刀使の幕間   作:くろしお

56 / 235
こんにちは、くろしおです。
UA1400越え、全話PV3300越えを達成致しました。…凄いです…。
(もう一つの投稿作の方が追い抜かされそうだ…。)

今回は沙耶香がメイン回です。
先に投稿した三人と比べ、少々難産な部分がありました…。
刀使の本務、荒魂討伐がメインです。(討伐するとは言ってない)

時系列的には、薫の下に派遣された後から沙耶香の誕生日の間あたりです。

それでは、どうぞ。


沙耶香編
① 任務と現実(いま)


 ―東武鉄道 特急スペーシア車内―

 

 刀剣類管理局本部に戻った彼は、真庭本部長より日光市民から提供された、荒魂出現情報に応じて、刀使を派遣することになったのだが、その際に彼女たちに同行することを“お願い”された。

 というのも、現地でのサポート要員の不足を受け、ピンチヒッターとして急遽派遣されることになったのだ。

 そして今、彼の身体は日光に向かう特急電車の席にあった。

 

 

 

「全く、本部長も人遣いが荒いんだから…。」

「? 刀使の使命は、荒魂を斬って祓うことじゃないの?」

 俺のちょっとしたボヤキに、隣の座席に座っていた、鎌府女学院の糸見(いとみ)沙耶香(さやか)は、純粋そうな眼差しを向けて反応する。

「確かに、荒魂は斬って祓う必要がある。だが、荒魂にも人と同じように感情や、思考を持つものだっている。鎌倉で戦ったタギツヒメが分かりやすい例だ。」

「うん。」

「舞草の中には、荒魂の動きを解明して、これらを理解しようとする人たちだっている。薫とねねは、その道を導き出す大きなヒントになる関係だな。」

「でも、ねねに穢れはない。」

「ああ。本来荒魂にあるとされる穢れは、ねねに限っては無い。」

 ただし、ねねは、女の子の胸部の将来性の判定が出来る、ということは余り触れない方がいいだろう。…世の中,知り過ぎない方がいいことだってある。

 俺は、話を続ける。

「穢れは、人為的に減らしていくことだって出来るかもしれないし、そうではないのかもしれないから、そこは研究の本職の人たちに委ねる。…俺は、あくまで個人的な考えだが、出来る事なら君たち刀使の出番が減ることを望んでいる。…いくら八幡力や迅移などが出来ると言えど、女の子が傷ついていく姿を見るのは、正直嫌なことなんだよな…。それなのに、君たちに何も出来ない自分に、腹立たしさを覚えることだってある。」

 

 沙耶香は、その彼の言葉を聞いて、首をフルフルと横に振る。

 そして、口を開く。

「貴方は、出来る限りのことをしてくれている。私だけじゃない。可奈美や舞衣、みんなのために日々動き回っていることだって。…それに、可奈美や薫からも教わった。自分の意思や荒魂に対する考えを持って、動くことが大事だって。」

「…そうかい。それは、良い傾向だな。」

 失踪中の鎌府女学院・高津雪那学長の指示に従っていた頃とは、とても同じ娘であるとは思えないほどの成長をしていた。

 彼は、舞衣や可奈美たちがこの変化をもたらしたことに、感謝と凄さを感じた。

「あと、貴方のおかげで優しい人たちに多く知り合うことが出来た。」

 少し頬を赤らめる沙耶香。しかしながら、それに彼は気がつかなかった。

「そう…なのか?」

 自信のない返事が車内に響く。

 

 

 それから少しして、危うく忘れるところだった頼まれ事を思い出した。

 15.6インチノートパソコンが入るビジネスバッグから、丁寧な包装がされた小袋を取り出す。

「はい。これは、舞衣からの預かり物。」

「!舞衣のクッキーだ。…おいしい。」

 少し前に渡された、柳瀬舞衣お手製のクッキーを彼女へ渡す。

 最近では、沙耶香は彼女のクッキーを、よく噛んで味わうようになってきた。

 

 

 

 ―栃木県日光市 中禅寺湖―

 

 スペーシアの終点である東武日光駅から、特別祭祀機動隊(STT)の軽装甲車に乗り込んだ派遣部隊一行は、まず中禅寺湖へと向かった。

 目撃証言があった湖畔を中心に探したが、荒魂は見つからなかった。

 駐車場やお土産店を中心に聞き込みを行うも、手掛かりになりそうなものは少なかった。

 

 沙耶香は自身の身体能力を駆使し、中禅寺湖周辺10㎞の範囲を探索するが、残念ながらこちらも空振りに終わった。

 

 

 

 

 ―日光市内 某旅館―

 

 派遣部隊は集団で行動することが主なので、こうしたところでも集団でいることだってままあることだった。

 特に部屋は、大体大人数部屋であることが多い。まあ、予算の兼ね合いもあるのだが。

 流石に男が一緒の部屋というのは、倫理的に見てもいかがなものか、となるため、一人もしくは二人部屋である。

「ふぁぁ…。いいお湯だったな…。」

 旅館の浴場からあがった俺は、思わず欠伸をする。

「今日はどうせ一人だし、自販機から何か買ってくるかな…。」

 ふと、自販機などが置かれているフロアから、建物の外を見る。

「ん?あれは…沙耶香か?」

 旅館の外で、御刀である《妙法村正》を振るう沙耶香の姿を見かける。

 

 

「おーい!沙耶香!」

「!…びっくりした…。」

 突然の大声に驚く沙耶香。

「すまない。姿が見えたもんでな。…鍛錬か?」

「うん。…可奈美に追いつこうと思ったら、こういう時にもやらなければならないと思って。」

 確かに、衛藤可奈美の剣術の凄さは、誰もが周知の事実として把握している。

 だが、無念無想に代表されるように、沙耶香の剣も決して彼女に劣るようなものではない。

(感情を表に出すことに、まだ慣れてないんだろうな…。)

 そう考えた彼は、口を紡ぐ。

「沙耶香。確かに、可奈美の剣術は凄く、強い。」

 一瞬顔を曇らせる沙耶香。彼は続ける。

「だがな、沙耶香の持続的な高速さを、彼女は持っていない。…人には、与えられたもの或いは学んだことを、最大限活用する頭を持っているんだ。可奈美があらゆる剣術を試しているように、君もまた迅移や無念無想の力を上げることだって出来ると思う。自分が、今後刀使として、友達としてどうしていきたいのか、ということを考えてみるといいかもしれないな。」

「私には、まだ分からない…。」

 アドバイス後一発目の沙耶香の言葉に、彼は、中学1年生の女の子に対して俺は何を言っているんだ、とも冷静に感じた。

 しかしながら、彼女は続ける。

「だから、分かるようになりたい。荒魂のことも、みんなのことも。剣術のことも。」

 その眼の中には、熱が込められていた。

 あの学長の下では、絶対に湧きあがらなかったであろう熱が。

「…そうか。頑張って見つけていこう。俺も探すから。」

 うん、と首を縦に振る沙耶香。

 

 

 

 

 素振りを終えた沙耶香は、途中で眠気が来たのか通路に置かれたソファーの上で、座ったまま瞼を下ろしてしまった。

 

 困ったことに、俺は動けない。なぜかって?

 肩に寄りかかっている彼女を、無理矢理剥がせと⁉

 こんなに愛くるs…もとい安心した姿で眠っている彼女を起こすなんて、俺には出来ない!

 沙耶香が起きるよりも先に、彼も浅い眠りについてしまった。

 後に、他の刀使たちが二人を探しに来た際、互いに寄り添うように眠っている姿を見た彼女たちは、皆こう思った。

『まるで、ともに生活する兄妹のようだ。』と。

 それほどに、穏やかで安心しきった顔をしていたそうな。

 その後、彼が起きた際にひと悶着あったのは、また別の話である。

 

 日光の空は更けていく。平穏無事な、刀使たちの人生の一コマであった。




ご拝読頂きありがとうございました。

アニメ版刀使ノ巫女に登場するメンバーで、沙耶香は彼女自身の成長過程も軸になっていた部分がありました。(特に荒魂に対する考え)
最終決戦前、沙耶香が歩に向けて、可奈美が以前沙耶香に対して放った言葉を、「今度は自分の番」と言って剣に思いを載せ、一閃したシーンも未だに印象深い場面です。

今後の予定(投稿方針)としては、
①まずメイン6人の話が先行(まず各3話ずつ)
②そのあと親衛隊+紫様(話数未定)
③とじとも・とじみこメンバーのうち、アニメにワンカットでも入っているメンバーのSS
(これは誰にするとかまだ決めてない)
④以降各メンバーの投稿
を計画しています。

不定期ですが、無茶しない程度に頑張っていきます。
それでは、また。

余談:コンセプトワークス予約しました!届くのが楽しみ(^^)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。