二日連続投稿です。
今回は番外編になります。
智恵編を投稿させて頂きます。今話は読み切り形式です。
ちなみに皆様はこたつに入る時、ミカン派ですか?それともアイス派ですか?あるいは他の物を食べて過ごされますか?
人によって、この答えは割れそうな気がします。
話が脇に逸れましたが、本文に参りましょう。
それでは、どうぞ。
ー長船女学園 校内廊下ー
舞草の構成員が多く所属する、ここ長船女学園。
フリードマン博士が選り抜いてきた研究者達もまた、長船の管轄内にある研究施設でノロに関する研究を行っている。
その話は置いておいて、長船に寄った際に舞草の連絡要員であった
『長船に来てるなら、少し時間をもらってもいいかしら?』
とメールを貰ったので、肝心の彼女を探しているところであった。
「智恵、一体何処に居るんだ?…てか、校内広いな…。」
建物内は同じような景色が続くため、段々捜す気すら失せかけていた時だった。
「あっ、居たいた!お姉さんはここよ~!」
ちょっと離れた位置で、手を振って立っていた彼女の姿を彼は捉えた。
「やっと見つかった…。」
彼は、彼女のもとへと足を速めた。
「ごめんなさいね。無理に時間を設けてもらうようなことを言ってしまって。」
「いや。それはいいんだが、呼ばれた用がよく分からなくてな。」
合流した彼だったが、彼女が意味も無く呼び出すとも思えなかったため、訊いてみる。
「…ちょっと困り用があったの。部屋まで案内するから、そこで診てもらうつもりよ。」
「あっ、ああ。」
(『診てもらう』…?修理か何かか?)
彼女の言葉が気になったものの、取り敢えず彼女の寮の部屋まで案内してもらうこととなった。
(…そういや、女の子の部屋に直接呼ばれることって、今までなかったな。……いや、冷静に考えたらこの状況はヤバくないか!?)
鈍感な部分も多い彼ではあるが、これはどう考えても逃げ道を既に塞がれていると思えた。
(…無いとは思うが仮に何かあった時、間違いなく俺捕まるよね!…何事もなく過ぎてほしい…。)
懸念が頭を駆け巡るなか、二人は学生寮へと進んでいった。
ー長船女学園 学生寮ー
智恵の部屋まで通された彼。
「お邪魔しま~す。」
「もう、礼儀正しいんだから。普通に入ってきていいのよ?」
そうもいかんだろ、と言おうと思ったが、彼女の部屋の中を見た際に言葉を失う。
部屋の中が、大変綺麗に片付けられていたからだ。
「…智恵、もしかして綺麗好き?」
「まさか~。お姉さんらしい振る舞いをするなら、自分の身の回りもキチンと、ね?」
なるほど納得。彼も書類などが立て込んで一時期大変部屋が汚い時があったが、彼女の姿勢を見習いたいと思ったのである。
「おっ、こたつがある。…まあ、確かにまだ寒いしな。」
ワンルームの一角に置かれた、小型のこたつ。
今回長船を訪問した時はまだ二月。瀬戸内海が近いここでも、極稀に雪が降る時期でもあった。
「一緒に入りましょうか。」
「…ご丁寧にミカンまで。」
智恵の手には何個かのミカンが抱かれていた。
彼女の手と胸部に挟まれたミカンが、こたつ机に置かれていく。
こたつの電源スイッチを入れる智恵。
「あ~。足が生き返る~。」
「ふふっ。凄い顔をしているわよ。」
「えっ、マジで。」
「…でも、暖かいわね。」
彼女の出してくれたミカンとお茶を頂いていく彼。
「そういや、智恵。診てもらいたいものって、一体なんだ?」
「あっ、ちょっと待っててね。」
彼女はベッド横のラックから、一台のノートパソコンを取り出してきた。
「これなんだけど…。」
「確認してみよう。」
パソコンを起動し、パスワード画面が表示される。
「智恵、パスワードを打ってもらえるか?」
「…じっ、実はその…。」
なぜか、焦った顔をする彼女。
「…まさか、パスワードが分からなくなったとか?」
彼女は何も言わなかったが、静かに頷いた。
「メモ、してなかったのか?」
「それが、その紙がどこかにいってしまって…。結局開けられないままなの。」
「とはいえ、仮にこれでパスワードを再設定する場合、パソコンが初期化され兼ねないしな…。なんとか思い出せないか?」
「う~ん。…ダメね。思い出せそうで出てこない。」
「…智恵、取り敢えずこたつに入らないか?立ったままじゃ寒いだろ。」
「…うん。」
そう言って、彼女はこたつに入り直す。…彼の隣にだが。
「…あの、智恵さん?」
「こうした方が思い出せるかな、って。ね?」
「それならいいんですが…。」
(…胸が当たっているとか言ったら、一気に場が凍りつき兼ねないから止めとこ。)
彼の左側に座った彼女がこちらに寄る度、狭いこたつなので必然的に両者が接触してしまう。
避けようの無い状況だったわけである。
「というか、最悪使わないならそのままでもいいんじゃ…。」
場を紛らわす為にそう言った彼だったが、彼女の顔が途端に暗くなった。
「…実はそのパソコンの中に、私の幼い頃から付き合いのあった女の子との写真が入っているの。久しぶりに開こうと思ったんだけど、パスワードを忘れてしまって…。」
「それで今に至る訳か…。」
確かに、自分の大事な思い出を見られないというのは、辛い部分が強い。
彼も家族との時間がそう長いものではなかったこともあって、彼女の気持ちは痛いほど分かった。
「…どうにかしてあげたいな。」
そう思った時だった。
ふと、彼女の部屋にある棚と棚の僅かな隙間に、何かが挟まっているのを見つける。
「智恵。あの棚、少し動かしてもいいか?」
「えっ?ええ。いいわよ。」
「よっこいせ。…紙だな。…ん?」
彼が棚から見つけたのは、智恵らしき筆跡で書かれた何かの文字列だった。
「智恵、これは?」
「!!…これよ!パスワードを控えていた紙は!」
「よし、早速打ってみよう。」
その文字列通りのパスワードを、画面に向けて叩き込む。
すると、某社のOS画面が立ち上がった。…つまり、パソコンを開くことが出来たのである。
「よし!入れた!」
そう彼が喜ぶと、隣にいた智恵がガバッと彼を抱き込む。
「えっと…智恵?」
「……ありがとう。…本当にありがとう。お姉さんの大事な思い出を、また見ることが出来るわ。」
その腕には、非常に強い力が加わっていた。
「…智恵が喜んでくれたなら、俺は来た甲斐があったよ。」
ポンポンと、彼女の頭を優しく叩く。
「ふぇ?」
「…また何かあったら、自分で抱え込まず直ぐ言ってくれ。力になれるかもしれないからな。」
「…うん。」
若干の沈黙の後、彼は口を開く。
「…ところで智恵。大変申し上げにくいことなんだが…。その…、色々マズいことになってる。」
「えっ?」
冷静になった彼女が、彼にしていたことと現状を見て少し顔を赤くした。
「わ、私ったら、一体何をしているのかしら///」
とっさに彼から離れる智恵。
(言った俺も俺だが、これは言わんと理性が保たん!真面目に押し倒し兼ねんわ!)
テンパり過ぎて関西弁調になる、心の中のツッコミ。
やはり、女性としての魅力が強過ぎる彼女を前にしては、流石の彼も結構ギリギリまで理性を耐えてさせていた。
あともう一押しあったら本当にヤバかっただろう、と彼は後に述懐している。
そんなこんなあったが、智恵との距離感も縮まりつつ、無事何事も無く学生寮を離れることが出来た。
後に智恵の言っていた幼なじみこと、安桜美炎とはそう遠くない将来に出会うこととなるが、それを彼はまだ知らない。
吹き下ろす北風は強かったが、それが終わる頃には出逢いと別れが増える緑の息吹く季節となる。
それは彼や彼女にとっても同じことであった。
ご拝読頂きありがとうございました。
お姉さんでいたい智恵と、少しずつ成長していく美炎。
調査隊の面々との交わりが、彼女達をどう変えていくのか気になりますね。
舞衣とは別ベクトルのお姉ちゃん姿というのも、悪くないよなと思います。
(怒らせたら非常に怖いという点も似通ってますし。)
感想等ございましたら、感想欄・活動報告で対応させて頂きます。
次回も番外編が続きます。
それでは、また。