今回は長船のとじともサポートメンバーから、主にオペレーターとして活躍する少女の話を投稿いたします。…彼女のとじとも上のプロフィール欄を見れば分かりますが、本業が別にあるとはこれ如何に。
時系列は御前試合前、十月頃を想定して執筆しております。
それでは、どうぞ。
ー折神家・特別祭祀機動隊本部 作戦指揮室ー
日々、刀使達への討伐任務を指示するこの部屋。言ってみれば、荒魂討伐においての指揮中枢にあたる。
刀剣類管理局の職員のみならず、伍箇伝各校からオペレーターとして多くの少女が派遣され、配属されている。
「はい、今そちらの方に特祭隊の部隊を派遣しています。あと二分程で到着します。」
「…A班は4時方向に後退を、B班は7時方向に前進をお願いします!」
現地では賄いきれない情報は全てこちらで集約し、第三者的視点から指示役として刀使や特祭隊の展開を進める。
「はい、――討伐完了ですね!お疲れ様でした!」
その少女の中で、長船女学園の制服を着たオペレーターが指示を完遂する。
「西さーん、終わった?」
「はい、私の担当分は今終わりました!」
「じゃ、そろそろ私と交代ね。お疲れ様。」
「はい!あとはよろしくお願いします。」
「ええ。」
交代を告げられたその少女は、次の担当者に引き継ぎを行い、足早に作戦指揮室を後にする。
「んん~っ!終わったぁ~。」
そう言うと、廊下を歩きながら思いっきり伸びをする。
彼女の名は
「このお仕事もだいぶ慣れてはきたけれど、……私、オペレーターの方が向いているのかな?」
こう呟いたのにはワケがあり、先述のとおり彼女は技師志望なのだが、その成績がオペレーターをやり始めて以降低下してきているのだ。伍箇伝の生徒は特別職国家公務員だが、同時に学生である以上、学業は常に付きまとう問題である。あまりに学業が悪ければ留年することも可能性としてはあり得るのだ。
「はあ…。私、このままでいいのかな…。」
来年には、順当にいけば世間で言うところの高校一年生に上がる。そろそろ自分の将来さえも視野に入ってき始める時期だ。刀使と異なり、彼女は自分の進路を自分自身で見つけていく必要性がある。
そんな漠然とした不安が彼女の頭を過ぎるなか、後ろから男性の声が聞こえてくる。
「おーい!西ーっ!」
「…あれ?○○(彼の苗字)さんじゃないですか。どうかなさったんですか?」
「同い年なんだから、他人行儀は止めてくれよ…。いやな、なんか落ち込んでいる風に見えたから声を掛けたんだが。」
梢を呼び止めたのは、刀剣類管理局本部で刀使をはじめとした伍箇伝各校の生徒への負担軽減策や、対荒魂討伐用の装備の試験運用など多岐に及ぶ業務を行っている部署の、その責任者たる彼であった。
「ええっとその、ちょっと考えごとをしていまして…。」
「根が深そうな問題か?」
「一面的には、でしょうか。」
「ふむ。……西、今から時間は取れるか?」
「今日分のオペレーター業務は終わっていますから、大丈夫ですよ。」
「この資料を親衛隊の方に届けたら、俺も仕事が終わる。その後に、その考えごとを聞かせてもらってもいいか?もちろん、場所は変えるけれどな。」
「いいんですか?」
「後方要員の負担を下げることも俺のところの業務の一つだ。それが目に見えないものであってもな。」
「…ありがとうございます。」
「着替え終わったら、学生寮前の道路に立っていてくれ。迎えにいくから。」
「…あれ、中じゃないんですか?」
「場所替えの方が気分転換も図れていいだろ?―同じ敷地内だと、リラックスして話ができないかもしれないし。」
「…分かりました!私、お待ちしてますね。」
「悪いな。じゃ、また後で。」
そう言って、せわしなく歩を進めていった彼。親衛隊の面々が在室しているであろう控室へ向け、真っ直ぐその足を速めていった。
「…思わず返しちゃったけど、良かったのかな?」
そんなことを思った彼女。とはいえ、困っていたことに変わりはないので、つい彼の提案に乗った。
一度学生寮に戻った梢は、私服のセレクトに悩みながら着替え終えると、彼の言葉どおりに寮前の道路で配車を待つ。
「ちょっと冷えてきたなぁ…。」
冬本番のあの底冷えした寒さはないにせよ、秋風が身を震わせるほどには気温の下がる日々となってきた。そんな実感を抱いていると、彼女の前にミニバンが停まる。
「待たせたな、西。今後ろのドアを開ける。」
「ありがとうございます。…よいしょ、っと。ドアは閉めますね。」
「ん。助かる。」
シートベルトを装着する音が聞こえた後、彼がまた梢に向けて言葉を投げかける。
「それで、場所はどこがいいとかあるのか?」
「―あっ、でしたら、ココに行ってもらえますか?」
「…ココでいいのか?心を落ち着けて話せるような場所じゃないようにも思えるんだが。」
「はいっ!構いませんよ!」
「…分かった。まあ、場所を訊いたのはこっちだしな。その希望を俺は汲む必要があるからなあ。じゃ、行くか。」
「それでは、お願いします。」
二人を乗せた車は、鎌倉市街へと紛れ込むように進んでいった。とはいえ、その目的地は本部からそう遠い場所ではなかったのだが。
ー神奈川県鎌倉市 某カラオケ店ー
「~♪」
(落ち着けると思っていなかったのは俺だけか。西の顔、すっごく生き生きとしているし、自分にとっての落ち着く場所が人にとってのそれとは違う、ってことが今回の教訓かな。)
梢が指定した場所、それは行きつけのカラオケ店であった。彼女によれば、こうしてオペレーター業務が終わった日や非番の時には、憂さ晴らしや声の調整を兼ねて歌うことでストレスも発散しているという。趣味とは言っていたものの、その歌声は中学生が出せるようなものではない気がする、と彼にはそう思えた。
「~♪~~♪」
(…こういう機会だからなんだろうが、改めて西の声って良いよな。透き通るような、というのか、耳にしっかり残るというか。……彼女をべた褒めする糸崎*1が、西の声は三原*2以上に印象に残るぞとか言っていたのが意外ではあったが、確かにこれは残る声だ。)
その時の誠司は、直後に物凄い形相をしてやってきた早希によって何処かへ連れていかれていたが、自身の彼女を差し置いてもなおそう放ったということが、梢の凄さの裏打ちされた部分なのだろう。
「…ふうっ。あー、やっぱり歌うと気持ちいいですね。」
「当たり障りのない言葉しか返せないが、綺麗な歌声だったぞ。普段歌わない人間でも分かるくらいには。」
「本当ですか?…実は、男子と二人で来るのって今日が初めてなんですよね。もちろん、大人数で歌うことだってありますから男の人と一緒になることが初めてではないんですけれど、……こうして一対一でのカラオケって、ちょっと新鮮な感じがします。」
「へえ~、そうなのか。…その初めてが俺とは、また何というか。恐縮の限りだよ。」
「そんな、そう畏まらくとも大丈夫ですよ!?―きっと、こうした機会はいずれ来ていたでしょうから。」
「…それもそうかもな。悪い、変に気を遣わせちまった。」
それはそうと、という切り出しで、彼は梢の悩みをそのまま聞き出そうと考えた。というか、梢の歌唱に圧倒されていたが、本来はこっちが本題だったわけである。
「西が悩んでいたことって、一体何だったんだ?」
「あっ、実はですね…。」
~事情説明中~
「…という訳なんです。私、どうしたらいいんでしょうか。」
「今後の進路かあ…。そりゃ悩むよなあ。」
「…はい。技師志望なのは、確かにそうなんです。でも、オペレーターの仕事が板についてくると、こっちで頑張っていくのもありかな、なんてことも思い始めている自分がいます。」
「ふむ。」
少し考え込むと、彼はある意味で玉虫色の回答を彼女に返す。
「なら、どっちもやってみればいいんじゃないか?」
「え、今のまま、ということですか?」
「そうじゃなくてな。」
彼は、確かにそう言っているようにも聞こえるよな、と続けたうえで、
「バランスよくやろう、って考えるんじゃなくて、自分がやりたいと思えることをやり続けてみることも大事なんじゃないかな、ってな。西にとっては、技師もオペレーターも、どっちもまだ続けたいんだろ?―だったら、今大焦りして決める必要性はないんじゃないか?きっと、続けている過程でどちらか片方に絞るなり、そのままずっと二足のわらじでやっていくことも、場合によってはあるんじゃないか。」
と話した。
「でも、それでいいんでしょうか。技術部での成績は下がる一方ですし、…そんな私でもいいんでしょうか。」
「西自身の人生は、君自身のモノだ。色んな可能性があるなら、それをわざわざ不意にしてまで自分から道を閉ざすようなことはあっちゃならないし、俺は西が納得のいく答えが出せるならそれでいいと思っている。」
「…う~ん。悩みますね。」
「なんだったら、鎌倉にいる間はウチの部署が西の勉強のサポートや、鎌府と長船に掛け合って直接研究現場とかでの実習や研修を体験できるようにしてみるが。オペレーター業務に支障の出ない範囲での手伝いにはなるだろうけどな。」
「……○○さん、そのお言葉に甘えさせていただいてもよろしいですか?」
「ああ、勿論。一人ひとりと向き合えるかまでは分からないが、少なくとも西のように困っている人間がいるなら、俺はそういう人の手助けをしてやりたいと思っているから。…恩着せがましいかもしれないけれどな。」
「そんなことないですよ。…はぁ~、ちょっと安心しました。悲観する必要がないんだって、分かったのが良かったです。」
「んじゃ、景気づけにまた歌うか?」
「はい!…○○さん。」
「ん?」
「今度から二人っきりの時は、私のことを梢って呼んでくれませんか?―苗字だと、ずっと方角のことを言われているようでモヤモヤしてしまいそうですから。」
「それくらいならまあ、構わないが…。」
「ありがとうございます!―それでは、歌いますね!」
何の気なく普通に言葉を返した彼だったが、しれっと彼女との関係が一歩進んでいることに全く気付いていなかった。
帰り際にはかなり機嫌が良くなっていた梢。彼は、彼女の悩みに解決策の一つを提示できたことは、これから先の、生徒から寄せられる相談事へ対応していくにあたって大きな経験になると思えた。
ちなみにお互いが舞草の人間であったことを知るのは、まだ少し先の話となる。
ご拝読いただき、ありがとうございます。
後方支援を担うメンバーの話は少ないものではありますが、ちょっとでも刀使達の後ろには多くの人が関わっているということを思って頂けたらなあ、とは思っております。
(現実でも、様々なところで同じように闘っておられる方々もいらっしゃいますので。)
梢が舞草構成員である、という話は漫画版の方で登場しておりますので、そちらの方から採っている次第です。
ちなみに彼女の中の人を何気なく調べてみたら、シャニマスのキャラを演じられていると知り、驚きました。それと同時に、キャスティングされた背景も何となく合点がいきましたが。
閑話をもう一話挟みまして、アンケート結果の反映に移りたいと考えております。
それでは、また。