ダンガンロンパ・コネクト~問題児だらけのコロシアイ学園生活~ 作:ノドクル
『あーあー!マイクテス!マイクテス!聞こえてる?聞こえてるよね?』
「なんだ、この不快な放送は」
【この放送、なんか変だよ】
いきなり響いた放送……それに対して眉をひそめる黒神の言葉はここにいる全員が少なからず感じた事だろう。
疑念、不快感、恐怖……そんなものを呼び起こすような。
悪意とか嘲りとか、そんなマイナスの感情にこの上ない歓喜の色が混じった、そんな歪なものをこの放送からは感じた。
『これより希望ヶ峰学園の新入生入学式を始めたいと思います!』
「入学式……やはりここにいるのは今年希望ヶ峰学園にスカウトされた新入生でしたか」
「じゃあここにいるのも希望ヶ峰学園のイベントだったって事か!アッハッハッハッ!こりゃ一本取られた!」
「ふざけんな!校舎に入ったと思ったら、いきなりこんなとこに連れてきやがって!」
「あれれ、武宮くんもなの?ボクも学園に来たらいつの間にかここにいたんだよね!」
武宮と南雲の会話に自分もそうだという声が次々にあがる。
そうだ、個性的な面々の自己紹介で薄れていたけど俺も……
「ちょっと確認するわよ。この中にここに来るまでの記憶がある人間はいる?」
狭山の問いかけ……それに答えられる人間は誰もいない。
それは多少のズレこそあるものの全員が俺と同じように校舎に入ろうとした辺りで記憶が途切れて、ここにいたという事実。
そんなあまりにも異常な事実をはっきりと俺達に突きつけていた。
「なんだかキナ臭くなってきましたね……全員がいつの間にかここにいたなんて」
「そもそもここは本当に希望ヶ峰学園なのか!外から見た限りではこんな場所ではなかったはずだぞ!」
「悪吐蠱に同意するのは嫌だけど確かにそうだね。こんな窓が塞がれてるわ、監視カメラは大量にあるわな場所なら……いや、天使がいるなら来たけどさ」
「ぶ、ぶれまちぇんね……」
「もっと褒めていいよ天使衣!」
国希や小田の疑問も最もだ……ここがあの希望ヶ峰学園だとするならあまりにも聞いていた場所と違う。
ここにあるのは希望、というより……
「その蛇、何か知ってる」
ある単語が浮かびそうになった思考を遮るように、宇田川の衝撃的な発言が飛び出す。
「おやおや、なぜわかったんです」
宇田川に指差された蛇……小城は意外だと言うように肩をすくめていた。
「わたしは大地の巫女。それくらい見抜くのは造作もない」
宇田川がなんで小城が何かを知っていると見抜いたかはともかく、あの様子からするとそれは真実らしい。
だけど小城はいったい何を……
「もしかしてツサヤが私達をここに連れてきたデスカ?」
「いえいえ、それは違います。私も皆さんと同じで希望ヶ峰学園に来たらここにいたんです」
「そ、それじゃあ、アナタは何を知っているの?」
「ここがどこか、という事でしょうか……いや、正直あまりにも荒唐無稽な話なんですがね?」
ここがどこか……それは何もわからない俺達にとってみれば有益な情報。
だけどそれは現実離れした内容なのか、小城自身も断言するには迷う結論みたいだ。
「今は少しでも情報がほしい……話してくれないか小城」
「……わかりましたよ。お話しましょう」
俺が改めて問いかけて、小城がやっと重い口を開こうとする。
だけどその前に。
『はい注目!』
それは、俺達の前に現れた。
『これより学園長の挨拶を行います!』
声が聞こえる方向……壇上に俺達は一斉に視線を向ける。
さっきまで何もなかったそこには……今、新しくぬいぐるみが置かれていた。
左右で白と黒に分かれた身体。
白い右半分は普通のぬいぐるみに見えるのに、黒い左半分の禍々しい赤い目やゾッとする笑みを浮かべた口がそのイメージを塗り潰す。
『お待たせしたねオマエラ!今から入学式を始めるよ!』
それが喋っている、動いている。
『ボクはモノクマ!この希望ヶ峰学園の……学園長なのだ!』
希望ヶ峰学園の……学園長を名乗っている。
そんな異常すぎる光景に、俺の頭は数分、いや数秒?思考を停止させてしまっていた。
「これは何のつまらない冗談だ」
【……ドッキリ?】
「クマのぬいぐるみが学園長だなんてリサーチ結果は出ていません!これはいったいなんなんですか!?」
『さてオマエラ入学おめでとうございます!』
「ありがとうございます!」
「あんなぬいぐるみにお礼言っちゃうの!?」
黒神や新木を無視してモノクマは話を進める。
風魔と寝倉の方は悪いけど今は構っている余裕がない……!
『オマエラは今年入学する事となった新しい希望です!』
「アッハッハッハッ!そんな褒められたら照れちまうな!」
『だけど思うんだよね。世の中には危ない事がたくさんあるって』
「そうかな?ボクは天使が溢れた素晴らしい世界だと思うよ……悪吐蠱もいるから確かに危なくはあるけど」
「あちしはここが一番危ない気がしてきまちた……」
「なんだって!?天使衣の光を曇らせるのはいったいどの悪吐蠱だ!?」
『そんな危ない世の中からオマエラ希望を保護するためにこの希望ヶ峰学園はあるのです!』
「ご託はいいわ……何が言いたいわけ?」
『まあ要するに……オマエラには一生ここで暮らしてもらいます!』
モノクマのその宣言に、マイペースだった面々が揃って沈黙する。
だけどそれは、あくまでも今言われた理解しがたい宣言を理解するためのもので。
数十秒もすれば、爆発にも等しい怒号が体育館に響き渡った。
「一生だと!?それはどういう意味だぁ!」
『一生は一生だよ!オマエラは死ぬまでここから出ていく事は出来ないの!』
「ふざけないで。わたしには大地の巫女としての使命がある」
「私もまだ行ってない国があるのに、そんなの困るデスヨ!」
俺達の困惑も、怒りも、まるでどこ吹く風と言うようにモノクマは相手にもしない。
だけどそんなものがいつまでも続くわけがない……この場にはあいつがいるんだから。
「いつまでも舐めた事言ってんじゃねえぞ糞野郎が!」
俺がその名前を頭に浮かべたのと同時に、武宮がモノクマに向かって走り出す。
それはまさに弾丸というのがふさわしい疾走……その勢いのまま武宮はモノクマに蹴りを叩き込んだ。
【超高校級の空手家】の怒りにまかせた蹴り……俺達が受ければ死んでもおかしくない。
『……何かした?』
だけどモノクマはその一撃を受けても、少し凹んだだけだった。
「てめえ、素直に壊れやがれ!」
『嫌だよ!いくらスペアがあるからってなんで壊れないといけないのさ!』
武宮の攻撃をいなしながらモノクマはさらに悪いニュースを叩きつけてくる。
この硬さでさらにスペアがいる……その事実にはさすがの武宮も思うところがあったのか、舌打ちしながらその場から飛び退いた。
「糞野郎が!」
『糞野郎はどっちだよ!このボクのプリティなボディを凹ませるなんて!だいたい話にはまだ続きがあるんだから、最後まで聞く!』
腕をあげて怒りをアピールしていたモノクマは、咳払いを一つして壇上に座る。
『オマエラが一生ここにいるのが嫌なのはわかりました!ボクはそんなオマエラに、帰るためのシステムを用意してあります!』
「帰るためのシステム……それはなんでしょう?」
小城の問いにモノクマが笑い声を漏らす。
俺は、この時……未だに武宮に殴られて気絶したままの佐藤を羨ましく思ってしまった。
『人を、殺すんだよ』
だって佐藤は、こうして直接モノクマに悪意をありったけ込めたような言葉を聞かされる事はなかったんだから。
「人を、こ、殺す?」
『その通り!オマエラ新入生の中の誰かを刺して殴って絞めて落として沈めて斬って燃やして……手段は問いません!人を殺す事がオマエラが帰る唯一の方法なのです!』
……モノクマに帰りたければ人を殺せと言われて、なぜだか俺には予感があった。
「本当か?」
人を殺したからって、それでこのモノクマは帰すわけがないと。
『はい?』
「誰かを殺すなんて確かにそれだけで異常だ……だけど他にも、何かあるんじゃないのか?」
「そうね。こんな悪趣味な存在が人を殺したからって素直に帰すとは思えない」
『いいね!なかなかいいポイントだよそこは!もしオマエラの中で殺人が起きた場合……オマエラには学級裁判を行ってもらいます!』
学級、裁判?
『人を殺した犯人……クロは誰にも気付かれずに殺人を行えたか!それ以外の人間……シロはクロの犯行を見破れるか!』
『それを議論するのが学級裁判だよ!』
殺人が起きた場合、俺達は犯人当てをしなければいけないって事か……!
「あの、もしそこで犯人、クロでしたか。クロが暴かれた場合……クロはどうなるんですか?」
『犯行を暴かれたクロにはおしおきを受けてもらいます!』
「おしおき?具体的にはなんだ、牢屋にでも放り込むのか」
『処刑です』
「しょ、処刑だって!?」
『人を殺したんだから当然それ相応の罰は受けてもらわないとね!死には死を!シンプルでしょ?』
「ならば半分が犠牲になれば半分は助かるわけか?」
【それじゃあシロがクロの犯行を暴けなかったら……】
『その時はシロにおしおきを受けてもらいます!クロにしかペナルティがないのは不公平だからね!』
「なんだよそれ……」
つまり、一度殺人が起きたら必ずシロ全員かクロが死ぬって事じゃないか!?
「なんでだ!なんでそんな事を俺達にさせるんだよ!?」
わからない。
俺達は希望ヶ峰学園に入学する事になっただけの高校生だ。
いったいどうしてこんな事に巻き込まれなきゃ……
『なんでってそれになんの意味があるの?それを聞いたらオマエラは納得するの?』
「それは!」
『嫌なら殺さなきゃいいんだよ!一生ここで生きていく事を受け入れればいいだけ!』
「そ、そんな……」
『さてと説明もしたし、最後に開始宣言をしようかな?』
「開始宣言……」
『コロシアイ学園生活!始まるよー!』
コロシアイ学園生活。
それが俺達が巻き込まれた最低で最悪な日々の、名前だった。
『それじゃあ入学式はここまで!これからオマエラがどんな生活を過ごすか……楽しみにしてるよ!』
モノクマは笑いながら、消えていく。
後に残されたのは、一気に色々なものを叩きつけられた俺達だけ。
「た、大変な事になりましたね」
「コロシアイ学園生活……な、なんでこんな事に」
誰もが困惑していた。
当たり前だ、いきなりこんな……
「フフフ」
「……今笑ったの誰?」
隠そうともしない笑い声……その発生源は、小城だ。
「いやはや、まさか本当に……資料でしか見なかったあの事件が再び起こるとは!」
小城は笑う、この状況が愉しいと言うように。
いや、実際愉しいんだろう……美学ある殺人があるかもしれないんだから。
「揃ったんですね!私の追い求める美学ある殺人のための条件が!」
「お前、何を……!」
「オラァァァァッ!」
「きゃああっ!?」
「おいやめろ!何をしている!」
小城に詰め寄ろうとしたその瞬間、違う方向から悲鳴が聞こえる。
そちらを見れば、武宮が馬乗りになって南雲を殴り付けていた。
「糞が!糞が!糞がぁ!」
「あはは、武宮くんっ!構わないよ、もっとボクを使ってさ!」
なんだよ、これ。
「なるほど、コロシアイか……つまり上手く立ち回れば天使だけの楽園を作れるじゃないか!」
「こんな所にいられない……大地の巫女として生け贄を……」
なんなんだよこれは。
「ちょっと葛城」
「狭山……?」
「あんた調整役だったわね?この状況調整してみたら?」
この状況を……?
「……」
「出来ないの?はぁ、役に立たないわね」
怒号、悲鳴、笑い声。
全てがごちゃ混ぜになって体育館を支配する。
誰でもいい。
誰でもいいから、助けてくれ。
俺は、俺はもう……
「こんなの調整出来るわけ、ない……」
そして俺はさっき頭によぎった言葉を改めて思い出す。
ここにあるのは希望じゃない。
絶望だ。
プロローグ【問題だらけの入学式】END
生き残りメンバー
【超高校級の調整役】葛城潤
【超高校級のリサーチャー】新木良香
【超高校級のスーツアクター】宇佐見衣
【超高校級のダウザー】宇田川瑛子
【超高校級のバドミントン部】小田貴美
【超高校級のボディービルダー】国希大
【超高校級の社長】黒神明哉
【超高校級の犯罪研究家】小城津佐也
【超高校級の平均】佐藤晴斗
【超高校級のグラビアアイドル】狭山真依
【超高校級の空手家】武宮唯我
【超高校級の殴られ屋】南雲青梅
【超高校級の引きこもり】寝倉清美
【超高校級のメイド】風魔千代
【超高校級のガイド】メイリー・ペンティア
【超高校級の運転手】山菊昌平
以上16名。
To Be Continued...
【希望ヶ峰学園入学証書】を手に入れました。
【希望ヶ峰学園に入学した証。
絶望の日々の始まりを告げるとは誰もが思いもしなかった】
NEXT→CHAPTER01【シズメル】
プロローグ終了。
これから本格的に物語が始まります。