今回は番外編として、別枠に新設致しましたとじともなどの諸メンバー編になります。
…といっても、全員を拾いきれる自信はありませんので、そこは事前にご了承頂ければと思っております。
(筆者の好みの諸メンバーを優先的に執筆していきますので、その辺りもご容赦ください…。)
今話は、昨年のサポートキャラクター投票で見事一位に輝き、プレイアブル化を果たしました娘の話となります。
時系列は、鎌倉の夜から一~二ヶ月が経過した頃になります。
それでは、どうぞ。
つぐみ編 ポーカーフェイス
ー鎌府女学院 荒魂研究施設ー
鎌府女学院近くにある、様々な研究施設。
その中にある、鎌府の中でも荒魂好きで有名な呼吹が所属している、荒魂研究チームが拠点にするこの施設には、捕獲された様々な荒魂を用いた実験などがなされている。
そして、そんなアクの強い彼女を引き抜いた少女が日頃詰めているのも、この場所である。
「えーと、この実験結果の数値はここに入力して、あの荒魂に関するデータはこっちで…」
緑に近い黄土色のボブカットをしたその少女は、パソコンに様々なデータを打ち込んでいる真っ最中であった。
「…あー、終わりました。…七之里さんも、もう少し加減してくれれば、より実践的なデータが取れると思うんですけどね。まま、気長にやりましょうか。」
「おーい、つぐみ~。居るか~?」
部屋の扉の方から、男の声が届く。
それは、本部で刀使やサポートの人間を支える彼のものであった。
「私ならここに居ますよー。」
「ああ、居たいた。差し入れ持ってきたんだが、食べるか?」
彼は部屋に入ると早速、ビニール袋に入れた色々な食べ物をテーブルに置く。
「頂きましょう。ちょうど、頭が糖分を欲していたところでしたから。」
「そりゃ良かった。お茶はいるか?」
「それなら、一杯頂きましょうか。」
「ポットか湯沸し器はあるか?」
「そこにありますから、どうぞ使っちゃってください。」
彼女の視線が電気ケトルへ向けられていたことに気付き、身体を其方へと動かす彼。
室内の蛇口からケトルへ水を入れながら、つぐみに話しかける彼。
「研究の方はどうだ?」
「ぼちぼち、といったところでしょうか。最も、そんな簡単に荒魂の生態が分かるのならば、苦労はしないのですけれどね。」
「確かにな。…さて、あとは沸騰するのを待つだけだな。」
ケトルを台座に設置し終えると、取っ手付近にあった加熱中のランプが点る。
「…それで、○○(彼の苗字)さんがここに来られたのは、別に暇つぶしとかではないですよね?」
「まあな。ほいこれ。」
「…?何ですか、これ?」
彼が持参したカバンから取り出し、彼女に手渡したのは、複数の書類が入ったクリアファイルだった。
「つぐみが以前申請していた予算概要と、決裁が下りた分の書類だ。ちょっと遅くなったけどな。」
「目を通してもいいですか?」
「ああ。と言っても、予算自体は一部しか下りなかったよ。研究に専念したいだろうに、面目ない。」
「いいんですよ。それに、半ば無茶を承知で予算に盛りこんだ分も入ってましたから、まま、気にすることはないですよ。」
そう言いながら、一枚一枚書類を確認していく彼女。
「…つぐみ、今の環境は君にとって幸せか?」
「そりゃそうですよー。荒魂の研究なんてやる人間は、
「まあ、荒ぶる御霊と書いて荒魂なんだ。それを鎮められる方法が見つかるなら、どこにでも飛び回りはするさ。」
「…それ、◯◯さんが舞草に入っていたのにも、関係あるんですか?」
鎌倉特別危険廃棄物漏出問題以後、彼自身が舞草の人間であることを公表したため、彼女もそのことを知っていた。
「三割くらいはあるな。ま、つぐみの荒魂の平和利用が気にならなかったと言えば、それは嘘になるけれどな。」
「私がこう言うのは何ですが、最初に貴方へ説明した時に、私の研究へすぐ賛同してくれた時は、流石に貴方のことを疑いましたよ?」
「だろうな。…俺がつぐみの立場でも、多分そう思うだろうし。」
「まあ、おかげで学長とは別ルートで、設備の手配とかをしてくれたのは助かりましたけれど。一体、どんな裏技を使ったんです?」
「まさか、たまたまだよ。調べてたら、安値で売ってたもんだから即金で購入しただけだし。」
事実そうだったりするので、何とも返しようがない。
「…普通、躊躇しませんか?」
彼女もまた、少し渋面を作る。それだけ、彼の行動力の良し悪しに気が付いてもいるのだが。
「さーな。…そうこう話してたら、お湯沸いたみたいだな。」
「じゃあ私は、お茶を準備しますね。…確か、ここに入れていたはずですが…。」
小棚から取り出したのは、市販のティーバッグが入った箱。袋を裂いて、それぞれのティーカップに置く。
「これでいいはずですが…。」
「つぐみ、ちょっと離れてろ。沸騰したてだから、熱いぞ。」
「は~い。」
(…◯◯さんて、案外気遣いの出来る方なんですね。まま、別に気にはならないんですけど。)
とは思いつつも、彼がこうして気を掛けてくれるということに関しては、彼女も気分が良かったりする。
少し湯気を立ち上らせていたものの、緑色に染められたティーカップへ指をかける二人。
「…意外といけますね。これ。」
「こういうのんびりした時ほど、お茶を飲みたくなるもんさ。…だからといって、ずっと飲み続けたいワケでもないけどな。」
「まあ、貴方の言いたいことも僅かに解る気がします。」
「おいおい、せめて少しって言ってくれよ…。」
茶を飲みながら、彼は普段の彼女は掛けていない、ブルーライトカット用の赤いアンダーリムグラスが、彼女をより研究者の雰囲気へ強調していることを感じ取る。
「やっぱ、似合っているよな。そのメガネ。」
「あれー、◯◯さんて眼鏡フェチだったりするんですか?」
「いや、単に似合っているからさ。俺は普段のつぐみの方も好きだけどな。」
「はいはい。まま、ちょっとは嬉しいですけど。」
後半は彼に聞こえない程度の声を発する彼女。
「…そういえば、◯◯さんは夏の予定とか立てていたりするんですか?」
「ん?なんだ。藪から棒に。」
「いえ、ず~っと荒魂研究をしていてもいいのですけれど、流石にここで籠もり放しというわけにはいかなさそうなんですよね。」
「何でだ?」
「まま、私が単純にリフレッシュをしたいだけなんですけれどね。七之里さんも誘おうかとは思ったんですけれど、彼女、あまり群れることは好きでは無さそうなんですよ。」
「…確かに、な。」
その意見に同意する彼。最も、赤羽刀調査隊の面々との打ち解けようを知る限り、彼女が著しく人とのコミュニケーションが嫌いだとか、そういう訳でも無さそうには思えたが。
「そこでなんですけれど、◯◯さん、夏の間に一日二日ほどお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「俺はまあ、別に構わないんだが、それにしたってなぜに俺なんだ?」
「いや~。私、実はこれといった趣味とか無いんですよね。なので、刀使との交流も深い貴方なら、何か私に合いそうなものを知ってそうな気がしましたので。」
「それこそ、あの栄養ドリンク作りは趣味のうちに入らないのか?」
「あれはどちらかといえば、実験の延長みたいなものですから。」
「…俺ら、人体実験の一翼を担わされてたわけだな。」
それの効果は折り紙付きではあるが、それを打ち消すに余りある副作用を知っているがために、その説明に納得してしまった彼。
「ですので、外の空気を吸うついでに趣味探しを手伝っていただけたらいいな、と思いまして。まま、嫌ならいいんですけど。」
「…ちなみに、行きたい場所とかは絞ったりしたのか?」
「いいえ、まだですよ。…どこか、お考えの場所でもあるのですか?」
「折角なら遠くでもいいかな、と。あ、ただし御刀は所持しておいた方がいいか。行く先で荒魂が出てきたら、すぐに対応できるし。」
「…◯◯さんて、意外と慎重な方ですね。まま、気にはしませんが。」
感情表現の起伏は乏しいほうの彼女だが、彼のそんな一面を見られるというのは新鮮でもあった。
そうこうしているうちに、彼が自分の職場へと戻る時間がやってきた。
「もう、こんな時間が経ってたのか。意外とあっという間だったな。」
「私でよろしければ、またお話しくらいは聞きますよ?」
「あんまり俺が来ると、つぐみの研究が捗らないかもしれないから、そんな頻繁には来ねえよ。」
そう彼が返すと、彼女の口元は少し微笑むように動いた。最も、その瞬間彼は顔を横に向けていたため、気が付かなかったようだが。
「まあ、研究中に七之里さんを弄るのも楽しいですし、大したしない期待はしますけれどね。」
「…それ結局、どっちなんだ…?」
「◯◯さんも、お気をつけて。」
数歩踏み出したものの、また再び立ち止まる彼。
「…つぐみ、もし大変な時があったら俺にすぐ言ってくれ。俺はいつでも、味方になるから。」
「はーい。記憶にはとどめておきますね~。」
「じゃあ、またな。」
そう言って、部屋を後にする。
彼が去ったあと、ビジネスチェアに体重を預けるつぐみ。
「…荒魂の存在以上に、人間の感情は理解しにくい時がありますね。…あの人は、こんな人間でも手を貸してくれるのですから、ホントによく解りません…。」
年下の呼吹の考えは結構分かる方だが、彼の場合は何をもって彼女にあれこれ手助けしてくれているのかは、彼女からすれば不思議ではあった。
「…まー、○○さんと一緒に話している時間も、悪くないかもですね。私にとってみれば、なんでしょうが。」
そうして、つぐみは荒魂研究へと意識を向け直すのであった。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
筆者のところへ、プレイアブルのキャラとしてやってきたのはつい最近のことではございますが、彼女のモーションから、やっぱり動きがあるっていいことなんだな、というのを改めて思わされました。
特に戦闘終了時の表情とか、でしょうか。
癖のある呼吹を上手く扱うというのは、なかなかできないことではなかろうか、などなど彼女の凄さを考えさせられたりします。
あともう二話だけ番外編を挟みまして、真希編へと移ります。
もう少々お待ちください。
それでは、また。