今回は番外編として清香編をお送りいたします。
今話は短めとなっております。
それでは、どうぞ。
ー鎌府女学院 食堂兼レストプレースー
平城学館に在籍する
今の時間は昼食後のちょっとした休みで、久しぶりにこの場に本を持って来ていた。
彼女も趣味の読書があまり纏まった時間を取れていないので、移動中でもスマートフォンで読める電子書籍の購入も検討していた。
「はあ~。本は癒やされますね~。」
日頃の色々なことから頭を空っぽにして、紙製の本をゆったり読む。
今日は変た…もとい綾小路所属の山城由依もいないため、心を穏やかにして本を読み進める。
「清香~!」
「あっ、ほのちゃん!」
ちょうど討伐任務から帰ってきた美炎と再会する。
「いや~、今日も大変だったよ。…あれ、手元に持っているのって本?」
「うん。刀が擬人化したゲームを題材にした作品を今読んでいるところだよ。ほのちゃんも、良かったら読む?」
「ううん。またの機会にするよ。ありがとう、清香。」
「こちらこそゴメンね。」
「じゃ、お風呂入ってくるね~!また後で~。」
離れる美炎に手を振り、食堂内のウォーターサーバーから水を貰ってくる。
「もう、半分以上読んでいたんだ…。一気に読み進めようかな。」
彼女が読んでいたのはライトノベル。但し、毎分四ページで読み進めるその速度は、最早作業の領域だった。
「ふう。結構、早く読み終わったみたいですね。」
美炎と別れて一時間。四百ページ近くあった本は、彼女の速読により鞄の中へと仕舞われた。
「さて、そろそろ動こうかな?」
「あれ、休憩中か?清香。」
座席から立ち上がろうとする彼女に声を掛けたのは、彼であった。
「ご苦労様です。今からお昼ですか?」
「あっ、ああ。思った以上に仕事が溜まっていてな。」
これも同僚たちのせい…などと口走らない点は評価してあげたいところである。
「食べ終わったら、また作業ですか?」
「そうだろうな。今日中に終わるのかね…。」
確認の書類も多いため、今日明日はデスクワークかもしれないと思った彼。
「…でしたら、私もお手伝いしましょうか?」
「確か、清香は今日出撃要員じゃなかったか?」
「応援が必要な時に向かうだけですから、今日は比較的ゆっくりしていたんです。」
「…なら、その言葉に甘んじようかな。手伝ってくれるか?」
「はい!」
平城のスマートな夏服を靡かせ、食べ終わった彼の後を追う。
ー刀剣類管理局本部ー
鎌府の方から歩いてくること数分。
彼が本部に居る時に籠もる職場へとたどり着く。
「戻ったぞ~。」
「あら、お客さん?」
部屋で作業中だった女子の同僚が声を掛ける。
「いや、本人が手伝うと言ってくれてな。荒魂が出てくるまでの間、一緒にやってくれるそうな。」
「ふ~ん。…まっ、いいんじゃないの? アンタはもうちょっと、女の子とガッツリ親交を深めた方がいいわよ。」
「簡単に言うな。それに彼女は厚意で動いてくれたんだ。何も疾しいことをする気はないぞ。」
彼は清香に向き直り、同僚に挨拶するよう合図を送る。
「へ、平城学館の六角清香です!よろしくお願いします!」
「本部所属の中島よ。昔は貴方と同じ平城だったの。よろしくね。」
彼の同僚で、本部に所属する
二人の少女の間で、軽く握手が交わされる。
「中島、
「あの人なら、貴方の机に書類山積みにしてどっか行ったわよ。」
「ひでぇ。」
「まあ、彼がやるより貴方の方が仕事のスピードは速いでしょ?」
「…中島、一応俺も人間だぞ。ちなみにだな、事務作業の完遂率はアイツの方が上なんだが…。三原のところにでも行ったのかね。」
「あの~?」
里奈と彼の会話に入るタイミングを探っていた彼女が、ようやく声を上げる。
「ああ、すまない清香。早速取りかかるから、そこに座ってくれ。」
「はい!」
彼の机のそばに置かれた椅子に座る彼女。
「そう言えば、貴方は前線に出てくることもありますけれど、普段はこんな感じなんですか?」
「ん?まあ、そうだな。というか、今のような状況がおかしなだけだから。…ホントは前線にいた方がいいと思ったりはするんだがな。致し方ない。」
「そうなんですか…。…私はあまり戦いたくないんですけれど、皆が頑張っているなら自分だけのんびりしているわけにはいきませんからね。」
「刀使や手助けする人間の負担を軽くしてやりたいところだが、如何せん人が足らないからな…。もう少し頑張ってもらうほか、俺達も打つ手がないんだよ。清香にも無理強いを言うようですまない。」
「私は大丈夫です。…ただ、夏休みの課題は減らないんですよね…。」
「ゴメン、それはどうにもできない。」
清香が手伝い出して以降、積まれていた書類の山がどんどん減っていき、遂には今日分の最後の書類まで終わった。
「ふぅ~。助かったよ、清香。これで今日の分はおしまいだ。」
「本当ですか!?お役に立てたのなら、嬉しい限りです。」
「そのお礼と言っては何なんだが、俺が買い置きしていたケーキでも食べていってくれないか?」
席を立ち、部屋に据え付けてあった冷蔵庫から洋菓子店のお持ち帰り箱を持ってくる彼。
「えっ、いいんですか!?」
「無報酬で働かせる方が酷いだろ。何個かあるから選んで食べてくれ。全部でもいいぞ。」
「…それじゃあ、これをいただきますね。」
少し大きめのイチゴが載ったショートケーキを取り出す。
「それでいいのか?」
「はい。…いただきます。」
ケーキの前で手を合わせ、フォークをケーキへと差し込んでいく彼女。
「…!美味しいです!」
「それは良かった。」
「イチゴの甘酸っぱさと生クリームの甘さが見事に舌を包み込んできます!」
「…凄く機嫌が良くなってる。」
ケーキを頬張る幸せそうな顔が、彼女の幸福感を此方に伝えてくる。
「さて、俺もちょっと食べるか。」
彼の方はチョコレートケーキを取り出し、サクサクと食べる。
ケーキを食べ終え、清香は荒魂に備えて再び鎌府へと戻る準備を進める。
「今日はありがとうございました。」
「お礼を言うのはこっちだ。ありがとう、清香。」
「それじゃあ、私はこれで一旦失礼します。」
彼の職場を後にする彼女。
「清香!」
「はっ、はい!」
後ろから突然呼び止められる。
「今度オススメの本があったら、俺に教えてくれ。」
「分かりました~!その時はお持ちしますね!」
「ありがとな~。」
そのまま、彼女の姿は鎌府の校舎内へと消えていった。
「行っちまったか。」
「女の子には甘いもの、よく分かってるじゃない。」
「うぉっ!お前、いつから居たんだよ!」
彼の前の机から、ひょっこり顔を出す里奈。
「これでもケーキを食べていた真っ最中に戻ってきたんだけどね。…気づかなさ過ぎでしょ。」
「悪い。」
「…で、どうなの?」
「どうって?」
「清香ちゃんよ!」
「?…どういう意味だ?スマン、真面目に分からん。」
「…もういいわ!この朴念仁!」
「いやそれ酷くね!」
(…清香ちゃん、コイツを振り向かすのは相当至難よ。…頑張ってね、後輩。)
里奈は、平城で自身と仲の良かった彩矢のことも思い出しつつ、次世代の恋の大変さもしみじみ感じさせられた。
なお、当の清香はしばらくの間、彼よりも由依に振り回される日々が続くこととなるが、里奈はそれを知る由も無い。
セミの唸る夏休み期間中での出来事であった。
ご拝読頂きありがとうございました。
私事ですが、予約しておりました薫のフィギュアが無事に届きました。
クッションになっていた祢々切丸の鞘、見た目的にいい具合なふにゃつき加減でしたね。
みにとじも見つつ、少しずつ投稿を進めて参ります。
感想・ご要望等ございましたら、感想欄・活動報告で対応させて頂きます。
次回は沙耶香編です。
それでは、また。