今回は薫編その6 前編です。
時系列は波瀾編のタギツヒメのメディア登場後、イチキシマヒメ確保に動く直前の頃になります。本作では『過労と転落』の後の話になります。
それでは、どうぞ。
ー鎌府女学院 学生寮ー
日々、荒魂との戦いへ縦横無尽に動き回る刀使達。
鎌倉特別危険廃棄物漏出問題によって放出されたノロの完全回収までには、未だ時間が掛かりそうであった。
長船からほぼずっと出向状態の薫は、そんな状況であっても学園から送られてくる課題の量に辟易しながら、着々と手を進めていた。
「ねね、お前は何もしないでいいから楽だよなぁ…。」
「ね?」
「荒魂倒して、戻ったらまた倒しに行って、戻ったら課題をやれって…。ウチのところは、学長もブラックなら学校もブラックなのかよ…。」
「ねぇー。」
「まあ、こんなことをお前に愚痴っても仕方ないんだろうけれどな。」
折り畳みテーブル上にノートを置いている傍らで、その隣に鎮座しているねねの頭を撫でる薫。
「ね~、ねぇ~。」
「そうか、気持ちいいか。」
幼い頃はねねを疎んでいた時期もあったが、今となってはこうも愛らしく思う。それだけ、自分が成長したということもあるのだろう。
コンコン
そんな時、部屋の通路側の扉からノック音がする。
「ん?誰だ、一体。」
今日の任務自体は終わっているものの、まだ夜は更けていない時間帯。何かあれば、本部から緊急通信くらいは入る。だが、携帯画面を見てもそんなものはなかった。
「まあ、エレンはまだ他の任務で不在だし、可奈美か沙耶香あたりか?…それかまさかとは思うが、アイツか?」
色々な予測はあったものの、彼女の身長でギリギリ見えるくらいの高さにあるドアスコープから、通路の方を見る。
「…なぜアイツがここに…。取り敢えず、開けるか。」
相手を立たせ続けるのもどうかと思い、ドアの鍵を開ける。
ドア前に立っていたのは、彼であった。
「お疲れ様、薫。…今、大丈夫だったか?」
「お、おう。ま、立ち話もなんだ。早く入れ。」
「お邪魔しまーす。」
両手にビニール袋を引っ下げて、薫の部屋に入る。
「んで、本部の方が一体何のご用で?」
任務かと思い、敢えて対外的な言い方をする彼女。
しかし、彼の返答は違った。
「いや、今日来たのは完全にプライベートだ。一応、寮の管理人の方には書類通してあるし、問題はない。そこまで長居もできないけどな。」
長くとも四時間以内には退寮するように言われている。彼自身、それを破るつもりはさらさら無いが。
「…そうか。」
「そのテーブル上のやつ、長船からの課題か?」
「ああ。そうだ。全く、面倒くさい…。」
「本当は良くないんだが、コレ、俺が少し手伝っても平気か?」
「ん?お前がか?」
「まあ、理系科目はそこまで得意じゃないが、歴史やら文系科目は比較的解ける方だからな。幸い、俺は過去に休み返上で勉強していたこともあってか、もう高三範囲までの基本的な履修科目は全部済ませてあるし。復習にもなる。」
本来なら、彼は美濃関の中・高等部の六年間でのんびり学ぶはずだった量を二、三年程でこなす羽目になった。それには、舞草に入ったことや自衛隊などへの出向も影響している。…その分、今は勉強時間に時間を大きく取られなくて済んでいるのは、皮肉なものだろう。
「…じゃあ、やってくれるか?」
「後で俺からのお願いを聞いてもらうが、それでも構わないか?」
「うぐっ…、程々にな…。」
彼から何を頼まれるかは分からないが、明日送らねばならないものも含まれていたため、徹夜よりマシと思い、背に腹は代えられぬということで、提案を受け入れた。
横からこの様子を見ていたねねは、ちょっと首を傾げているようであったが。
部屋に彼氏がやってきた割には、あまりに静かな時間が流れる。室内に響くのは、二本のシャープペンシルの先端が紙へと当てられていく音。それとねねの寝息である。時々、薫や彼が飲み物を口に含む際の音が聞こえたりするが。
彼がシャープペンの芯を折ったため、高速でヘッドをノックする。
カリカリという単調な音しか響かないほどには、あまりにこの空間は静かであったため、たまらず薫が口を開く。
「おい、××(彼の名前)。流石に喋らなさ過ぎるだろ!?」
「……えっ、あっ、ああ。すまん。解くのにだいぶ集中してたらしい。」
「はあ…。」
「といっても、もうすぐ終わりそうだけどな。」
「あ、嘘だろ?」
「いや、ホント。あと数題。」
「ええ…。マジかよ。」
時間そのものは一時間ほどかかっているが、課題の中には読解に時間がかかる英語が無かった分、これくらいの時間でも順調にいくということだろう。
「薫が終わったら、お願いを言うつもりだし、それまではまあ頑張れ。取り敢えず、俺の分はほぼ終わった。」
「ちぃ、速ぇよ。…よし、分かった。益子さんの本気、見せてやろうじゃねえか。」
突如、ギアが切り替わったかのように、回答速度が上がる。
「おりゃりゃりゃりゃあーっ!」
「…最初からそのペースの方が早かったんじゃあ…。」
省エネ型の彼女にこれを言うのは酷だが、解いていくスピードを見ると、何とも言えなくなってくる彼であった。
薫が課題を終わらせたのは、彼が終わってから三十分くらい後のことだった。
「お疲れ、薫。」
「ぜーは一、ぜーはー…。きつ過ぎるぜ…。」
「ベッドに横にでもなるか?」
「そうさせてもらう…。と言いたいが、それはお前からの『お願い』次第だろうな。」
流石に忘れていなかった、彼からの課題を解く際の条件。彼氏からのお願いが何なのか、気になるところではあった。
羽織っていた制服の上着を脱ぎ、普段とはちょっと違った雰囲気の彼女になる。
「つっても、別に変なことは言わないぞ?」
「さあ、××。オレをお前の好きなようにしやがれー。」
ベッドに、ぼふんと飛び込んだ薫。
仰向けに腕を広げ、彼に何をされてもいいようにしていた。
「なぜ棒読み…。あ、でも薫。これならちょうどいい。身体の向きを逆にしてもらえるか?」
「逆?うつ伏せになれってことか?」
「できれば、枕を顎の下に置いてもらえれば助かる。」
「こう、か?」
「よし、これならやりやすい。」
彼の考えが読めない薫だったが、取り敢えず彼に身を任せてみようと思った。
彼はベッドに上がると、薫の右側に正座する。
「薫、今からあちこちマッサージしていくから。」
「マッサージ?それがお前のお願いか?」
「ビックリさせないようにはする。まず、肩から。」
薫自身は、彼も年頃なのだから、今回のことを盾に情事に及ぶのでは、などと思っていたのだが、この男、そんな気はさらさらなかったようである。
(…オレがこう思うのもアレだが、ここまで無防備なのに襲わないって、コイツの神経は一体どうなってやがる!)
ねねもいるとはいえ、二人きりなのにコトを起こさないというのは、見方によっては変わっているとも捉えられる。だが、彼女も彼の性格が分からない人間ではない。
(…それだけ、大事に想われているって、ことなんだろうな。)
そんなことを思いながら、薫は彼にその身を委ねる。
「…やっぱり、固くなっているな。あれだけ重たい御刀を抱えているんだから、無理もないか。」
肩とうなじを中心に、張った筋肉を両手で揉みほぐしていく。専門家ではないので大したことはできないが、優しく、丁寧に手を動かす。
(んっ…、声に出そうだ。…あっ、そこはいいな。)
マッサージ時にツボも刺激されるため、時折艶っぽい声が出そうになる。
「痛かったら言ってくれ。」
「あっ、ああ。」
(…お前ってヤツは全く…。…あー、ヤバい。眠気がしてくる…。)
身体に走っていた緊張が程よく解かれていくため、脳に掛かっていた負荷が徐々に下げられていく。
「さて、肩甲骨と背中、腰か。…あんまり人の上に跨るのって、俺は好きじゃないんだけどな…。」
とはいえ、薫の身体と直角で要所を押していくには、どうしたって押す力とその場所での不均衡が起きる。
「薫、すまない。ちょっと跨るぞ。」
気は進まないが、跨りつつも薫の身体に接触しないようになるべく体を浮かせる。
「…おっ、おう…。」
眠気で彼女も返事どころではないが、今も自身の柔肌を彼に預けるあたり、無意識下でもそれだけ彼を信用しているということだろう。
「あー、結構固いな。…いつも、無茶させてばかりで悪い。…何もしてやれなくて、すまない。」
マッサージをしていくなかでも、彼はこれくらいでしか彼女へ報いることができない自身のことを、つい責めてしまう。
彼女達の使命を分かっていても、彼にとっては死に直結しかねないその立ち位置を、変わってやれないその不条理に日々悩みながらも、せめて愛しき人達を生きて帰す努力を続けることでしか、彼女達にできることはないと考えている。
(ボロボロになっても、どんなにキツいことがあっても、せめてゆっくりできる時くらいは、心を落ち着かせて穏やかな環境にしてあげたいしな。…こんな大変な時でも投げ出さない薫は、改めて凄い娘だよ。)
ウトウトしている彼女を見つつ、指圧加減に気を配る。
性的欲求よりも彼女の負担を下げたい一心が勝るというのは、男から見ても特殊なものなのだろう。とうに前者が消え去っているというのならば、もはやそれまでなのだろうが。
「あとは足回りか。…血行にも悪いし、靴下を外すか。…薫は、…眠っているみたいだな。やっぱり、疲れてたのか。」
スーッ、という寝息を立てる彼女の姿に安心し、彼はスカートの中を見ないように注意しつつ、ゆっくり両足のロングソックスを外していく。
「確か洗濯物は…、あそこに纏めているのか。」
洗濯物の山に靴下を置く彼。
その中に彼女の下着なども見えたが、すぐに目線を外して彼女のもとに戻る。
「ま、後は少々揉みほぐすくらいで終わりだし。ちゃちゃっと済ませるか。」
滞在許可の終了時間まで、そう長くもない。
早々に両足のマッサージを終えると、薫を起こさないように体の向きを仰向けに戻す。…といっても、掛け布団を巻き取る要領でゆっくり回したため、多少なりとも頭が揺れてしまうのだが。
「…んっ…。終わったのか…。」
慎重にはしていたのだが、やはり起こしてしまったようである。
「あー、悪い。風邪引いたら大変だと思って、布団をかけようと思ったんだが。起こしちまったみたいだな。」
掛け布団の感覚を覚えながらも、ムクっと上半身を起こして彼を見る。
「…身体の感覚が軽い。お前、ずっとマッサージをしてたのか?」
「えっ、ああ。まあ。…俺もそろそろ退寮時間が迫っているし、官舎の方に戻るわな。」
彼女の頭がまた冴える前に、薫の部屋を出ようと考えた彼。
「何かあればメールで送るし、翌日見てくれ。」
「…待て。××。」
「なんだ、薫?」
「…ありがとな。課題、手伝ってくれて。」
「これくらいでしか役には立てないから、別に気にするな。じゃ、また明日。」
彼はそう言って荷物をテキパキと纏め、ねねの頭を撫でると薫の部屋を後にする。
バッタン
「…バカ野郎。お前も大変だった癖に、してもらってばかりなのはこっちもお互い様だっての。それに…。」
寝る前に軽くキスくらいしていっても、何も罰は当たらないだろうに、とは口には出さなかった。
「…オレは、お前の彼女なんだろ。…もう少し、甘えたっていいだろ。××。」
そう呟く薫の姿を、ねねは少し悲しげな顔で見つめるしかなかった。
その後、就寝前にトイレだけは済ませ、薫とねねは眠りにつく。
退寮の報告を寮の管理人に済ませ、一人官舎の自室へ戻る途中の彼。
そんな折、対向から来た見覚えのある人物に声を掛けられる。
「おや、こんな時間に珍しいデスね?」
「この声は、エレンか?」
「Yes!今さっき鎌倉に戻ってきたところで、やっと帰ってこられたデース。今回の討伐任務も大変デシタ。」
「そうか、お疲れ様。」
「…?そういえば、薫と一緒じゃなかったのデスか?」
「薫なら疲れてたみたいだったから、先に眠ったよ。」
「そうデスカ。…今から時間、アリマスか?」
「ああ、まあ。どうせ今自室に戻っているところだし、何なら上がっていくか?どうせ今から少し遅くなっても、対して時間は変わらんだろ。最悪、車で送ればいいし。」
何か話があるのは分かったため、エレンの提案に乗った彼。
「助かりマース。…そういえば、ダーリンの部屋って上がった事無いんデスヨネ。」
「薫は何度か通したことがあるんだけどな。まあ、本部長から逃れるために逃げ込んできたケースが多かったけどな。」
「…何やっているんデスか、薫は…。」
いくら紗南からの任務依頼が多いとはいえ、彼氏の部屋にまで逃げ込むという事実に頭を抱えた相棒。
「お茶くらいしか出せないのは勘弁してくれ。」
「いいデスヨ。そこまで長居するつもりもありませんカラネ~。」
「助かる。」
そうして、彼とエレンは官舎の方へと歩を進める。
ー刀剣類管理局 官舎内自室ー
「今からお茶出すわな。」
「…予想はしていましたガ、まさかココまで物が少ないなんて…。」
リビングルームの家具や小物の少なさに驚くエレン。
精々、パソコンなどの電子情報端末が机などに多く置かれてある程度であった。
「お待たせ。Tバッグのお茶でいいよな。エレンに不安を抱かせないだろうし。」
「Thank you!…というか、同じ舞草の人間なのにそこまで気を回しマスか?」
「この時間帯でホイホイ付いてきた女の子に、相手が何をしでかすかなんて分からないだろ?そりゃ尚更気を遣うわな。」
「…ホント、薫のボーイフレンドがアナタで良かったデス。」
「エレンにも必ずいい男は見つかるさ。まー、気長にいこうや。その辺は。」
「取り敢えず、ワタシの話はイイとして、薫とは今どんな感じデスか?」
「どう、か。…普段と変わらず、かな。」
「What's!?―普段通りって、喧嘩でもしたのデスか!?」
取り乱したようなエレンの様子に、驚いた彼。
「え、いや。どちらかといえば、良好な関係のはずだが。というか、何でエレンがそこまで俺と薫の仲を気に掛けるんだ?」
ようやく本題にたどり着けたと思ったエレンは、仰々しい感じで咳払いをする。
「…オッホン。実は最近、紗南センセイから『薫の様子が少しおかしい』と相談を受けていたのデース。紗南センセイはまだ、ダーリンと薫が付き合っていることを知らないようデスし、もしかしたらそれが原因なんじゃないのかー、とか思ったのデスガ。」
「…あれ、真庭本部長は知らなかったのか?てっきり、もう知っているものとばかり。」
「イヤー、だって二人が付き合いだしたのって、本当に最近のことじゃないデスか。いくら一緒に居る時間が長いと言っても、薫も黙っているみたいデスし、紗南センセイの前じゃ茶化されそうだから言わなかったんじゃないデスか?」
「本部長の場合、茶化しはするだろうが内心は喜びそうだけどな。」
「そうデスネー。…で、ホントに喧嘩とかはしてないんデスよね?」
「というか、ついさっきまで薫の部屋で課題を手伝ったりしてたぞ。勿論、書類で入室許可は貰ったし。…なんだエレン、その怪訝そうな目は。」
「ベツに。ダーリンが意気地なしとか、そんなコト、思ってませんケドネー。」
この男はどうして肝心な時にスキンシップを増やさないのか、と正直そう思ったエレン。
彼も先程までのことを彼女に少し語る。
「はぁ~。…流石に課題をやる時の条件として、『お願い』は聞いてもらったけどな。言っておくが、健全なやつだぞ。」
「『お願い』、デスか?」
「ああ。といっても、首筋から足にかけての揉みほぐしマッサージだけどな。…途中で薫が寝てしまった様子を見るに、相当疲れが溜まってたんだろ。マッサージが終わってそのまま寝かせるつもりだったんだが、身体の向きを変える時に薫が起きちまってな。ちょっと話して離脱したんだよ。多分もう寝てると思う。」
「その感じなら、まあ。仲は良さそう…。…待ってクダサイ。それ以外に何もしていないのデスか?」
「いや、本人が疲れているのに無理やりあれこれする方が無配慮というか、彼氏じゃなくともおかしいだろ。薫のことを考えるなら、尚更のことだし。」
(…薫が眠った理由は疲れていたというよりも、そのマッサージが理由なのでは?…本人はそれに気が付いていないようデスが。)
顔では少し引き気味の表情を浮かべつつも、彼女のことを考える彼の姿勢に改めて納得するエレン。
「エレン、時々思うことがあるんだ。果たして、俺がやっていることって薫や他の刀使達に何か役立っているのか、とかな。」
「そこはもっと誇っていいと思いマスよ。…確かに今、タギツヒメや近衛隊と険悪な状況デスが、ダーリンはずっと、
「エレン…。」
「ダーリン、知ってますカ。」
そう言って、薫やねねとの馴れ初めを語りだす彼女。
「ワタシが初めて薫と出会った時は、だいぶ警戒されてイマシタ。本をただせば、ねねに興味があったワタシのことを薫は信用していなかったのが、一番大きかったのでショウネ。」
「今じゃ全然思いつかないな。薫とエレンがそんな感じだったなんて。」
「薫やねねと打ち解けた時は、それはもうベリーハッピーでした。…ダーリンの場合、鎌府や長船に居た研究用のノロや荒魂のことを、できる限り様子を見に来たり、時にはお参りしたりしていたのもあって、ダーリンが薫やねねと会った警戒を解くのが早かったを見た時には、ソノ、初めて顔を合わせた時にちょっとシットしましたけれどネ。」
「おっ、おう。」
一瞬負のオーラを感じたが、すぐに普段のエレンの姿に戻る。
「…ダーリン、益子家を代々見守ってきた守護獣がアナタを認めたっていう、その事実を甘く見てはいけないデス。ワタシからも、薫を他に任せられるのはアナタだけだと思っていますから。」
「…それに見合うような男じゃ、正直無いような気もするんだがなぁ…。」
「ダーリン。アナタが思っている以上に、アナタの存在が大きいことを、どうか覚えておいてクダサイ。薫にとっても、それは同じことデス。」
彼は、普段の朗らかな表情とは打って変わった彼女の真剣な表情が印象深かった。
時間が遅かったこともあり、エレンを学生寮まで車で届けた彼。
その降りる間際、彼女から提案があった。
「ダーリン、タギツヒメ達が行動を起こすにはまだ時間がアリマス。二人でゆっくり過ごしてみては、どうデスか?」
「気分転換に出掛けて来い、ってことか?」
「Hi!…私から、紗南センセイに掛け合ってみます。それなら、どうデスか?」
「…分かった。同僚に仕事ぶん投げることにはなるが、時間を作ってみよう。」
「良い判断デス。っと、もう寮の前デスネ。」
「エレンも、無理はしないようにな。」
「無茶をする筆頭の人が何を言うデスか。…でも、その気遣いはありがたいデス。」
車が止まると、エレンの座るところの自動スライドドアが開かれる。
「それではまたデス!See you again!」
手を振りながら、彼女が学生寮に入っていく姿を確認し、車を発進させる。
「なんだか、エレンに申し訳ないな。…薫と出掛ける先か…。…それなら、買い物ついでに寄って行くか。遅かれ早かれ、顔を合わせる必要はあるし。」
車内で一人、薫との行先プランを立てる彼。
それがちょっとした波乱を巻き起こすことを、彼はまだ知らない。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
つい先日、日間ランキングで上位の方(筆者が確認できたのは最高18位)に入ってきていたため、だいぶ驚いてしまいました。
高評価、及びお気に入り登録をしていただいた方々に、改めて感謝申し上げます。
UA70,000、全話PV200,000を超え、読者の方々には長きにわたって読んでいただいたことに、筆者は歓喜の念が絶えません。
本作の投稿開始から、明後日(執筆当時)でちょうど一年の節目を迎えます。
書き方を未だ模索し続けていますが、それでも読み続けていただいていることを自覚しながら、今後も邁進して参ります。
次回は後編になります。
感想等ございましたら、感想欄・活動報告へお気軽にご投稿頂ければと思います。
それでは、また。