今回は沙耶香編 その3をお届け致します。
…すみません、今話も長いです。
書きながら思ったこと。
沙耶香、案外こういうのに向いてそうな気が…。(個人談)
今話には、オリジナルキャラも登場しますが本筋にはあまり影響しませんので悪しからず。
(早いところ設定集纏めます…少々お待ちください。)
それでは、どうぞ。
ー埼玉県某所 サバゲー会場ー
都心から車で一時間程度の場所にある、このサバゲー会場は東京ドームと同等の広さを誇っていた。
俺と沙耶香がどうしてここに呼ばれたかというと…。
「よお。折角の休日を潰して済まねえな。」
今回の原因である
「…たまにはこういう機会も悪くないしな。それに、沙耶香も興味を少し持ったみたいだったし。…しかしルールが分からない、道具も持ってない俺達が参加して大丈夫なのか?」
「まあ、なるようになるだろ。それに道具は俺が貸すから大丈夫だ。」
二つ目の懸念に関しては簡単に吹き飛ぶ。…一番致命的なのは一つ目の懸念なのだが。
「ただ、意外だったな。まさか、お前が彼女共々サバゲーやってたとは。」
糸崎も彼同様、前線に出る特祭隊の指揮を執ることがあるため、一通りの戦闘教練を受けている。とはいえ、まさかそれを趣味に昇華させているとは思わなかったが。
「実戦経験を趣味で生かせるって、結構いいぞ。それに後で見ていれば分かると思うが、俺の彼女はトリガーハッピーなところがあるぞ。」
「……マジで?刀使なのに?」
「うん。マジ。」
彼らの視線には、沙耶香と糸崎の彼女の姿があった。
「…沙耶香に悪影響が無きゃいいが…。」
少し頭を抱える彼。つかさず糸崎はフォローを入れる。
「そのためのお前だろ?しっかりエスコートしてやれ。」
「サバゲー初心者に荷の重いこと頼むなよ…。まあ、怪我はさせたくないし、俺が矢面に立つしかないよな。」
「流石、管理局随一の天然ジゴロなこって。」
「誰がジゴロだ!…単にお人好しなだけだとは思うんだがな…。」
こう話しつつ、二人は彼女達の下へと向かう。
その女性陣。腰まで掛かる程の黒髪を靡かせる少女と、ショートカットの白髪の少女が男二人を待ち構える。
「あっ、来たきた。」
「待たせたな、三原。沙耶香。」
三原と呼ばれた黒髪の少女が、俺の隣に居る糸崎の彼女だ。
本名、三原早希。鎌府に所属する刀使で、彼女もまた舞草の構成員だ。
「ガールズトーク中に悪かったな。沙耶香もすまない。」
「…ううん。待つのには、慣れてる。」
「さて、三人ともこの紙を見てくれ。」
そう言って糸崎は、俺を含めた三人に今回のサバゲーの内容を伝える。
今回のサバゲーのルールは、四チームが二対二に分かれて、各陣営にある旗を取るか、どちらかの陣営が全滅するかというフラッグorデストロイの形式だ。
今回参加しているのは八チーム。
決勝戦や各順位決定戦の時のみ、全滅した方が負けという形態が取られ、はっきり順位が決められるものとなっている*1。
なお、今回の優勝チームにはトロフィーと、景品としてペア二組分で二泊三日の旅行券も付いて来ることになっていた。
「まあ、初心者である俺と沙耶香は程ほど出来る程度になれば、それでいいと思うけどなぁ。」
「…私、こんなに人がいっぱい居るところ、あまり得意じゃない…。」
どちらかといえば、エンジョイ勢の立場で居たかった二人。
だが、サバゲー場を転々としつつそれなりの実力を積んだ同僚組は、全くそんなことを考えていなかった。むしろ、優勝を狙いに行っていた。
「一つ言っておくが、ここは戦場だ。…それに見ろ。あのグループとか、どうやらここをだいぶ舐めてかかっているみたいだ。」
「どういうことだ?」
糸崎が指差す先には、いかにもリア充な雰囲気をわざわざ醸し出している一団がいた。
『たーくん、サバゲーってやったことあるの~?』
『いや、全然だよ。でも、案外どうにでもなるんじゃないかな?』
『確かにww俺達でも優勝できんじゃねw』
『あたしもそう思う~。どうせパンパン撃ち合うだけの奴でしょ~ww』
「……糸崎、
なんか無性に殺意を抱く彼。
「あっ、ああ。あるぞ。なんなら発煙筒も。」
糸崎は彼の豹変に驚く。彼がこんな風になるのは、糸崎の経験上久しぶりのことであった。
「……幾重の死線を乗り越えてきた経験が、まさかこんな時に役立つとはな…。あのグループに地獄を見せてやらねば…。フッフッフッフッ……。」
(…やべぇ…。変に煽ったらスイッチ入っちゃったよ…。沙耶香ちゃん、頼むから止めてくれぇ~。)
死人が出ないことを祈りつつ、彼の清涼剤である彼女を頼りたくなった。
その肝心の沙耶香。
「…舞衣のクッキー、食べたくなってきた。」
「舞衣ちゃん、今居ないからね…。どうしようかな?」
この日、舞衣は任務の関係で鎌倉の本部に居ない。
討伐任務かまでは沙耶香でも分からなかったという。
「…そうだ。私から舞衣ちゃんに、クッキーを焼いておいてもらうように頼もうか?」
「…うん。ありがとう、ございます。」
「いいのよ。年長者の勤めだしね。…じゃあ、舞衣ちゃんから褒めてもらえるように、今日はいっぱい勝たないとね!」
「分かった。…私、頑張る。」
早希が舞衣のクッキーを条件にして沙耶香を奮い立たせたのは、この場に居合わせたサバゲーグループに取ってみれば悪夢でしかなかっただろう。
ただでさえサバゲー経験のヤベー奴が二人居るのに、無理やり叩き起こされた眠れる獅子こと、銃火器を含めた実戦経験豊富な彼や、持続的な迅移を用いた高速連撃を持ち味とする沙耶香が持ち前の力を使って立ち回れば、それこそ現役自衛官か警官でもない限り、太刀打ち出来ないものとなったのである。
ー第一試合 A・Bチームvs.C・Dチームー
彼や沙耶香の居るBチームは、先ほど彼に
『それでは、第一試合を始めさせてもらいます。二分猶予を与えますので、各自散開してください。』
運営管理者の指示のもと、場内にバラける十六人。
「…まあ、こうなるとは思っていたんだが。」
「私と一緒じゃ、嫌?」
「そんな訳ないだろ!…ただ、動きにくさはあるよな。」
冷静になると初心者である二人は、サバゲーで重要視される機敏な動きは苦手だ。立ち回り方を理解できているわけでもないためだ。
それなら、共にいることで生存率を上げるべく、一緒にいる二人。
『よう。聞こえるか?』
「…糸崎、これ本当に上手くいくんだろうな?」
この提案をぶち上げた同僚が、インカムを介して二人に声を伝える。
『大丈夫だろ。お前の実戦での射撃能力と沙耶香の速さなら、攪乱戦術くらい簡単だろうし。』
「……簡単に言ってくれるじゃねぇか。」
『まあ、早希とバックアップ取りながら支援するから平気だろ。』
『任せてね~、二人とも~。』
二人から離れた位置から、草むらと同化する同僚組。遠距離狙撃に徹することにしたようだ。
「…私は何をすればいい?」
『沙耶香は…御刀持ってるし、最悪迅移を発動して斥候の奴を潰して回ればいいか。』
御刀を持っていること自体は問題ではないため、一種のルールの抜け穴を突いた格好だ。(使うとしても最後の切り札ではあるが)
「俺は?」
『お前は…沙耶香の乗り込んだ混乱に紛れて、敵さんにヘッドショットを決めりゃいい。…BB弾だからって、加減しないのはなしだぞ。』
「分かっとるわ!一般人相手にそこまで鬼なことはせんわ!」
(…いや、さっきの殺意でどう信用しろと…。)
糸崎は反論したくなったが、フレンドリーファイアで退場させらせるのも勘弁なのでそれ以上は言わなかった。
なお、糸崎はAグループとの調整役もやっていたが、後の展開で四苦八苦する羽目になる。
ここで、今回のサバゲーのルールの補足説明をさせてもらう。
今回使用されているBB弾は一種のペイント弾で、頭・心臓付近に一発、それ以外の身体の場所では二発当たった場合、被弾した選手はその試合では退場となる。
なお、いきなり旗を取りに向かうのは禁じ手となっており、最低でも双方とも二人は退場させなければならない。ただし、旗の位置は分からないようになっている。
つまり、先に二人の敵と旗を見つけた方が圧倒的に有利である試合内容だ。各試合、制限時間は無い。
沙耶香の手を引きながら、植木や障害物の盾に移動する彼。
「沙耶香、大丈夫か?」
「平気。…敵が、全然見当たらない。」
「そう簡単には見つからないか…。ただ、どこかに潜んでいるはずなんだが…。」
「…私が探してみる。」
「木に登ってもいいが、危ないと思ったらすぐに降りるんだぞ。」
「うん。分かってる。」
音を限りなく殺して、ちょっとした高さのある木に登る彼女。
元々初心者だから、ということもあり、御刀の他には太もも辺りに自動拳銃タイプの電動ガンをつけている。
二人ともヘルメット&バイザーとサバゲー用ジャケットを羽織っている。身軽にするべくあまり多くの荷物は持たないようにした*2のは、わざわざ自分から長所を殺しにいくことを、避けたいところもあったからである。
「降りるよ。」
「ああ。」
沙耶香はスカートを穿いていたが、早希が持ってきていたスパッツを貸してもらい、中を見えないようにしてもらった。…これには彼女に健全に育って欲しいという、彼の思いもあったのだが。なので、そのまま飛び降りても問題ないのである。
「…!」
突然、沙耶香の顔は驚く表情に変化した。彼女を狙う弾丸を、目で捉えたのである。
そのまま、後ろ向きに倒れるように降りる彼女。
「沙耶香!危ない!」
彼が身を挺して、落ちる彼女のクッション代わりになる。
ドスン
「ぐほっ!」
幾ら彼女が軽いとはいえ、落下時の衝撃はそれ相応であった。
「!…大丈夫?」
「ゲホッゲホッ…。だ、大丈夫だ。沙耶香は…、良かった。平気そうだな…。」
「…貴方が、私を守ってくれたから。」
心配そうな顔を彼に見せる彼女。
「そんな顔をするなよ…。折角の顔が台無しだろ。」
「!!」
彼は、沙耶香の頭を数回撫でる。そして、立ち上がる。
「さて、沙耶香がその向きで落ちたってことは…。居たんだろう、敵が。」
「う、うん。」
「そこまで跳んでくれるか?沙耶香。」
「…貴方の役に立つなら。」
「十分過ぎるくらい、役に立っていると思うんだけどな…。」
そう言った彼だが、役立つ云々は正直建前でしかない。それ以上の関係だと、彼自身は思っているからだ。
「さて、
沙耶香の先導のもと、二人は高速で発射された方向へ跳んだ。
「嘘だろ!?避けただと!」
驚いたのは沙耶香を狙った敵であった。
初心者ばかりのDチームとは異なり、Cチームは比較的サバゲー熟練者の多いパーティーであった。
そのため、発射地点が分からないようにギリースーツでカモフラージュしていたのだが、彼女はそれを避けたのである。そのため、撃った本人は余計に混乱したのである。
仕留め損なった敵は、再度彼女を狙撃しようとスコープを覗いた。
「…!?…居ない、だと!どこに行った!」
ワケが分からなかった。ついさっきまで居たはずの二人の姿が、突然消えたのである。
『こちらバレッド1、バレッド3、何かあったのか?』
トランシーバーを介して、仲間から通信が入る。
「…こちら、バレッド3。南南西方向に居たはずの敵を狙った…。だが、消えた…。」
『消えた?見間違いじゃないのか?』
「いや、確かに居た。居たはずなんだ…。」
またスコープを覗いた、その瞬間だった。
「どうも、敵さん。こんにちは。そして、さようなら。」
弾かれる
「!?な…!」
振り向くバレッド3の視界は、桃色のペイント弾によって真っ暗に染められていった。
比較的至近距離から撃たれて、思わず失神したバレッド3を見つつ、沙耶香が口を開く。
「…これで一人。あとは…、どうする?」
「ぶっちゃけ、旗の大体の目星は着いてるしな…。沙耶香は、敵を見つけ次第後ろから頭か背中に向けて弾を撃ってくれ。小回りの利く沙耶香の体なら、初心者でも不意打ちで十分やり合える。」
「貴方は?」
「あの陽キャ集団にちょっと用が出来てな。…大丈夫だ。ちゃんと戻ってくるから。な?」
「陽キャ、集団?」
「…沙耶香、それ以上突っ込まないでくれ。君は知らない方がいい。」
沙耶香の教育上好ましくないと思い、聞くことを思い留まるよう促す彼。
「うん。…戻ってくるって、約束、してね。」
「もちろん。」
そして、沙耶香がフィールドを警戒していたバレッド1を偶々見つけて背後から撃ち、勝利への最低条件をクリアした。
一方、インカムから聞こえる敵の悲鳴に対し、糸崎と早希は互いに話し合っていた。
「なあ、早希。」
『なあに?』
「…アイツ、初心者だよな?」
『うん。』
「…のわりに、アサシンのごとく潰していっているように思えるの、気のせいか?」
『事実だと思うけど?……よっぽど、沙耶香ちゃんのことで頭にきたのかな?』
(…俺がアイツの導火線に火放ったことは黙っとこ。…相手さん、火にガソリンでも注いだのかね?)
触らぬ神になんとやら。糸崎と早希は、結局第一試合終盤までその場を動くことはなかった。
そして、一人ずつCチーム(バレッド1~4)を屠っていった沙耶香と彼は、旗を守る陽キャ集団ことDチームを見つける。
「旗を中心にした菱形陣形か…。…よし、いっそまとめて叩くか。沙耶香、反対側の岩まで移動してくれ。」
「?いいけど、どうするの?」
「発煙筒を投げ込むから、それを合図に足を狙って撃ってくれ。」
「頭じゃなくていいの?」
「ああ。」
何か、悪巧みを考えついたようににやける彼。
沙耶香は若干の疑問を抱きながらも、草と地形を上手く利用し、彼の居る位置とは反対の岩にたどり着く。
…ちなみに、彼らと共同戦線を組んでいるAチームは旗探しに奔走したものの、糸崎が沙耶香と彼に因るAチームへの二次被害を避けるため、本来の旗がある位置とは反対に仕向けられていた。結果として、準決勝戦までその体制が続くこととなってしまったという。
しれっと仕事で使用する情報戦を、民間人へ利用する時点でかなり鬼ではある。…怪我人を出すまいと動いていた努力は、推して知られるべきかもしれないが。
視点は戻り、沙耶香が岩に着いた頃。
「…着いたよ。」
『よし。十秒数えるから、電動ガンを撃てるように備えてくれ。』
「いつでも、いいよ。」
『じゃ、いくぞ。』
彼は少し離れた位置から、スモークグレネード代わりの発煙筒を投げ込む。
「ん?なんだあれ。」
Dチームの一人が、空から降ってくる物体に気づく。
「おっ、おい!あれ、爆弾か!?」
「そんな訳ないでしょ?…でもこれ何?」
チームの一人の女性が、地面に落ちた発煙筒を拾う。
ブシューッ
投げて数秒の時間差で、煙が一斉に出てきた発煙筒。
「キャー!煙ー!」
「まさか、催涙ガス!?」
「待って何も見えない!」
「ちょ待てよ~。…マジで何これ!?」
煙に包まれる男女四人。
ガン
「へっ?」
突然、後ろに何か当たったような感覚を覚えた
ガン ガン ガン
続いて、足にも何かが当たる感覚が各自でする。
それぞれ、足を手で拭ってみる。その手には、桃色の液体が煌めいていた。
「「うっ、撃たれてる~!?」」
煙で視界を奪われている中、更にDチームに災難が訪れる。
「ぐわっ!」
「ふべっ!」
「きゃっ!」
「いゃっ!」
それぞれの頭に、二発ずつ、しかも偏差射撃でBB弾が叩き込まれる。
ピピーッ
試合終了のホイッスルが鳴らされる。
煙が晴れると、そこにはヘッドショットを二発ずつ決められてその場に倒れるDチームと、旗を掲げる沙耶香の姿があった。
その場ははっきりと、勝者敗者を表すかのようであった。
その後、Bチームは順調に勝ち進み、決勝戦では糸崎や早希の強襲と猛攻も加わり、対戦相手のAチームを倒し見事優勝した。その時に加わった糸崎や早希の動きは、どこの軍隊所属だよ、と突っ込まれる程度には鮮やかなものであった。
初心者二人を抱えながらもトントン拍子で優勝した同僚組のことは、サバゲー界ではちょっとした噂になったとか、ならなかったとか。
ー数日後 鎌府女学院 食堂兼レストプレースー
四人は祝勝会と景品授受を兼ねて集まっていた。
「しっかし、最初の試合。あれはお前が考えたのか?」
糸崎が彼に
「いや。沙耶香のおかげだ。」
「?…どういうこと?」
沙耶香が彼に聞く。
「剣術でも、背後から突く術も存在する。沙耶香の素早い動きから、寡兵でも倒せるヒントをもらったんだ。」
「…それであの作戦、ね。凄いと思うわよ?普通、そこまで瞬時には思い付かないから。…まあ、沙耶香ちゃんと一緒に行動したから、あの優勝に繋がったのかもね。」
早希も、あの大会の優勝が未だに現実味が無い。
ちなみに、彼に完膚なきまでに叩き潰されたDチームの面々は、サバゲー恐怖症になる程度にはトラウマになったらしい。
「そうそう。これ、お前らの分な。俺と早希の旅行券はもう確保してある。」
糸崎は、彼と沙耶香に優勝景品のペア旅行券を渡す。
指定された旅行場所は、金沢であった。
「そういや、トロフィーはどうするんだ?」
「お前か、沙耶香にやるよ。もう俺も早希も最低一つはあるからな。」
「…何気に勝っとるのな。沙耶香、トロフィーはどうする?」
同僚二人の戦歴をスルーし、沙耶香に優勝トロフィーをどうするのか聞く彼。
彼女は、少々戸惑っていた。
「うーん…。…どうすれば、いい?」
「質問で返すか…。…でも、沙耶香のおかげで勝てたんだ。これは沙耶香が持つべきだろう。」
彼が、沙耶香の手元に優勝トロフィーを授ける。
「…ちょっと、重い。」
「やっぱ、持とうか?」
「ううん。…貴方と一緒だったから、これを穫れた。また、思い出を増やしたいから。これは持っておきたい。」
「…そうか。良かった。」
彼女の喜ぶ顔に、彼も釣られて頬が緩む。
「お前、顔凄いことになっているぞ。」
「えっ、ウソだろ?」
「ホントホント。沙耶香ちゃん、ビックリしちゃうわよ。」
「…?何かおかしいことでも、あった?」
周囲の雰囲気の変化に首を傾げる沙耶香。
その後、四人は流れ解散となった。
ー鎌府女学院 学生寮ー
沙耶香は自室に戻り、机に優勝トロフィーを飾る。
そのままの流れで刀掛台に自身の御刀《妙法村正》を置く。
「…私は、貴方の役に立っているの?…分からない。」
ベッドの上で丸まる彼女。彼にとっての自身の存在価値に不安もあった。
「……でも。」
ベッドからトロフィーを見る。
「…優しく、褒めてくれた。守ってくれた。…何か、私も返したい。」
この想いが、後に舞衣を巻き込んでの料理会となるが、それはまた後の話しである。
銃後のやり取りが今後何をもたらすか、それまだ誰にも分からない。
ご拝読頂きありがとうございました。
年が終わる前にあと二人分は書きたいところ…。
頑張ります。
感想等ございましたら、感想欄・活動報告で対応させて頂きます。
それでは、また。