刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は舞衣編その6 中編です。
…文量が多くなりそうだったため、やむなく分割いたしました。
申し訳ございません。

それでは、どうぞ。


⑨ 波乱の船上祝宴 中編

 ー大平洋上 豪華客船『朝陽(あさひ)Ⅱ』 船内通路ー

 

 船内の非常階段や脱出口などの確認を、舞衣と共に行っていた彼。シージャックや荒魂の出現による船体破損があった時に備えて、ある程度の場所を把握する。

 

「救命胴衣の置き場はこことあそこか。」

「いざという時に地図が無くても分かるものなんですか?」

「ああ、船やビルは費用を抑えるために大部分は似た構造になっているからな。…それに、頭に叩き込んでおいた方が、身動きし易いことだってあるし。」

「そういうものなんですね。」

「…舞衣、コレやっぱり目立たないか?」

「そうでしょうか?船の中って、意外と人の目には付きにくいものですよ。」

(…思っていたよりもこれ、恥ずかしいな。)

 

 一緒に確認についてきてほしいと言ったのは確かに彼なのだが、条件に出されたのが舞衣の手を引いていくことというのが、彼女の考えの読めないところだと思ったのである。

 なお、何者かが彼女を襲ってくることに備えて、彼女には左手を繋ぐように頼んでいた。警棒や拳銃などは、利き手である右側に置いていたためだ。こうすることで、コンマ数秒は早く動くことができる。

 

 

「それにしても、舞衣の妹さん達は立派だったなあ。」

「…今それをおっしゃいます?」

「いやな、俺にも妹は居るんだが、ここ数年どんな成長をしているのか、全然分からないんだよ。…だからこうして、家族で揃うっていうのはいいことだと思う。俺の方は俺自身が実家に全然帰れていないことがもとで、普通の家族なら分かることさえ分からないっていうのがな。」

 舞衣は、そう語る彼の少し寂しそうな表情が気になった。

「実家には帰られないんですか?」

「官舎から送っている荷物の整理もあるから、近いうちに一度は帰らないと不味いんだけどな。タイミングがいつも悪く、帰り時を見失うのがしょっちゅうで…。…あー、これだと管理局批判になりそうだな。」

 溜め息が少しこぼれた彼。

「ご家族の方達は心配されてないんですか?」

「妹からは定期的に連絡が来るな。両親はもともと忙しい身だし、そこまで心配はしてないだろうよ。」

「…その、私が鎌倉に居る間で実家にもし帰られることがありましたら、その時は一緒に付いていっても構わないでしょうか?」

「俺の実家にか?何ももてなしとかできないが、それでもか?」

「はい。よその家族の関係がどういうものなのか、知りたくなっちゃいまして。」

「……美結さんや詩織さんと上手くいってないのか。」

「そういうわけじゃないんです。…私、お姉ちゃんだからしっかりしなきゃ、ってずっと思ってた時期があるんです。智恵さん*1がそれを解いてくれたこともあって、そのあたりはだいぶ楽にはなったと思っています。」

「まあ、智恵は年長者ってのもあってか、自分より下の娘のことにはそこそこ上手く対処してくれるからなぁ。人伝に聞いた話だが舞草が壊滅的打撃を被った時には、流石にちょっと荒れてたみたいだが。」

「あの智恵さんが…。」

「だからま、完璧な人間なんてのはどこにもいないんだよ。俺も含めてな。」

「はい…。」

「ま、確かにウチもそういう意味じゃ、舞衣の家族と似ているのかもな。家族全員バラバラという点を除けばだが。」

「寂しいとか、思わないんですか?」

「寂しさを感じる前に、仕事に追われてそこまで意識をもっていけないしな。現にまだ、東京の荒魂の数は多い。実家でゆっくり過ごすのは、これがある程度落ち着いてからだな。」

「◯◯さん…。」

 舞衣は彼の話を聞きながら、口ではそう言っていても、身体の方は決してそうではないことを感じ取っていた。仕事熱心なのはいいことかもしれないが、ただでさえ精神的に参っていた時期があったというのに、それを誤魔化そうとしているのは、日々接していたなかでも分かっていた。

 

 

 彼女は、繋いでいた手を一度放すと、左腕にギュッと抱き付く。

「ま、舞衣!?」

 左腕に押し当てられる感覚。その柔らかなものが何なのか、いくら鈍かろうが彼にも分かる。

「…◯◯さん。悲しかったり、寂しかったりした時は私でもいいので、相談してください。…こんなことで貴方の寂しさが紛れるとは思っていませんが、どうか…。」

「…舞衣…。」

 彼もどうしていいのか分からず、その場で固まるしかなかった。

 

 

 しばらくして、彼から離れる彼女。

「急なことで驚かせてしまって、すみません。」

「い、いや大丈夫だ。うん。」

「そろそろパーティーも始まりますから、部屋に一度戻りましょうか。」

「あっ、ああ。」

 一足先に進む舞衣。一方の彼は、少しその場に立ち止まっていた。

 

(さっきのは一体…。確かに驚いたのは事実だが、彼女があんな行動を取るとは思ってなかったぞ。)

 普段と異なる空間であるとはいえ、あそこまで大胆な行動を起こす理由が彼には分からなかった。

「…いや、まさかな。」

 ふと湧き上がった可能性はあったが、それはありえないとすぐに頭を振った彼。

(そんな都合のいい話はあり得ない。…あっちゃ駄目だろう。そんなこと。)

 ともかく、護衛対象の彼女から離れるのはマズいと考え、急いで後を追う。

 

 

(あ~、どうして私、あんなことを!?)

 その頃、実行した側の舞衣は、顔を真っ赤にして客室に戻っていた。

「…◯◯さん、ビックリしてたよね。…嫌われてなければいいけれど…。…まだ、間に合うよね…。」

 なぜ彼女がこんな行動を取ったのか、それは後のパーティーも関係していた。

 

 

 

 

 ー船内大ホール パーティー会場ー

 

 今回のパーティーは、『朝陽Ⅱ』が横浜~名古屋間を往復する行程で組まれていた。中京圏の柳瀬グループとの関わりを持つ企業のお偉いさん方が、復路に乗り込んでくることもあり、現在は横浜側の参加者向けにパーティーがなされている。

 

「本日はこのような会にお集まりいただき、ありがとうございます。ささやかながら、この一時をお過ごしください。」

 孝則の挨拶で、いよいよパーティーが始まる。

 形態としてはディナーショーに近いが、立ち席が多いところを見るに、企業のトップ同士で容易に話しやすいようにもしているのだろう。

 

 

「遂に始まったのか…。ちょっと薄暗いのは気懸かりだが、それくらいか。」

 参加者の中には混じらず、警備員としての立場で会場を見回る彼。

「舞衣は…。あー、居た。あそこか。」

 姉妹揃って、仲良く食事中であった。

 彼女は此方に気が付いたものの、孝則と一緒にやってきた親子によって、その視線は外される。

「…大変だな。舞衣も。」

 一般人である彼には、彼女の抱える気苦労の一部を理解することができないというのは、残念ながら事実だろう。

 

 

 ちょうどこのタイミングで話されていたのは、こうしたことであった。

「舞衣。◇◇商事の砂川(すながわ)さんだ。彼の息子さんがお前と懇意になりたいそうで、今回折り入って機会を作っていただいたわけだ。」

「初めまして柳瀬さん。砂川亮太(りょうた)と申します。これが良き縁になればと思い、お時間を頂いた次第です。」

 

 孝則に紹介された亮太は、極端に派手派手しいわけでもない、誰がどう見てもイケメンで、彼女の初見では明るそうな印象を持った。滲み出る知的な雰囲気も、彼女への印象に追い風になる。

 

「初めまして、柳瀬舞衣です。…あの、亮太さんでしたか?どうして私の方をお尋ねに?」

「刀使としてご活躍なさっているのは、かねがね伺っています。少し耳をお貸しいただいても、よろしいでしょうか?」

「はっ、はい。」

 一体何をされるのやら、と思った舞衣だが、父や相手方の手前、断るのもいかがなものかと感じ、彼に耳を貸す。

「…あまり余計なことは言いたくないのですが、今この場に居る大半の私と同世代の男は、貴方を狙っています。」

「えっ!?…あっ、すみません。」

 狙っている。その言葉の意味が、賢い彼女にはすぐに分かった。

「舞衣さんご自身は気付かれていらっしゃられないようですが、貴女はそれだけ様々な相手を魅了している存在だということです。…将来のパートナーとしても、ということでしょうが。」

「パ、パートナーですか!?」

「…お気を付けを。無論、私もその一人です。貴女にもし意中の男性がいらっしゃるのなら、急いだ方がよろしいかと。」

 亮太はそう言って、彼の父親共々、舞衣のもとから去る。

 

 

(わざわざ、私に忠告してくださるなんて…。あの言い方だと、そう時間は残っていないということを教えてくださった、そういうことでしょうか。)

 初めて会った人間としては珍しく、彼女に忠告をしてきたのは意外ではあった。だが、亮太もまた彼女を狙っていると言ってきたことを、忘れてはならなかった。

(柳瀬の家だから、じゃない理由で言われるのもなあ…。)

 年齢に比しては早いと思っていたが、徐々に結婚への道筋が立てられていることに、危機感を募らせる彼女。

(…でも、それを跳ね返せるだけの人は、今この場に居る。…望まない結婚になるよりも、私の一生分の我が儘はお父様やお母様に通させて欲しい。それ以上は、何も望まないから。)

 今視界からは見えない、彼のことを想う舞衣。

 現在行方知れずの可奈美だったら、こんな時だったら何と言うか。そんなことも思った。

 

 

 

 

 そんな彼女の苦悩など全く知らない彼。

 一人ぐるぐる回っている姿が目立ったのか、二十代くらいの男性から声を掛けられる。

「君、一人かい?」

「あっ、はい。警備員としてこのパーティーに呼ばれまして。巡回警備に当たっていたところです。」

「この会場内をかい?」

「何が起こるか分かりませんから。」

「僕より若そうだが、アルバイトか何かかい?」

「まあ、そんなところです。…日本や海外企業の幹部級の人々がこの狭い空間に居るというのは、現実味が無いというのもそうですが。」

「そうだね、こうした空間に居ることが、もしかしたら君の将来に役立つことがあるかもしれないね。」

「そうだといいな、とは思いますね。…それでは、仕事に戻ります。」

「達者でね。」

「ありがとうございました。失礼致します。」

 そう言い、彼は男性から離れる。

 

「どうかしたのか?」

 男性の上司が、男性に尋ねてくる。

「いえ、僕の命の恩人が居たもので。…向こうは知らないでしょうが。」

「ああ、お前が荒魂に襲われた時のか?」

 コクリと頷く男性。

「自分が怪我をしているのに、我が身顧みず僕達を安全な場所へ避難させてくださったのが、今でも忘れられませんよ。…まさか、僕より下だとは思いませんでしたが。」

「名前は?」

「残念ながら。ですが、いつかキチンとお礼はしたいと思っています。」

 男性は、彼の過ぎ去る背中を目で追うしかなかった。

 上司は、表情をあまり変えることの無い部下がそこまで言った人物のことを、会社に戻ってから調べてみようと思った。

 

 

 

 

 パーティーも終盤に差し掛かり始め、孝則や舞衣達も多くの人と談笑していた。

「このまま何もなく、終わってくれればいいけどなぁ。」

 水分補給も行いながら、緊張の糸を緩めずに回っていた。そんな時だった。

 

 

 

 

 彼の眼前を赤いレーザー光が走る。

(……!?まさか、レーザーポインターなのか!?)

 レーザー光が走った先には、孝則の背中があった。そして、その光源には消音器(サイレンサー)とレーザー照準器を取り付けた、自動拳銃を持つ人間の姿を捉える。

(くっそ!嫌な予感が的中しやがった!!)

 既に照射しているということは、発砲まで時間がない。

 銃規制が厳しい日本において、レーザーポインターを使った銃撃など、短時間でその発想に至る者はまずいない。

 距離にして、およそ15m。

 今から拳銃を持った人物に向かっていったとしても、とてもではないが間に合わない。

 彼ができるのは、叫ぶことだけだった。

 

 

 

 

 

 

「全員、伏せろぉ!!」

 場内に彼の必死の叫びが轟く。

 

 

 

 

 その声に驚いて、慌ててしゃがみ込む人も居たが、孝則や舞衣達は状況がよく理解できていなかった。

(間に合うか!?)

 レーザーポインターが当てられた孝則の背中に、射線が重なるように飛び出した彼。

 

 

 

 

 

 

 ピュッ ピュッ ピュッ

 

 

 

 

 

 

 消音器付きの自動拳銃から放たれた、三発の弾丸。

 その弾は、孝則の身に突き刺さるはずだった。

 

 

 

 

 

 

 だが、会場内から血飛沫が飛び出ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

「ゴホッ、ゲホッ。……やっぱり、実弾は痛いな。」

 それを拒んだのは、防弾チョッキを着込んでいた彼であった。不測の事態に備えていたのが、功を奏した。二発は彼の身体に命中したものの、防弾チョッキのおかげで体内には入らなかった。

 だが、頭部に関しては弾丸が掠めた際にできた切り傷から、うっすら出血していた。

「!?」

 孝則の銃撃に失敗した犯人は、猛ダッシュでホールから逃走する。

 

「舞衣!急いで《孫六兼元》を取ってこい!俺は犯人を追う!」

「はっ、はい!」

 出血を伴いながらも、犯人追跡を優先した彼。確実な制圧には彼女の力も必要だと考え、言を飛ばしてホールを出る。

「舞衣姉…。」

「舞衣お姉ちゃん…。」

 妹二人は、先ほどの銃撃に不安そうな表情を浮かべていた。

 そんな二人を両脇に抱えて、抱きしめる。

「大丈夫。二人はここでお父様やお母様と一緒にいてね。」

 そこにあったのは、長姉としての舞衣であった。二人は彼女に抱きしめられると、安心したように落ち着いた。

 

 

 それからすぐに立ち上がり、会場内の人々に呼びかける。 

「皆さん、ここを動かなれないようお願いします!私は犯人を追います!」

「舞衣、お前…。」

「大丈夫です、お父様。…必ず戻りますから。」

 そう言って、彼のあとを追う。

「信じましょう。貴方。…あの子がそう決めたのなら。」

「…ああ。」

 どちらにせよ、一般人である孝則や柊子は、娘の無事を祈るしかなかった。

 

 

 

 

 犯人を追跡する彼。

 走りながら、スーツの内ポケットから衛星電話を取り出す。撃たれたのは背中側だったため、電話は無傷だった。

 彼が番号を打ち込む先は、洋上でも頼りになる同僚であった。

 

『はい、もしもし。』

「水沢*2か!?」

『はい…。こんな時間に何の用ですか…、ふあぁ~っ。』

「眠いとこ悪い。緊急の用件だ。本部長経由で愛知県警に、SAT*3か機動隊あたりを派遣するよう伝えてくれ!客船内で銃撃があった!」

『……!?―◯◯さん、船舶名と時刻を教えてください!なるべく早く其方に応援を出します!』

「助かる。船舶名は『朝陽Ⅱ』、時間は今から五分ほど前だ。舞衣のお父さんが狙われた!」

『!!柳瀬さんのお父様ですか!?』

「銃弾は俺が防いだから、舞衣のお父さんには当たってない。そこは大丈夫だ。」

『◯◯さんは、大丈夫なんですか!?』

「ちょっと頭掠った程度だ。心配要らん!」

『わ、分かりました。…ありました!これですね、「朝陽Ⅱ」は。』

 通話越しから聞こえる、タイピングやマウスのクリック音。恐らく、船の位置情報システムから割り出したのだろう。

『この情報ごと、愛知県警に送ります!ただ、応援は遅くなるかもしれません。』

「グループだったら詰みだったが、幸い単独犯みたいだ。役立ってほしくなかったが、89式持ってきといて正解だったよチクショウ!」

『ともかく、急ぎますね!』

「後は任せた、水沢!」

『はい!』

 衛星電話を切る彼。犯人は上部階に向かったらしく、会場近くに置いていたトランクから回収した89式小銃を持ち、弾倉にゴム弾が入っていることを確認して走る。

「逃がすか!!舞衣のお父さんを撃った理由を聞くまでは!」

 そして、彼は最上階のデッキに上がる。

 

 

 

 

 最上階のヘリポートまで追い詰められた実行犯の男は、息を切らして弾倉に弾丸を再装填していた。

 

「はあっ、はあっ。…失敗しただと。」

 暗殺は僅か数秒。成功して当然だというのに、一体何者だ。あの男は。

 

 直後、階段の方から足音が響く。

 

 追手がもう来たのか。

「動くな!刀剣類管理局…いや、警察だ!」

 

 姿は見えないが、若い男(彼)の声が此方まで聞こえる。

 

 …刀剣類管理局?あのよく分からん怪獣とやり合っている奴らか。国民からの信用さえない連中が、俺を捕らえようってか。馬鹿馬鹿しい。

「コソコソやっているのが、お前達刀剣類管理局のやり方か。そんなだから、国民からの支持を失うんだよ。」

「なら、アンタの方がよっぽど臆病者じゃないか!人混みに紛れて、無防備な一般人へ発砲するなんてな!大方、幾らか積まれて雇われたってところだろ!」

 …こっちが大人しくしてりゃ、言いたい放題言ってくれるじゃねぇか!

「この野郎!とっとと出て来い!お前の頭をぶち抜いてやる!!」

 あの野郎、絶対生かして帰さねえ。

「おい、早く出て来い!このチキン野郎が!」

 

 レーザーポインターを作動させ、自動拳銃を階段の方へと向ける実行犯。確実に仕留めるには十分な距離だろう。その直後、飛び出る彼の姿を捉える。

 

 馬鹿め、お前の人生はここで終わりだ!

 

 

 

 

 実行犯がトリガーを引こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 突如船が、大きく右へ舵をきったのである。

 

 

 

 

「ぐわぁー!!」

 突然の横揺れで、右手で持っていた自動拳銃の照準は、大きくブレる。それどころか、男の体も左に体を持っていかれる。

 

 

 バババババババッ

 

 

 その隙に、彼が実行犯目掛けて、89式小銃からゴム弾をフルオート射撃で撃ち込む。

「ぐふっ…、ほぶぁ!?」

 非殺傷弾とはいえ、弾丸の衝撃はモロに伝わるため、息が困難なレベルで身体中に当たる。実行犯にとって不幸だったのは、反撃されることを想定していなかったため、防弾チョッキを着込んでいなかった。最終的に、鳩尾近くに入った弾が男の意識を奪った。

 

 

 ドターンという、金属が反響するような音と共に倒れる実行犯。

「…終わったか。」

「◯◯さ~ん!」

 遅れて舞衣が、《孫六兼元》を持ってヘリポートにやってくる。

「舞衣!念のためすぐに写シを張ってくれ!」

「は、はい!」

 即座に御刀を抜刀すると、写シを張り終える舞衣。

 

 彼は銃口を向けつつ、実行犯の近くまで寄る。

 持っていた拳銃を少し蹴飛ばし、相手の反撃の可能性を削る。

「サバイバルナイフは…、無さそうだな。舞衣、その辺のロープを!この男を縛り上げる!」

「はい!」

 舞衣に渡されたロープを使い、手足と胴体の動きを縛る。

 

 

 

 

 実行犯を縛り終え、安堵の息をこぼす舞衣。

「…◯◯さん一人で、抑えちゃいましたね。」

「それでも俺は、舞衣が来てくれると思ってたぞ。」

「えっ。」

「あんな状況だったのに、俺の声にしっかり応えていただろ?…やっぱり、君は凄い娘だよ。」

 彼女を褒める彼。最も、彼女は別の部分で驚いていたが。

「…!?◯◯さん、血が!」

「大丈夫だ。これくらい。」

 孝則への凶弾を防いだ時のところと、先程突入した時に左肩を掠めた時のところから、痛々しく出血していた。

「先にこの男を運ぶ。治療はそれからだ。」

「はっ、はい。」

 

 

 

 

 パーティーを騒乱の渦に叩き落した実行犯は確保できた。

 だが、二人にとっての越えるべき壁は、まだ崩れたわけではなかった。

 双方、本当の意味での正念場はここからだった。

*1
瀬戸内智恵のこと。

*2
水沢姫乃のこと。人物紹介は『設定集・時系列まとめ』参照。

*3
Special Assault Teamの頭文字より:日本の警察の特殊急襲部隊のこと。主にハイジャック事件などを中心とした、通常の警察官では対応困難な事態に際して先頭に立つ部隊。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

コミケ期間中ということもあって、あちこちで盛り上がりを見せておりますが、皆様体調管理にはお気を付けください。

感想等ございましたら、お気軽に感想欄・活動報告にご投稿頂ければと思います。

次回も舞衣編になります。

それでは、また。
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