今回はエレン編 その5をお届け致します。
時系列はみにとじ期間、九月頃になります。
途中、胎動編の10話付近の話が出て来ますので、読まれる際にはご注意ください。
脚注機能の乱発や文量が長くなっていますが、ご容赦ください。
それでは、どうぞ。
ー鎌府女学院 学生寮付近ー
少し前、エレンと一緒に運動するという約束をしていた彼*1。どうやら彼女の方もその時のことを覚えていたらしく、二つ返事どころか即答でOKを出してきた。
そのため、此方も走りやすい格好で彼女を待つ。
「秋も深まり出しているとはいえ、暑さがぶり返してくることも偶にあるのが怖いな…。」
幸いに秋風がすり抜けるため、いきなり暑くなっても体感温度そのものは大して上がらないだろう、とは思った彼。
「ダーリン!お待たせデ~ス!」
そんなことを考えているうちに、エレンがやってくる。普段は伸ばしている髪を束ね、ポニーテールにしている姿が、彼の時を一瞬止める。
(…やっぱ、美人だよな。エレン。)
刀使やサポートに回る少女達とは、異性としての距離は取りたがる彼ではあるが、それとは別に、外見上の彼女の良さも改めて感じさせられる。無論、内面も良いところが沢山あるのだが。
「はぁ~。…待ちマシタ?」
「いや、先に準備運動をしてたところだ。」
「ちなみに、どこを走るのデスカ?」
「朱音様から許可をもらって、折神家の祭殿入口あたりまでなら走っていいそうだ。…とはいえ、滅茶苦茶登るし、おまけにノロの噴出で吹き飛んだ穴の跡がまだ痛々しく残っているしな。あっさり許可が出たあたり、誰も近寄りたがらないんだろ。」
「確かに、あそこなら誰かとぶつかる心配もないデスし、山登りみたいに鍛えられてちょうどいいデスネ。」
「ただ、紫様とかが使われていたルートではなく、遠回りのルートになるな。…この辺は些細な問題だから、大丈夫だろう。」
「では、行きマスか?」
「行こうか、エレン。」
彼が先行するような形で、彼女と共に折神家の敷地の山を走り始める。
ー折神家 祭殿跡入口ー
鎌倉特別廃棄物漏出問題の爆心地となった、折神家の祭殿及び大規模ノロ保管所。
非公式には局長の紫は行方不明、公には病気療養中と発表されているが、紫の生存を知っている彼*2からすれば、何とも複雑な気持ちが湧いてくるのである。ただ、このことを知っているのは管理局内でも少数である。彼も、隣を走るエレンどころか同僚にさえ伝えていない、特定機密だったりする。
話を戻し、エレンと走ってきた彼は、祭殿跡の入口で一旦休む。
「エレン、きつくなかったか?」
「なんとか…、ハイ。」
「ちょっと、その辺の石に腰掛けるか。…ホントはあんまり良くないんだけど。」
「ここは神域ですカラネ。…確かに、ベンチも見当たらないみたいデスから、腰掛けさせてもらいマショウ。」
元からそこに埋まっていたのかは分からないが、ひょこっと地面から飛び出ている巨石に座る二人。囲いなども見当たらないため、ごく普通の石なのだろう。
彼は背中に背負っていたショルダーバッグから、凍らせておいたタオルと、スポーツ飲料入りのペットボトルを取り出す。
「はいよ。タオルとスポドリ。」
その二つをエレンに手渡す。
「アリガトウゴザイマス。…Very cold!身体がひんやりシマス!」
「暑いって予報が出てたからな。」
「ダーリンも使ってクダサイ!」
「俺は平気だ。」
「イイですカラ!」
冷凍室から出して時間が経っていたのに加え、エレンの体温で少し解凍されたタオルが、彼女によって(半ば強引に)彼の首に巻かれる。
「…冷たいな。」
「ホント、ダーリンは控え気味デスネ。」
「付き添わせたのはこっちなんだから、正直これでも足らないくらいなんだが。」
普通の人間なら、ここまでちょっとの運動でも過保護なサポートをやるのはそう居ない。それだけ、彼の異常性というか、気配りというのが強い表れでもあろう。
そうした動きから、彼を少しからかうエレン。
「というか、ワタシはダーリンになら何時何をされても大丈夫って、いつも言っているじゃないデスか。」
「女の子が、そんなことを言うもんじゃありません。…というか、他の男にもこれを言っているのか?」
「No!ダーリンだけですよ。ワタシがこんなことを言うのは。」
つかさず彼に抗議するエレン。
「そもそも、ワタシはこう見えて、意外と身持ちは固い方なのデスよ?」
「エレン、『こう見えて』って言っちまうと自分も認めてるってことになるから、こういう場面ではあんまり使わない方がいいぞ。…俺だからまだいいが、他の奴からなら、何言われるか分かったもんじゃねぇしな。」
「…ンンッ。大体、ワタシがそんなホイホイ男に引っ掛かるように見えマスか?」
さっきの彼の言葉を流し、期待する解答を待つ彼女。
だが、やっぱりというか、自身を低く考える傾向が強い彼にとってみれば、彼女の期待とはズレが出た。
「…う~ん。俺よりもイケメンで文武両道、金持ちで社会的地位が高い奴は、世の中ゴロゴロ居るしなあ。引っ掛からない、とは絶対には言い切れないんじゃあ…。」
「それだけでワタシが引っ掛かると考える男は、基本碌な人間じゃないデース。それこそ、一昨日来やがれ、デス。」
「…取り敢えず、エレンのことを誤解していたのは分かった。すまん。」
「いいんデスよ。それにダーリンが、ワタシ達のことに対して、いろんな便宜や提案をしているのは、ずっと見てきましたカラ。」
ふと、彼は麓の鎌倉市街を見下ろした。
「…改めて見ると、鎌倉の街って結構デカイのな。」
「かの頼朝公がココに幕府を置くくらいには、地理的に強いところでしたカラ。」
「…あの時、俺達はここに住んでいる人達を守れたんだな。」
「そうですネ。…ダーリン、覚えていますか。ワタシ達が折神家に乗り込む前に、ダーリンにした電話のこと。」
「ああ。勿論。あん時は、どうなることかとヒヤヒヤしたぞ。」
「カナミンのあの発想力はスゴイと思いマシタ。」
そう言うと、二人はノロが大噴出したあの夜の出来事を思い出す。
ー三ヶ月前 刀剣類管理局本部 彼の職場ー
舞草の里、及び関係する各所が折神家によって制圧され、美濃関・平城・長船は各校に所属する刀使の帯刀権の剥奪など、事実上の機能停止に陥ることとなった。
職場に一人居た彼は、今しがた戻ってきた、同じ舞草に所属する糸崎から、声を掛けられる。
「○○(彼の苗字)!舞草の状況は!?」
「ちょっと前に、寿々花から各所の資料を貰ったところだ。マスコミなどの民間企業の支援団体を除いたら、無事なのは本部の人間と、鎌府の一部、それと綾小路くらいしか無いな。」
「早希*3は!?」
「捕まった。」
「…クソッ!」
彼が端的な事実を伝えると、握り拳をつくり自分の机を強く叩く糸崎。
「お前の作った強力なファイアウォールのお陰で、本部の舞草の人間は無事だったんだが、三原に関しては長船との通信記録を辿られたらしい。…ここまでやるとは、な。」
「早希は今、どうしている。」
「御刀は剥奪。今は他の捕まった舞草の人間と共に、隔離されているようだ。少なくとも、拷問等の心配はない。」
「そうか…。」
「まあ、高津学長が動く前に手を打てたのは幸いだ。真希達へ、舞草の人間をぞんざいに扱わないことを保障してもらったしな。…糸崎、しばらくは辛抱してくれ。」
「ああ…。早希…。」
糸崎にとっては、大切な彼女である早希を捕らえられたものの、現状では此方から打てる手は限られているため、糸崎を安心させることはこれくらいしか出来ないと思った彼。
「戻ったわよー。」
「○○さん、糸崎さん、お疲れ様です。」
そうこうしていると、同僚の里奈と姫乃が戻ってくる*4。
「おお、二人共お疲れ様。」
「中島、水沢、戻ってきたのか。」
「全く、こっちも大変よ。暴れる人も居たから、だいぶ苦労したわよ。」
「そうでしたね。」
里奈の後ろで苦笑していた姫乃。
彼女の顔を見るに、その大変さがひしひしと伝わってくる。
そんな時だった。
突如、里奈の体が三重になる。
「えっ、何これ!?」
当人も訳が分からず、驚く。
当然、彼も驚き、周囲に目をやる。
「こうなっているのは中島だけか!?」
「私は平気みたいです。」
姫乃は、普段通りで何も異常はなさそうであった。
(この現象、…まさか!)
「糸崎、これってもしかして。」
「…奇遇だな、俺も同じことを考えたよ。」
「二人とも勿体付けず、何なのか答えなさいよ!!」
慌てる里奈。
この現象の答えを、静かに合わせて彼女に答える男二人。
「「大災厄の前触れだ。」」
その瞬間、里奈と姫乃の表情は凍り付いた。
しばらくして、里奈の身体は元通りになった。
「戻った。…んで、どういうことなのか、説明してもらえるかしら?」
「その前に、今の現象を俺と糸崎がなんで知っていたのか、説明する必要があるな。」
彼が、こう切り出す。
「どういうこと?」
「おい、まさか。」
「糸崎、遅かれ早かれ分かることだから、今言っても変わらんよ。…それに盗聴機やカメラがないことは、何度も確認済みだしな。」
「…しゃーねえか。しかも緊急事態が迫っているしな。」
糸崎に頷く彼。姫乃は黙って聞いていた。
「…実は俺と糸崎は、その…。…舞草の構成員なんだよ。」
「えっ、そうだったの?」
「そうなんですか。」
女性陣のリアクションは、彼が思っていたよりも薄かった。
「…なんか調子狂うな。」
「え、いやだってねえ。…なんか事情があったんでしょ?」
なんだかんだ付き合いも長いので、何となく二人のことを察する里奈。
「それにさあ、私や姫乃に今まで何も言わなかったことを思うに、私らを巻き込まないようにしてたんじゃないの?」
「…さすが、彩矢*5と親しかっただけあるな。まあ、確かに彩矢にもこれは言ってないんだけど。」
「小池さんって、この間お会いした*6方ですか?」
「水沢も彩矢のことを知ってたのか。…で、取り敢えず話を戻すと、舞草で大災厄の真実を聞かされたんだよ。S装備開発の第一人者から。」
「第一人者って…、まさかリチャード=フリードマン博士のこと?」
「話が早くて助かる。あの人や、紫様の妹である朱音様から、大災厄の隠された真実を聞いたわけだ。」
「俺は◯◯より後に入ったから、それ以降だな。」
「なるほどねぇ…。」
「そういうことだったんですか。」
里奈と姫乃は、彼の説明に少し理解を示した。
「んで、大災厄の真相なんだが…。」
と、ここからは二十年前から現在に至るまでの説明を女性陣にしていく。
「…とまあ、こんなところか。」
「で、さっきの私の幽体離脱っぽい現象は、隠世で何かマズいことが起きているってことね。」
「ああ。…だが、朱音様はなんで投降するおつもりなのかね…。それこそ、かなりマズいことは朱音様も分かってらっしゃる筈なんだが。」
「う~ん。◯◯、俺にも分からん。」
「では、折神紫様を捕らえてしまえばいいのではないですか?」
普通の人間なら、そう考えるのは自然である。
「…簡単に捕らえられるようなら、最初から舞草なんて多分創ってないと思うぞ。」
「あー、まあ、そうね…。」
刀使である里奈は、その理由を何となく察した。
「それにしたって、どうするわけ?まさか、アンタ達二人で紫様に挑むつもり?」
「それはムリゲーだわ。中島、お前も中継で恐らく見てたろ?姫和の一の太刀が防がれてたの。…なら、尚更俺が挑んだところで、瞬時に肉塊へ変わるだけだ。」
「…とはいえ、大災厄は迫っているし、どうすりゃいいのか…。」
「「「「う~ん…。」」」」
一同頭を抱えたその時だった。
ピリッ ピリッ ピリッ
「ん?悪い、電話だ。」
彼の業務用携帯に掛かる着信音。
「誰からなんだ?」
「……糸崎、メモ用紙とペン。」
「何でだ?」
「エレンからだ。」
「!?…分かった。」
急いで、彼の机から言われた物を手渡す糸崎。
「中島、水沢。少しの間だけ、静かにしてもらってもいいか?」
「えっ、ええ。」
「了解です。」
そして、彼は通話ボタンを押す。
「もしもし、エレンか?」
『Hi!ダーリンは無事デスか?』
「なんとか脱出はできた*7。エレン達は?」
『ワタシ達なら、まだ潜水艦の中デース。朱音様も含めて、乗れた人は皆無事デスよ。』
「そうか、良かった。」
『で、ダーリン。今、ワタシ達のことはどれくらい世間に広まってマスか?』
「朱音様が横須賀で投降する、という程度だ。…朱音様の気は確かか?」
『…実は、ソレにはちゃんとした理由がアリマ~ス!』
「…だよなあ。朱音様はそこまで考え無しの方ではなかったか。」
思わず、安堵の溜め息を漏らす彼。
『ダーリン、今からのコトを説明シマス!朱音様が横須賀で演説をなさいマスが、その時にS装備射出用コンテナを今乗っている潜水艦から、発射シマ~ス!!』
「うん、……うん!?」
一瞬、エレンが何を言ったのか、理解できずに唸る。
「コンテナを射出する、だと!?」
『ハイ!その中に、ワタシ達六人を載せて、折神家に突入シマ~ス!』
「…俺の耳は正常だよな?」
それ自体は非常に突飛なアイデアではあるが、今舞草の置かれた状況をひっくり返せる、一発逆転のチャンスにも聞こえた。刀使であるエレン達が突入すれば、紫…いやタギツヒメを討ち取れる最後の機会になるだろう、とも。
「その口ぶりなら、エレン、お前も飛んでくるんだろ?」
『カナミンやヒヨヨン、サーヤにマイマイ、薫も皆行くって言ってマス!なら、ワタシが付いて行っても、問題アリマセンよね?』
彼女はこう言っているが、頭脳明晰で計算高い彼女が、何の打算もなく付いていくとも思えなかった彼は、敢えて理由を詳しく聞かなかった。
ただ、当然ながら懸念はあった。
「エレン、怖くないのか?」
『何がデスか?』
「…もしかしたら、これから史上最強の大荒魂と戦って、命を落とすかもしれないんだぞ。」
『……ソウ、デスね。』
「なら、」
『デモ。』
彼が言葉を続けようとした途端、彼女に遮られる。
彼女は続けた。
『―ダーリンなら、どんなコトがあっても、絶対にワタシ達を助けに来てくれますよね?』
「!?」
それは、相手が絶対的に信頼を置ける人間でない限り、発せられる筈のない言葉だった。
『だから、ワタシ達は安心して折神家に向かえマス!』
「……買い被り過ぎだよ、エレン…。」
『では、ワタシ達は準備がアリマスから、ここで電話を切らせてもらいマース。』
「…エレン。」
『デハ、また後で会いまショウ!!…I believe you, because I love you.』
最後の小声の部分は、残念ながら彼の携帯の方のノイズが酷くなり、彼の耳には殆ど届かなかった。
そうして、彼女との連絡は絶たれた。
無機質な終了音声が流れ、終了ボタンを押す彼。
「◯◯…。」
「―糸崎、中島、水沢。これより、ウチの部隊は本部の指揮権から離れ、独断専行でエレン達の突入を支援する。それでもいいか?」
エレンの言葉を聞いて、彼女達が絶対に生きて帰れるようにしようと決意した彼。同僚に無理強いはさせられないので、自身に賛同するのか確認を取る。
「…俺に異存はない。元より、早希が捕らわれたままで黙ってられっか!」
「私も構わないわよ。…失敗した時は末代まで呪ってやるけど。」
「…尚更、失敗できんな。こりゃ。」
思わず吹き出す彼。
「水沢、お前はどうする?」
「…聞いてしまった以上、私も見過ごす訳にはいきません!何が出来るか分かりませんが、私にも手伝わせてください!」
「…ありがとな、水沢。」
この中では此方の事情に一番関係ないはずの姫乃も、彼に協力すると言ってくれた。
同僚の意思確認も終わり、彼らはエレン達が折神家に突入し易い状況を作り出すべく、残された短い時間で準備を始める。
一方、通話を終わらせたエレンは、薫に声を掛けられる。
「おい、エレン。アイツは何だって?」
「ダーリンからは『命を落とすかもしれないのに、それでも行くのか?』と訊かれマシタ。」
「まあ、そう訊くのは自然だろうな。…んで、お前は何て答えたんだ?」
「『ダーリンなら、どんなコトがあっても、ワタシ達を絶対に助けに来てくれますよね?』と返しマシタ。」
「…それは、大丈夫なのか?オイ。」
「大丈夫デスよ、薫!…ダーリンなら、きっとワタシ達を助けてくれマスから。」
その顔は、真剣な眼差しで彼女に向けられていた。
「ふっ、すっかりアイツにゾッコンだな。エレン。」
「あっ、薫!その顔はどういう意味デスカ!?」
「いや、何でもねえよ。」
「ムウ~。」
(…頼んだぞ、◯◯。)
エレンが先程まで話していた彼に、突入作戦の成功支援を願う薫。
その後、エレン達六人はS装備を装着し、潜水艦のVLS*8ハッチ内にある、S装着射出用コンテナに乗り込んでいった。
そして、六人をそれぞれ載せたコンテナは、横須賀港の潜水艦上にて朱音が演説を行う中、鎌倉へと打ち上げられていく。
日本を、世界を守るべく、少女達は超高速で舞い上げられた。
ー現在 折神家 祭殿跡入口付近ー
「思えば、色んなことがあったなあ。」
「そうデスネ。」
「そうそう。エレンが折神家に突入する前にした電話なんだが、最後に言ったことがよく聞き取れなくてな。アレ、何て言ったんだ?」
「フッフッフ。ソレは秘密デ~ス!」
「えーっ!?そりゃねえよ。」
「だって、聞いていなかったのが悪かったんじゃないデスか?」
「いや、そん時は何故かノイズが酷くて聞き取れなかったんだよ。」
「フ~ン?じゃあ、そういうコトにしておきマ~ス。」
と、ジト目で此方を見てきたエレン。
実際の彼女の胸中は、彼の考えていたこととは少し違うものではあったが。
(…あの時に言ったコト。ダーリンが聞いてなかったのはgoodだったのか、badだったのかは分かりマセンが、聞こえてなかったのは、少し残念デス。…でも、言うなら、ちゃんとした時じゃないとダメみたいデスネ。)
ガッカリ半分、改めて告白するチャンスが出来たと前向きに捉えるのが半分といったところか。
(まあ、ダーリンのことを諦めたワケでもないデスし、時間はまだまだアリマスカラ。)
今の微妙な距離感に満足しているわけではないが、彼の性格を考慮し、まだ仕掛ける時ではないと思った彼女。
「さてと、休憩もそろそろにして…。走るか。」
「ハイ!…ワタシ、負けませんカラ!」
「おっ、おう。じゃ、先に学生寮前まで辿り着いた方の言うことを聞くということで。」
「今の発言、取り消しはナシ、デスよ?」
「当たり前だろ。…それじゃ、よーいドン!」
彼の合図で、両者坂を一気に下り始める。
夏と秋の空気が混じり合う、初秋の昼下がりのことだった。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
感想等ございましたら、お気軽に感想欄・活動報告へご投稿頂ければと思います。
一、二話ほど番外編を挟みまして、可奈美編に戻ります。
それでは、また。