ダークエルフの弓使いにショタな弟子ができました 作:あじぽんぽん
アルテの鎧はハイレグビキニアーマー
イメージは黒獣というエロゲのアレです(二次書く人いないかなぁ)
本当に申し訳ない、今回はコメディ要素なしなんだ
その村の状況を一言でいうのならば『運が悪くて良かった』だろうか?
辺境の小さな村は魔物の襲来に備えて早朝から緊張に包まれていた。
罠を設置するために狭い土地を走り回っていた少年マオは、村はずれの柵の外に人の影があることに気づいて足を止めた。
村人ならば注意する必要があるし、魔物ならばすぐにでも知らせる必要がある。
微かな緊張に喉が鳴る……しかし音を立てぬように近づくと誰かはすぐに分かり、マオは息を吐きながら構えていた弓を背中に戻した。
その人は世の些事など知らぬとばかりに空を飛ぶ鳥をのんびりと眺めていた。
それは少年の育て親で武術の師でもあるダークエルフのアルテであった。
気が抜けたマオは彼女の姿を何となくで観察しだした。
女性として背は高いが弓を持ってたたずむ姿は美麗である。
風に流れるままの白銀色の髪は淡く光り、まるで月の明かりのようだ。
丸みを帯びた体は女としての弱さとたおやかさを持っているのに、同時にしなやかに地を駆ける獣の力強さも兼ね備えている。
褐色の肌と笹のような長い耳は、月の女神の加護受けた種族の証。
いつもは着けているマントは外しており、アルテの肢体は眩しさを増していく日の光の中で艶やかに輝いていた。
長く整った手足をおおうのは竜の皮で作られた丈夫なブーツとグローブ。
胸と股間だけを隠す鎧は種族の戦装束であり『如何なる者も我らに触れること叶わず』という傲慢で誇り高いダークエルフたちの自信の現れだと言われていた。
アルテと長くいるマオだが彼女以外のダークエルフを知らない。
ただ、アルテが深い怪我を負う姿など今まで一度も見たことがなく、彼女の肌に触れるのは至難の業だということはよく理解していた。
それはそれとして異性を意識するようになった近頃のマオとしては、育ての親とはいえ匂い立つ肉体を窮屈に締めつける鎧は目の毒であり、また扇情的な姿を無防備にさらけだす彼女に対して複雑な心境にもなるのだ。
師のことを見る男たちのだらしなく緩んだ表情を見れば間違った認識ではないとは思うが、そんな者たちを不快に感じるのもマオの立場と潔癖な年頃としては致し方のないことだろう。
背をむける彼女にマオは歩み寄る。落ち葉を踏みしめる湿った音が鳴った。
矢筒を背負うアルテの褐色の体――ほっそりとしているのに女性らしく程よい肉のついた腰回りと、大きいが引き締まったお尻が目に入る。
鎧パンツの後ろは紐形状で、高い尻肉が作りだす深い谷に食い込んでいるので裸に近い。
むしろ裸よりも惹きつけられるモノがあり、赤子のときからアルテと一緒にいるマオとはいえ思わず見入ってしまうことがあるのだ。
「マオですか?」
「ひゃ、ひゃい! そ、そうですお師匠さま!」
「ふふ、どうしたのですか、そんなに驚いて」
マオが動揺を収める間もなく、アルテがゆったりとした動きで振り返った。
彼女の涼しげな双眼は透き通る氷の蒼で、夜の精霊もかくやという神秘的な顔立ちと湖畔を思わせる静かな雰囲気は、語彙の豊富ではないマオには美しい以外の言葉が見つからない。
少年の赤い瞳に映るアルテは三百を超える年を生きているというが、その容姿は二十より下の少女のものに思えた。
目線が丁度当たる位置――緩やかに揺れる豊かな胸と谷間に半分ほど埋まった楕円形状の首飾りに、マオの視線は吸い寄せられてしまう。
男ならば誰もが触れてみたい思う魅惑的な大きさと艶をもった双丘だった。
マオの記憶には無いが赤子のときには彼女の乳房を要求し、おしゃぶり代わりに何度も口に含んだことがあるらしい。
そのように年頃の少年にとっては羞恥でしかない数々の過去を、意外と空気の読めないところがある綺麗な
「マオ? ぼんやりとしていますが、具合でも悪いのですか?」
ほんのりとした甘い香りがマオの鼻をくすぐる。
音もなく、いつの間にか近くに来ていたアルテが少年の黒髪をかきあげ、自らの額を当て熱をはかろうとしていた。
鼻先の距離にある心配そうなアルテの顔にマオの心臓は跳ねあがり慌てて距離をとった。
「だ、大丈夫です、お師匠さま! それと、罠は全部仕掛け終わりました!」
「……そうですか、ご苦労さまです、マオ」
ダークエルフの美女は手を合わせ、にっこりと穏やかな微笑みを浮かべた。
少年は頬を染めてうつむく。体を離す際に偶然つかんでしまったアルテの柔らく芯のある胸の感触と、それをまったく気にしない彼女の態度に子供扱いされた恥ずかしさがあったからだ。
そして、どうして自分は赤子の頃のことを覚えていないのだろうと痛恨の思いが湧きあがる。
再びアルテの顔をうかがうと、彼女はマオに美しい横顔を見せ、その視線は険しく村外の森の方に向いていた。
「お師匠さま?」
「……どうやら来たようですね」
アルテが呟いたすぐ後に梯子を組んだだけの物見やぐらから、カーンカーンッと鐘を打ち鳴らす音が辺りに響いた。
村に近づく魔物たちを村人が発見したのだ。
途端に村中が騒がしくなり甲高い声と怒声が飛び交った。
女子供老人といった村人たちが避難所と定めた頑丈な倉庫の中に大慌てで入っていく。
近くに魔界から魔物を生み出すゲート――悪魔の目が出現していたことはすでに判明しており、たった数日とはいえ備えをする時間は十分にあった。
二十人ほどの村の男たちが木を削っただけの粗末な槍を持って、慌ただしく村の入り口に集まって来ていた。
彼らの表情はみな一様に不安げで、これから始まる戦いへの恐れが見て取れた。
村に誘い込んだ相手への罠を利用した防衛戦である。有利に進められる戦いだが大地を耕すことを生業とする者たちにとっては慣れぬ命のやりとりだ。
まして魔物に敗北すれば、村人は女子供までもが残酷な方法で虐殺されるのだから平常心ではいられないのだろう。
「ではマオ、予定通りにお願いします」
「はい! お師匠さまもご武運を!!」
短い会話のあと、アルテはマオを抱擁すると少年の黒髪に口づけをする。
二人にとって戦いとは日常茶飯事なので村人たちのような動揺もない。ただ、アルテの柔らかくて良い匂いのする胸の谷に顔を挟まれた少年は真っ赤になっていたが。
そのようないつものやり取りをして師弟は別れる。
マオは射撃ポイントとして確保していた建物の屋根に急いで登ると、村の外に歩いていく師の後ろ姿をじっと見送った。
――聞こえてくる獣の叫びと、離れていても感じとれる邪悪な気配。
多くの足音が重なって響き、枝をへし折り葉をかきわけて、ゴブリン、オーク、オーガなど魔物が続々と姿を現した。
濁った双眼と不潔な姿には生き物としての知性は無く、こぶだらけの醜い体と手に持つ武器には赤黒い粘液と腐臭がこびりついていた。
男たちの悲鳴があがる。並みの神経であれば絶望を抱く光景だろう。森から出てきた魔物の数は目視しただけでも二百体以上はいたのだから。
そんな魔物たちに対して立ち向かうのはダークエルフの女一人。
恐るべき悪魔の軍勢を前にして手に持つのは、ねじくれた細い木の弓が一本のみ。
裸体に近い姿は、常人からすれば生贄として身をささげる乙女以外の何者でもなかった。
アルテを期待と情欲の目で見ていた男たちの視線は、疑念と深い失望に変っていく。
村の近くで悪魔の目が発見されたときにはすでに手遅れで魔物が湧き出し徘徊していた。
人の通りもない辺境の村では領主に伝え兵をだしてもらうにも時間がかかる。
村を捨て魔物たちから逃げながら険しい山中を抜けるにしても、女子供や老人といった体力のない者が多すぎた。
動けぬ者を見捨てて犠牲にするか、それとも残って兵が来るまで全滅を覚悟しても戦うか……無情な決断を迫られ悲嘆にくれる彼らの前に現れたのがアルテたちであった。
村人にとってまさしく地獄に仏だったのだ。
百年周期で出現する魔王との戦いを三度経験し、そのすべてにおいて高い武勲をあげた英雄。
数々の逸話と伝説を打ち立てた月弓のアルテの名声は、辺境の村でもお伽話として語られるほど有名であった。
だが実際には殺戮に特化した強大な魔物の群に比べて、あまりに小さくて頼りなく、まともな戦いになるとは彼らには到底思えなかったのだ。
ウオオオオオオオオオォォォォォォォ!!
魔物たちの殺戮を告げる歓喜の雄叫びは、戦いの始まりを告げる合図でもあった。
走る先兵は百を超えるゴブリン。耳障りな嗤い声をあげながら村に迫ってくる。
森と村の間は平地ゆえにゴブリンたちの移動速度はましらの如く速い。
錆びついた剣や斧をかかげ、目を血走らせ涎をこぼして突進してくるおぞましい小鬼たち。黒々とした穢れた波に飲み込まれれば重装備の騎士だろうと一溜まりもないだろう。
しかし一刀も耐えられそうにない身のアルテに焦る様子はなく、矢をつがえないままの弓を水平に構えると、調子でも確かめるように弦をスイッと引いた。
するとどうだろう、リーンッという涼やかな音色と共に光輝く矢が生じた。
アルテの表情が獲物を射る目になると、引いた弓の弦を静かに離す。
放たれた矢は風を切って真っ直ぐに突き進み、ゴブリンたちの近くで異変を起こした。
なんと、光の矢が何重にもぶれて分裂したのだ。
十数本にもなった矢はゴブリンたちの進路を塞ぐように降り注ぎ、突き刺さって矮小な体を地面に深く縫いつけていく。
恐るべきことにアルテは、たった一射で複数匹の小鬼を仕留めた。
『ギャ、ギャアアアアアアァァァ!?』
知恵足りぬ身では不可思議な現象が理解できないのか、ゴブリンたちは怒りと戸惑いの入り混じった雄叫びをあげ、仲間を殺したアルテの元へと殺到した。
彼女の手は止まらない。切れ長の目を細めるとハーブの演奏でもするかのように弦を引き、近づこうとするゴブリンたちを一歩も動かずに次々と射止めていく。
無双するアルテの勇姿に男たちから歓声があがった。
そしてマオは今まで何度も同じようなことがあったのに、やはり今回も見惚れてしまう。
アルテの弓の撃ち方はひどく緩やかなのに速射で、極限までに無駄を省いた正確無二の美しさがあったからだ。