ダンガンロンパ・コネクト~問題児だらけのコロシアイ学園生活~ 作:ノドクル
「んっ、んんっ……」
重い瞼を持ち上げると、そこは見た事もない景色だった。
「ここは……教室?」
どうやら俺は机に突っ伏して眠っていたらしい……居眠りなんて今までした事なかったのにな。
……いや、ちょっと待て。
「俺、いつの間に教室に来たんだ?」
おかしい、俺は確か希望ヶ峰学園に入学式のために来て……来て……
「それから、何があったんだ」
脳を総動員させていくら思い出そうとしても、俺の記憶は校舎に入ろうとするところで途切れていて。
仮に俺が校舎に入ってすぐに倒れて運ばれたんだとしても、だったら教室じゃなくて保健室とか病院で目を覚ますはずだ。
「それに、なんだこの教室……」
混乱したまま周囲を見渡してみても、混乱は晴れるばかりか深まるばかり。
だって窓があるらしき場所は鉄板で塞がれて。
教室の隅には場違いな監視カメラがある。
異常だ、いくらなんでも異常すぎるじゃないか。
「とにかく、外に出よう」
教室を出ると待ち受けていたのは薄暗い廊下。
不安感を煽るような暗闇、さらにここにも監視カメラや鉄板……本当になんなんだよこれは!?
「誰か、誰かいないのか!?」
ここに一人でいるなんて耐えられない……俺は不安を振り切るように廊下を走る。
「くそっ!」
だけど。
「ここは開かない……!」
どれだけ部屋を見て回っても。
「っ、通行止めか!」
誰もいない、そもそも鍵がかかったり塞がっていたりで入れない部屋ばかり。
「……」
まさか本当に俺しかいないのか?
そんな最悪の結論にさえ達しそうになりながら一際大きな扉を開くと。
「あっ……」
複数の視線が一斉に俺に向けられた。
「おいおい、まだ人がいたのか?」
「こ、これで十六人……ちょうど男女半々ってところかな」
「チッ、悪吐蠱【オトコ】か」
反応は様々だけど、今の俺にはどんな反応でも救われたような気分になる。
「ちょっと大丈夫ですか?もしかして泣いてます?」
「えっ、いや」
さすがに泣いてはいないはず……目が潤んでは、いる気がするけど。
「ま、まさかまだ増えないでしょうね」
「アッハッハッハッ!それも賑やかでいいじゃないか!」
「フン、これ以上塵が増えられても困る」
「あ?てめえ今、なんて言いやがった!?」
「ハイハイ、落ち着いて落ち着いて。はいグローブ」
「オラァ!」
「うん、いいパンチだよ!」
「な、なんで殴られたのに笑ってるの……?」
だけどこうして冷静になってみると……なんか変わった印象を受ける奴が多い。
「あの、どうでもいいんですがこれはどういった集まりなんですか?」
「中には知ってる顔もいるけど……」
「なら自己紹介でもしてみましょうか?そうすれば自ずと共通点も見えてくると思います」
「あちしも賛成でちゅ!」
自己紹介か……
「ではでは、言い出しっぺの私から!」
そう言って一歩前に出たのは、さっき俺に大丈夫か声をかけてきた女の子だ。
時折着けている丸い眼鏡の位置を直しながら、メモ帳に何かを忙しなく書き込む姿はどことなく小動物を連想させる。
「私は新木良香!世間では【超高校級のリサーチャー】と呼ばれています!」
新木 良香【アラキ ヨシカ】
【超高校級のリサーチャー】
新木良香……確かあらゆるジャンルのリサーチをして企業とかにその情報を提供しているとか、個人を調べさせたら全て丸裸にしてしまうほどの調査能力を誇るとか言われてたな。 その噂が本当なら確かに【超高校級】にふさわしいだろう。
「リサーチしたい事があればこの私にお任せを!それではあいうえお順にいきましょう!」
「だったらきっと次はあちしでちゅね!」
名乗りをあげたのはウサギのぬいぐるみ……ブンブンと杖を振り回すその姿はまさに異様だ。
「あちしはウサミ!魔法少女やって……」
「えいっ!」
「きゃあっ!?」
ウサミを名乗る着ぐるみの頭が後ろから近寄った……俺が来た時舌打ちした女子に奪われる。
その下から出てきたのはかなり整った顔立ちをした女の子で、着ぐるみの頭を奪った女子は満面の笑みを浮かべていた。
「やっぱりボクの目に狂いはなかった!着ぐるみの中にこんな可愛らしい天使がいたなんて!」
「か、返してください!」
「そんな!キミのような天使が姿を隠すなんて……」
「うっ、ううっ……」
あっ、泣かせた。
「うわあああっ!?な、泣かないで天使!今返すから、ほら!」
「ぐすっ……」
慌てて返された頭を再び着けてウサミはまた杖を振り回し始める。
心なしかさっきより勢いは感じられない。
「えっと、あちしはウサミ……」
「もうそういうのいいから」
「……ぐすっ、宇佐見衣です」
宇佐見 衣【ウサミ コロモ】
【超高校級のスーツアクター】
「宇佐見さんと言えば、魔法少女ウサミとして全国で活躍する【超高校級のスーツアクター】ですね!」
「そ、そんな、あちしに中の人なんて……」
「そのくだらない小芝居をまだ続けるのか」
「うっ、ひっく」
「天使を泣かせるとは何事だこの悪吐蠱め!」
「最初に泣かせたのは貴様だろうが」
「ぐっ」
「と、とにかく自己紹介を再開しましょう!次は……」
「わたし」
「うわっ!?」
背後から聞こえてきた声に驚いて振り向くと、そこにはマントを羽織ったボサボサの髪の女の子がいて。
その手にあるのは……振り子?
「宇田川瑛子。大地の声を聞き取る巫女」
宇田川 瑛子【ウダガワ エイコ】
【超高校級のダウザー】
「私の調査によると、宇田川さんは長年見つからなかった埋蔵金を見つけ出した事で一躍有名になった【超高校級のダウ……」
「違う」
「えっ、違うのか?」
「わたしは大地の巫女。大いなる存在に導かれてその力をほんの少し解放しているだけ。決してダウザーなんかじゃない。訂正して訂正して訂正して訂正して訂正訂正訂正訂正訂正訂正訂正……」
ダウザーという呼称が気に入らないのか宇田川は目を見開いて新木に詰め寄る。
……正直、かなり怖い。
「ひいいっ!?」
「なんだよこの電波女は!?」
「早く訂正して訂正しろ訂正訂正訂正訂正」
「わ、わかりました!宇田川さんは大地の巫女!【超高校級の巫女】ってやつです!」
「わかればいい」
新木が訂正すると宇田川はそれまでの殺しかねないほどの雰囲気をあっさりと霧散させて。
そのまま宇田川は何事もなかったかのように、ペンデュラムを持ちながらフラフラと俺達の輪から離れていった。
「……い、一生分の恐怖を味わった気分です」
涙目になりながら呟かれたそんな新木の言葉に同意するのは俺だけじゃないだろう。
きっとその場にいる全員同じような……
「ああ、怒った天使もいい!」
……一人例外がいた。
さっきから異様な存在感を放つジャージ姿の女子……なんで宇田川を見て目をキラキラさせてるんだ?
「あっ、そろそろボクの自己紹介かな!ボクは小田貴美!よろしく天使達、悪吐蠱はノーサンキュー!」
小田 貴美【オダ タカミ】
【超高校級のバドミントン部】
「小田貴美さんは、確か数々の大会で優秀な成績を収めてきた【超高校級のバドミントン部】ですね」
「その通りだよ天使良香!」
「なあ、さっきから言ってるその天使って……」
「チッ、わからない?これだから悪吐蠱は……」
新木に対する対応と露骨に違う態度を見せて小田は仕方ないと言わんばかりに俺を見る。
「いいかな、女の子はみんな天使なんだ!その全てを愛でるに値するこの世界の宝なんだよ!悪の権化で吐き気がする虫……悪吐蠱とは違う!」
さっきから男のニュアンスが変だと思ったらそんな変換してたのか!?
「そういう事だからボクは今天使と戯れるのに忙しいんだ。悪吐蠱はさっさと自己紹介でも勝手にしなよ」
本当にいっそ清々しいくらいの対応の差だ……
……その後回ってきた俺の自己紹介は特に問題もなく終わった。
まあ、他の自己紹介が個性的で実際はこんなものだろ……
「次はオレだな!」
俺の次に声をあげたのは見るからに筋肉ダルマといった感じの男だ。
着ているシャツはサイズが合ってないのかかなりキツそうに見える……
「うおおおおおっ!我慢出来ん!オレを見ろぉぉぉぉぉぉっ!!」
「きゃわあああっ!な、なんでいきなり脱いでるのよアナタは!?」
「見ろ!見ろ!もっと見てくれ!この国希大の筋肉を目に焼きつけるんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
国希 大【クニキ マサル】
【超高校級のボディービルダー】
「国希大さん……ボディービルの世界に突如として現れた【超高校級のボディービルダー】ですね!」
「その通り!さあ、理解したならもっと見るんだこの胸筋!この背筋!この腕の芸術を見てくれぇ!」
「近寄るなこの悪吐蠱!天使にそのおぞましい何かが触れたらどうする!?」
「触りたいのか!ならば遠慮するな!」
「はっ!?やめろ、ボクの腕は天使の柔らかな身体に触れるための、ぎゃあああああっ!?」
国希に腕を掴まれて筋肉を触らされそうになっている小田……調整する必要もなさそうだし放置しておくか。
「やっと俺の番か……時間をかけすぎなんだよこの塵共」
靴音を鳴らしながら眉をつり上げて俺達を睨み付ける男……きっと名前を知らない方が少ないだろう有名人。
「この黒神明哉の時間にどれだけの価値があると思っている」
黒神 明哉【クロカミ アキヤ】
【超高校級の社長】
黒神明哉……現役高校生にして巨大企業黒神グループの総帥に君臨している【超高校級の社長】だ。
その言動から唯我独尊傍若無人が服を着て歩いているだなんて言われてる。
だけど調整役として生きてきたからだろうか……俺にはわかるんだ。
「俺の偉業をわざわざ語ってやる必要もないだろう。さっさと次に行け」
【僕の仕事は説明すると時間がかかるから……次の人、自己紹介どうぞ】
この黒神、本心と実際に出る言葉があまりにもかけ離れてる!
よーく見てみると微妙に震えてるし、多分極度の緊張から口が異常なまでに悪くなるタイプなんだ。
これはまた……調整役をするのに苦労するだろうな。
「さて、そろそろ私の番でしょうか」
白衣を羽織った男がニタニタ笑いながら前に出てくる。
その笑みは、どこか蛇を彷彿とさせた。
「小城津佐也。犯罪研究家です」
小城 津佐也【コシロ ツサヤ】
【超高校級の犯罪研究家】
小城津佐也、数々の事件の隠された真実を暴き出してきた【超高校級の犯罪研究家】。
だけどその犯罪研究への情熱の裏には……とんでもない目的を持っている。
「しかしここはなかなかにいい環境になりそうですね」
「貴様の目的にか」
「おや社長、ご存知でしたか。私が美学ある殺人を追い求めていると」
「び、美学ある殺人?」
「そうですよ?殺人とは美学あるものであれというのが私の持論でしてね。環境、トリック、動機!その全てが美しい殺人を私は追い求めているんですよ!」
「ま、また変な人がぁ……!」
そう、恐ろしい事にこの小城は美学ある殺人を追い求めている事を公言している。
あまりに危険なその思想に警察も要注意人物として監視しているらしい。
「フフフ、期待できそうなこの環境でいったいどんな事が起きるのやら……」
……確かに常に監視したくもなるな。
自己紹介半分まで。
残り八人は次話にて。