、メダカの方へと大声を飛ばした。

 

『千里!居るんでしょう!とっとと出てきなさいよ!』

「…◯◯さん、どうしますか?」

「出よう。俺の存在にも、もしかしたら気づいているのかもしれない。」

 

 真奈美の声に気付いた二人は、メダカの船体から姿を現す。

 

 

 

 

「…やっぱり、お前も居たのか!◯◯××!」

 

 真奈美は驚きこそしなかったが、それでもこの男が作戦を事実上破綻に追いやったことには違いなかった、と確信を持つことはできた。それに対して怒りもあるが、彼も彼で、だいぶ腹に据えかねていたことを一気に吐き出す。

 

「一応、これでも祇園の上司のつもりだったんだけどなあ。…全く、呼び捨てにされるほど仲の良い関係であったとは、とても言い難い所業を君は働いてくれたものだな!」

「悪いわね。私、お前のことは会ったときから大嫌いだったから。これくらいやっても罰は当たらないわよ。」

「ならなぜ、こんな取り返しのつかないことに走ったんだ!君が俺のことを嫌いなら、俺だけを標的にすれば済む話だろう!」

「分からない?―なら言ってあげるわよ!!…お前がいる限り、私達のような有能な女性の立場はどんどん追い詰められていくのよ!刀使は女同士だからこそ、最大限の力を発揮するの!それは汚れ多き男が、本来神聖な存在である彼女達に気安く触れていい存在ではないはずよ!お前は特に、刀使達を惑わすほどに彼女達との距離が近過ぎる!だから、刀使達は本来持っているはずの十分な力を発揮できない!そんな悪循環しか生まないような環境に、これ以上男は要らないのよ!」

「真奈美!そんなことない!絶対にそれは違うよ!」

「黙れ!千里、アンタは私を裏切った!男に興味はないとか言っていた癖に、その男の話になった途端、急に惚けたように表情が変わる。女だけで十分な管理局に、もっと男を引き込もうと考えた時点でアンタの罪は重いのよ!」

「そっ、それは…」

「祇園、お前の言い分は間違っている!それに、だからといってそれは相手を銃で、武力で黙らせる理由にはならない!」

 

 彼は、怒りを通り越して冷静に言い返すことだけを考えていた。言葉で喧嘩をするのではない。相手の言い分をいかに詭弁に満ちたものであるかを、オープンチャンネル設定にして開放中であった無線で、特祭隊全体に知らしめるために。無論、そんなことを相手は知らない。

 

「繰り返しになるが、そんなに俺が嫌いなら、俺だけを殺せばいい話だろう!それなのに、なぜ四条まで巻き込んだ!挙げ句、彼女を殺そうとしとんだ!」

「…私は◯◯××、お前に男が関わらない刀使達がいかに強く凛々しく、逞しいものかを見せつけたかったのよ。そして、男が無駄な存在であることを証明したかった。その絶望に打ちひしがれて、お前が勝手に死ぬことを願ってね。…ま、千里には男がいかに無責任で獣のような存在であることを、再起不能なほどに刷り込ませようとしたんだけどねぇ…。千里が泣き叫びながら、『ごめんなさい、ごめんなさい』ってずっと謝り続けて、望まぬ子を宿らせることまでできれば、私としては満点だったんだけど。…結局、その身体に見合わず清楚を貫き通したみたいね。そこの男が、余程のヘタレだったんでしょうけど。」

「そっ、そんな…。真奈美、それは酷いよ!私、貴女のことをずっと、友達だと、親友だとまで思っていたのに!」

「ほざくな!男とじゃれ合う女なんか、同じ世界にいない方がいいに決まっているだろ!…あーあ、アンタ、私が思っていた以上にお花畑な頭をしていたのね。」

「真奈美っ!!」

「…四条、もういい。後ろに下がっていろ。俺が話を続ける。」

 

 真奈美の口からは、酷く醜いほどの千里への本音が噴出する。

 彼は、千里がこのまま会話を続けていたら彼女の精神は保たないと判断し、相手を代わる。その光景を見た真奈美は、未だ強気の姿勢でクスリと笑いをこぼす。

 

「…ほんと、女を貶めて、自分を立てようとする癖は変わらないようね。改めてネット上の噂は本当みたいだと思わされるわ。さすが、刀使の守護者(メイデン・ガーディアン)などと煽て祭り上げられるだけあるわね。」

「……何の話だ?」

「お前が『年の瀬の大災厄』の時に、死地から多くの刀使や自衛官、民間人を救出したことを、ネット上じゃそう呼んでいるそうよ。…全く、反吐が出る話さ。男と関わった刀使達が不甲斐ないばかりに、相対的に女の立ち位置が貶められたってのに。」

「…仮にネット上ではそうだとして、俺自身はただの一般人だぞ。そんな現実との乖離した話題を、祇園、君は信じるのか?」

「悪いけど、話題と実態がどうあれ、お前の存在が目立つものであればあるほど、私達『男性排斥運動(ブルー・パージ)』にとってみれば邪魔な存在でしかないわ。だからこそ、お前を屈服させたかったのだけれど。……現時点での目的をもう果たせなくなった以上、致し方ないわ。」

 

 そう言うと真奈美は左手で、手榴弾の安全ピンの輪っかに指を掛ける。砲丸投げのような持ち方をして、彼や千里に対峙する。

 

「何をするつもりだ!」

「分からない?自決よ自決。最も、私が死んだとしても、各地に散る仲間達が本懐を遂げてくれるはずよ。だから、私は死ぬことに対して怖さを持っていない。…自分の手で世の男共を根絶やしにすることが成し遂げられなかったのは、口惜しいほどに残念でならないけれど。ただ、お前の目の前で死んでやることこそが、全て絶たれた私のできる、最後の復讐よ。私を殺したことを、その醜い心で一生後悔し続けろ!!」

 

 そう言うと、真奈美はリンゴ型の手榴弾の安全ピンを引き抜こうとした。まずい、あれはブラフでなく本気だ。

 

「させるか!」

 

 だが、彼が彼女の行動を止めるには、あと零コンマ数秒足らない。そのまま手榴弾を抱き抱えられたまま倒れられては、もうこちらが打つ手は残っていない。

 

 

(―セーフティーロックが、外れてない!)

 

 

 彼がホルスターから咄嗟に出そうとした自動拳銃は、安全装置が掛かったままだった。指示に夢中で、自身の武装を解放していなかったのだ。

 

 

 

 (――もう駄目だ。間に合わない。)

 

 

 

 

 彼が諦めかけた、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の後方から、至近距離で耳をつんざくほどの銃声が響き渡る。

 瞬時に振り返ると、そこには銃口から硝煙を噴き出したリボルバー銃を突き出す、千里の姿があった。その発砲姿勢も、非常に綺麗な様であった。

 

「グワッ!!」

 

 更に撃った方向へ向き直ると、先ほどまで手榴弾を持っていたはずの右手首を抑えながら、崩れ落ちようとする真奈美の姿を捉える。その手元に手榴弾は見当たらない。

 それから数秒後、船隊の後方で爆発音と水柱が上がった。

 

 

 

 

「四条、お前…。」

「撃ち方は以前、◯◯さん自身に教えていただきましたから。…ゴム弾ですけど、当たるかどうかは賭けでした。」

「……リボルバーにしておいて、良かったのかもな…。」

 

 安全装置の機構が比較的簡単であるリボルバー銃だが、命中率は自動拳銃(オートマチック)に比べると下がる傾向にある。彼はそれを外せないタイミングで正確に撃ち抜けた、彼女の胆力にも驚かされた。

 

「メダカ、サケ、アユに乗る隊員へ。これより、逃走中の船舶への強制接舷に移る。細心の注意を払いつつ、突入するように。」

『『「了解!」』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後3時27分。

 後に『相模湖擾乱』と記録される、『鎌倉事変』から続いたこの一連の出来事は、首謀者の確保によりひとまずの決着をみた。

 

 そして、同日午後5時20分頃をもって、山梨県上野原市や神奈川県相模原市の相模湖周辺で出現した、合計208体に上るカテゴリー3~4クラスの荒魂達は、多数の刀使や特別祭祀機動隊員らの活躍により、全て討伐することに成功した。

 この討伐作戦による、刀使や特祭隊員への殉職者が発生することはなかった。新型S装備や新型シールドなどの惜しみない装備の投入や、決死の討伐作戦により、荒魂による民間人の被害もまた、最小限度に抑えられた。

 

 

 

 

 しかし、この期に及んでもまだ全てが終わったわけではなかった。『男性排斥運動』との闘いは、これよりもまだ少し先の時系列まで続く。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

以前分割するか、このまま組み込んだままのアンケートを行いましたが、今回からも今編終了までの間、アンケートを再度採らせて頂きたく思っております。
再度結果を受けて、今編をこのまま残すか、分割投稿するかを最終判断させていただきます。

今編の完結まで、あともう少しだけお付き合いください。

それでは、また。
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