お待たせ致しました。
メイン六人の話に戻って参りました。
今回は、可奈美編その3をお届け致します。
…各話のなかでは過去最長になってしまいました。
すみません。(_ _;)
長めになりましたが、最後までお付き合いください。
それでは、どうぞ。
ーJR秋葉原駅 電気街口ー
昼下がりの秋葉原。
少し前、突如出現した荒魂によって台無しにされたデート*1の埋め合わせという形になったが、今度は落ち着いてデートが出来ると思えた彼。
可奈美は今回も例外なく、友人達と朝練がてら打ち合いを経た後に来るとのことだったので、デート前に先に用件を済ませようと思った彼は、東京都心に出向いていた。いつもの彼女らしいといえばらしいので、逆に安心して出たわけである。
…むしろ、いつもの鍛錬をしないとか言い出した時には、何かあったのかと大慌てで心配してしまうだろう。
「…まあ、取り敢えず用事も済んだことだし、後は可奈美が来るのを待つか。」
とはいえ、秋近くなるこの時期。残暑と寒さとが入り混じっている影響からか、体はどうも馴染まない。
寒さ対策に上着を持ってきたとはいえ、使う機会なんかあるのかという自身の疑問もあった。備えておくことは大事ではあるのだが。
「お待たせ~!」
「可奈美!」
快活な彼女の声が彼の耳に届き、思わず返す。
「結構待ちました?」
「いや、そうでもないぞ。事前の用に時間がかかり過ぎたからな。…じゃあ、行こうか。」
「はい!」
ちなみに今日、可奈美は相棒のように扱う《千鳥》ではなく、代わりに自室でストックしていた木刀を布製のホルダーに入れ、肩掛けしている。時間の有効活用策として、デートに行くついでに《千鳥》の重整備を依頼したのである。
…木刀を持っているだけで、そもそも法に触れる*2のでは?などという野暮な突っ込みは無しである。
ー某アニメグッズ取扱店ー
「うわ~っ!凄い!私が探してたグッズが沢山ある!」
「俺はたまにしか来ないからどうかと思ったんだが、どうやらここは当たりだったみたいだな。」
本当は池袋とか中野の方が良かったかな、とかも感じていた彼であったが、彼女の嬉しそうな顔を見てそんなことも吹き飛ぶ。
「あっこれ!二回で放送打ち切りになったアニメのグッズだ~!」
「…俺も大概マイナーなものを視聴する派だが、可奈美はかなり次元が違うな…。」
「なんか分からないけど、すぐ終わっちゃう作品ほど気になっちゃうんだよね。」
そうこう言いつつ、お互いの目当てのものを探す二人。
一ヶ所目の目的地での買い物を終え、路地を歩く二人。
「…完全に日頃貯めた分の放出時だな…。まあ、後でグッズは整理しておくか。」
(とは言っても、出費は必ず黒字で抑えるけどな。)
使いどころを失っていた預金残高を見ながら、使いすぎを避ける彼。
ふと、隣を歩く可奈美がちょっとした疑問を彼にぶつける。
「…ふと思ったんですけれど、お仕事であちこち行っているのを見かけますが、お休みってとれているんですか?」
「……ノーコメントで。というか、可奈美。その話題だと君の方にも同じことが言えるんじゃないか?」
話が可奈美の休日談に移る。
「う~ん。それでも何日かに一度はお休みを頂きますね。」
「その間は何かするのか?」
「だいたい他の流派の人の動画とか、本とか読んでたらあっという間に一日が過ぎてたりしてますねぇ…。」
「…俺と同じように、集中しだしたら時間の経過を忘れるタイプか。でも、それを生かせているのは君の凄いところだとは思うけどな。」
素直に彼女を誉める彼。だが、その言葉を聞いて少し顔を暗くする可奈美。
「でも、もっと強くなりたいな。…あの時、全然勝てる気がしなかったもん。」
「…タギツヒメ、か。」
最終的には姫和の一の太刀で、紫もろとも隠世にタギツヒメを送り込んだ(筈だった)のだが、可奈美は姫和の特攻を止めてなんとか彼女を現世に引き戻した。
その際の戦いのことを思い出したのだろう。
「大丈夫だ。」
思わず可奈美の手を握る彼。
「確かに君は強い。でも、人間である程度以上、完璧な強さを持つ存在なんて居ない。迷ったことがあったりしたら、姫和や舞衣達に打ち明けたっていい。…俺は何があっても可奈美を手助けしたい。」
「はっ、はい!…えっと、その…。」
「ん?」
「手が…。」
「………ハッ!ごめん!」
無意識にやっていたことに気づいた彼は、可奈美の手を放す。
「あっ…。」
少し名残惜しいような表情を浮かべる彼女。
「またやってしまった…。手は大丈夫か?」
しかし、それに気付かない彼。
「……うん。大丈夫だよ。」
(何だろう、この感じ。なんかモヤモヤするな…。)
自身の感情に違和感を覚えつつ、歩を進める。
ー某家電量販店ー
二人は普通のデートならばまず寄ることのない、家電量販店に立ち寄った。
というのも、これにはキチンとした理由があり、管理局が秋の体育祭シーズンに備えて、万歩計や古くなったカメラなどの電化製品の買い換え時期が迫っていたため、その品定めの一つの見方を二人に依頼したのだ。
要するに購入責任者の片棒を担がされたわけである。
「備品で挙がっていたのって、これくらいか?」
「はい。おそらくですけど。…読めませんね。」
財務担当者から渡されたメモ紙が非常に筆跡の悪いものだったため、解読に苦労する二人。
「万歩計とカメラ、発電機に放送用ケーブル…、業務用大型スピーカーだと!?いや、これは業者通せよ!」
思わずメモに突っ込む彼。なんでそんなものを依頼したのかは謎だ。
「焦ってたんでしょうかね?」
「…かもな。取りあえず、探すか。」
店内を回りながら、発電機と大型スピーカー以外のものは、彼と可奈美で使いやすさやデザインなどの意見を出し合いながら決まっていった。
「発電機は…。大手に頼むとして、問題はスピーカーか…。これも業者任せだな。」
正直、自分達の手に負えるものではないと思った彼。この辺りの専門設備はプロに任せようと思った。
他の売り場を見たかったらしい可奈美と一旦別れ、少し店内を歩いていた彼。
「…ん?ここはパソコン売り場か。…そういや、今使っているパソコンのセキュリティーソフト、もうすぐで保護期間が終わるな。」
博士あたりに頼めばいいじゃんとか言われそうだが、普段でもクソ忙しいS装備開発の第一人者にそんなことは依頼出来ないと思った彼。
パソコンの情報保全がざるにならないように、市販しているもののなかではかなり強力な情報保護能力を持つものを買っていく。
「あとは…、外付けハードディスクか。」
舞草用で使用しているものとは別に、彼個人で使うための比較的記憶容量の大きなモノを買っていく。
「…そういや、可奈美は自分の流派や他流派の試合とか見るって言ってたな。こういうのも有った方がいいよな。お節介かもしれないが。」
彼のようにいつもパソコンを持ち運びする人間ならともかく、一人一台持っているとは限らない彼女達では、パソコンをわざわざ保有するメリットも薄い。それこそ事務などから一時的に借りてきて見るなり、スマホやタブレットを介して見る中高生の方の割合が多いだろう。
このご時世でUSBケーブルの規格も統一されているなら、パソコンを渡すよりも遥かに有効的に活用ができる。
「これなら、いつでも見たい時に引っ張りだせるからな。」
彼は黒色の、可奈美向けには白色の外付けHDDを優しくカゴに入れる。
「可奈美!…何か選んでいる途中だったか。」
「あっ、ゴメン。ちょっと気になってね。」
「フォトフレームか…、確かに今の部屋に写真を掛けられる場所はないしな…。」
一時的に鎌府の学生寮の一室を間借りしているため、壁に穴などをあけずに、なるべく部屋を綺麗な状態にしておきたかった彼女。
「皆の写真を見られればいいかな、って思って。…最近皆で揃うことがあまり無いから、ね。」
「可奈美…。」
共に、折神家や親衛隊との戦闘を潜り抜けた仲間たちのことを想う彼女。
彼はまだやり残していたことを果たすため、彼女に語りかける。
「…可奈美。少し遅くなったが、誕生日祝いとして好きなやつを選んでくれ。」
「えっ。……いいんですか?」
実際、彼は可奈美の誕生日の時、生憎仕事で他県にいたため直接祝うことが出来なかった。その代わり、その日のうちに彼女にお祝いの連絡は入れたのだが。そのため、誕生日プレゼントも未だ贈れていなかったのである。
「だって、そんな寂しそうな顔よりも、俺は君が笑顔でいる方がいいからな。それに、友達を想う人間には、報いるべきだろ?」
あちこちで人とやり取りをしているからこそ、相手が大切にしたいことを守りたいと思う彼。
彼女は少し考え込むと、彼に向き合う。
「なら、そのあなたの気持ち、大切に受け取らせてもらいます!……どれにしようかな~?」
どのフォトフレームを選ぶか、吟味する可奈美。
(良かった。…少しドキッとしたが、今のは告白じゃないよな…?……気のせいか。)
感じたことを自己完結させる彼。…まあ、普通に考えてお礼の言葉であることは間違いないと思うのだが。
その後、経費で落ちるメモ内容のものの契約を量販店側と交わし、個人用で購入した物をレジに渡していった。
その際、彼は店員にラッピングをお願いした。
店員は不思議そうな顔をしていたが、それを承諾。
可奈美が選んだフォトフレームと、彼女用にこっそり買った外付けHDDが包装されていった。
「お待たせ。会計にちょっと時間がかかってた。」
「ううん。…荷物、持とうか?」
可奈美が、紙袋を複数持つ彼を気遣う。
「大丈夫だ。…こういう時に、女の子に持たせる訳にはいかないしな。」
普通に考えれば、刀使である可奈美の方が力は上なのだが、彼も程ほど鍛えているし、何よりカッコ良く見せたかったのだろう。
「…分かったよ。キツい時は直ぐに言ってね。」
「ああ。さて、行こうか。」
ー神田明神ー
位置的には御茶ノ水と秋葉原の間にある、この神社。
見た目的にはどう見ても神社とは思えなかったりするのだが、正式名称は「神田神社」というれっきとした御社である。
戦災も乗り越えたこの神社は、大黒様や恵比寿様、更には平将門*3を祀っており、商売繁盛を願ってここを参拝する経営者も多い。
近年では、アニメを中心としたサブカルチャーや、日本の伝統文化の発信地として精力的な活動を行っている。
「学生のうちから金運上昇と安全祈願を神頼みするっていうのも、なんだか変な話だけどな。」
「でも、いいと思いますよ。皆がケガ無く過ごせることが、一番いいでしょうから。」
二人は賽銭箱に硬貨を投げ込んで参拝し終えた後、おみくじや御守りなどを売っている場所へ移る。
「さて運だめしするか…。」
箱に手を突っ込んでおみくじを取るタイプなので、直感的にコレ、という物を引く彼。
「どうなんでしょうかね?」
「開けてみるか。」
手慣れた手つきでおみくじを広げる。
『吉』
「…悪くはないな。良くもないけど。」
双方リアクションに困る。
「あっ、あははー。…じゃあ、私も引いてみようかな。」
続いて可奈美がおみくじ箱に手を入れる。
「どう…かな?」
結果は…
『大吉』
「よしっ!やったぁ!」
「凄いな、可奈美!」
まさかの良い引きであった。
お互いのおみくじを見ながら、良かったところ、悪かったところを比較する。
特に二人が気になったのは
「俺は『待人おそいが来る』で、可奈美は『待人来る 早し』か。」
「あんまり気にしない方がいいと思いますけど…。」
「いやまあ、そうなんだが。…場所が場所だけにな。」
「意外と地縁を気にするタイプなんですね。」
「昔、大宰府の方で運だめしをしたら酷い結果だったもんでな。」
「…まさかとは思いますが、そのまさかですか?」
「………多分、可奈美の思っている通りだと思うぞ。」
あまり触れたくない部分の記憶。それが源だったかは不明だが、一時期勉学や家事でのトラブルが多かったことがあった。まさに、たかがおみくじ、とは舐めてはいけないことを身に染みて感じさせられたのである。
「恋愛は……、えっ?」
「どうした?可奈美?」
突然、可奈美が固まる。
「い、いえ。……おみくじ、お返しします。」
「おっ、おう。」
よく分からないが、彼女から吉みくじを戻される彼。
「………可奈美、顔が赤いが大丈夫か?」
「えっ!?そうですかっ!?」
「…まさか、熱?」
「だ、大丈夫ですっ!?」
「なら、いいんだが…。」
慌てている彼女が大丈夫と言う以上、追及を止める彼。
(…思わず、信じたくなっちゃうな。このおみくじ。)
可奈美が見た、二つのおみくじに書かれていた恋愛の部分は、偶然にも同じ内容で
『この人となら幸福あり』
であった。
残念ながら、彼はふ~んといった感じで流していた。可奈美のおみくじを見ていなかったのも一因ではあるが。
二人ともここで引いたおみくじは持ち帰ることにし、隣接する公園を歩く。
「あとは帰るだけだな。」
「あっという間でしたね。…いや、まだ終わってませんけど。」
ちょうどその時、公園には二人の男の子がプラ製の刀を使って、チャンバラごっこをしていた。
「せいっ!」
「やっ!どうだ!」
「くそっ、また負けた~。」
「あっ、もうこんな時間だ。また今度やろ!」
「おう!」
男の子達は、打ち終わった後すぐに帰ってしまった。
その光景を見ていた二人。
「…可奈美、滅茶苦茶ソワソワしているぞ。」
「うえっ!?分かります?」
「爛々とした目で子ども達を見てただろ。」
「あちゃー。私ったら、駄目だなぁ。」
衝動を抑えられない彼女。それを見た彼は、可奈美に提案をする。
「…なら、ここで一本やるか。」
「えっ、いいんですか!」
「気になったらすぐに実践するのが、君の性格だろう?人に迷惑がかからないなら、ここでも十分できるはずだしな。…それに、俺も最近まともに打ち合ってないし。」
「…じゃあ、早速やりましょう!」
「…やっぱり、どんなに趣味を広げようとも剣術一本だなぁ。可奈美は。」
彼女の剣術の好き度合いが愛情レベルだと、改めて感じた彼であった。
可奈美は背負っていた袋を下ろし、二本の木刀を出す。
双方手に取り間合いをとる。
「じゃ、やるか。」
「それじゃあ、お願いします!」
ある程度の距離を空けていた両者が、一気にぶつかりあった。
公園には、木刀の音がしばらく木霊していたそうな。
「やっぱり、強かったな。また負けちった。」
「お付き合いしてくださって、ありがとうございます。」
「まあ、いい気晴らしになっただろう。…さっ、帰ろう。鎌倉へ。」
「はい。……。」
袋に木刀を仕舞った可奈美は、黙り込んでそのまま立ち止まった。
「どうした?可奈美?」
彼女が体調でも崩したのかと思った彼は、置いていた荷物を持った後、そばに近づく。
「あのっ、一つお願いがあるんですけれど。」
「…?俺が聞ける範囲なら、まあ。」
「……ちょっと、その…。言いにくいんですけれど…。」
「ふむ。」
「……帰り着くまで、ずっと私の手を握っててくれませんか?」
「うん。…………うん!?」
思わず、素っ頓狂な声が出る彼。それもそうだ。いきなり異性から手を繋いでくれと言われて、「分かった、じゃあしよう。」となる男が果たしてどれほどいるだろうか。
迷った末、
「可奈美がそれでいいなら。」
と折れ、普通の手繋ぎで帰ることとなったわけだ。
なお、帰る電車内では、可奈美がとても幸せそうな顔をしていた。彼は疲れて寝ていたため、知らなかったようだが。
ー鎌府女学院 学生寮前ー
彼が寝泊まりしている官舎はまだ先にあるため、ここで可奈美とお別れである。
「今日はありがとうございました。」
「いや、こちらこそ。また、こういう機会が持てるといいな。」
「そうですね。…それじゃあ、私はこの辺で…。」
そう言って、彼から離れようとした時だった。
「可奈美!少しいいか?」
「えっ?何ですか?」
なぜ呼び止められたか分からない彼女。
「これを。…誕生日プレゼントと、もう一つは個人的なお礼かな。」
可奈美に手渡した物。そう、家電量販店でラッピングしてもらっていた、あのフォトフレームと外付けHDDだ。
「部屋に戻って設定してみてくれ。…使い方が分からなければ、俺のところに相談してきたらすぐに対応するよ。」
「あっ、ありがとうございます!」
「じゃあまた。…お互い、ゆっくり休みが取れる時があればいいな。」
可奈美から離れていく彼。その足取りは、どこか寂しさを感じさせた。
自室に戻った可奈美は、今日買った物と先程渡された物を確認する。
「…こんなにしてもらって、いいのかな?」
そうも思ったが、ラッピングを剥がした外付けHDDの上にちょっとした紙片が貼り付けられていた。
「何だろう、これ?」
二つに折られていた紙片を開くと、そこに折られて彼の筆跡で、
『努力家の君に、少しでも力になれるように』
と書かれていた。
「…もう、充分なくらい力をもらっていますよ。あなたからは…。」
胸が熱くなる彼女。
(…あっ、人を好きになるってこういうことなのかな?)
この想いがそうなのかは分からないが、一つだけ言えることがあった。
『彼と一緒にいる時間は、姫和ちゃん達といる時間くらい大切だと思う。』ということを。
波瀾の時は目前だったが、少年少女の恋路はようやく霧が晴れかけようとしていた。
だが、時の流れが二人を引き裂こうとしていることを、未だ知る術は無い。
ご拝読頂きありがとうございました。
少しの間は単発の話を投稿させて頂きます。
感想等ございましたら、感想欄・活動報告にて対応させて頂きます。
次回は姫和編です。
それでは、また。