ゆっくりですが頑張っていきたいです。
第一話
第一章「序章」第一話
「おい、大丈夫か!? 怪我はねぇか!?」
目の前に映るその人物はかつて幼少期から共に過ごし、兄貴分であり、三日月にとって全てといっても過言ではない人物。
――オルガ・イツカ。
かつて、鉄華団団長であり火星の王。そして、誰よりも相棒である三日月・オーガスを信頼していた人物であった。
そのオルガが目の前にいる。三日月にとって最も会いたかった人である。
しかし、そのオルガが再開早々切羽詰まった表情で自分のことを心配している。
「悪いなこんな状況でよぉ。今は説明している暇がねぇんだ。……大淀!」
「はい、わかりました。――では、行きましょう!」
オルガは大淀と呼ぶ女性に声をかけ、それに応えるように大淀も返事を返す。大淀は三日月の近くに駆け寄ると、三日月の手を取り立ち上がらせる。大淀は三日月を立ち上がらせると、オルガに視線を送りオルガもその視線に対し頷く。
大淀は三日月の手を握りしめ入り口であろう場所に向けて走り出す。
「そいつを頼んだぞ。大淀!」
「わかっています! あなたもいきなりで悪いですが今はゆっくりしている場合ではないんです! 敵がすぐに近くにいるので」
……敵? ギャラルホルンが攻めてきたのか?
あまりにも急な展開に三日月は状況が追いつけなかった。もし仮にギャラルホルンが攻めてきたのだったら自分が出るしかない。かつてもそうだった。鉄華団を立ち上げたその頃から三日月達はずっとギャラルホルンと戦い続けてきた。三日月が最後まで戦かったあの時もギャラルホルンとの闘いであったのだから。
「……俺が出ようか?」
「――ッ!? 何を言っているんですか、あなたは! まだ建造されて間もないあなたが勝てる相手ではないんですよ!? お願いですから今は走ることだけを考えてください!!」
建造? 言ってることがよくわかんないや。それにあんたが誰なのかもわかないし。
オルガとどういう関係なのだろう。とりあえずあんたはオルガにとって敵ではないってことだけはわかった。
「……わかった」
「すみません。本当はゆっくりお話しをしたいところだったんですけど、あなたが目覚める頃にいきなり敵が攻めてきたものでして。……後で説明をしますのでお願いします!」
大淀の言葉に三日月はコクリと頷く。それはわかった。だが、肝心のオルガが気になる。
「……オルガはどうするの?」
「オルガ提督なら今から艦隊の指揮を取りに向かわれますので、また後で会えます」
三日月は大淀の言葉に疑問を抱いた。
オルガ提督? 艦隊の指揮? 聞きなれない言葉がいくつも出てくる。訳の分からないことが続き三日月は――
(――なんか、イライラする)
三日月は胸の中に霧が晴れないことに苛立ちを感じつつも、大淀の指示に従い走るのであった。
♢
「……行ったか」
オルガは大淀達が部屋から出たのを確認すると自身も自分の持ち場に着くために腰を上げる。ポケットの中から通信機を取り出すと右耳にかけ状況確認を始める。
「俺だ。敵の確認はできたのか?」
「うん。今確認できたよ。駆逐艦イ級が三体に……後方部戦艦ル級!?」
「――ッ!? ル級だと!? 何かの間違いじゃねぇのか!」
「いや……間違いなんかじゃないよ」
通信機からの報告に驚きを隠せなかった。このあたりの海域に戦艦が出現したことがあったなどという報告も履歴も一切なかった。過去に一度だけ重巡級が一体現れたということぐらいしか載っていなかった。にも関わらずいきなり戦艦級が出てくるのはあまりにもおかしい。
(――まさか!?)
一つだけ心当たりがあった。いや、おそらくこれしか理由が思いつかない。そんな確信めいたものがオルガの中に存在していた。
「『三日月』が建造されたからっていうのかよ……」
「『三日月』って、まさかあの『三日月』なの!?」
「あぁ……そうだ。あの『三日月』だ。――ビスケット」
通信機の向こうから驚きを隠せない様子が聞こえるのは、かつては鉄華団が発足する前からオルガの参謀役として支え続け、地球投下後の戦闘で惜しくも命を落としてしまった。
その彼がオルガの口から建造が成功したことに喜びを隠しきれなかった。
「やったじゃないか! 今までずっとこの日を待っていたんだもんね」
「喜ぶのはまだ先だ。今はル級をなんとかしないと喜ぶもんも喜べねぇ」
「――ッ!! そうだね、ごめん。完全に浮かれてた」
「いや、正直俺もさっきまでは浮かれてた。気にするな」
ビスケットが浮かれるのも無理はねぇ。なにせ、あの『三日月』の建造をどれだけ楽しみにしていたことか。その願いがようやく叶ったっていうのに、この状況じゃおちおち喜ぶ暇もねえじゃねぇか。
「遠征に出ているメンバーはどうなんだ」
「実はさっき神通さんから緊急の連絡がきたんだけど……」
……嫌な予感がするな。俺の読みが当たればおそらく敵機との戦闘――
「――敵機との戦闘を開始するって」
「……やっぱりな。敵の数は?」
「敵の数はさっきと同じ四体。しかも全機駆逐艦ロ級だって。ただ、戦闘が終わっても鎮守府までの距離を考えると、まだ時間がかかりそうって」
おそらくこのまま何も起きなければ遠征メンバーの実力を考えると負けるとは思えない。問題はこっちだ。今この鎮守府に残っているメンバーと言ったら、さっき建造した『三日月』、大淀、工作艦の明石くらいしかいない。
さっき大淀が言っていた通り『三日月』はダメだ。まだ練度も低いうえに戦闘経験が皆無。そんな奴をいきなり戦えなどと言えるわけがねぇ。大淀は……ダメだ。あいつは戦えない理由がある。明石はそもそも戦闘員じゃない。
――となると方法は一つしかない。
「――ビスケット。頼みがある」
オルガは右目をそっと閉じビスケットに肝心の内容を伝える。オルガの内容にビスケットは通信機越しに息をのむ音を発する。たった一言「わかった」とだけ言うとビスケットは通信を切った。
オルガは締めていた軍服のボタン全て外し、被っていた白い帽子を深く被りなおして出口へと向かう。
これから待ち受けるル級との戦闘に向けて足を運ぶのであった。
文章短くてすいません。なるべく長く書けるよう頑張ります