刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

今回はエレン編その2 前編です。
イチャイチャは今回薄めですが、次回は大丈夫…だと思いたいです…。

それでは、どうぞ。


② 試射実験とお誘い

 ー陸上自衛隊 東富士演習場ー

 

 静岡県御殿場市にある、本州最大の演習場。 毎年夏に富士総合火力演習(通称:総火演)と呼ばれる、陸上自衛隊最大級の演習が、ここで行われている。

 そんな場所に、今俺は来ている。しかし、来た理由は荒魂の討伐ではない…。

 

 

 

 

 入り口を通り抜けた際、エレンがこちらを見つけて駆け寄ってくる。

 ニコニコしながらやってきた彼女は、今日も朝からハイテンションであった。

「ハーイ!ダーリン!元気してマスか~!」

 彼の腕に抱きついてくる彼女。いつもの調子が、逆に彼を安心させる。

 両胸が当たっているような気はするが、意識をそちらに向けないよう、意図的に感覚を切る。

「まあ、な。…体は元気でも、呼ばれた用件だけに、心の方はもの凄く不安なんだが。」

「グランパも無茶言いますよね。試作品の実験に、ダーリンを呼んでこい、なんて。」

「そう言ってやるな。博士も、ノロの研究だけが全てじゃないって、そう思って俺を呼んだんだろ。」

「それはそうですケド。…確かに、ダーリンと長く居られる時間は増えるから、良いんデスけどね。」

「試射実験って、これ絶対俺じゃない方が良いやつだろ…。」

 

 

 そう、今回ここに呼び出されたのは、御刀以外の対荒魂用の試作武器に関する、実験の手伝いである。

 実験自体は、そう長く行うものでは無さそうなのだが、なぜかテスターとして博士に直接指名されたのだから、現在こちらの胃は、ストレスマッハである。日頃薬に頼るわけではないのだが、今日は胃薬をポケットに突っ込んでいる。

 

 

「明らかにアマな人間を呼ぶ、その必然性が無いと思うんだがな。」

「ん~。でも、ダーリンのように比較的不慣れな人間でも扱えるものを目指す、ってグランパは考えてるんじゃないデスかね?」

「それも一理あるが、それだと尚更俺はマズいんじゃないか?プロが撃って、そこからモノの問題点を洗い出さないといかんだろ。」

「…言われて見れば、確かにそうデスね。…グランパに後で聞いてみまショウ。」

 二人は、フリードマン博士が待っている建物を目指す。

 

 

 

 指定された建物の中に入ると、博士が二人を出迎える。

「待っていたよ。エレンも、一緒に来たんだね。」

「グランパ!」

 博士とハグするエレン。

 見慣れていても、毎度新鮮さを感じさせる光景である。

 ハグを解かれた博士に、彼は声を掛ける。

「来て早々に悪いのですが。博士、質問が。」

「どうしたんだね?」

「テスターの件なんですが、その…何故に俺なんですかね?」

 少し戸惑った様子で、博士に質問を投げかけた彼。

「フム。なら、その答えを示しに行こう。」

 博士の先導のもと、彼とエレンは奥の扉に進んで行く。

 

 

「実のところ、研究所の方でもやっているノロの凍結実験なんだが、そう簡単に上手くいってくれなくてね。」

「まあ、ノロ自体にも自我があるものが居ますからね。スペクトラム化していないもので、実験は行っているんですよね?」

「ああ。恐らく、君の懸念するようなことはしていないさ。」

 彼の疑念を払拭しにかかる博士。

 

 彼の隣を歩く、エレンが横から声を上げる。

「グランパ、ダーリンを指名したのは、やっぱり身内だからデスか?」

「いや、刀剣類管理局や舞草の人間を含めても、刀・銃火器・弓を実戦レベルで扱える人間なんて、彼含めて数えるほどだよ。」

「…それは買いかぶり過ぎだと思うんですけど…。現に銃火器と弓の命中率、2割弱くらいですし。」

「遠・中・近距離戦能力が揃って、荒魂との戦闘に巻き込まれとはいえ、突入しても生きて帰ってきた人間を、テスターにしない理由はあるかね?」

「あの時は、必死で対処しただけですから、そこまで評価される人間でも無いですよ…。」

 苦笑する彼。そのまま、言葉を続ける。

「銃はともかく、刀や弓は基本、それを扱う人間の癖がどうやっても出ますよ。個人的には、十全の一品ものよりも、出来が八~九割の量産品の方が遥かにいいとは思います。博士もご存知でしょうが、兵器系統は尚更、その辺はシビアですよ。」

 

 神性を帯び、自身が選ぶ少女を帯刀者として認める御刀は、一見するとマッチング能力が高く、荒魂の天敵という点でも、相当な衝撃を加えない限り折れない、などの要素から見ても、武器として見て非常に重要である。

 だが、御刀にも意思のようなものは存在し、途中で使用している刀使と合わなくなったり、他者から、更に上位の適合率がもたらされる場合もあるため、単純な武器として扱うには、どうしてもその者の技量に依らざるを得ない。加えて、赤羽刀を再生しない限り、御刀の数は変化しないという問題点もある。

 その点、銃であれば、実戦経験の乏しい凡人であっても、範囲(レンジ)の広範さから荒魂を攻撃でき、容易に数も増産させることができる。

 最終的には刀使たちの御刀で、荒魂を祓わざるを得ないのだが、銃そのものは彼女たちの負担軽減にはもってこい、のはずではあった。

 

 だが、そんな単純な話では無い。御刀、ひいては刀使達の負担が減りにくい事情は、当然銃のデメリットとしても現れる。長年、銃が荒魂討伐であまり有効ではない理由も含まれている。

 

 

 博士は、歩きながら口を開く。

「厄介な問題として、外れた弾丸が民間人に当たる可能性が往々にしてあることだろうね。それは、言い換えると我々自身にも返ってくることだろう。」

 エレンは、頭の上でクエスチョンマークを作る。

「?グランパ、でも以前、ダーリンにモノを見せてもらったことがありますケド、先の部分で人か荒魂を見分けられるようになってマシタよ?」

 あーそれか、と彼が思い出したように続ける。

「実はな…。今、博士が片手間に研究中なのは、89式(小銃)のような小型弾頭のタイプなんだよ。」

「?どういうコトですカ?」

「以前見せたのは、対物ライフル、つまりある程度大きなサイズの銃なんだ…。弾頭が大きかったのは、たぶんそのせいだろうな。」

「今彼が使っている、対物ライフル用のVT(近接)信管方式だと、少し危険なことが分かったんだ。もし撃った際に刀使がいた場合、弾が大き過ぎるが故に、巻き込まれて一緒に凍てつく可能性があるんだよ。」

「…!それって下手をすると、ワタシたちも斬り祓われるかもしれないってコトですよね…。Oh…。」

 考えたら、少し恐ろしいように思えたエレン。

 

「それに、御刀と違って、銃は発射間隔や銃身焼けといった、弾を撃てない時の問題もあるからな。」

「無音で攻撃できる弓矢は、発射間隔こそ劣るが、荒魂に気取られることなく攻撃できるのは、大きなメリットだよ。…ただ、直線の多い市街地では有効でも、山や川といった自然条件下では、あまり期待できないだろうね。」

 

 博士の言う通り、荒魂はどこにでも出現するリスクがある。珠鋼が弾丸に利用出来れば苦労しないのだが、実質ロストテクノロジーと化している精製方法などが壁となり、刀使と御刀に頼る外ない現状である。

 そこで、荒魂を麻痺或いは拘束するための手段として考えられたのが、特祭隊のスタンバトンであり、急速冷凍技術だったりするわけである。

 

 

 

 

 一行は、ゴルフ練習場のような構造の建物に入る。

「さて、目的の場所に着いたようだ。今日、君を呼んだのは、これの試射実験だよ。」

 

 

 博士が指差したのは、後方に大出力のバッテリーの付いたレーザー銃だった。

 

 

 一瞬、彼は固まる。

(俺、最新の試作銃の試射って聞いてたけど、レーザー銃ではなかった筈…。)

 

 

「……博士、レーザー銃とか荒魂に有効でしたっけ?」

「…!おっとすまない、間違えたようだ。それはアメリカ軍向けの奴だった。」

 彼の後ろで、エレンが笑いを堪える。

「グランパも、おっちょこちょいデスね。…?グランパ、もしかしてこれがそうですカ?」

 そう言って、見つけたブツを彼に手渡すエレン。

 ズッシリと重たいそれは、今使っている対物ライフルよりも遥かに小型の銃だった。

 

「これが…。」

「それで間違いないね。対荒魂用小銃タイプの試作一号だよ。」

「なんか、ゴツゴツしてマスね。」

「これを、今から試射するんですよね?」

「うん。早速だが、始めようか。エレン、ついてきてくれるかい?」

「了解デース!」

 

 

 それから二分ほどして、射撃準備の整った彼は、まずうつ伏せの状態から目標の丸太に照準を合わせる。

 博士とエレンは、他の自衛官や研究者と共に、強化ガラス越しから見守る。

 両耳保護のため付けているヘッドセットマイクから、声を通す彼。

『準備できました。いつでも撃てます。』

「OK。失敗しても構わないから、そのつもりで。それでは、射撃開始!」

 

 ブザー音が、静かな場内に響きわたる。

 

(ファイトですヨ、ダーリン!)

 エレンは、彼の試射の成功を祈る。

 

 

 

 ダーン

 

 

 

 一発目の弾丸が、放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべぇ、肩痛い…。」

「大丈夫ですカ、ダーリン?」

 試射実験が終わり、休憩室で休む二人。彼の肩は、射撃時の反動で疲労感を味わっていた。

「ああ…。肩はそのうち良くなるから、いいんだが…。」

「結果は…、その…。頑張ったと思いマスよ…。」

 

 発砲回数は、うつ伏せの状態で、連射も含めて15発、中腰の姿勢で8発、立ち姿勢で12発の計35発。

 立ち姿勢では、飛行タイプの荒魂を想定して、比較的大型のドローンに向けて、クレー射撃の要領で数発打ち込むも、当たらず。

 結局、標的に命中したのは8発。最終的な命中率は、二割を越す程度だった。

 

「刀使を守る役割の人間がこれじゃあな…。全くもって情けない…。」

「でも、空に向けて撃ったのを除けば、どの姿勢でも最初の弾は当たってマシタよ。」

 確かに、空中のドローン以外で、各姿勢での初弾の命中率は75%。つまり、最初の照準は合っているわけである。

「…そう、だな。…エレンの言葉を、前向きに考えようかな。」

「そうデース!暗かったら、いつまでも悲しいままデスよ、ダーリン。」

「…ありがとう、エレン。励ましてくれて。」

「No thank you.ですよ、ダーリン。」

 微笑むエレンに、こちらも微笑み返す。

 

 

 いい感じの雰囲気になりかけたところで、博士ともう一人の研究者が二人のところへやってくる。

「やあ、待たせたね。改良に役立ちそうなデータは取れたよ。主に、撃った後の衝撃を逃がす構造を、少し変えた方が良さそうだ。あとは、グリップかね?」

「はい。少し、持ちにくさはありましたね。…俺、外し過ぎましたよね…。」

「……実は、昨日同じように自衛隊員の方に、テスターの依頼をしていてね。標的への命中率は申し分なかったんだが、初弾の命中率に関しては、君の方が上だったよ。」

「えっ、そうなんですか?」

 そう言われ、彼は博士の隣に居た研究者から、試射実験のデータが表示されているタブレットを受け取る。

「君はもう少し、自分を誇らしく思った方がいい。そうでなければ、愛しの孫娘を安心して任せられないじゃないか。」

 フリードマン博士は、彼にエールを送るようにウィンクをする。

「…ありがとうございます、博士!より一層、研鑽していきます!」

「うん。私はまだ、データの分析もあるからここで失礼させてもらおう。あとはエレンのことを、よろしく頼むよ。See you again.」

 二人から離れていく、博士たち。

 

 

「良かったデスね、ダーリン。…まあ、グランパでも、ダーリンにあまりにヒドいことを言うようだったら、流石に何か言っていたかもしれませんネ。」

「…喧嘩に成らなくて良かった…。仲良し家族を引き裂く場面を見るなんて、まっぴら御免だよ。」

 何事も無く、一連の試射実験は終了した。

 

 

 

 

 さて、これからどうしようかと彼が考えていた時だった。

 不意にエレンが、声を掛ける。

「…ダーリン、今から時間はありマスか?」

「そりゃ、まあ。」

「じゃあ、ワタシに付き合ってクダサイ!」

「ん?…ああ、分かった。」

(博士にも頼まれたしな。)

 

 この、『頼まれた内容』の意味するところを、彼がキチンと分かっていたかは、ここでは触れまい。

 

「で、どこに向かうんだい。エレン?」

「ダーリンは水着、持ってきてますカ?」

「あっ、ああ。あるぞ。……もしかして、海か?」

「Yes!よく分かりましたネ~!」

「何となく、だけどな。」

(確かに、連日猛暑だから海に入りたいのは分かる。…水着を持っている俺も俺か。)

 今日は真夏日の予報だったが、準備を怠らなくて良かった…とも、彼は感じた。

「エレン、御刀はどうする?海には持っていけないだろ?」

 エレンの御刀である《越前康継》はどうするのか、彼女に聞いてみると、

「《康継》は、グランパに預かってもらいマ~ス。これなら、気兼ねなくビーチを楽しめマス!」

 と返ってきた。

「確かに、博士のもとなら大丈夫だろう。」

 エレンの言葉に納得して、荷物を纏めていく。

 

 

 

 

 出発準備も整い、彼はエレンに向けて手を差し出す。

「…じゃあ行こうか、エレン。」

 思いの外、行く気満々の彼を見たエレンは、

(楽しみにしてくれて嬉しいですね…。ワタシはダーリンと一緒に居られればハッピーなんデスけど。)

 と、こちらも内心ウキウキだった。

「ハイ!マイダーリン!!」

 彼の手を握り締めるエレンだった。

 

 

 そして二人は、一路南へ下るのであった。




ご拝読頂きありがとうございました。

とじともでは、ついに山城さんがプレイアブル実装されますが、果たしてこちらに来てくれるのでしょうか…?(考えてはいけない)
出なくても、首を長くして待ちたいものですね。

エレン編のUA、PV数を見るに、多くの方が閲覧されていますので、緊張しながら執筆しているところでございます。
次話タイトルは変わりますが、後編の方もお待ちください。

それでは、また。
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