刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回は薫編その4 後編です。
すみません、文量が多くなりました(´`:)

それでは、どうぞ。


⑥ 束の間の休息 後編

 ー山口県某所ー

 

 日も沈み、辺りが電灯の灯りで点される程度には暗くなった商店周辺。

 薫達刀使の面々が体力を蓄えるべく仮眠を取るなか、彼女らのサポートに徹する彼や糸崎、姫乃は荒魂討伐への下準備を整えていた。

 商店で販売していた小型バイクを購入し、電波障害の影響が及んでいない警察署まで向かい、特祭隊の武装を一部届けてもらうよう山口エリアの本部に要請した。

 四トントラック一台分にもなったそれは、免許を取得していた彼にとっても大変な車捌きだったそうである。行きがけに乗っていたバイクは、このトラックの中へと積んだ。

 今回は更なる応援を頼むには時間的・物理的余裕が無いことから、此方が全滅もしくは撤退した場合にのみ、事態の処理能力が特祭隊の抑えられる段階を超えたとして、自衛隊に災害派遣を要請することとした。

 そうして、現在に至るのであった。

 

「じゃあ、荒魂を狩りに行きましょうか。」

「薫、トドメは任せるぞ。」

「おう、任しておけ。」

「期待しているわよ。」

「…あれ、もしかして私だけ仲間外れ?(里奈以外全員舞草所属)」

 殺る気満々の彼女(とじ)達。

 彼の方も気合い充分である。一堂揃って、作戦内容を確認する。

「今から作戦を伝えるぞ。皆、よく聞いておいてくれ。」

 

 

 今回は探索がアナログ方式での荒魂討伐である。

 今から山に入る五人には予め周辺の地形図を渡し、土石流対策の砂防ダムなどを目印にしながら、まず電波障害の発生源を潰す。

 もしこれが荒魂であれば任務は半分完了する。

 恐らくスぺクトラムファインダーも正常化するため、もし他に荒魂が居れば斬り祓う。(あまりに小さければ薫なら見逃すだろうが。)

 持ってきた武装の中には信号弾も含まれており、討伐が終われば赤、まだ居る場合は白を上げてもらうように伝えた。なお、信号弾は早希に持たせた。(大丈夫だろうか?)

 今回は照明弾を使えないため、早希の明眼が途中から頼りになる。

 

 

「電波障害が解消したら、もしかすると此方からも火力支援は出来るかもしれないことは念頭に置いておいてくれ。…それでは、任務開始!」

 彼の号令のもと、五人の刀使達は山へと分け入っていった。

 

 

 

 

 今回の現場指揮は孝子、副官は里奈であった。現場の状況と薫の健康状態を鑑みて班長を変わってもらったわけである。

「薫以外は全員ツーマンセルで対応、見つけたら直ぐに声を上げろ!」

「「「了解!」」」

「…早いところ任務を片づけたいぜ。」

「ねぇ。」

 五人と一匹が行動するなか、砂防ダムを一ヶ所ずつ確認しながら前へと進んでいく。

 

 

 

 

 車内で今の状況を見つめる残った三人。

「電波障害はまだ解消しないか…。」

「そんな簡単に見つかるなら、苦労してませんよ。」

「早希、無事で居てくれよ…。」

 各々の言葉を述べつつ、三人は刀使達へ祈る。

 

 

 

 

 分け入っても木々ばかりな中、進行する五人。

「あれ?何かしら?」

 最初に異変に気づいたのは里奈であった。

 夜目でも木にしては少し岩のように見える。まさか…。

「…荒魂、ね。間違いない。」

 即座に抜刀してそのまま静かに荒魂の背後を取り、一気に斬り裂く。

「はあぁぁぁぁー!!」

 

 ギャアァァァー!!

 

 ドーンと大きな音を立てて横転した荒魂、いや斬り祓われたので今は多量のノロというのが正しいか。サイズ的には中くらいだったこともあり、対処は容易だった。

 

「ふう。」

 鞘に御刀を収める里奈。

「早速、一体目ですね。」

 ペアを組んでいた早希が遅れて追いつく。

「こうなると、この場所にどれだけの荒魂が居るかは予測できないわね。」

「…応援呼ばなくて大丈夫ですかね?」

「まあ、アイツ()のことだし策は講じているでしょ。…伊達に修羅場を潜ってないし。」

「里奈さんは、あの人とは付き合いが長いんですか?」

「それなりにはね。…それに、彼女がいるなら尚更対策は打っているはずよ。」

 後方で備える彼や糸崎も、大切な人を戦地に送り込んでいる。応援を呼べる状況ではなく、歯痒いのは彼らも一緒だろう。

「ともかく、私らはやれることをやるだけよ。行きましょう。」

「はいっ。」

 ノロの回収をし易くするために小型の発煙装置を設置し、煙が出たのを確認してから孝子や薫達のあとを追う。

 

 

 

 

「聡美、荒魂は見えるか?」

「いいえ。孝子は?」

「こっちもダメだ。」

「中島さん達、先に進んでいるかと思っていたんだけれど。…もしかしてさっきの音は荒魂に対処していたのかしら?」

 

 刀使達は腕に着けられる小型LEDライトを装備しているため、遠目でも互いの居場所が分かる。

 

「孝子~、聡美~。速えぇ~よ。」

「ねぇ~。」

 遅れて薫とねねが追いつく。《祢々切丸》の重量を考えると、彼女が遅く着くのはやむを得ない。

「遅いぞ、薫。」

「孝子、薫も大変なんだから程々にね。」

「ああ。…写シはちゃんと貼れるか?」

「どうにか。…体力ゼロになったら、オレを引っ張ってくれよ。」

「いつもの薫で安心したわ。」

 

 無線やスペクトラムファインダーが使用出来ない状況での実戦は、彼女達もあまり経験したことがない。…それを考慮しての戦術組立もやっている彼に、若干なりとも呆れと驚きもあった。

 

「発生源まであと少しか?」

「恐らくな。三原が来たら、だいたいの位置までは分かりそうだが…。」

「ごめん、遅れた。」

「お待たせして、すみません。」

 里奈と早希も三人に追いつく。

 

 

 孝子は、早希へ切り札の使用を頼む。

「三原、荒魂か電波障害の発生源は見えるか?」

「ここまで近づいていればなんとか。…明眼。」

 地形をトレースし、荒魂や不審な機械などの有無を調べる。

「…輪郭がはっきりしないけど、居るね。間違いなくそこに。」

「よし!突入準備を…」

「!?米村さん、待って!」

 孝子が戦闘準備を指示しようとした瞬間、それを制止する早希。

「どうした、三原?」

「…周りにも四体。しかも、発生源であろう荒魂を取り囲むように巡回してる。」

「「!?」」

「…一人一体ずつで、対処しないといけないのか。」

「ツーマンセルでは厳しいぞ。どうするつもりだ、孝子。」

 薫が孝子に判断を迫る。

 すると、里奈が早希に再度確認をとる。

「…三原さん、荒魂は全部で五体でいいのね?」

「うん。他には視えない。」

「益子さん、合図を出すから中心を陣取る電波障害の発生源の荒魂を叩いて。私が道を拓く。」

「中島さん!?」

「流石に本部の人とはいえ、鉄砲玉のように扱うのはマズい。なら私が…。」

「米村さん、貴女も知っているはずよ。アイツなら、こうすることで最善の策になると判断するはず。益子さん、お願い。」

「…あいよ。」

「……仕方ないか。どうやらアイツといい、貴女といい、本部の人間には変人が多いみたいだな。」

 孝子は開き直って、里奈と薫に笑みを見せる。

「聡美、三原、二人は突入の際に中島と薫の援護を頼む。私も近寄る荒魂に対処する。」

「んじゃ、さっさと終わらせますか。こっちもとっとと休みたいしな。」

「総員、戦闘開始!」

 遂に、討伐戦の仕上げにかかる。

 

 

 

 

 迅移を駆使し、荒魂達を引き付ける里奈。

「まず一体!」

 左右から接近する荒魂のうち、利き脚側である右側の荒魂を迎撃する。利き脚側なら、数瞬速い動作をすることが可能だからだ。

「せめて勢いは削がしたいけど、やれるかしら…。いや、やらなきゃね。」

 二段階迅移を発動し、荒魂の片脚を斬り飛ばす。

「!見えた!アイツね!」

 光学迷彩のように周囲の風景に溶け込んでいたが、明らかに周囲とは異なる盛り上がりが見えた。

「益子さん!怯んでいるうちに早く!」

「任しておけ!ねね、行くぞ!」

「ね!」

 薫とねね、《祢々切丸》が木々を裂きながら電波障害の発生源であろう、姿のはっきりしない荒魂目掛けて高威力の斬撃、いや打撃を繰り出す。

 

 ヒュン

 

 ドカン!

 

 すんでのところで薫の攻撃をかわす荒魂。

「チッ!なら、ねね!」

「ねっ!」

 

 少し離れた位置に居るねねへ目掛けて、《祢々切丸》をぶん投げる薫。

「そいやっ!」

 

 風切り音を立てながら回転する《祢々切丸》。

 

「ねっ!」

 

 カチッ

 

 そしてねねの尻尾が、《祢々切丸》の柄を掴む。

「ねぇ~っ!」

 そのまま薫に投げ返す。

 荒魂は薫とねねに挟撃される形で間隔を詰められる。

「キエェェェェー!!」

 遂に薫が、今回の電波障害の原因であろう荒魂へ引導を渡す。

 

 ドゴーン!!

 ギャアァァァ!

 

 姿を見せたかと思えば、そのまま自壊していく荒魂。その場にはノロとその中心に機械らしきモノが顕出する。

「あれは!?」

「あれの対処は後だ!スペクトラムファインダーの機能は戻ったか!?」

「回復してます!信号弾、撃ちます!」

「三原、任せた!」

 孝子が早希に次の段階に進むように合図を送る。

 早希は信号弾を打ち上げる銃を持った後、若干狂気じみた顔を浮かべながら、上空目掛けて白色信号弾を装填して打ち上げる。

 

 

 

 

 その頃、後方でアクションを待っていた三人。糸崎は、深夜に煌々と白色の光が咲き誇るのを確認する。

「おい!信号弾が上がったぞ!」

「白か。水沢、電波障害は?」

「どんどん解消されていく。…スペクトラムファインダーも機能を取り戻したよ!」

「よし!糸崎、水沢、指示をくれ!」

「おうよ!」

「スペクトラムファインダーのデータリンク開始!」

 糸崎は通信の中継、姫乃はスペクトラムファインダーから表示される刀使と荒魂のリアルタイムの位置情報と、電波障害の解消具合の確認作業を進める。

 

 

 中距離火力支援のため、ヘッドセットを装着しながら糸崎と姫乃に指示を出し合う彼。

 事前に部分封鎖した道路上に設置した、対物ライフルの後ろに転がる彼。

「糸崎、孝子には無線機を渡していたよな?」

『ああ、電波障害の解消確認も兼ねて、恐らくは起動させていると思うぞ。』

「繋がるようだったら、それぞれ荒魂との間隔を少し空けるように言ってくれ。」

『了解。』

「水沢、弾の近接信管を荒魂に誘導することは可能か?」

『出来なくはないけど、ここから直接調整した方が早いと思う。』

「やっぱりか。…しゃーない。二発打ち込むか。水沢、撃ったあとに弾の消えた位置情報をすぐ回してくれ。」

『了解。』

「……薫達に当たらないでくれよ。」

 そう願いながら、引き金に手を掛ける。

『◯◯(彼の苗字)、米村から通信。『言う通り少し下げた。後は任せる。』とのことだ。』

『射線上に刀使は居ません。いつでもどうぞ。』

 糸崎と姫乃からそれぞれ安全確保がとれたことを聞き、身を引き締めて引き金を力いっぱい引く。

 

 

 

 

 ドンッ

 

 

 

 

 暗闇を切り裂くマズルフラッシュが、静かな山間部で閃光を上げる。

 

 カラン

 

 排出される薬莢。

「水沢、どうだ?」

『初弾命中。今、小川さんと米村さんで対処してます。命中した荒魂も動いていません。』

「効力射か。二発目は要るか?」

『米村から通信、『あと一発頼む。』とのこと。』

「水沢、次撃つならどの方向が薫達にとって最も効果的だ?」

『右方向、少し高い位置に居る荒魂です。ゆっくりと三原さんと益子さんの方向に進んでいますが。』

「銃身はどれくらい動かせばいい?」

『仰角5cm、右方向8cmでお願いします。』

「微妙な値だな…。」

 愚痴をこぼしながらも、すぐに再照準し直す彼。

「調整完了。どうだ?」

『此方も問題なし。射撃予測…、カウント始めます。3、2、1、今!』

 カウント終わりと同時に、再び対物ライフルから放たれる弾丸。

「どうだ!?」

『…少し逸れましたが、目標荒魂の進行方向の地面に着弾したようです。』

『◯◯。米村から、『三原と薫の前で荒魂がスリップしたようだ。』と。…結果オーライか?』

「荒魂の残り数は?」

『残り…、……オールクリアです。荒魂の反応、消えました。里奈さんと益子さんがケリをつけたみたいです。』

「作戦終了。孝子達にはノロの回収班が来るまで待機するように伝えてくれ。」

『了解です。…終わりましたね。』

「水沢、糸崎、お疲れさん。ありがとな。」

『それは早希達にも言ってやれよ。』

「なら、後で無線を回してくれ。…さて、こっちは片付けだな。」

 その後、薫や孝子達に労いの言葉を掛けながら、回収班の到着を待ちつつ撤収作業を始める。

 ノロの回収班が作業を完了した時には、もう日が昇り始めていた頃だった。

 

 

 

 

 ー福岡県北九州市 小倉駅ー

 

 人口およそ百万人を抱える、陸路での本州と九州の玄関口にして海運の要衝・関門海峡と面する北九州市。

 

 孝子と聡美以外の長船の刀使達と山口県警へ現場を引き継ぎ、一行は貨物機が降りやすい北九州空港から帰還することとなった次第だ。貨物機の出発までの間は、本部権限で各々の自由時間とすることにしたのである。無論、真庭本部長にもこの話は通しておいた。

 ちなみに孝子と聡美は、そのまま長船に戻るらしく、現地で別れることとなった。

 

 

 

 

 小倉駅から魚町商店街を通り、リバーウォーク北九州方向へと足を進める二人。

「結局、オレ達を悩ませたあの荒魂は一体何だったんだ?」

「あくまでも俺の推測だが、電波オタクが発明した機器を荒魂が取り込んで今回のような事態になったんじゃないかと思う。…まさか電波障害を引き起こすものだとは思わなかったがな。」

「はあ…。全く、人騒がせな荒魂だったもんだ。」

「《祢々切丸》は先に空港に送って良かったのか?」

「知らん。当分荒魂討伐なんてまっぴらゴメンだ。」

「ね~。」

「…まあ、俺も思いの外疲れたしな。…帰ってデスクワークしたくねぇ…。」

 

 束の間の休息の後にある日常が、改めて大変なものであることを感じた彼。彼女なら尚更そう感じるだろう。

 

「ただ、オレは助かったぞ。…お前が全体の指揮を執ってくれたことを。」

「俺は何もしてないさ。今回の状況を打ち崩せたのは孝子や中島、糸崎や水沢達のおかげだ。もちろん、薫もな。」

 そう言って彼女の頭をワシャワシャと軽く撫でる。

 ねねは彼女の左肩に乗っているので、手は当たらない。

「…なんか、照れるな。」

「むしろ、遥かに頑張っているじゃないか。…なんだかんだ、優しいよな。薫は。」

「…お前かエレンくらいだよ。そんなことを言うのは。」

 

 

 リバーウォーク北九州で、今後必要になりそうな雑貨や服などを買っていく二人。

「薫、買っておかなきゃならないものは大体揃ったか?」

「だろうな。」

「…そういや、ねねに何か買ってもいいか?」

「ねねにか?」

「ね?」

 ちょっと意外そうな顔を見せた彼女とねね。

「いや、荒魂だから別に暑さ寒さは感じないんだろうけど、日頃薫を見守っているお礼はしたいし。」

「ねね、お前はどうだ?」

「ねっ?ねー!」

「欲しいだとさ。」

「…さて、何がいいかね?」

「なら、タオルとかはとうだ?外で濡れることもしょっちゅうだし。」

 一瞬、彼女の濡れ姿が頭をよぎった彼。

「…もしや薫もか?」

「…お前、今何か変な想像しなかったか?」

「…ノーコメントで。」

「…まあ、オレの体で何を考えたかは知らんが、あんまり期待するもんでもないと思うぞ。」

「何かそれだと、薫は魅力が無いみたいに聞こえるぞ。…可愛いと思うけどな、俺自身は…。」

「ん?何か言ったか?」

「ああ、いや。…なら、入浴セットはどうだ?」

「入浴セット?」

「ああ。ねねも薫と一緒に風呂へ入ることだって恐らくあるだろ?そういう時用のねね向けの桶とかタオル類とか。」

「…だそうだが、ねねはどうだ?」

「ね?ねー!」

「…OKだとさ。というか、ねね、お前えらく上機嫌だな。」

「ねっ♪ねっ♪」

「よし、買うか。」

 その後、ねね向けのプレゼントを買い込んだ二人。

「薫、貨物機の出発時刻って夕方だったよな?」

「そうだぞ。」

「…もうそろそろ小倉を発った方が良さそうだな。空港で飯は食べるとしよう。」

「じゃ、小倉駅のバス乗り場に向かうか。」

「賛成。」

 またゆっくり休みがとれた時に、此方に来ようと思った二人。

 

 

 

 

 西鉄の北九州空港連絡バスに揺られる二人。

 平日の日中であることもあり、二人以外の乗客は皆無であった。

 薫が何か思い立ったように、彼に声を掛ける。

「なあ、◯◯(彼の名字)。」

「どうした?」

「…オレとキス、してくれないか?」

「…………えっ?」

 あまりに唐突過ぎて、頭が真っ白になる彼。

「…いやな、この先も無事に生きていられるか分からないと思ってな。できるだけ、お前の姿を記憶に焼き付けておきたいと思ったんだよ。」

「薫…。」

 

 刀使は常に死と隣り合わせになる職業だ。それは彼自身が嫌というほど理解していた。だが、愛しき人から改めてその現実を突きつけられたことが、どれほど胸に刺さるものだったか。

 

「…ちょっと混乱していた。すまない。」

「オレも、急にこんなことを言ってすまなかった。…悪い、やっぱり忘れてくれ。」

「薫。」

「なんだ…っ!」

 

 

 

 

 

 

 それは強引というにはあまりに優しく、シチュエーションというものを完全に無視した、そんな口づけだった。

 

 

 

 

 

 

 数秒の後、二人の顔は離れる。

 そして、彼女を抱きしめる彼。

「…俺に何が出来るかは分からない。でも、大切な人を亡くすことはもう二度と嫌なんだよ。だから、死ぬかもしれないなんて俺の前では嘘でも言わないでくれ!」

 抱きしめる腕に力が入る。

「お前…。…オレも悪かった。不安にさせたみたいだな。」

 そっと彼の頭をポンポンと撫でるような手付きをする彼女。

「薫。…俺は絶対お前を、お前達を死なせはしない。だから、薫も『ただいま』って言っていつも通り帰ってきてくれ。」

「…約束、だな。」

「ああ。」

 

 

 

 

 指切りげんまん、ではないがその代わりに約束の意味を込めて、再度仕切り直して口づけを交わす二人。

 こうして、二人は本当の意味合いで恋人らしいスタートを切ることとなった。




ご拝読頂きありがとうございました。

…こんな感じの話の落着になりましたが、いかがだったでしょうか?
メイン組では多分関係が一番進展したのではないか、と。
(薫ファンの方々から怒られないか不安…。)

次回はエレン編です。
彼女が主人公のことを「ダーリン」と呼ぶようになった経緯を書いていこうと思います。

それでは、また。
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