では、どうぞ
第二章「再開」第十三話
「……」
神通は不思議に思う。先ほどの行われていた提督と『三日月』のやり取りについて疑問を抱いていた。
(提督と彼女は以前から知り合い?)
いや、それはありえない。初めて提督とお会いした時から彼女の存在について知らされていた。睦月型10番艦『三日月』、彼女の歴史や性能、主な役割などあまり知っている様子ではなかった。本に書いてあることや人から聞いた程度の知識しか持ち得ているようにしか思えなかった。実際の船を見たことがあるわけでもなく、戦艦大和や長門のような有名な軍艦という訳ではないのだ。
そんな彼女の存在を、着任した当初の提督から話を聞かされた時は何か思入れのある出来事でもあったのかと思った。けれど、実際のところ、提督の話を聞いてみるとそういう訳ではないが、どうしても彼女を『建造』したいと話をしていたことを思い出す。
彼女の『建造』のために日々、私たちに資材の調達による任務を与え、自身自ら他の場所に足を運んでは支援を得られないかどうかと交渉しに行くほどである。
何故、何故なんだろう?
そこまでするだけの理由が本当にあるのか。そう思い幾度も提督に訊きに行ったことがあるが、いつも恥ずかしそうにしながら話をはぐらかされた。そんな感じに今日まで過ごしてきたが、目の前で起こった光景を見て思うことがあった。
(彼女は――本当に提督の話していた『三日月』なのでしょうか?)
知りたい。彼女が本当は何者なのかを。
神通は呆然と名瀬の後ろ姿を見送っていたオルガに近づき話しかける。
「提督、よろしいでしょうか?」
「ん? あ、あぁ、悪いな神通。で? 用件はどうした?」
本当は『三日月』を連れてきたことを報告しに来ただけであったが、今は違う。ただ純粋に彼女との関係を知りたいと思い訊くことにした。
「……『三日月』さんとは以前からお会いになったことでもあるのですか?」
「……あー」
神通の質問にオルガは手を目に当てると空に向かって顔をあげる。オルガは何て説明したらいいんだと、聞こえるか聞こえないかの声でつぶやく。
「そのーなんて言えばいいのか、わからないけどよ。アイツは……『三日月』は俺の知っていた奴にそっくりなんだよ」
「知っていた奴?」
「あぁ、そうだ。俺の相棒で弟分でもあったんだが、そいつと同じ名前をしていた」
「……その方とはどうなったのですか?」
「会っちゃいねえ。いや――会えてねえな」
「……そうですか」
初めて提督の口からそんな話が聞けた。そんな思いが神通の中にあったのと同時に聞いてはいけないことなのだと察した。けれど、そんな様子をお構いなしにオルガは話を続けた。
「……けどな。そんな奴と同じ名前に加えて仕草や雰囲気まで一緒ときやがる。だからよ……つい、そいつにしていた時と同じことをしちまった」
「提督……」
「悪かったな。誤解を生むようなことをしちまってよ。俺はアイツとは今日初めて会ったばかりなんだ。それだけはわかってくれ」
「――はい!」
オルガの話に神通は元気よく返事をする。神通はどこか納得した様子でオルガに敬礼をすると、三日月達のいるところへと戻っていく。
だが、内心オルガは気が気ではなかった。
「……はぁあああああああ」
(一体どう説明すればよかったんだよ!?)
あの『建造』で出会えたのが、睦月型10番艦『三日月』の方じゃなくて、相棒のミカなんだって言えるわけがねえだろ。俺たちの世界のミカを知ってる奴なんて、同じ世界で関わった奴以外いるわけがないねえ。仮に説明したとしても「提督? 頭大丈夫ですか?」なんて言われてもみろよ。無理だ。絶対無理だ。このまま頭のおかしい提督として過ごさなきゃいけないとか無理に決まってんだろ!?
(俺は仮にも鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ!? そんな俺が軽蔑の眼差しの中、過ごすのなんか、なんてことは――あるに決まってるだろうが!!)
「……どうしたの、オルガ?」
頭を抱え込み地面に膝を着いていたオルガにビスケットは声を掛ける。しばらくして落ち着いたのかオルガはビスケットに向かって言う。
「……なぁ、ビスケット」
「なんだい、オルガ?」
「俺は……どうすればよかったんだ?」
「え、なんの話?」
いきなりの話にビスケットは戸惑う。オルガは地面に向かって盛大にため息をつくのであった。
オルガって意外に男からは大丈夫でも女の子から軽蔑されたりするとダメそうと思うのは自分だけかな?
では、また