ルリった!   作:HDアロー

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12さん、暁 ののの!さん、鬱ボット@さん、金木犀さん誤字報告ありがとうございます!
誤字多すぎワロター! いや笑い事じゃないんだけどね。

原点にして頂点のお通りだァ!
と、その前にもう少しだけアデクのターン


九話 「赤より紅い夢」

「私とバトルして、通じ合えましたか?」

 

 目の前のおじさんを煽る。

 ねぇねぇ今どんな気持ち?

 子供を諭そうとしてボコボコにされて。

 わたし、気になります!

 

「あれからさらに、強くなったんだな」

 

「いつからかはわかりませんが、まあ強くなりましたよ? でも、それだけじゃない」

 

 腰をついたアデクの前に立つ。

 手を差し伸べる。

 俳優として身に付けた笑顔。

 観客席からは私が言う言葉なんて予想だにしないだろう。

 

「あなた、弱くなってますよ」

 

 口の動きは変えておく。

 読唇術とか使われると厄介だからね。

 アデクを立たせて退場口から会場を後にした。

 

 ガブにヒメリの実を与えていると、アデクがやってきた。

 

「それだけの強さ、どう扱うつもりだ?」

 

「どうもこうも、自分の未来を切り開くための手段でしかないですよ。強くなるのはその過程の副次作用でしかないですし。それよりも」

 

 ガブをなでてからボールに戻す。

 鮫肌にも慣れたもので、昔みたいに切り傷だらけになることは無い。

 

「あなたは、自分の強さをはき違えている」

 

「試合前にもそう言っていたな」

 

 アデクに向き直りそう告げる。

 試合前の威圧感はもうない。

 こちらの方がアデクらしい。

 

「あなたの強さは優しさに起因するものでしょう? そんなあなたが力に任せて道を強制しようとする。だからいつも負けるんですよ。大事なところでね」

 

 アデクの顔が引きつった。

 いつとは言わない。

 けれどアデクには、二年前の事だと分かっているだろう。

 Nに敗れた、あの日の事だと。

 

「トウヤとNの戦いを、あなたは見ていなかったでしょう? あなたを負かしたNを彼は倒した。実力は拮抗していた。何が勝敗を分けたと思う?」

 

「……」

 

 アデクは沈黙を守る。

 あの場にいたのは私だと言っているようなものだが、もういいや。

 どうせバレることを前提にこの場に赴いたんだ。

 弱り切ったこの人相手に知られたところで別に痛手にならない。

 

「彼らの強さは彼らの信念だったのよ。拮抗していたのは、どちらにも譲れない信念があったから。分水嶺は迷いの有無よ」

 

 あくまで私の結論でしかない。

 それでも、私にとっての最適解であり、唯一解である。

 

「Nは最後に、自分のやっていることは正しいのかと自分を疑った。自分の信念に鈍りを生み出した。トウヤは最後まで自分の信念を貫き通した。実力が拮抗したとき、気持ちが強い方が勝つ。あたりまえでしょう」

 

 野球でもなんでも、最後の大会では最高学年が猛威を振るうということがよくある。

 それはひとえに、最後の大会という特別な思いを背負っているからだ。

 その重みを推進力に変えられるものだけが高みへと昇り詰めることが許される。

 

「あなたの信念は何だった? 人に高説を解くこと? 力で言うことを聞かせる事? そうじゃないでしょう。あなたの信念は、ポケモンとともに生きる事でしょう」

 

 豆鉄砲を食らった鳩のような顔をするアデク。

 だがまだ終わらせない。

 

「そんな不純物の混じった信念に、私は負けません」

 

 ニカっと。

 年相応の無邪気な笑みを浮かべる。

 アデクは憑き物が落ちたような、清々しい表情をしていた。

 

「君の信念を、教えてもらってもいいかな?」

 

 試合前と同じような質問。

 だけど、今なら答えてあげてもいいかなという気になれる。

 この誰とでも打ち解けられる雰囲気が、アデクという人物だ。

 

「一緒ですよ。ポケモン達といつまでも、どこまでも一緒に。それが私の望みです!」

 

 椅子から腰を上げ、会場へ向かう。

 そんな私を、アデクは孫のように見送った。

 

「チャンピオンズトーナメント! 準決勝戦! 最初に入場するのは彼女! イッシュ地方を代表する天才少女、ルッコだー!」

 

 私は帰ってきた。

 この血と汗と屍で築き上げられた戦場に。

 対戦相手は確認していない。

 まあ誰が来ても手持ちを変えられないし。

 せいぜい先発をだれにするかくらいだ。

 

 だから大事なのは、自分のコンディション。

 ルーチンワークをこなし、調子を確認していく。

 うん、絶好調。

 

 その時だった。

 

 向かいの入り口から、風が吹いた。

 ドーム状の、無風の決戦場にだ。

 

 私は覚悟する。

 なるほど、これが原点か。

 

 入り口から、紅色が姿を現す。

 

 私は意を決する。

 なるほど、これが頂点か。

 

 黒いグローブを赤い帽子のつばにかけ、彼は現れた。

 

「相対するはカントー地方からやってきたリビングレジェンド! レッド!」

 

 私の前に現れたのは、原点にして頂点だった。

 

 落ち着け。

 心音が耳を裏側から叩く。

 さすがの私でも、これは緊張するよ。

 

(これが、リビングレジェンド)

 

 纏うオーラが違う。

 一体どれだけの信念を持てば、どれだけの思いを背負えばその領域にたどり着くのか。

 私には分からない。

 けれど、気持ちで負けるわけにはいかない。

 

(先発の可能性として高いのは素早く火力も高いピカチュウ、あるいは場を荒らせるリザードン)

 

 どちらにも対応できるポケモンはガブだが、それ以外の四体には不利を取る。

 それでもガブから出さなければ下手すれば初手から試合が終わるという場合もある。

 選出を縛られるのはきつい。

 

「準決勝戦、開始です!」

 

 私とレッド、二人が一体目を繰り出す。

 レッドの一体目はリザードン。

 私の一体目は。

 

「お願い! ロア!」

 

 ファイアローだった。

 

「レッドさんの一体目はリザードン! 対してルッコさんの一体目はファイアロー! 奇しくも炎飛行対決! これをどう見ますか?」

 

「すこし意外な展開となりましたね」

 

「といいますと?」

 

「まずレッド選手の一体目。ここまでルッコさんはガブリアスとファイアローのみで戦ってきました。カメックスやラプラスであればどちらにも有利を取れます。そのためリザードンというのは意外と言えるでしょう」

 

 本当にこの解説は無能だ。

 初手のリザードンはあるあるだぞ。

 そして初手に出てくるリザードンは。

 

「こ、これは! レッド選手のリザードンが姿を変える?!」

 

 

 大体メガリザードンYだ。

 

 

「これは、メガシンカですね。絆の力で戦闘中のみ限界を超えた進化を可能にする、そんな技術があると聞いたことがあります」

 

「なんと、ここにきて切り札を切ってきたのか! さすがはリビングレジェンドだ!」

 

 日照りが大地を焼き焦がす。

 今回、ロアから出したのは空中戦にしようと思ったからだ。

 ゲームならば岩技を持っているガブリアスが有利だった。

 けれど実際問題、機動力を持った三次元的に移動する相手にそんな攻撃が当たるわけがない。

 いや、当たらないわけじゃないけれど、それを当てにするのは楽観的過ぎる。

 それならばこちらも空中機動に長けたポケモンで迎え撃とうという作戦だ。

 

「それにしてもルッコ選手のファイアローというのも分からないですね。レッド選手の手持ちで先発を任される可能性が高いのはリザードンとピカチュウ。ガブリアスならばどちらにも対応できますし、読まれた場合にも水タイプに対してはガブリアスもファイアローも不利である事に変わりはありません。わざわざファイアローから出した意図、それが何なのか気になるところですね」

 

 分かってるじゃん。

 この勝負、ガブリアスから出すのが一番妥当だ。

 リザードン相手でも岩技が当たるお祈りができるし、氷の威力を半減するヤチェの実を持たせておけば誰とでも渡り合える。

 だがガブリアスから出した場合、リザードンが引いてしまう可能性がある。

 

「それじゃダメなんだよねぇ」

 

 私のロアと、レッドさんのリザードンが空中戦を繰り広げる。

 お互いに指示はない。

 静寂を保つトレーナーと、激しくぶつかり合うポケモン達。

 このような場では珍しい光景だった。

 

「ロア!」

 

 先手を打ったのは私。

 このために仕込んでおいた初見殺し。

 その技を繰り出すように指示をする。

 

「しぜんのめぐみ!」

 

 至近距離から放たれた技が、リザードンを襲った。




レートだと使いづらい技を使うの楽しい。

実はレッドさんもルリと戦うのを楽しみにしていて、真正面から叩き伏せようと思って初手にリザードンを据えたというわけです。
一瞬でも躊躇いを見せるようなら、わずかでも気を抜くならば、即刻試合を終わらせるという宣戦布告です。
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