ダークエルフの弓使いにショタな弟子ができました   作:あじぽんぽん

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アルテさんのクールなイメージが損ねる可能性があります
かっこいいアルテさんが好きな方はご注意ください

貰った感想などを反映させ、一部追加改稿しました


第5話

 凍る大気に空からは雪が舞い降りていた。

 

 白銀の世界。吹きあげられた結晶が舞う神秘的な光景。

 しかしその美しさは死と隣り合わせのもので、生命には厳しい極寒の大地である。

 そのような過酷な場所でも人の営みがあり、自然の恵みを利用した温泉と多くの旅人がおとずれる村が存在していた。

 

 そして、人いるところには……魔物も必ず出現する。

 

 

 

「お師匠さま、右です!!」

 

 猛烈な吹雪の中でも、マオの声だけはしっかりと聞こえていた。

 雪原を疾走するは美しきダークエルフ、月弓のアルテ。

 走る彼女は弟子の指示に無言で頷くとその方角に迷わず進んだ。

 剥きだしの褐色肌に鋭い氷雪が当たる。

 吹きつける風は激しさを増し、目の前ですら満足に見ることができない。それゆえに魔力の流れとマオの声、そして自らの感覚だけを頼りにする。

 

 捉えた穢れた魔力は……三つだ。

 

 アルテは目を閉じたまま三度、弓を鳴らした。

 

 ――グッギャアアアアァァ!?

 

 白い闇の中で叫び声が二度聞こえた。

 アルテの撃った矢が魔物と悪魔の目に命中したのだ。

 流れる濁った血は白雪に埋もれてすぐに凍りつく。足を止めたアルテの体からは衣のような蒸気が吹きあがった。

 

「マオ、次は?」

「そこから、真っ直ぐ十歩で撃てます!」

 

 アルテは再びマオの指示に従って移動を開始した。

 

 激しい吹雪の中での戦闘。闇を見通すダークエルフの目ですら視界はきかず、また積もった雪で足を取られアルテ本来の速さも封じられた状態である。

 突き進むアルテの格好はいつもの極小鎧。雪は肌に触れた瞬間に魔力によって蒸発し、弓を使うのに支障をきたすことはないが、それでもこの冷気は彼女の体力を少しずつ奪っていった。

 

 アルテは弦を引く――再び叫びが聞こえ穢れた魔力が六つ消失した。

 

「マオ、大丈夫ですか?」

「は、はい、平気です……次、お師匠さまの位置から左斜め方向です!」

 

 雪原では月弓のアルテですらこの有様だ。厚手の防寒着を着込んでいるとはいえ、ついてきているマオの疲労はもっと溜まっているだろう。

 それでも今ここでマオを休ませるわけにはいかなかった。この闇のような世界で唯一、見通せる目をもつのは育て子のマオだけなのだから。

 雪原地帯で大量発生した悪魔の目。連鎖して群生となったその数はゆうに二十を超えていた。

 まだ魔界との扉は開き切ってなく、尖兵となる魔物がうろついている程度。しかしすべての扉が完全に開けば、月弓のアルテとはいえ犠牲者なしで魔物を討伐することは難しくなるだろう。

 

 まさしく時間との勝負であった。

 

 

 

 アルテとマオが骨休めにと来た温泉村で、悪魔の目が出現したという知らせを聞いたのは宿を決め部屋に荷物をおろしてからのことだ。

 不安そうに話す宿の従業員に対して、月弓のアルテの助けは必要かとマオが聞いてみたところ大いに喜ばれ、街を防衛する衛兵たちと共に魔物退治を行うこととなった。

 

 

 そして討伐はアルテたちの活躍もあって、一人の死傷者もださずに終えることができた。

 

 

 夜、酒場で開かれる厄払いの宴にはいつも通りマオだけが参加していた。

 この村は街道の宿場でもある。百人以上が入れそうな酒場は人々の喜びの声で大いに賑い、室内には暖房器具が幾つも設置され、ストーブに乗せられた鍋からは湯気があがっている。

 外の寒さとは裏腹に保温の効いた建物内は非常に暖かいもので、過酷だった雪原での戦いとの落差にマオは安堵して溜息をつく。

 

「流石は月弓様とそのお弟子さんだ、本当にあなた方がいなかったらどうなっていたことか」

「いいえ、衛兵の皆さんが自らの危険を省みず尽力してくれたおかげです。お師匠さまと僕は走り回っていただけですから」

 

 村長の褒め称える言葉に、マオは謙遜したように返したが半分以上は本音である。

 衛兵たちが魔物の大部分を悪魔の目から引き離してくれたので、アルテたちは魔物に妨害されることなく自由に動け、速やかに悪魔の目を破壊して回ることができたのだから。

 その最中に吹雪に襲われたのはとんだアクシデントだったが。

 

「お、嬉しいことを言ってくれるじゃないか、お嬢ちゃん(・・・・・)。ほらチマチマしてないで肉食え、肉」

「ちょっ、ちょっと止めてくださいよ隊長さんっ!?」

「こらこら、女の子(・・・)に対して、あまり乱暴にしちゃいかんぞ隊長」

 

 遊ばれるマオに一緒に戦った衛兵たちからも笑い声があがる。マオの肩に乱暴に手を回し、骨付き肉をつきつけ勧めるのはこの村の衛兵隊長だ。

 討伐のために顔合わせしたときは、モコモコの防寒着を着てニコニコと笑顔を浮かべる子供のマオに驚き、その後ろで静かにたたずむ全裸のようなアルテの姿に眼を剥いていた。

 しかし、彼は打ち合わせどおりにきっちりと役割を果たしてくれた。

 無骨で頑固そうな見た目だが、アルテたちのような外の人間の意見も聞き入れる柔軟性を持つ人物である。これが己の名声や手柄ばかりを考える者なら少なくない犠牲者がでていただろう。

 それを今までの経験から知っているマオだから衛兵たちを立てるのである。

 

「お嬢ちゃんはもっと肉つけなきゃいかんな、将来いい男を捕まえられんぞ?」

「あ、ははは……」

 

 まだ成長期のマオは線が細く、整った顔立ちから女の子に間違われることが多々あった。

 

 厄払いの宴に関わらず、このような場で情報収集をするのはマオの仕事である。

 師であるアルテは世間一般では月弓、もしくは氷の美女とよばれている。その淑やかで静かな立ち振る舞いは、彼女をよく知らぬ者には孤高の英雄の名に相応しいものに映るだろう。

 幼い頃のマオの目にもアルテはそう見え、そして、そんな英雄が自らの育ての親であることを誇らしく思っていた。しかしアルテの仕事を手伝うようになってマオは気づいてしまった。

 

 アルテは無口で無愛想などではなく、とてつもない口下手の愛想下手ということに。

 

 マオの知らぬことだが、これは秘境に引きこもり、一族だけで過ごすダークエルフ種族全体の特性である。

 他種族に対しての対人恐怖症に近いそれが、事情を知らぬ者には傲慢で孤高な態度に映って、優れた弓術と相まってひどい誤解をされてしまう。

 アルテもそうである。魔物に対しては無類の強さを見せる彼女ではあるが、戦いや狩り関連以外のことだと幼子にも劣るのだ。

 マオとしてはそんな師を自分が支えなくてはと思えど、失望するような気持ちはまったくなかった……むしろ自分だけがその事実を知っていることに優越感にも似た気持ちを持っていた。

 

 そのようにマオが村長や衛兵たちと破壊した悪魔の目の処理について話をしていると、一匹の妖精が……風精霊が分厚い壁をすり抜けて酒場の一角に姿を現した。

 

「お、こりゃなんだ?」

「風精霊ですか……珍しいですねこんな場所で」

「うわ~小さくて可愛いね」

 

 風精霊は見つめる者たちをよそにマオを探し当てると、羽を震わせながら少年の頭上に飛んできて踊るようにくるくると回りだす。

 マオはその精霊がアルテがよく召喚する冷めた目の風精霊だと気がついた。

 

「どうしたんだい?」

「――――――!!」

 

 マオには精霊の言葉は聞こえない。

 しかし風精霊の慌ただしい様子にアルテになにかあったのかとすぐに察した。

 

「すいません村長さん、用事ができたので僕はここで失礼します」

 

 そう断りをいれマオは酒場の外扉に向かった。

 外に出た途端に突き刺さる冷気にマオは体を震わせる。ちらちらと天から舞い落ちる雪を少し見上げマオは宿へと急いだ。

 五分ほどの短い距離だが足場の悪い雪道を全力疾走したので僅かに息が切れた。

 宿に入り、軋む木造の廊下を通ってアルテの居る部屋にたどり着く。マオが見ると扉は封印の魔法で硬く閉じられている。

 

「お師匠さま、起きてますか?」

 

 扉越しに呼びかけたがアルテの返事はない。

 普段なら眠りについていても、マオが声をかければすぐ反応する師としては珍しいことだ。

 マオはひどい不安を覚えた。

 

「お師匠さま入りますね……我は解錠する……アルテの子、マオの名により……」

 

 決められた解除の言葉で封印を解除。

 そして扉を開けると室内では……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全裸のアルテが、綺麗なエビぞり首ブリッジを決めていた。

 

 

「お、お師匠さまああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 衝撃的な光景にマオは絶叫し、思考を停止させた。

 

 アルテは布団の上で白目を剥いて、どうやら気絶をしているようだ。

 マオの位置からはアルテの上半身――重力にも負けないで球体を維持するおっぱいが見えた。

 艶やかな褐色肌の見事な双丘である。

 その重量感たるや同性ならば敗北感に目を背け、異性ならば目を奪われるほど魅惑的であった。

 しかしマオの反応はそのどちらでもなく。

 

「お師匠さまが、襲撃されたっ!?」

 

 どうしてその結論に!? と、風精霊だけが突っ込んでいた。

 まず最初に最悪を想定するところから始めるのが慎重なマオの性格である。

 それにマオはアルテと一緒に数多くの修羅場を潜り抜けてきた。英雄とうたわれる月弓のアルテが、その名声と同じくらいに恨む者たちもいることをよく知っていたのだ。

 

「お師匠さま! だ、大丈夫ですかっ!?」

「う、う~ん…………」

 

 アルテの赤く染まる頬をペチペチ叩くと反応があった。

 マオはアルテの細い腰を軽々と抱え、アーチを描くブリッジを解いて布団に寝かせた。

 背の高いアルテ。しなやかな筋肉に包まれた肉体は平均的な女性と比べて体重があるほうだ。しかしアルテを片手一本で支えたマオには重たそうにする様子はまったくみられなかった。

 

「どう考えても普通じゃない……いったい誰がこんなことを?」

 

 それはそうだろう、こんなことをしていたアルテの頭が普通ではなかったのだから。

 このシュールな状況がなぜおきたのか、まともなマオ少年には分かりようもない。

 マオはアルテの体に毛布を掛けて辺りの気配をうかがう。冷静そうに見える少年だがその内心は穏やかではなかった。

 

(相手は魔族、あるいは魔王を信仰する邪教団の暗殺者だろうか? だが、お師匠さまを倒せるほどの手練れがそういるとは思えない。争った形跡はないし……このひどい発熱と発汗は、ま、まさか毒を盛られたのかっ!?)

 

 などと斜め上の勘違いをしてしまうくらいに。

 焦りながら慎重に辺りを探るマオに、風精霊の埴輪のようにクールな視線が向けられていた。

 薄闇の室内、マオの赤い双眼がほのかに光る。

 当然だが、少年の鳥並みの感知能力でも周囲に感じる気配はなかった。

 ここでマオは、ようやくアルテが病気なのではないかと思い至る……確かにある意味でアルテはひどい病気だ。

 普通ならすぐに考えつきそうなことであるが、大人と対等に渡り合える利発な少年が気づかなかったのにはそれなりの理由があった。

 アルテは華奢な見た目に反して野生動物並みに頑丈な女であるから。

 赤子のときから共に過ごし、それを誰よりも知っているマオにとってアルテの不調というのは想像しにくく、すぐに思い浮かばなかったのだ。

 

「マ、マオきゅ……? か、体が、熱いですぅ……」

 

 意識が戻ったのかマオの頬に手を伸ばし夢見るように呟くアルテ。

 マオはナデナデするアルテの手を優しく握りしめた。

 アルテの様子は発熱があって息が荒く脈もやたらと速い。下手な薬師より多くの知識をもつマオから見て彼女の症状は明らかに風邪だった。

 なぜ、エビぞり首ブリッジなどを決めていたのかは謎だが今はアルテの看病が先だろう。

 

 冷めた……というか呆れた様子で見ていた風精霊に、マオ少年は最後まで気がつかなかった。

 

 

 ガラス製の窓から見えるのは月に照らされた雪景色。

 火鉢の上に乗せた鉄瓶から、ゆらゆらとした蒸気が出ていた。この畳の部屋は外の風景とあいまってなんとも静かで落ち着ける空間である。

 なるほど、お師匠さまがこの村に来たがるわけだ……と、マオは思った。

 わびさびな風情というものを感じてしまうほど老成している若干十二歳(?)のマオ少年であった。

 

「ご、ごほっ、ごほっん!!」

「お師匠さま、喉によい飴を粉末状にしてみたのでどうぞ」

「いつもすみませんね、マオ」

「こんなときに水臭いことを言わないでくださいよ」

 

 マオは布団で寝ていたアルテの後頭部をそっと持ちあげ、スプーンに盛られた粉飴を少しずつ舐めさせていた。

 

「甘くて美味しいですぅ……」

 

 ささやくように呟いて、頬を染めほんのりと微笑むアルテ。

 彼女の氷色の瞳は潤み、笹の葉のような耳は力なく垂れ下がっていた。

 マオが滅多に見ることのない弱々しい師の姿である。

 

「お師匠さま、その服はどうですか?」

「なにか丸腰の裸のようで、ひどく不安になりますが着心地は悪くないですね」

 

 彼女が着ているのは戦闘用の鎧姿ではなく温泉宿の浴衣だった。

 体を冷やしてはいけないと思い少年が着せたのだ。

 

「いつもの格好のほうが裸に近いかと……」

「はい? なにがですかマオ?」

「あ、いいえ、なんでもありませんよなんでも……」

 

 キョトンっと真顔で聞かれたので、真顔で返答するマオ。

 どうやらダークエルフのアルテにとって、いつもの極小鎧はれっきとした正装らしい。

 

 マオが誤魔化すようにスプーンを差しだすと、それをチロチロと舐める薄桃色の綺麗な舌。

 先ほど見てしまったアルテの乳房を思い出して、マオは気恥ずかしいものを覚えた。

 それに気のせいだろうか。この養母(アルテ)、普段よりも露出が少ない格好のはずなのに、普段よりも色気(エロ)が増しているように感じられるのは。

 どんな格好をしていようと、存在そのものがエロいダークエロフ種族の特性のせいで、幼い少年の性癖が微妙な構築をされようとしていた。

 

 マオは桶から水をしぼった手拭を取りだし、アルテの前髪をかきあげて形の良い額に乗せた。

 

「ああ、気持ちが良い。私がひ弱なばかりに、あなたには迷惑をかけますね」

「ひ弱って……い、いいえ、そんなことを気にせずにゆっくり休んでください」

 

 ひ弱とか以前に吹雪の中を裸に近い格好で走り回っていれば風邪の一つもひきます。そう言いかけたマオだが賢明なことに口にはださなかった。

 あらゆる意味でピーキーな英雄と共に伊達に十年以上も旅をしているわけではないのだ。

 それに喜ばしいことでもある、風邪をひく師は決して馬鹿ではない、ただ少し天然なだけだと証明されたのだから。

 

「私は本当に幸せ者です。このような親孝行をしてもらえるのですから」

「お師匠さま……この程度でよろしければ、いつでも孝行しますよ」

「ふふ、ありがとうございます、マオ」

 

 どんな事情であれアルテに喜んでもらえるなら、マオとしてもそれに越したことはないのだ。

 

「早く元気になって……マオと……温泉……」

 

 アルテは子供のように無防備な微笑みを見せた。

 そして、うつらうつらと目を閉じると静かな寝息を立てだした。

 粉々に砕いた飴と一緒に舐めさせた苦い薬が効いてきたのだろうか、顔を見るとほてりが消え先ほどよりも良くなっているようだ。

 スヤスヤと穏やかな表情で眠る彼女を見つめるマオ。その少年の胸中は他の者にはうかがい知ることはできない。

 やがてマオはアルテの長い銀髪を一房手に取り、それを手の平で遊ばせながら微笑んで溜息をついたのだ。

 

 

 

 

 ガラス窓から差し込む朝の光にアルテは目を覚す。

 爽快な目覚め、布団をめくると小柄なマオがいた。

 アルテは自らの胸に抱きつくように眠る少年の頬に軽い口づけをした。

 感動を覚える。このシチュエーションは歌いだしたいほどに清々しい気分だ。

 

 アルテが夜中に目を覚ました際に自分の枕元で正座をしたまま寝ているマオを発見し、風邪をひいては一大事と布団の中に引きず……寝かせて、そのまま抱きしめて眠りについた。

 

 ……もちろん手はだしていないが。

 

「ありがとうございます。ありがとうございます。非常に堪能できました。我らを守護する偉大なる月の女神さま、本当にありがとうございます!」

 

 床に手をつき空に向かって綺麗なお辞儀をするアルテ。

 月の女神もこのようなことで祈られ感謝されたら困惑するだろう。

 それはともかく最近のアルテの持病、マオ少年に長いこと触れていないと発症する、マオきゅん欠乏症は解消できたようだ。

 ちなみに発病者はアルテしかいない奇病であるが。

 

「しかし、あの子ったら、どういうつもりなのか……」

 

 風精霊がマオを呼んで来たことだ。

 すでに察しているとは思うがアルテは別に風邪をひいていたわけではない。

 彼女は戦いのあと下腹部が疼き、いつも通りに一人桃色遊戯。マオきゅん欠乏症と相まって、いつも以上に激しくレッツエンジョイした。

 強烈な発情を限界を超えて我慢することによって、いい感じで頭が愉快になっていたのだ。

 アレなアレに意識を飛ばし、気がついたら不安そうに自分を抱きかかえるマオ少年がいた。

 そのときアルテがなにを思ったかは……想像にお任せしよう。

 親の威厳として本当のことを言うわけにもいかずアルテはマオに黙って看病されていた。

 

「ともかく、至福の時間でしたっ!!」

 

 両手を広げて小さく飛び跳ねながら、クルクルと回転するダークエルフの美女。

 残心の舞い、喜びバージョンである。

 良かった。アルテさんとても幸せそうだ。

 

 風精霊はアルテの度重なる痴態に嫌気がさしたのか、あるいは早くマオとくっつけとお節介おばさんの真似事でもしたのか、不明であるが結果として彼女の行動は良い方に転んだようだ。

 

 実のところ、アルテが温泉村に来たのもマオと家族水入らずでゆったりするためだった。

 最近は一人旅のときと比べると先のことをよく考えるようになった。

 マオの将来は分からないがダークエルフと人間では生きる時間の流れも違う。

 いずれマオはアルテの元を離れて自らの家庭を作るのかもしれない。

 その覚悟をアルテはしていたし、マオが独り立ちできるように自分が知る限りの知識と技術を教えているつもりであった。

 

 アルテにとってマオは、性癖(ショタ)の対象の前に可愛い育て子であるのだから。

 

 欲情しても幼いマオに手をだすことはアルテには決してできない。

 英雄、色を好むとは言う。

 例え今のアルテとマオが結ばれても世間がどうこう言うことはないだろう。

 あるいは祝福の言葉を掛けてくれるかもしれない。

 

 それでも、それでもと、アルテは耐えるのだ。

 

 

 まあ、この宿に来たおかげでアルテの長年の夢が一つ叶った。

 赤ちゃんができて悪阻に苦しむお嫁さんと気遣う優しい旦那さまプレイである。

 昨晩のマオきゅんの優しさはアルテにとってまさにそんな感じだった。

 なにそのニッチなプレイ?

 と、人が知れば思うだろうが、アルテさんは御年三百と十八の穢れなき乙女である。

 幾千もシミュレーションを繰り返した数々の夢の一つである。

 その溜め込んだ妄想(ゆめ)チカラは伊達ではないのだ。

 

「でも、いけません、いけませんよアルテ、これ以上は我慢しなくてはいけません」

 

 自戒するように呟くアルテ。

 すっきりとしたせいか養母としての理性も復活したようだ。

 

「ま、それはそれといたしまして……」

 

 おや?

 

「次はやはり、新婚さん一緒に入浴プレイですね♡」

 

 ああ、駄目かも。

 この人、やっぱり、そのうち手をだしそうである。




とりあえずよく分からなかったので、語尾にハートマーク入れておけばいいですよね?

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