黄瀬の軌跡   作:比古

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2話 エース 黄瀬涼太

翌日

 

 

「さぁ、勝負してもらうで」

 

部活を始めるためバッシュを履いている黄瀬の目の前に本田はこう言い放ち立っていた。

 

「これから部活始まるんスけど…」

 

「そんなことは関係あらへん! 勝負や、しょうb」

 

ゴツン!!

 

「関係ないわけないだろ! 今から練習始まるってのに何勝手なことしてんだよ!」

 

本田のめちゃくちゃな言い分に笠松の鉄拳が炸裂した。

 

「勝負はいいがそういうことは練習が終わった後にでも勝手にやれよ」

 

「うぅ…」

 

笠松の正論に本田も頭を抑えしぶしぶながら納得し練習が始まった。海常高校の練習はI・H常連校だけあってとても厳しいものだ。基礎からそれを応用したものまでみっちり。しかしながらこの日は練習を早めに切り上げさせ、監督の武内が部員を集合させた。

 

「今から20分間のゲームを行う。内容は1年対上級生負けた方は罰ゲーム。1年はどんどんメンバー変えてくから準備しとくように! 今から10分後にスタートだ!」

 

そう言ってみんなに準備させた。

 

笠松「1年の実力を見るためですか?」

 

武内「あぁ、実戦でどれだけ使えるかをみたくてな。それに…」

 

笠松「…?」

 

笠松は武内に話しかけこのゲームの目的を聞いた。武内はこの問いに答えたが他にも理由はあるらしくそこは濁している。

 

 

「よし、 始めるぞ! まず上級生チームは2年がでろ!」

 

上級生チームは3年はでないらしくスタメンである早川、中村を中心のチーム。対して1年チームは本田、甲斐がでている。黄瀬はまだでないようだ。

 

「おい恭平、せっかくやるなら3年とやりたないか?」

 

「そうだな、けどそれは監督しだいじゃ…」

 

本田ニヤリ「やったら引きずりだせばええんや、ごっつ点差つけてな!」

 

甲斐もニヤリとし

「おもしろい、やってやるか!」

 

そして

一同「お願いしまーす!」

 

あいさつをし、試合が始まった。ジャンプボールは上級生が制したが本田がボールを獲り速攻をしかける。

 

「いくで!」

 

本田のスピードは早く追いついたのは2人。1人目をクロスオーバーでかわしもう1人が寄ってきたところで外にだす。

 

 

ザシュ!!

 

 

ボールを受け取った甲斐がいきなりスリーを決めた。

 

小堀「おぉ! いきなり決めるのも凄いがそれを打てる度胸が中々だな」

 

しかし上級生チームもパスワークで崩しゴール下から2点獲った。コンビネーションに関しては即席の1年チームよりは上である。

 

 

続いて1年の攻撃。何回かパスを回したあと本田がしかける。

 

ダム!!

 

一歩で抜く。それを止めようとディフェンスが寄ってきたところでまた外にだす。これを…

 

 

ザシュ!!

 

 

また甲斐が決めた。

 

 

森山「な…!? すごいな、いきなり2連発か」

 

本田「よっしゃ! ナイスや、甲斐!」

 

甲斐「おうっ!」

 

甲斐の二発で流れに乗る1年チーム。さらに今度の上級生チームの攻撃を甲斐がインターセプト。すでに走ってる本田にパス。上級生チームはPGの選手がかろうじて追いついてるだけ。シュートを止めようとブロックするが…

 

ドン!!

 

ピピッー

「バスケットカウントワンスロー」

 

「すげー、3点プレー3連発か…」

 

「笠松、あの2人どう思う?」

 

「かなり上手いですね。即戦力でも十分行けると思います、2年じゃちょっと止めきれないかも…」

 

上級生は1年チーム、いや本田と甲斐の実力に驚いており、武内は笠松に2人をどうみるか聞いている。

 

武内「どの攻撃も本田が起点となっているな。お前なら本田をとめれるか?」

 

笠松ニヤリ「もちろん!」

 

 

「へぇ〜 あの2人結構やるっスね〜」

 

「うん、2人ともかなり上手だよ」

 

黄瀬が2人の実力に少し驚いていると横から女の子の声がした。振り向くとそこにはマネージャーのなつきが立っていた。

 

「えっと… 朝香さんだっけ?あの2人のこと知ってるの?」

 

「うん、知ってるよ。まず金髪の本田君はその攻撃的な見た目通りガンガン自分で切り込んでいくタイプのPGね。そこからその強靭な身体でファールをもらったり外の味方にだしたりするの。イケメンの甲斐君は今のところ3点が目立ってるみたいだけど… あっほら!」

 

 

黄瀬に聞かれたなつきは2人のことを説明しはじめた。本田のことを詳しく話した後、甲斐の説明時に突如コートに目を向けさせたのである。そこでは甲斐がボールを受け取り右からマークしている選手を抜きにかかった。この動きにマークしている選手もくらいつくが甲斐は急ストップし股の間でワンドリブルしたあとミドルを決めていた。

 

「あれよ! 甲斐君は強みはスリーだけでなく1人で切り込めるテクニックとスピード、そして外でも中でも決めれるそのシュート力ね」

 

「朝香さんって詳しいんスね。」

 

「なつきでいいよ。んっと私中学でもマネージャーやってって2人ともあたったことあったから」

 

なつきの詳しい説明に黄瀬は関心した。

その後試合はディフェンスでは2年チームをとめきれないこともあったがオフェンスは本田の甲斐の圧倒的な攻撃力で1年優位の形で進んでいった。

 

 

そして7分が経過したころには17-8になっていた。

 

ピピッーー!!

 

「笠松、小堀、森山行ってこい。ウチの厳しさを教えてやれ!」

 

「ったく、なにやってんだ!海常の選手がついこの前まで中坊だったやつらに負けていいと思ってんのか?」

 

 

9点開いたところで3年がでてき、海常のベストメンバーとなった。笠松は2年の不甲斐なさをボヤいている。

 

 

「やっとでてきましたね。このまま勝っちゃうところでしたわ」

 

本田は3年がでてきたことにワクワクした様子である。

 

「あんま海常レギュラーなめてんじゃねーぞ!」

 

本田(…!)

 

「森山、中村といっしょに甲斐につけ!小堀と早川は2人で中だ! 本田はおれがとめる!」

 

「なんやと!?」

 

笠松はメンバーそれぞれに指示をだした。そして交代後初の1年の攻撃。

 

「…くっ!」

 

「あぁー! 本田がぬけない!」

 

笠松は言っていた通り本田を押さえ込んでる。

 

(ちっ! さすがキャプテンだけあるわ、スキがない。それにダブルチームのせいで甲斐にもボールがまわせへん)

 

「集中力がたりねーぞ!」

 

バシッ!!

 

本田「…!?」

 

 

笠松が本田のボールを奪い去った。続く上級生の攻撃、笠松の速攻を本田がなんとか止めセットオフェンスとなる。何回かボールを回し笠松がトップの位置で保持。

 

ダムダム…

 

ダム!!

 

笠松が本田の右からドライブで抜きにかかる。この動きになんとか本田は喰らいつくがそこからターンアラウンド、からのスリーポイント。

 

(くそっ、とどかへん!)

 

ザシュ!!

 

この攻撃から下級生の勢いは止まった。オフェンスは起点の本田が笠松に止められ甲斐もダブルチームのせいでボールを受けとれなく1年の主力が封じられてる。またインサイドも小堀、早川ペアを他の1年では攻略できない。ディフェンスも急増の1年生チームではとめることはできない。残り5分となる頃には21-28とリードを奪われていた。

 

さらに上級生の攻撃。森山がマークの甲斐を外そうと動く。

 

「逃がさないっすよ!」

 

森山ニヤリ「そいつはどうかな?」

 

ガシ!!

 

甲斐(…!?)

 

早川が甲斐にスクリーンをかけた。それにより森山はフリーとなり、ベストのタイミングでボールが入った。

そして…

 

ザシュ!!

 

森山の独特のシュートフォームから放たれたシュートは見事決まった。これで1年チームは10点のビハインドである。

 

「もうおれたち上級生の勝ちかな?」

「やっぱ上級生には敵わないのか〜」

 

両チームのベンチではお互いに勝敗を確信しつつあった。

ここで黄瀬が武内に呼ばれた。

 

「黄瀬、次時計がとまったらいくぞ!残り3分強で10点差、キセキの世代としてお前を獲ったんだ。これくらい逆転してみせろ!」

 

「りょーかいっス」

 

交代を告げられ黄瀬がアップをしているとなつきが近づいてきた。

 

「りょーた君かんばって! キセキの世代の実力見てね」

 

なつきはそう笑顔で言うと前に拳をだした。

 

「まかせろっス!」

 

黄瀬も笑顔で拳をだしてぶつけた。

 

ピピー!!

 

「メンバーチェンジです。」

 

小堀「ついにおでましか」

 

森山「キセキの世代、黄瀬涼太!」

 

笠松「中村!ダブルチームをやめて黄瀬につけ!」

 

キセキの世代、黄瀬の登場に上級生も警戒を強める。

 

「次のオフェンス、オレにボールを回してください」

 

「…あぁ」

(とりあえず今は攻め手がないからな。それにおれもコイツの実力がみたいしな…)

 

黄瀬は本田にボールを要求。そしてボールが入る。

 

中村「…どう来る?」

 

ボールを頭上に持ち、ピボットで体を振る。完全な1ON1の構え。

 

 

ダム!!!

 

「な……!!!」 中村、反応できず。

 

本田「……!!」

 

甲斐「……!!」

 

笠松「…………!!!?」

 

敵も味方もそのあまりの鋭さに目を見開くなか、黄瀬が華麗に舞いレイアップを沈めた。

 

「は……」

 

「速ええーー!!」

 

両軍のベンチのメンバーも驚きざわついている。そんな中ベンチのなつきにガッツポーズをし黄瀬は自陣へ戻っていった。

 

続く上級生の攻撃。マッチアップはディフェンス時と変わらない。

 

(なんだ、あの速さは!? 全く反応できなかった)

 

 

バシッ!!

 

中村はまだ先ほどのプレーに動揺しており、その隙をつかれ黄瀬にボールを奪われてしまった。

黄瀬は弾いたボールを取りそのままゴールへと走り出す。

 

「戻れ!!」

 

笠松が声をかけるが誰も追いつけない。

そして…

 

 

ドカァ!!

 

黄瀬のワンハンドダンクが炸裂した。

 

 

着地した黄瀬がつぶやいた。

「あと6点…」

 

その後、上級生チームは黄瀬のいないサイドから2点を決める。しかし…

 

 

ザシュ!!

 

「なにぃー!?」

「あいつ外もあるのか!?」

 

次の1年の攻撃で黄瀬がスリーを決めたのだ。

 

「ちっ! 取られたもんはしょーがねー。取り返すぞ!」

 

笠松がチームに檄をとばし次の攻撃を始める。黄瀬の実力に驚異を感じここからの攻撃は外せないと思った笠松は中を選択。小堀はワンフェイク入れマークをかわしてシュートを打った。

 

バシッ!!!

 

小堀「……!?」

 

「うおお!! 黄瀬のブロックだぁ!! 」

 

「黄瀬がとまらない!!」

 

弾かれたボールを本田がとり、前を走る甲斐にパス。

笠松がかろうじて追いつき甲斐をストップさせる。

 

「…おっ!」

 

甲斐は突如ゴール付近にボールを投げた。

 

(…!?)

 

笠松はこの動きに反応できない。

 

ドガアッ!!

 

 

「ア、アリウープ!?」

「すげぇ!!あいつほんとにこの前まで中学生だったのかよ!?」

 

両軍ベンチは黄瀬のプレーに驚きっぱなし。体育館はもう黄瀬の独壇場である。

 

次のプレー笠松に本田がガンガンプレッシャーをかける。

 

ダム!!

 

近寄ってきた本田を笠松はさらりとかわす。

 

が…

 

バシッ!!

 

笠松が抜いた瞬間黄瀬がボールを弾いた。

 

 

黄瀬が速攻を仕掛けようとしたが今回は戻りが早く一度本田にボールを預ける。

 

「早川! お前も黄瀬につけ!!」

 

「(り)ょーかいっす! お(れ)がとめてや(る)っす!」

 

ダブルチームで黄瀬にボールが入らない。そこでマークが1人減った甲斐に回す。

 

「1対1なら負けないですよ」

 

ダム!

 

甲斐はドリブルを開始。森山もなんとかくらいつく。が甲斐はスッと外にだした。そこにはスクリーンでフリーになった黄瀬がいた。そしてすぐさまシュート態勢。

 

「フンガー!!」

 

早川が決死のブロック

 

 

スカッ

 

早川のブロックは空を切った。そして

 

ザシュ!!

 

 

「お、おい… 今のって森山先輩のフォームじゃなかったか!?」

 

「あぁ、完全にいっしょだった…」

 

森山「……!?」

 

 

そう、黄瀬は完全に森山の変速フォームを模倣していたのである。そしてそのために早川のブロックは不発におわったのだ。

 

「こ、これがキセキの世代…」

 

「こんな短時間で技をコピーしちゃうなんて…」

 

 

そして試合は進み終了間際1点差で上級生がリードしている状況で黄瀬にボールがわたった。

 

ダム!!

 

黄瀬はドリブルし、ダブルチームはそれについていく。黄瀬はそこからターンアラウンド。そしてシュート。笠松の技、その速さと高さに2人ともついていけない。

 

ピピッー!!

 

ザシュ!!

 

 

黄瀬のブザービートが決まり試合が終わった。

 

「イエイ! 勝ってきたッスよ!なつきっち」

 

「やったー!!やっぱりょーた君ってすごいんだね!

わたし感動しちゃったよ。これからもわたしのためにがんばってね!」

 

なつきが笑顔でそういうと

 

「べつになつきっちのためにがんばってたわけじゃないっすよー」

 

と文句を言いながらもどこか嬉しそうにしゃべっていた。

 

「ホンマすごいで! あそこからほぼ1人で逆転してまうなんて」

 

「あぁ、初めてキセキの世代をみたがここまでとは…」

 

「いや〜 それほどでもあるっス!」

 

「フッ、調子乗りすぎやで〜 このっ!」

 

なつきだけでなく本田や甲斐も黄瀬の実力を賞賛しておりじゃれあいながら勝利の余韻に浸っている。

 

黄瀬の実力に驚いているのは1年だけではない。1年、いや黄瀬の実力に体育館内はざわついたままだ。

 

(身体能力、技術、そしてコピーどれをとっても最高クラスだ!)

(これがキセキの世代か…)

(そして今後うちのチームのエース!)

 

 

その様子を見て笠松は武内に話しかけている。

 

「これが狙いだったんすね?」

 

「ん? なにがだ?」

 

「いくらキセキの世代と言ってもあいつは1年です。あいつがスタメンをとれば実力があるのを頭では分かっていてもやっぱり反発するやつはでてくる。だからこの試合をした、それも不利は条件で出場させ勝たせることで実力で黙らそうとしたんじゃないですか?」

 

「まあ、そんなところだ…」

 

武内は今の部員たちの姿や心境を見て満足そうに笑った。

 

「海常バスケ部エース黄瀬涼太の誕生だな」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。更新はできるかぎり早くするのでこれからも読んでください。
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