コガネについた一行はそのままポケモンセンターへと足を運ぶ。
「こんばんは、ポケモンセンターです。……あら!アッシュさん」
「こんばんはジョーイさん」
挨拶を交わしながらプレートを受け取る。
イーブイがボールに入りたがらないので、そのままプレートに乗せてジョーイへと渡すのだ。この時だけはイーブイも素直に乗ってくれる。
何気に結構重いのだが、ジョーイは難なく受け取るとそのままラッキーへと手渡した。
「今日も何処かへ行かれていたんですか?」
「ウバメの森に行っていたんですが、迷ってしまって」
「まぁ!それは大変でしたね。イーブイの様子見ておきますね」
お願いしますと頭を下げると、今度はその足でカンポウの家へと向かう。腹も空くが、それよりも仕事を済ませてしまいたい。
「おお!おかえり、大丈夫じゃったか?」
出迎えてくれたカンポウに薬草とキノコを渡しながら、今日のことを話した。
その後ろからラッタもやってくる。どうやら遅いから心配してくれていたようだ。
迷ったと話しているとラッタに呆れられた。
道をよく見ろ、踏みしめてあるとこだけ通れ、草むらに入るなと注意される。
何だかこれでは最初の頃と逆である。
カンポウもラッタの言いたい事が分かるのか、「ラッタも心配していたようじゃ」とニコニコと微笑ましそうに笑っているがこちらは居た堪れない。
話の矛先を変えようと、アッシュは先ほど出会ったポケモン達について尋ねることにした。
話を聞いたカンポウはその特徴を聞きすぐに頷く。
「あぁ、それは多分ホーホーじゃのぅ」
「へぇ、ホーホーって言うのか」
「ホーホーは賢いヤツでの。地球の自転を感じ取っておるから正確な時間を常に把握しているんじゃよ」
だから時計代わりに持ち歩くトレーナーも多くてのとカンポウは付け加えた。
そして、ずっと気になっていた水ポケモンの方は鳴き声から判断するにウパーで間違いないだろうとのことだった。
ウパーは水と地面の混合タイプらしい。
「名付けた理由が分かり易いなぁ」
「ふぉふぉ!実際ポケモンは鳴き声から名付けられたものも多いようじゃよ。……しかしそれにしても、ウパーは昼間あまり陸上を歩きたがらないんじゃがなぁ」
余程歩き回るのが好きなんじゃろとカンポウは笑った。
ウパー達は粘膜に体を守られているらしく、それが乾かないよう水の中を好むものらしい。
「へぇ…」と相槌を打ちながら、今度会った時はウパーと呼んでやろうと密かに心に決めた。
とりあえず今夜は遅いのでもう帰ろうとカンポウ宅をお暇しようとすると、玄関先で呼び止められた。
靴を履きながら振り返ると、カンポウは近くまで寄ってくる。
「ちと次回は長くなる配達を頼みたいんじゃ」
「いいけど、どのくらいかかるんだ?」
「んー、お前さんの足でも1週間も掛からんと思うがのぅ」
それは今までに比べると随分と長旅である。
次来た時にはその為の打ち合わせをし、準備を整えてから出発となる手筈のようだ。
お金は貰えることだし良いだろうと考えたアッシュははいはいと軽く頷くと、そのままポケモンセンターではなくデパートへと足を進めた。
そろそろ新しいフーズを買い足そうと思っての事だった。遠出をするのなら今のうちに買うのが良いだろう。
いつもの様にノーマルタイプ用のフーズを手に取っていると、フーズの横に何やら小瓶が並んでいるのに気がつく。
何だろうと思い一つ手に取ってみると、それはフーズ用の調味料のようなものらしかった。
「へぇ、こんなの売ってるんだなぁ」
確かイーブイは酸っぱい味が好きだったはずだなと思い、酸っぱい味付けの小瓶を手に取る。他にも甘い味や辛い味、渋い味というのまである。
ポケモンにも味覚があるのは知っていたが、渋い味が好きとは随分変わっている。イーブイはどんな顔をするんだろうと少しばかり悪戯心惹かれた。しかしその後が恐ろしいので思うだけに留め、アッシュは会計へと足を向けた。
中には木の実をブレンドしてそのポケモン専用フーズを作る人もいるらしいが、アッシュにその根気はない。
しかし、どうやって作るのかは気になるので一度見てみたい。それに自分で大量に作れればもしや経済的に浮くのではと打算的な事を考える。
とはいえ、今は作り方も分からない為「まぁ、まだいいか」とその件は先送りにすることにした。
その後イーブイを受け取りに行きようやく自身のアパートに帰宅する。
アッシュが鍵を閉めている間にイーブイが浴室と台所を通り過ぎて居間の方へ駆けていく。
どうやらお腹がすいているらしい。
棚から適当に皿を取り出してフーズを入れると、早速今日買ってきた調味料を試してみることにした。
イーブイはいつも通りフーズを食べているつもりのようだが、そのスピードはいつもよりも速い。尻尾もゆらゆらと揺れているので美味しいのだろうと察し、アッシュはこっそり笑みを浮かべた。
食後はいつも通りベッドの端に座って毛づくろいを始めたイーブイを見つつ、アッシュはも簡単に食事を済ませた。
それも終えてベッドへと上がると、何とは無しにイーブイの様子を眺める。
1人の時にはあまり感じなかったが、イーブイと一緒にいるとたまにこの部屋では狭いのではないかと思えてくる。
イーブイはポケモンでも小さい部類なので何の不都合もなく生活しているが、それでもやはりこの前のように暴れ回る姿を見るとこの部屋では狭い気がする。
今度カンポウに相談してみようと思いつつアッシュはそのまま寝てしまった。
翌朝それを発見した空腹のイーブイが無言の奇襲をかけたのは余談である。