ルリった!   作:HDアロー

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六話 「縛りプレイ?」

 あの後、Nとはお別れした。

 もちろん情報交換や連絡手段としてライブキャスターの番号は交換した。

 だが、一緒に行動はしない。

 先にも言った通り、私もNも団体行動が得意な人種じゃない。

 それなら手分けして地盤を固めようという話だ。

 

「とは言ったものの、どうしますかねぇ」

 

 森の中に入り、開けた草原を探す。

 しばらくして見つけた草原に、人気が無いことを確認してからボールからガブリアス、ファイアロー、ミミッキュを繰り出す。

 うん。アイドルっぽくない手持ちだ。

 でも原作でもサイホーンとか交換に出してきたし別におかしくはないか。

 

「まず、これ以降やるべきことと、やっちゃいけないことを明確にしよう」

 

 大きな切り株を囲んでまるで円卓会議だなと思いながらそう呟く。

 

「ポケモンセンターの利用。これはやめておいた方がいいだろうね」

 

 ポケモンセンターを利用すれば、利用記録が残る。

 相手がハッキングを仕掛けてくる可能性が高いと考えているわけではないが、そもそも内通者とかがいる可能性は非常に高い。

 できる限り公共機関に立ち寄ったという記録は残したくない。

 

「そうなるとフレンドリィショップとかも使わない方がいいのかな」

 

 フレンドリィショップには監視カメラが取り付けられている。

 最悪の場合を考慮するなら、できる限り利用しない方がいいかもしれない。

 

「なにその縛りプレイ」

 

 最悪である。

 ここにきてポケモンセンター縛りとか……。

 まあこの辺に関してはゲームと違って自然治癒とかもあるしどうにかなるか?

 

「すべきことと言えばゲーチスの杖の対策だよねぇ」

 

 BW2にて、ゲーチスはその風貌を大きく変えることになる。

 頬は痩せこけ、息を切らせ、肉体的にも精神的にも疲れ切った様子であった。

 そんなゲーチスは杖をつくようになる。

 この杖が厄介だったりする。

 

「記憶にある杖の効果は二つ。一つはポケモンを支配する効果、もう一つは捕獲を妨害する効果」

 

 もしかすると、記憶から抜け落ちているだけで他にも効果があったかもしれない。

 他にも、私という異分子が混ざりこんだせいで他の機能がついているかもしれない。

 時空間を支配する効果とかあったらどうしようね。

 シンオウ地方でやってくれって文句言えばいいのかな。

 

「キュレムなんて捕獲するつもりはないけど、支配する効果っていうのが厄介」

 

 ゲーム内だとキュレムしか支配していなかった気がする。

 それがその杖の限界ならそれでいい。

 けれど複数体を同時に支配できる場合、あるいは同様の杖を複数用意してある場合。

 大事なポケモン達が奪われるという結末まで予想できる。

 それは絶対に許さないけれど。

 

「すぐにアイデアが浮かぶものでもないし保留にしておこうか。もう一つの問題点が」

 

 ガブリアス、ファイアロー、ミミッキュを順にみる。

 うん。パーティバランスおかしいよね。

 

「特殊アタッカーがいないこと、そして集団戦法に対して無策であること」

 

 これも結構な問題だったりする。

 プラズマ団と戦う上で厄介なことの一つに、数の暴力というものがある。

 夢の跡地ではこの問題を闇討ちという方法で解決した。

 けれど今回はそれを取れない。

 

 理由は二つある。

 まず一つ目は、こちらの存在が相手にバレていること。

 これより先はプラズマフリゲートを拠点にするだろうプラズマ団相手に、警戒された状態から奇襲をかけることは難しいだろう。

 もっとも、難しいだけでできないわけではないだろうが、それに最初から期待するのはやめておくべきだ。

 

 そしてもう一つの理由。

 それはNとの約束だったりする。

 共同戦線を張る以上、ある程度相手の事を重んじた行動をとりたいと思う。

 そういうわけだから不意打ちだとか辻斬りだとかそういう悪役っぽい行動はあまりとりたくない。

 

 ということで複数を相手にした場合の戦術を確立しておきたい。

 先に断っておくと一対多を想定した戦法なら複数ある。

 

 ガブリアスで砂嵐あるいは砂地獄を起こし、各個撃破する方法。

 岩雪崩や地震で全体攻撃をする方法。

 ファイアローに吹き飛ばしを指示し、相手の攻撃に指向性を持たせる方法。

 

 その他諸々あるが、おわかりいただけただろうか。

 全部無差別な攻撃手段なのだ。

 味方がいないからこそ使える対集団戦法。

 Nとともに戦うならばNのトモダチも傷つけることになる。

 それではNの、分かり合うという主張を私が邪魔することになる。

 

「どっちもこっちも鎖ばっかりじゃん……」

 

 だから単独行動は楽なんだ。

 仲間を心配する必要がないし、変な気を遣うこともない。

 だけど。

 

「誰かの役に立ちたい……。どれだけ大変な道のりでも、最後まで歩み切って見せるんだ……」

 

 それが、私の新しい願い。

 それを叶えるためなら、この程度の試練は甘んじて受け入れよう。

 

「まとめると公共施設を使わない、特殊アタッカーを育てる、杖への対抗策を用意しておく」

 

 そう呟いた時、ライブキャスターが鳴った。

 相手はNだった。

 さっき別れたばっかじゃん。

 

「はろー? どうしたの?」

 

「君に頼みたいことができた」

 

「断る」

 

「……断らないで」

 

 冗談だ。

 初手お断りは礼儀。

 

「で? 用件は何?」

 

「PWT、知っているよね」

 

「ええ、ホドモエシティの南にあるバトル施設でしょ? 私も参加したことがあるわ」

 

「そこでチャンピオンズトーナメントが開かれることになった。トウヤが、あのトレーナーが参加する可能性がある」

 

「ああ、何をしているのかと思ったら英雄の片割れを探しているのね」

 

 トウヤはBW2の時間軸では行方が分からなくなっている。

 チェレンは僕が捜すしかないとか言っていたが結局最後まで現れることは無かった。

 だから私はトウヤを探すことは最初からあきらめていたけれど、Nからすればトウヤはぜひとも味方につけたいと思っているのだろう。

 たしかにトウヤが味方に加わればNの目的も達成しやすいだろう。

 

「それで? 私に会場中を歩き回って探して来いって? 隠密行動したいのはこっちも同じなんだけど」

 

「いや、君にはそのトーナメントに参加してほしいんだ」

 

「はぁ?」

 

 話聞いてた?

 隠密行動したいのは私もなんだけど。

 何自分だけ陰でこそこそしようとしてるのか。

 ゲーチスか、ゲーチスに似たのか!

 おのれゲーチス、許すまじ。

 

「というか、チャンピオンはあんたじゃん。私は一般トレーナー。参加できないわよ」

 

「問題ない。君は初代レンタルトーナメントチャンピオンとして誘致されるはずだ」

 

「チッ、どこからその情報引っ張り出してきたのよ」

 

「……普通に公表されているじゃないか」

 

 おのれゲーチス、許すまじ。

 今度会ったら覚悟しろよ。

 

「それで、仮に参加したとしてあなたはその間に何をしたいのよ」

 

 問題はそこだ。

 私が公の場に姿を現すということはプラズマ団の襲撃というリスクを負うことになる。

 そんな危険を冒してまで、Nは何をしたいのか。

 それはリスクを負ってまですべきことなのか。

 

「二年前の手持ちで、トーナメントに参加してほしい」

 

「……なるほどね」

 

 ようやく合点がいった。

 つまり、トウヤに対して、あの時の黒ローブが私だとネタバレをすることで接触を謀ろうということか。

 確かにそれならトウヤを見つけられる可能性が上がるかもしれない。

 トウヤは実力的にぜひとも味方につけておきたい。

 

 けれどNは二年前の事件から、表舞台に出ることができない。

 だから私に頼んできたと。

 

 ちなみに二年前の事件に私の名前は載っていない。

 当時は謎の子供という認識だったし、そもそも世間的にはNとトウヤの決戦ということになっている。

 私が大会に出るのはいささかの後ろめたさもない。

 そして、普通に過ごしていてもトウヤが見つからないことを私は知っている。

 確かに彼を見つけようとすれば、これくらいの行動に出なければいけないかもしれない。

 

 だがそれは、あまりにもリスキーだ。

 

「あなた分かって言ってるの? それは同時に、ゲーチスにもあの時邪魔をしたのが私だと明示することにもなるのよ」

 

「……もうバレているだろう」

 

「……そうね、あなたの親だものね。あなたが私にたどり着いたということはゲーチスもまた気付いている……か」

 

 ということはチェレンやアデクも私の事に気づいているのだろうか。

 気づいていて放置していてくれている……。

 うん、彼らならあり得そうだ。

 けれどトウヤは気付いていない可能性が高い、と。

 そう言われればローリスクではある気もしてくる。

 せっかく別人説を仄めかしていたのが無駄になりそうだけど。

 

「あなた、プラズマ団が最近活動し始めたこと知っている?」

 

「……ああ」

 

「彼らはあなたですら敵だと思っているかもしれないわよ? 裏切者、とね」

 

「……分かっている」

 

 私のデメリットが小さくなった以上、Nの事も考えなければいけない。

 プラズマ団が襲撃してくる可能性が高まる以上、敵として相対する可能性が増すぞ、と。

 その時、戦う覚悟はできているのかと、私は問うた。

 画面の向こうの翡翠の瞳に決意が灯った。

 

「……分かったわ」

 

 Nの言葉を聞く前に、こちらから切り出す。

 わざわざ言語という不完全な体系に落とし込む必要はない。

 心の形は、心に留めておけばいい。

 

「その代わり、観客席を隅から隅まで探すこと。気づいてもらえても、接触してくるとは限らないんだから」

 

「僕はトーナメントに参加しなくてもいいのかい?」

 

「あんたが出てきたら大騒ぎになるでしょう。あなたはサポートに回ること。いいわね」

 

「すまない」

 

 そうしてライブキャスターを切った。

 チャンピオンズトーナメントか。

 懐かしいな。




ポケセン縛るはずが何故PWTに参加する事になってるんだ?
あの紅い人と会わせるためですよ
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