刀使の幕間   作:くろしお

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どうも、くろしおです。

投稿一時間後(執筆当時)には『とじらじ!生』の第2回放送が始まりますが、今放送のテーマはとじとものサポートメンバーについて、だそうです。
ちなみに、とじともをやられている読者様は、どんなメンバー(達)が好みでしょうか?
(余談ながら、筆者の好みのメンバー数名は、すでに本作でも登場しています。)

前置きが長くなりましたが、今回はエレン編その6 後編です。
時系列は『親友の助言』から丸々一日後になります。

それでは、どうぞ。


⑩ ファイナル・アプローチ

 前日にそれぞれの親友を頼った二人だが、その日は結局見回りと聞き込み調査で、一日が終わってしまった。無論、見回りを兼ねた観光もちょっとばかしやってはいたのだが、いい雰囲気なんぞになる前に、狙いすましたようなタイミングで定時連絡だったり、地元の人から声をかけられたりされ、なかなか大変な一日であった。

 ホテルに戻り、報告書などの作成を終えたら、あまりの疲労で彼もエレンも早々に寝入ってしまった。

 翌日には、増派されてくる刀使やサポート要員と合同の荒魂討伐作戦もあるため、早めに寝ること自体はよい傾向ではあったのだが。

 

 

 

 

 ー群馬県渋川市 某山間部ー

 

 増派されてきた部隊と合流した彼とエレンは、事前の作戦会議での打ち合わせどおり、荒魂が居るとされるエリアで共に展開していた。

「出てこないデスネー。荒魂。」

「そんなホイホイ出てきてたまるか。…大人しくしていてくれれば、いいんだがなぁ…。」

「ダーリン、それフラグデース。」

 一昨日の空気とは打って変わって、会話内容もいつものものに戻っていた二人だが、彼はともかくエレンの方は今回の荒魂討伐で決めていたことがあった。

 

(昨日薫と話して、ようやく決心がつきました。…ダーリンの考えを私の行動で変えてみせます。)

 薫との話をつけた際に、自分がリスクを背負う覚悟を固めたのである。

 

 元々の彼の戦闘スタイルは、予め決められた後方支援のラインギリギリまで荒魂近くに寄り、そこから銃撃などの支援攻撃を行う。このスタイルのメリットは、荒魂の行動が見えるため次の攻撃手順を考えやすいことや、もし刀使が戦闘不能に陥って撤退困難な状況になった際に、即座に救援へと向かうことができる。当然デメリットもあり、写シが張れる刀使ではないため、攻撃を受けた際には大ダメージを負いやすく、死亡率が高くなる。また、それだけ前に居るということは味方からの誤射の可能性も高まる。

 特に指揮も度々やるような人間ならば、普通は後ろに下げるべきなのだろうが、兵法の原則を無視してでも前に立つというのは、彼が刀使達を見捨てないという覚悟の表れでもある。…最も、彼の周囲の人間はいつも気が気でなかったりするのだが。

 

 そのため、今回エレンが取ろうと思った方法は、彼と荒魂との中間距離での応戦であった。

 基本的に刀使は、荒魂と間合いを詰めて御刀を振るうために、近距離で攻撃する必要がある。これを中距離でこなそうと考えたわけである。無論、今回の討伐に参加した刀使達にはこのあたりの話をしている。そして、最終的にトドメも彼女に任せてもらえるように根回しした。…理由を聞いた刀使達は皆、納得したようであったが。

 

 

「しかし荒魂も、色によっては周囲の風景に溶け込んでいたりするから、困りようだな。特に火山活動が盛んなこの地域だと、黒い色の荒魂は隠れやすそうだな。」

「それを見分けるのが、スペクトラムファインダーなのデスがね。…おっと、どうやらお出ましデスね。」

 他の特祭隊員によって、空に向けて打ち上げられた白色信号弾が、二人の視界に入る。

「スペクトラムファインダーにも反応あり、か。さて、これの準備も出来たところで…。」

 いつもの黒コンテナから、対物ライフル型の対荒魂用拘束ユニットを組み立て終える。

「行きますカ?」

「ああ。…それにしても、山間部でライオットシールドを持たせるとか鬼かよ。今回の指揮官、普通の特祭隊員へ負担を増やしてないよな?」

「まあ、何か考えのあっての事デショウ。今回の指揮官はダーリンに鍛えられた人でもありますカラ、心配してマセンよ。ワタシは。」

 

 実のところ、この盾を持っているのは彼だけだったりする。これもエレンの策のうちである。彼の後方からの誤射を避ける目的だ。

 

「…スペクトラムファインダーだと、端末情報も連動しているからありがたいが、地形図が無いのは痛いな。これじゃ、拘束ユニットを置く場所取りができない。」

「ダーリンのいつも持っている銃は使わないのデスか?」

「ぶっちゃけこれは気休め程度なものだ。…ああ、これなら対戦車ミサイルでも持ってきておくべきだったかな。」

 

 抱えてぶっ放せるそれらの方が楽だったと思ったが、これらを荒魂用に向けるにはまだ、ミサイル着弾時の残量燃料の引火に伴う、爆発的な超高温火炎に耐えきれる性能の冷凍材と耐熱容器が出来上がっていないため、現状ではないものねだりで言っても仕方ないことくらいは理解している。

 

「それこそ、外した時が大変だと思いマスガ…。」

 苦笑するエレン。彼なりのジョークのつもりだったのだろうが、彼女からすれば、目の前の少年なら涼しい顔をしてやりかねないとも思えた。

「…ま、自分の身は自分で守らないとな。」

「何かあった時は、ワタシがゼッタイ守りマスから。…それだけは忘れないでおいてクダサイ。」

「なるべくエレンの力は借りないよう、努力するさ。」

(…ダーリン。今に見ていてクダサイ。ワタシの答えをactionで示させてもらいマス。)

 荒魂へ向けて歩き始めつつ、荒魂に対しての大まかな動きを脳内で固めるエレン。

 討伐合流までは、もうまもなくであった。

 

 

 

 

 既に先に荒魂と対峙していた刀使達は、エレンの到着までの間に所定の位置まで荒魂を誘き寄せる。

「古波蔵さんは!?」

「もうすぐ着くらしい。もう一分ほど踏ん張れるか!」

「何とか!…あ、来ました!」

 白とオレンジを基調とした陣羽織風の長船の制服を靡かせ、誘導していた刀使達に合流するエレン。

「皆サ~ン、nice fightデシタ!ここから先は、ワタシが相手になりマース!」

 熊型の少し大きめな荒魂が、彼女の前に立ちはだかる。

 

「ダーリン、聞こえマスか?」

『ああ、よく聞こえる。』

 

 スペクトラムファインダーに積まれた通信機能を駆使し、彼との連携を図る彼女。今回彼はエレンから、通信を受信して合図があるまでは撃つな、という指示を受けた。

(…エレン、一体どういうつもりなんだ?いくら金剛身を最高レベルで扱えるっていっても、もし写シを剥がされたら長くは保たないんだぞ。)

 そう思う彼ではあったが、それを分からぬ彼女ではないと考え、口を告ぐんだ。

 

 

 

 

「サテ、やりまショウか。」

 《越前康継》を手に、写シを張る彼女。

「ハアアァァーッ!」

 不意にボーンと飛んでくる、荒魂の尻尾に当たらないよう攻撃を躱しつつ、防戦一方の現況を崩す弱点を探す。それをさせまいと、荒魂の方も暴れ回る。

 

 

 グワアァァァァーーッ!!

 

 

「グッ、しぶといデスネェ!」

 

 彼女の流派であるタイ捨流は、対人戦においては体術を交えたその剣術が脅威的に発揮されるのだが、対荒魂戦では攻撃よりもむしろ防御の方で役に立つ。特に、刀使のなかでも飛び抜けて金剛身のレベルが高い彼女の場合では、タンク役として荒魂の攻撃を引きつけつつ、それを凌いでいくスタイルの方が本来は好ましい。

 だが、今回は敢えて超攻撃型のスタイルに徹していた。他の刀使へ啖呵を切った手前なのか、攻撃は最大の防御と言わんばかりに連撃を重ねる。

 

 

「…凄い。これが、あの鎌倉の英雄の力なの?」

「ぼーっと見てる場合か!彼女の援護に回れ!」

 周囲の刀使達も、エレンの様子に思わず見入っていたものの、意識を戻して攻撃を支援する。

 

 

 

 

「…そろそろ、weak pointが見つかってもいいハズなのデスが…。」

 戦闘に加わって五分。この熊型の荒魂の弱点は、なかなか見つからない。更に言えば、御刀ですんなり斬れないほどに硬い装甲が、その捜索を妨げる。

 ここで彼女は、一つ賭けに出る。

 

 年長の刀使に、ある依頼をする。

「スミマセ~ン!ワタシを上に打ち上げてもらってもよろしいデスか?」

「えっ、古波蔵さん。何を言って…」

「お願いシマス!」

 有無を言わさぬ圧の笑顔で、年長の刀使に頼む彼女。

「…分かりました。」

「バレーのレシーブの要領でお願いシマス!そこから、八幡力で蹴り上げマスから。」

「あっ、はい。」

 案に理解はできるものの、そんな簡単に上手くいくのかとは思った、年長の刀使。

 

 準備が整うと、エレンは言った通りに高だかく空に上がっていった。

 

 

「なっ!エレンが空を飛んでいるだと!?」

 対物ライフルが発射できる配置に就き、双眼鏡で荒魂と戦うエレン達を見ていた彼。

 まさか、荒魂の攻撃を受けてその反動で打ち上げられてしまったのか、と思い焦る。

 だが、上空で彼女が捻る姿を見て、そうではないことを知る。

「…よかった、まだ大丈夫か。でも、連絡は入ってないな。…何か、考えでもあるのだろうか。」

 と、僅かに隙ができた時だった。

 

 

 

 

 突如、荒魂が地面を思いっ切り踏みつける。その際の衝撃でできたクレーターから、軽自動車サイズの巨石が、放物線状に彼の居る場所へ目掛けて飛んでくる。

 

 

 

 

「げっ、マズい!」

 みるみるうちに、巨石との距離が迫る。

 あんなものが直撃したら、間違いなく即死は免れない。だが、避けるにはあまりに距離が無さ過ぎた。

 

 

 

 

(すまん、エレン。大口叩いていた結果がコレだ。…バカ野郎だと、罵ってくれ。)

 どう足掻いても避けきれないことを悟り、目を閉じた彼。過去から今までで、彼女を散々泣かせ過ぎたという後悔はあったが、それを謝ることはどうやら叶わなかったようである。

(死ぬ間際に見た光景が、石に潰される前の空だというのもな。…俺の命も、ここで最後か。ありがとう、エレン。)

 

 

 

 

 ヒューン

 

 

 ドドーン

 

 

 

 

 そして巨石は、轟音と激しく舞う砂塵を伴い、彼の居たあたりへと落着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………。…あれ、どこも痛くないぞ。…あ、そうか。痛みを感じないほどに、すぐ死んだのか。良かったのか、悪かったのか、だな。)

 走馬灯を観ることなく、それほど早くに絶命したのかと思った彼。

 死に逝こうとしていた彼からすれば、そんなものは些細な違いでしかないのだろう。

 

 

 だが、彼の耳には、まだ音が届いていた。

『…ン!…ダーリン!』

(……?変だな、何か聞こえる。死んだ筈なんだが。)

 

 死んだ者がどうなるのかなどは、普通分かるはずもない。生者はそれを知ることができないからだ。

 しかし、彼もこれには違和感があった。明らかに、体が、脳が震えるのである。死んでいるならば、こんなことはありえない。

(…まさか、俺は生きているのか?)

 その答えは、突然瞼を開かれた際の光景で分かった。

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!しっかりしてクダサイ!ダーリン!」

 

 彼の陣取っていた場所へ巨石が落着する直前、同じく地面への降下コースを取っていたエレン。彼女は自身の体を金剛身で守りつつ、地面への落下軌道を弄りながら、彼と巨石が接触するわずか数m手前で《越前康継》を振り下ろし、真っ二つに巨石を砕き割った。

 それは正に、紙一重の芸当だった。巨石は彼の両脇ギリギリをすり抜け、彼の後方至近に落ち砕けた。

 

 

「ダーリン!目を覚まして…。…お願いデスから!」

 直撃は免れたはずだが、どうやら彼の体は死んだと思い込んだらしく、一切の反応を示さなかった。…一ヶ所を除いて。

「…心臓は…、…動いてマスね。…少し、刺激を与えた方が良いのデショウか?」

 心臓が動いていても、瞳孔が開いていた場合、致命的な身体損傷がある可能性が捨てられない。そう思って、エレンは彼の両瞼を指で上げたのである。

 

 

 

 

 差し込んだ光がまだ視界を包んでいた時に、一部の範囲が暗く見えたため、誰かが傍に居ることは分かった。その誰かが、彼のことを大切に想ってくれている少女であることも。

「……エ、…エレン。」

「ダーリン!気が付きましたカ!?」

 横たわっていた彼が意識を取り戻した際、視界に捉えたのは、今にも泣きだしそうな彼女の顔だった。

「……ゴメンな。…また、泣かせるところだった。」

 涙袋から零れそうになっていた彼女の涙を、自身の指で拭う彼。

「…言ったでしょう、アナタを絶対に守るって。…信じて、もらえマシタか?」

 その彼女の表情は、普段此方へ向けるにこやかなものというよりも、ただ純粋に、優しく落ち着かせるような声音で、彼に微笑みかけてきたものであった。

 

「……充分過ぎるくらいに、な。…俺もバカだよ。結局、ずっと意固地になってたのは、ついエレンの好意から逃げるための、糞みたいな方便でしかなかったのかもな。」

「ダーリン…。」

「…やっと目が覚めた。エレン、話は全部後だ。まず、先にあの荒魂をぶっ倒す。俺に指示をくれ。」

 概念的な意味での、今までの彼はつい先ほど死した。これでようやく、彼女と向き合う決心がつく彼。彼女が欲しいサポートが出来るように、彼女の助けを借りつつ立ち上がる。

 

「OK!…ダーリン、あの荒魂の頭へ目掛けて、何発かその冷凍弾をshootしてクダサイ!」

「…分かった。アレを倒す方法を考えているんだろ?」

「Hi!ワタシに、任せてクダサイ!」

「ならエレン、全部君に任せる。…必ず、無事に戻ってこい!」

「Yes!My darling!」

 ここにきて、本当の意味で彼女を、いや刀使を頼った彼。

 エレンの方は彼の先ほどの言葉を聞いて、普段以上の笑顔で、かつパフォーマンス能力が大幅に上がっていった。

 

 

 

 

 その後、エレンと今回の討伐指揮担当者との調整が終わり、各刀使や特祭隊員の再配置が行われる。

 エレンの指示で、無事だった対物ライフルを置き直して、荒魂の頭部に照準を合わせる彼。

「エレン、準備が終わったぞ。」

『ダーリン、こっちも準備できマシタ。―お願いシマス!』

「了解。」

 肩に力が入らないようにふ~っと息を吐き、引き金に掛けていた右人差し指を、手前に強く押し込む。

 

 

 

 

 ダーン!

 

 

 

 

 まず一発目が、荒魂の頭部、人間で言うところの顔面付近に着弾する。

 荒魂に反撃の隙を与えぬよう、対物ライフルではあまり行わない高速連射を立て続けに行う。

 五、六発が荒魂に叩き込まれた頃、再びエレンが上空から荒魂目掛けて御刀を振り落とす。目標は荒魂の頭部にあった、硬い外殻を繋ぐ人のつむじのような渦を巻いた場所。恐らく、ここに御刀を差し込めば斬り祓うことができると、エレンはそう考えた。

 

 

(暴れるアナタには申し訳ないデスが、ワタシとダーリンの関係を引き裂くようなら容赦シマセン!!)

「トウッ!セリャァァァーッ!!」

 急速冷凍弾により動きを縛られた荒魂は、容赦なき怒りをぶつけるべく突っ込んでくるエレンへ、なす術なく敗れる。

 この日、彼やエレン達を困らせた荒魂は静かに崩れていき、ノロへと還っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 ー群馬県渋川市 物聞山山頂ー

 

 荒魂が祓われた後のノロの回収も終わり、現場を他の刀使や特祭隊員に任せて、ホテルから荷物を引き上げた彼とエレン。

 渋川を離れる前に、二人は伊香保ロープウェイを利用して伊香保温泉街を見下ろせる展望台まで昇る。

 ここは晴れていれば、赤城山や榛名湖などがはっきり見えるのだが、今日は生憎の曇天であった。

 

「あちゃ~。こういうところは晴れている時の方がいいんだけどな。…悪いエレン、あまりいい景色は望めなさそうだ。」

「イイですよ、ワタシはアナタと一緒に居られるなら。ソレが簡単なようで、一番難しいコトですカラ。」

 帰る前に伊香保周辺の景色でも見て行こうかと考えていた彼からすれば、彼女に要らぬ負担を掛けさせたのではないかと思っていたのだが、エレンはそうは思っていなかったようである。

 

 展望台にはベンチが複数設置されており、そのうちの一つに腰掛ける。

 制服ではないため着る服を色々と弄れる彼とは異なり、彼女の方は長袖の制服を着ているとはいえ、山頂の標高が1,000mほどともなれば、上はともかくスカートと左右非対称のソックスである下側は、秋深い今の季節ではかなり寒さを伴うものであろう。

 少し身震いしたように見えた彼女に、声を掛ける。

「エレン、冷えるか?」

「…ハイ。ちょっとだけ、デスけれど。」

「これ、着てくれ。」

 彼は、羽織っていたベンチコートを彼女に掛ける。彼よりエレンの方が少し身長は高いのだが、座っている状態だと彼女の服を着ている範囲全てがコートで包まれる。コートからは、先ほどまで着ていた彼の温もりが伝わる。

「ありがとうございます、ダーリン。…温かい。」

「それと、これも。手を出してくれ。」

「?…コレは、ココア、デスか?」

 自販機でよく売られている、ホットココアの缶が彼から渡される。

 触れてみると、缶は熱々ではなく少し時間が経ったくらいの温度であった。

 彼が先に缶を開けるので、エレンもそれに倣ってプルタブを引き、フ―フーと缶の中身へ息を吹き掛けつつ口を付ける。

「…すごく、ポカポカします。」

「それは良かった。…景色を見ながらココアを飲むのも、悪くないな。」

 本当だったら、エレンにはコーヒーの方が良かったのだろうが、彼女の好みとして砂糖の有無が彼には分からなかったため、無難にココアという選択になった。…彼がコーヒーを飲めないのは、どうにもならなかったようである。

 

 

 

 

 それから二人で景色をぼーっと見回す、そんな静かな時間が流れたものの、いよいよ彼が口を開く。

 周囲に人影は、なかった。

「…エレン。気持ち的に落ち着いてきたから、色々と言いたいことを言わせてもらう。」

「ダーリン?」

「…エレン、今まで本当に悪かった。さっきの討伐の時もそうだったが、命張っているのはエレン、いや刀使も同じなのに、肝心なところで信用していなかったのは、むしろ俺の方だった。」

「…気にしないでクダサイ、とは言いませんが、さっきの荒魂討伐の時も、ダーリンの力が無かったらあの暴れん坊を抑えることができなかったと思いマス。だから、ワタシ達とダーリン達は持ちつ持たれつ、という関係が一番イイのデスよ。」

「ああ…。…つい、盲目的になってしまっていた。」

「ワタシは、アナタが無事ならそれでイイのデス。一生懸命だった人に、とやかく言うつもりもアリマセンから。」

 過去がどうであれ、彼の行動は理解できた以上、彼女もそれを咎める気はなかった。

 

 しかしながら、彼女も言っておくべきことは言うタイプの人間である。

「…で、覚えてますカ?以前ワタシに、『刀使やサポート要員の娘を恋愛対象としては見ない』と言ったコトを。」

「アッ、ハイ。」

「…その考えは、変わりましたカ?」

「……。」

 少し長い沈黙が彼から流れたが、観念したように息を吐き出すとエレンの顔を見る。

「―元刀使の親友からの言葉で、ハッとさせられたよ。…意識が戻った時に言ったように、避けてきたのは関係が変わるのを恐れてたんだろうな。俺は。…辛い思いをさせたくない、したくないっていうのは本心ではあったんだが。」

「だから、あれだけワタシのことも避けていたのデスね。…デモ、それで泣きを見たgirlもいたのは間違いないと思いマスよ。」

「だからこそ、その考えを変えるのに躊躇したのはある。…最も、今日の戦闘でその考えは死んだと思ってくれればいい。現に、エレン、いや刀使にまた命を助けられたんだ。その彼女達の想いを遮ることを、今後はしない。」

「全く、遅すぎデスよ。…ンンッ。じゃあ、言質も取れマシタし改めて。」

 そう言うと、急に立ち上がる彼女。クルッと振り返ると、彼の顔を見据えて勝気な表情を見せる。

 

 

 

 

 

 

「ワタシは、アナタのことが…大、大、ダイスキデス!!―どうか、ワタシと付き合ってクダサイ!!」

 

 言質が取れた途端、抜け駆け的に告白を行うエレン。

 だが、彼女の今までの苦労を考えれば、もしここで言わなければ他者に先を越される。彼は知らないかもしれないが、女子同士のネットワークは広く伝達も速いのである。

 

 

 

 

 

 

 彼は長い逡巡の時を経て、再度彼女へ問い質す。

「エレン。敢えて聞きたい。本当に、俺でいいんだな?こんな面倒くさい男でも。」

 彼からの言葉に少し驚いたようであったが、彼女はすぐ笑顔でそれに応えた。

「ハイ!もちろんデス!」

「…分かった。」

 そう言うと彼も立ち上がり、彼女に歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迷いない動作で彼女の身体を抱き寄せ、自身の唇を彼女の口元に繋ぎ止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 持ち前の頭脳で様々な策を張るエレンも、この彼の大胆な行動にはかなり驚かされた。事実、彼女の目はビックリしたように見開いていた。

 だが、同時に彼の好意を感じ取れたことで、ゆっくり目を閉じた。

(ズルいですよ、ダーリン。…こういうグイグイくるところも、もっと好きになってしまうじゃないデスか。)

 

 

 

 

 

 

 二人が口付けを交わす時間は長かったものの、彼からの回答は言うまでもなかったことは付け加えておく。

 ともあれ、苦難の道のりを辿った彼女の歩みは、この時ようやく報われるのであった。




ご拝読いただき、ありがとうございました。

今話にて、メイン六人の話からは一旦離れます。
次回から数話ほど番外編を挟みまして、親衛隊・紫編の執筆を進めます。
現在、結芽編についてはルート分岐方式での進行を考えております。…どうにかこうにか形にはしていきますので、投稿までお待ちいただければ幸いです。

感想等ございましたら、感想欄・活動報告へお気軽にご投稿頂ければと思います。

次回は番外編になります。
それでは、また。
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