刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。
二日連続投稿になります。

今回は番外編になります。
呼吹編をお届け致します。
時系列は胎動編と波瀾編の間の頃になります。

少し短めですが、お付き合いください。
それでは、どうぞ。


呼吹編 公園警戒

 ー東京都立川市・昭島市 国営昭和記念公園ー

 

 百五十ヘクタールにも及ぶ広大な敷地を誇るここの前歴は、旧日本陸軍の立川飛行場から米軍に接収され、その基地施設だったこの場所。現在では都内有数の巨大緑地と化している。

 

 元々鎌府所属の七之里(しちのさと)呼吹(こふき)にとって見れば、首都圏は自分の庭のようなエリアではあるが、荒魂を狩りたがる彼女にとってみれば、平和な状況は案外つまらないものかもしれなかった。

 

「にしたって、なんでお前までアタシに付いてきたんだ?」

「ミルヤから、呼吹が暴走しないように見ておいてくれないか、と頼まれてな。あと智恵からも。」

「アタシは馬か!」

「実際、今は落ち着いてきているとはいえ、調査隊結成当初は一人突っ走って荒魂を斬りまくってたそうじゃないか。…そりゃ、心配もされるさ。」

「いいんだよ。荒魂ちゃんを斬ることが、アタシにとっちゃ最高にたまらないんだからな。」

「…まあ、確かに斬り祓うという行動そのものは、別に間違ってはいないんだけどな…。」

 自分の意志で暴走しているという、現場指揮官の立場からでは悩ましい存在にも取れる彼女。

(…そう考えると、彼女を戦術に組み込むミルヤ、本当にスゴいわ。)

 彼女の所属する隊長の凄みを感じながらも、今は自身が指揮を執る立場。彼女に対して冷静な指揮が執れるのか、不安を覚えた。

 

 

 

 

 今回、公園内で荒魂の反応があったことを受け、鎌府の刀使を中心に編成された部隊を、彼が指揮することになった。…というのも、刀使の数が少ないことに加え、練度不足などで負傷するなどして伍箇伝の各校を辞める生徒が後を絶たず、当然ながら指揮を行う人間も減っていたのである。

 

 この公園は非常に広いこともあり、今回は隣接する立川駐屯地の一部をお借りして現地本部を置き、二、三名ごとに分かれて探索することになった。そのため、今は彼と呼吹の二人きりだ。

「しかしまあ、刀使を生かして帰すことを考えているとは聞いているけどなあ、本当にお前はそうなのか?」

 ちょくちょく耳にする彼の信条に対して、少し疑念を持っていた彼女。

「俺達も、打てるだけの手は打っている…。こればかりはケースバイケース、トライアルアンドエラーの繰り返しだ。上手くいくこともあれば、負傷者を出すこともある。…難しいよ。」

 暗い表情を浮かべる彼。

「あー、分かったから!そんなしみったれた顔をすんなよ!まるでアタシが悪いみてぇじゃねぇか!」

「いや、分かっているんだよ。結局、自己満足でしかないのかもしれないし。それに…。」

「ストップ!ストップ!アタシが悪かったから!それ以上暗くなるな!」

 流石にネガティブモードに入りそうな勢いだった彼を制止する彼女。

「取り敢えず、お前が本気だってのは分かった。」

「呼吹は俺の姿勢、どう思っているんだ?」

 今度は、彼が彼女にとっての自身の存在を訊いてみる。

「アタシか?…人には興味が無いからな。その辺の石と同じような扱いじゃねぇか?」

「…そうか。」

「まあ、お前がアタシを『刀使』として見ているのかは知らねえけどな。」

 

 荒魂を畏れ敬って共生しよう、という考えを持つ舞草である彼と、ヒスおb…もとい高津学長の下で荒魂へ抗する実験を散々やらされてきた彼女とでは、そもそもの荒魂に対するアプローチさえ異なる。

 これで分かり合おうというのは、土台無理な話である。…だが。

 

「呼吹は呼吹、俺は俺だ。人それぞれ、信条が異なるのは当然だろう?それでも、俺は君を『刀使』だと思っているぞ。」

「…まあ、良いけどな。足引っ張るんじゃねぇよ。」

「そのつもりだ。…ヤバい時は撤退も考えておくけどな。」

「威勢がいいのか、腰抜けなのかハッキリしろよな。全く…。」

 彼のどっちつかずな態度に苦笑する呼吹。

 そんな時だった。

 

 ピーピーピーピーッ

 

 二人の持つスペクトラムファインダーが警報音を鳴らす。

「おっ、荒魂ちゃんのお出ましか?」

「…近いな。まさか、ここが当たるとは…。」

「んじゃ行くぜ!付いてきな!」

「あっ、おい!ちょっと待て!」

 呼吹を見失わないようにしながらも、手持ちの89式小銃を移動しながら動作確認する。

(本当なら止まった状態でやりたいんだがな。呼吹の身の安全が優先だ。…弾倉(マガジン)は銃に装填済みなのも含めて四つか。応援が来るまで弾幕で凌ぎきれるか?)

 嫌な予感をしつつも銃のセーフティーロックを外し、ともかく反応があった場所へと向かう。

 

 

 

 

 ー公園内 こどもの森 南側ー

 

 反応があったあたりへ到着すると、この辺りで遊んでいた子供達や保護者が一斉に避難し始めていた。

「あれか!デカくはないが、民間人には脅威なサイズだな。」

「あん?…どうやら、アタシを楽しませてくれそうだなぁ。」

「どういう意味d…!?…嘘だろ!」

 近くまで来たから判ったのだが、スペクトラムファインダーには荒魂の反応が二つあったのである。

「そんじゃ、荒魂ちゃんと遊んでくっか!」

「呼吹、待て!…クソ、行っちまった。」

 彼女を追いたいところだったが、その前に彼は業務用携帯から駐屯地内の現地本部に連絡する。

「本部、昭島側のこどもの森付近にて、荒魂が複数出現!現在、呼吹が応戦中。至急、刀使達を送ってくれ!俺は呼吹の援護と民間人の避難誘導に当たる。通信終わり!」

 本部からの復唱を行う時間すら惜しかった彼は、状況を端的に伝えることで、あとは現地本部の決断に委ねることにした*1

「…呼吹、無事だといいんだが。」

 そう言って、早々と行ってしまった彼女を追う彼。

 既に周囲に人影も無かったため、彼女のもとへと急げたのである。

 

 

 

 

 一方、荒魂に向かって突っ込んでいった呼吹。

 修羅場を何度もくぐり抜けてきたとはいえ、まさか彼女も先ほどより増殖するとは思っていなかったようだ。

 

「チッ、面倒くせぇー。…スッカリ囲まれてんな。」

 彼女も荒魂とやり合えて嬉しいかと思えば、そういう訳でもない。ここ数日の出撃で、目に見えない疲労が蓄積されていたからだ。

(…どうする。退路は断たれている以上、ここで大暴れして荒魂ちゃん達を斬り崩していくのも手だが…。)

 一対多、しかも荒魂が増え続けているというのも、彼女の身を危険に向かわせていた。

(あ~っ、もしミルヤならどう指示するんだよ!このままじゃ八方塞がりじゃねぇか。)

 文字通り、彼女に絶体絶命の危機が迫る。

 複数の荒魂が彼女に向かって、一斉に四方八方から襲いかかってきたその時だった。

 

 

 

 

 バババッ バババッ

 

 

 

 

 弾薬の節約と、呼吹や荒魂の反応を此方に寄せるために行った点射。なんとか彼は追いついたのである。

「呼吹!こっちだ!」

「ああん!…ったく、しょうがねぇなあ!」

 彼の声を聞いた彼女はすぐさま、迅移と八幡力を駆使して彼の立っている方向へと素早く動く。

「間一髪だったな!」

「礼は言わねえからな!…んで、今からどうするんだ!?」

「近くにあったかなり広い野原まで、荒魂をおびき寄せる!そこなら、見通しがいいから荒魂に対処し易い!」

「…って、アタシらはそのエサか~!!」

「ともかく走るぞ!」

「クッソォォォー!!」

 全速力で荒魂から逃げる二人。

 

 

 

 

 その後、彼の即席のプラン通りに荒魂対処は完了した。戦場となった広い野原では、今まさにノロ回収班の手により大量のノロが収集される。

 

「…あ~。今日はもう荒魂ちゃんと遊ぶのはいいわ。」

「お疲れ様、呼吹。つぐみから連絡が入ってたみたいだぞ。」

「…絶対、ロクな用件じゃねぇだろうな…。…勘弁してくれよ。」

「…取り敢えず、擦過傷と切り傷は消毒し終えたから、動いても大丈夫なはずだ。…外見上はな。」

「今回の戦闘で分かったことがある。…お前の指示よりも、ミルヤの指揮の方が良いってことにな。」

「まあ…、だろうな。」

「それともう一つ。…お前が色んな奴から好かれている理由も、何となくだが分かったよ。アタシはそこまでだがな。」

「…今日に関しては、酷くグダグダなものだったと思うけどな…。」

「ま、今後もよろしく頼むぜ。荒魂ちゃんをもっと斬らせてもらいたいからよ。」

「…善処します。」

 

 

 気付けば夕焼け空。

 ベクトルが異なる二人であっても、任務をこなすことは不可能ではないことが再び実証された。

 …また、共に戦う機会もそう遠くないように思えた。

*1
これは通常では異例の判断だった。




ご拝読頂きありがとうございました。

呼吹は、とじとも配信初期の頃は荒魂を斬りまくるというので、アニメとはまた異なる視点を持ったキャラだななどと思っていましたが、みにとじ等でツッコミ役に徹するなど、荒魂が絡まなければ普通にいい娘なのでは?と思ったりしています。(個人談)

次回も番外編が続きます。
それでは、また。
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