ルリった!   作:HDアロー

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二話 「化けの皮」

 アローラ!

 久々の休日!

 最高!

 

 私達はカンタイシティというところに来ていた。

 弟がサーフィンやると言って聞かず、母は弟に付き添い。

 娘二人で行動させるのも危ないということで、私たちも一緒に海に来ていた。

 暁の水平線に勝利を刻みなさい!

 

「まてー! くそ! このッ!!」

 

「ミッキュッ!」

 

「あっち行ったぞー!」

 

 え?

 ミミッキュ?

 カンタイシティに?

 どうして?

 

「お母さん、ちょっと様子見てくるね」

 

「危ない目に合わないようにするのよー」

 

「はーい」

 

 なんだかんだ妹と弟はマンタインに乗ってキャッキャしている。

 母は私と一緒にパラソルの下にいたが、私が出かけるというとすぐに許可を出す。

 それが七歳にする言動かと疑問には思うが都合がいいことに変わりはない。

 日頃の行いってやつだね。

 

「さっきの鳴き声といい姿といいミミッキュだったと思うんだよね」

 

「おや、お嬢ちゃん。ミミッキュがどうかしたかい?」

 

「あ、さっき追いかけまわしていませんでした?」

 

 話しかけてきたのは海の男、船乗り。

 アローラにはいないのかと思っていたがいるのか。

 いや、他の地方から船に乗ってやってきたという可能性もあるか。

 

「ああ、俺も昨日聞いたな。なんでもピカチュウによく似た偽物らしい。ゴーストタイプで子供たちが怖い目に遭ったと泣いて叫んでいるそうだ」

 

「へぇ、そんなことが」

 

 この世界で生きてきて、気づいたことがある。

 ゲームほどゴーストタイプが受け入れられていないのだ。

 モンスターボールやボックスなど、現代日本でもびっくりな化学力を持ちながらこの世界は迷信が強すぎる。

 いまでも悪いことが起こるとゴーストタイプや悪タイプのポケモンの仕業だと思っている人が多い。

 まぁ、なまじ存在が確立されているから矛先にしやすいのかもしれないけれど。

 

「ゴーストタイプのポケモン達は生きにくいでしょうね」

 

「なんだい嬢ちゃん。あのポケモンの事を気にかけるのか。やめとけやめとけ、ゴーストタイプなんかと関わるとろくなことがないぞ」

 

「……失礼します」

 

 まあ、そんなものだ。

 人間、自分の意思を持っているようでいて、意外と集団の意見だったという場合が多い。

 ミーティングで誰も発言しなければ意見が出しにくいでしょ?

 何を言っても許される雰囲気だと軽口を叩けるでしょ?

 思っている以上に、周りからの影響力を受ける弱い生き物なんだよ。

 

 船乗りも、実際自分が恐怖体験にあったことは無いだろう。

 もしかするとあるかもしれないが、ポケモンの仕業だったという事例はないだろう。

 意外とポケモンっていうのは悪さをしない。

 人間が恐ろしい生き物だと分かっているのだろう。

 なんていったってボールに収められると一生服従だもんね。そりゃそうよ。

 

 だから、ミミッキュもきっと悪くないんだよ。

 

(だけど、ごめんね)

 

 私には、君を助けてあげるすべがないから。

 ごめん。

 ごめんね。

 

 あのあとビーチに戻った。

 母と、疲れ切った弟と妹と一緒にホテルに帰った。

 影縫いでも喰らったかのように、足が重かった。

 

(後悔、しているんだ)

 

 だけど、ミミッキュを追いかけてどうすればよかったというのか。

 トレーナーでない私はモンスターボールも持っていない。

 ポケモンフードも持っていない。

 ミミッキュの手助けをする手段なんて私は持っていないんだ。

 

(それでもできたことがあるんじゃないか)

 

 そんな声が頭に響く。

 かぶりを振ってそんな考えを追い払う。

 そんなことをしていると、みんなとの間に距離ができてしまった。

 

「ルリ、どうしたの? 調子悪いの?」

 

「お母さん」

 

 本当に、それでいいのか。

 

 そんな声が頭に響く。

 

 うるさいうるさいうるさい。

 

 ああもう! やってやろうじゃないか!

 

「私、やり残したことある! ホテルで待ってて!」

 

「え、ル、ルリ!?」

 

 母が私を呼び止める声を置き去りにして走り去る。

 伊達にダンスやら殺陣やらしていない。

 子供らしからぬ速さで駆け抜ける。

 

 私が向かったのは乗船所。

 ゲームだとプレミアボールをくれるNPCがいた。

 だから、もしかするとくれるかもしれない。

 私の願い通り、プレミアボールをくれた。

 これでミミッキュを捕まえることができる。

 

 その後は、昼間ミミッキュを見かけたビーチの方に走り出す。

 ミミッキュの事はよくわかる。

 何故なら私も前世はぼっちだったからだ。

 

 長い間ぼっちでいると、特殊なスキルを覚えるようになる。

 それはコミュ障やあがり症などのバッドステータスが多いが、時おり優秀なスキルも手に入る。

 例えば、気配を弱める能力、そして人気が少ないところを選ぶスキルだ。

 人と関わらずに済む場所を経験的に把握する能力が開花してしまうということだ。

 

 ミミッキュはおそらく、誰一人味方がいない状況だろう。

 そうなれば、人が立ち寄らないような場所に移動することが考えられる。

 人が立ち寄らない場所なんだから普通は気付かない。

 だけど、ぼっちにとっては、一番わかりやすい場所だ。

 

「そう、例えばビーチの裏側とかね」

 

「ミミッキュッ!?」

 

「ああ、慌てないで、落ち着いて聞いてほしいの。一緒にこの島を出ない?」

 

「ミ、ミミッキュ?」

 

 ポケモントレーナーでない。

 ポケモンブリーダーでもない。

 だけどそれは現時点でのことで、一生成れないわけじゃない。

 

「もし、ミミッキュが良ければ……」

 

「いたぞ! こっちだ!」

 

 背後から大声が響いた。

 心臓が跳ね上がる。

 背中から汗がドバドバと流れだす。

 錆びついたブリキのように、カクカクとした動きで後ろを振り返る。

 

「まぁ、女の子を連れ去っているわ!」

 

「やっぱりゴーストタイプのポケモンは悪いやつだったんだ!」

 

「な、ミミッキュは悪く……」

 

「お嬢ちゃん! 早くこっちに来るんだ!」

 

 大人が駆け寄ってくる。

 何故か自分が悪いことをしたようで、体が動かなかった。

 

「もう大丈夫だ。後ろのおじさんたちの後ろに隠れていなさい」

 

「いや、いやだ、ミミッキュ!」

 

「どうやら錯乱しているみてぇだな。やっぱりゴーストタイプなんて町に入れるべきじゃなかったんだ」

 

 大の大人に連れられて、ミミッキュが遠ざかっていく。

 布に描かれた表情に、変化なんて訪れない。

 だけど、悲しんでいるのが、泣いているのが分かった。

 仮面をつけて、自分を押し殺しているポケモンを、私は見捨てる事しかできないのか。

 

「……ばけのかわ」

 

 思い返すのはゲーム内におけるミミッキュの特性。

 どんな攻撃であろうと、一度だけ無傷にできる壊れ特性。

 だけど本来の意味は違う。

 

 私は何だ。

 アイドルか?

 違うだろう。

 今この場で私は――。

 

 ――役者になる。

 

「痛い! 腕が痛いよ!」

 

「あ、お嬢ちゃんすまねぇ」

 

 

 おじさんが慌てて腕を離す。

 私はよろめいたふりをして、反対の手で砂を掴むと巻き上げた。

 

「なっ!」

 

 人力の『すなかけ』だ。

 あれだけの量を不意打ちで喰らえばしばらく目が使い物にならないだろう。

 今のうちに急いでミミッキュに駆け寄った。

 

「ミミッキュ! 逃げるよ!」

 

「ミミッキュッ!」

 

「しまった! きっと操られているんだ!」

 

「くそ、なんて卑劣な奴なんだ」

 

 何とでも言うがいい。

 いくら足が速いといっても子供の足だ。

 普通に走って入ればすぐに追いつかれる。

 

「ああああ!」

 

 掛け声とともに海に向かって走り出す。

 

「お願い! マンタイン!」




ミミッキュって使うの難しくないですかね。
対戦相手はミミッキュと戦いなれてるから処理ルート決まっているけど、こっちはどう対策してるのか分からないわけじゃないですか。
私は使うの苦手ですね。
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