殺人が趣味の男   作:筆先文十郎

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殺人が趣味の男

 私は人を殺すのが好きだ。

 と言っても私には人を殺す度胸もなければ殺意もない。殺したいほど憎い相手もいない。

 ではどのようにして人を殺すのか。偶然や事故を装って殺すのだ。

 私が最初に殺人を犯したのはとあるホームレスとの出会いだった。

 私は財布を落としてしまった 財布の中にはその月の生活費が入っていた。

 私は血眼になって必死に探したが見つからない。

 その時声をかけてくれたのが私が最初の殺人を犯すことになるホームレスだった。

 ホームレスは 私と一緒に何時間も財布を探してくれた。 私の服が汚れるからと 自ら しげみや 排水溝の中などを探してくれた。

 財布は見つかり私は財布の一部を謝礼として差し上げようとしたがホームレスの男は自分が勝手にやったことだからと受け取らなかった。

 それでもと私は1000円札を無理やり渡してその場を去ったのだがそれをきっかけに私はそのホームレスと仲良くなることになった。

 ある日。私は家の倉庫に眠っていた植物図鑑を差し上げると同時にとある美味な野草が近くの川で取れる事を教えた。

 今では一定量を口にすると死亡する確率がはね上がる有毒植物と指定されているのだが、植物図鑑が作られた時はまだ無毒なものと認識されていた。

 そのことを私は教えなかった。

 翌日、ホームレスが死んだ。死因は私が教えた野草の大量接種による中毒死だった。

 私に疑いの目が向けられることはなかった。

 ホームレスの家であるダンボールハウスには私があげた植物図鑑があったが、その植物図鑑が元々私のものだったとは私とホームレス以外は知らないからだ。

 仮に植物図鑑がもともと私のものであったことが判明としても、私が「無毒の野草が有毒だったと知らなかった」と言えばそれ以上の追及は不可能だから。

 誰にも裁かれることなく人の命を奪っていく快感に酔いしれた私は次々と偶然を装って人を殺めた。

 隣の家の車のタイヤにヒビが見えて、そう遠くない内にバーストすることを知りながら私は何も言わなかった。数日後。車の持ち主は私の予想通り高速道路でバーストを起こし、壁に激突した後に後続車にはねられ死亡した。

 運転中、道路で倒れていた妊婦を病院に連れて行くことになった時には、同じ距離に腕のいい産婦人科があることを知りながら私は悪い方の産婦人科に妊婦を連れて行った。結果、お腹の子も母親も死亡した。

 杖を持ったおばあさんが踏み切り内でパニックを起こした時には戻った方が助かったにも関わらず、「早く渡るんだ!」と嘘のアドバイスを送った。結果、おばあさんは踏み切り内で転倒。急ブレーキをかけていた列車に跳ねられ死亡した。

 こうして私は次々と殺人を犯した。その数はすでに10人以上にものぼる。しかし私は裁かれることはない。なぜならば誰かが私を疑おうとしても、私が「知らなかった」、「気がつかなかった」と言えばそれ以上の追及はできないからだ。しかも計画を立てて殺害を実行したのではなくあくまでも偶然起きたことを利用しているにすぎない。

 私が殺人を犯しているのは誰も立証できなかった。

 今後も私の殺人は続くだろう。私が死ぬその時まで。

 

 ビュウウウッ!!ガタンッ!!

 

「ん?今日は風が強いな。こんな日は看板か何かが落ちて来て頭に―――」

 




推理ものを書こうとした過程でふと思い付いたので書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
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