滅龍剣と謎のキグルミ   作:ケツアゴ

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ラティのコンセプト 誇り高い貴族令嬢


第四話

「レーちゃん、僕、重要な事を思いついたんだけど聞いてくれるよね?」

 

 近隣の町まで後少しといった街道近くでの野営中、レヴァは両手に抱えるほどに大きいマンガ肉にかぶりついていた。ブチブチという音と共に口の中に脂と肉汁が溢れ出し旨味が広がって行く。アンノウンの部下である黒子が何処からかで狩ってきたモンスターの尻尾を秘伝のタレで食べられる柔らかさにしたのだが美味しかった。

 

「えっと、何ですか? ……それにしても美味しいお肉ですが何の肉でしょうか……」

 

 この時点で胃がキリキリ痛み出すレヴァは絶対何かあると不安になりつつも肉の美味しさに救われる。尻尾を持って来た時、アンノウンにだけに聞こえる声で話す黒子に対してアンノウンが天空主だのエクスカリバーの唐揚げにしようだの聞こえたが聞かなかった事にした。

 

「ほら、これから情報収集とか旅費稼ぎのために冒険者になる予定だったでしょ? 前回の冒頭にも今後の展開で仲間になる冒険者の女の子が出て来たし」

 

 メタ発言をしながらアンノウンが差し出したのは複数の国にまたがって運営される冒険者組合の勧誘チラシ。モンスターの動きが活発化する今、少しでも多くの強者を集めるべく必死なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもファンタジー者で主人公が冒険者になったり、最低ランクだからって少し上の冒険者に絡まれて返り討ちにしたり、高ランクの冒険者の依頼になるようなモンスターを倒して特例で昇進したりとかテンプレは食傷気味だし止めておこう。って言うか報酬額とか考えるの作者が面倒臭いってさ。……ぶっちゃけ最近終了した別のオリジナルと反応が雲泥の差だしね」

 

「メタ発言にも程があるっ!? で、でも旅費はどうやって稼ぐんですかっ!?」

 

「大丈夫大丈夫。僕に任せておいてよ!」

 

 不安しかないレヴァであったが言っても無駄なので口にしない。胃がキリキリ痛む中、黒子が彼女に胃薬を差し出した……。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ無利子無担保無返却でお金貸ーして!」

 

「仕方有りませぬな。パンダは我々の神が定めた守護聖獣。幾らでもお貸しいたしましょう」

 

 翌日、辿り着いた街の貴族の屋敷を訪ねたアンノウンは難なく路銀を手に入れる。その様子を隣で見ていたレヴァは背後で黒子がコインの中央の穴に紐を通して揺らしているのを首を捻って眺めていた。

 

 

 

 

 

「客、か……」

 

 一方その頃、扉をノックする音が聞こえたグラムは丁度扉の近くに居たこともあって気怠そうにしながら扉を開ける。欠伸をかみ殺しながら客の顔を見た途端に扉を閉めようとするのだが、其れよりも先に至近距離まで詰め寄られた。

 

「グラム様ー! 私ですわー! 貴方のラティが来ましたわよー!」

 

「留守だ。今すぐ帰れ」

 

 至近距離、それも息が掛かる距離に顔を近付けうっとりとした表情を向けてくる美少女。レヴァとは違い胸も大きいので服ごしに当たっているがグラムにその辺を気にしている様子は無い。苦手極まりない相手と会った、そんな表情だ。

 

 反対にラティは見るからに発情し、優雅さ風雅さ全て見るも無惨に消え去っている。器用なことにグラムに密着したまま服のボタンに指をかけ、鼻息荒く息を吸い込んでいる始末。

 

「ああん! 相変わらずつれないお方。そして何より磨き抜かれた職人の肉体。……すーはーすーはー! 馨しい汗の香り。私、もう我慢が出来ませ……きゃんっ!?」

 

「お嬢様、全身の筋肉を休ませろ。過負荷ばかりがトレーニングではない。それと忍耐力も必要だ」

 

 背後からの綺麗な当て身でラティの意識を刈り取ったミョルニエは俵担ぎで主を持ち上げるとグラムに一礼して去っていく。一安心だと冷や汗を拭う彼であったが、此処で一つの疑問が生まれた。

 

「俺の居場所はあのパンダの結界で容易にわからねぇ筈だが……うん?」

 

 目を凝らしてミョルニエの向かった方向を見てみれば木に背中を預けグラムを見ながらサムズアップする者達の姿。その者達はハシビロコウとウサギのキグルミであり、そもそも別の土地に住んでいた時にラティと出会ってしまった時に見た覚えがあった。

 

 

 

 

「……何してやがるんだ?」

 

 それは魔族への迫害が鬱陶しいからと移り住んだ田舎での事。村近くの森に住み、偶に鍬やら鎌やらを打って食料と交換していたのだが何時の間にかアンノウンが居候として住み着いており、そうなった経緯は忘れたが気にしていない。そんなある日、アンノウンと黒子、そしてハシビロコウとウサギが浴槽を運び出していたのだ。

 

 

「これ? 今から寒冷地でソリ遊びに行くからソリに改造するんだ」

 

「誰がんなことを許した? ってか、俺はその間風呂をどうすればいいってんだよ」

 

「確かにグッ君って汗くさいからお風呂に入った方が良いよね。じゃあ、お土産に南国のフルーツを買ってくるから楽しみにしていてねー!」

 

 アンノウンが取り出したボタンを押すと浴槽の底からプロペラが出現して高速回転、あっという間にアンノウン達を乗せて空の彼方へと去っていく。但し黒子は途中で落ちた。頭から地面に突き刺さってピクピク痙攣していたがグラムは無視してその場を去るのであった。

 

「湖で洗うか……」

 

 既に仕事後で体中が汗臭いグラムは水浴びをしようと近くの湖の水にタオルを浸し、上半身裸になって拭いていたのだが背後から女の声がして振り向く。其処にいた者こそラティだった。

 

 

 

「悪いな嬢ちゃん。ちょいと風呂が使えなくて……」

 

 謝罪しつつも身なりや何か困惑した様子から何処ぞの貴族令嬢が魔族を見て戸惑っているのだと思ったのだが、彼女の口から発せられた言葉にグラムが困惑した。

 

 

 

 

 

「その筋肉、素晴らしすぎますわぁあああああああああああっ! 今すぐ私と結婚してくださぁああああああああああああああい!」

 

「……はい?」

 

「ああ、良いのですね。ふふふ、では今から夫婦の共同作業と参りましょう。……初めてが野外とは恥ずかしいですが、その筋肉はこの場でより映える物。さあ! 熱く燃え上がりましょう!」

 

「……暑さで頭がイかれたか?」

 

 何とかこの場は説得して凌いだが、婚約者からですね!、と勘違いされ逃げるために今の土地に引っ越したのだ。だが、結界でアンノウンが嫌がる相手はたどり着けない筈にも関わらず場所が知られてしまった。

 

「……あのパンダ、帰ってきたら絶対殴る」

 

 強くグラムが心に誓う中、レヴァも困った事態に陥っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこのキグルミの人、私を弟子にして」

 

(アンノウンさんはどう見てもパンダなのにキグルミとか……いや、彼女は冒険者みたいだし、きっと悲しいことがあって心が……)

 

 周囲にチョコクリームの臭いが立ちこめ蛇の身体を持つ獅子が納豆の沼に沈む中、雪達磨を頭に乗せた少女が木につり下げられながらアンノウンに弟子入りを志願するという事態に巻き込まれたレヴァは何かを察し、口を挟むのを止めるのであった。




……だったが急に変態にしたくなった
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