鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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19話の補完にあたる部分というか何というか……わかりづらく書いてしまってすみませんでした。
では、どうぞ。


第二十話

 第三章「始動」第二十話

 

 「おーい。『三日月』? 生きてるー?」

 

 「……」

 

 海面の上を川内に担がれて運ばれる三日月は、全身ずぶ濡れの状態になっていた。川内の応答に答えることすらままならないでいた三日月は、取り敢えず頭を振ることで返事を返す。

 

 「そっかー。ごめんね? ちょっとやり過ぎちゃった」

 

 「……」

 

 (……やり過ぎた?)

 

 もはや、やり過ぎ以前の問題だと思った三日月であったが、如何せん全身がだるいせいか考えるのも億劫になっていた。考えることを止めて全身力を抜くと、三日月は大きく息を吐いた。川内は三日月の様子に気にも留めることはせず鼻歌を歌いながら、おやっさんのいる格納庫へと足を運ぶのであった。

 

 そもそも何故、三日月と川内がこんな夜中に戦闘訓練を行っていたか。その理由は海上訓練が終了した後のことから始まった。

 

 

 ♢

 

 

 「ん? 『三日月』、まだ帰らないのか?」

 

 「うん。まだやろうと思って」

 

 長月が明石に艤装の返却をし終えると三日月に声を掛ける。菊月もそろそろ来る頃かと思い長月は一緒に戻らないかと訊くが、三日月は首を横に振る。

 

 「そうか、あまり遅くなるなよ。……あと神通さんの件だが」

 

 「あぁ」

 

 辺りを確認し本人がいないことを確認すると、長月は三日月の耳元で話しかける。

 

 「……悪いことは言わない。あまりあの人を怒らせない方がいいと思うぞ」

 

 「ん? 俺、ジンツウのこと怒らせたの?」

 

 「え、き、気づいていなかったのか!?」

 

 三日月の発言に長月は目を見開く。あれだけのことがあって怒っていないと思った三日月の考えが読めず困惑してしまう。

 

 「……『三日月』。お前は凄いと思うぞ。あの神通さん相手によく言えるものだ」

 

 「別に、普通じゃん?」

 

 「いや普通であるわけないだろ!?」

 

 「あっ」

 

 長月は三日月に向かって叫び声をあげる。大声を出しているせいか、長月は気づいた様子もなく三日月に話しかけるが、三日月の気の抜けた一言で気配を察した。ブリキ人形のような動きで首を後ろに向けると、顔は笑顔なはずなのに背中に般若がいると錯覚してしまうほどの雰囲気を纏った神通がニッコリと笑みを浮かべて背後に立っていた。

 

 「あら? どうしたのですか長月さん?」

 

 「あ、あの、えっと……だな」

 

 ガクガクと震える足を必死に元に戻そうと努力をするが、一向に収まるどころか震えが増すばかりであった。隣で喋っていた三日月に助けを求めようと振り返るが、どこにも姿が見えなかった。

 

 (み、『三日月』―!?)

 

 心の中で叫ぶが、どこを見渡しても三日月の姿は見当たらない。ちょうど艤装の返却を終えた菊月がこちらに向かって歩いてくるが、神通の尋常ならざる気配を察し、来た方向へと戻ろうとするが――

 

 「あら、菊月さん? もう艤装の返却は終えたのではないのですか?」

 

 「……う、うむ」

 

 冷や汗が止まらない菊月の肩に優しく手を置く神通。かく言う長月も菊月同様、肩に手を置かれると、帰ろうと思っていた部屋とは逆の道へと連れて行かれる。

 

 「あ、あの、神通さん? 私たちの帰る方向とは逆だと思うのだが……」

 

 「あ、あぁ、私もそう思うのだが……」

 

 「――ウ・フ・フ」

 

 「「――」」

 

 神通に連れて行かれた先で、長月と菊月の悲鳴が鎮守府にまで響き渡たるのであった。

 

 

 「ふっ……ふっ……!」

 

 神通が現れるのに気づいた三日月はすぐさまその場を離れた。長月に神通が怒っていることを言ってくれなければ、どうなっていたかわからないと思った。

 

 (あとで長月に謝ろう)

 

 その場から逃げてしまったことに罪悪感を感じた三日月は、部屋に帰ったら長月に謝罪しようと決意する。

 

 ここは鎮守府の中でも使用されていない部屋だった。それほど深い意味があったわけではないが、この部屋の壁についていた棒を見た時に、筋トレにちょうどいいと思った。オルガにも許可を得ることが出来たので、三日月は時間さえあれば、ここにきて筋トレを行っていた。まだ着任してから一週間ほどしか経っていないことか、まだトレーニングの結果があまり現れないでいた。

 

 (もっと、頑張らないと……)

 

 ふと、神通の話を思い出す。今日の訓練で指摘されたことについて三日月は自分は間違っているとは思ってはいなかった。オルガの前に立ちふさがる敵であれば誰であろうと関係ない。これまでも、これからも。そう思って今日まで生きてきた。

 

 しかし、今までの戦い方では駄目だということもわかっているつもりではあった。初めてル級との戦闘で感じたのはバルバトスのような感じで戦うのには無理があるのだと。だから、神通に指摘されたとき、つい思っていたことを言ってしまったと思う三日月であった。

 

 「……うん」

 

 家族である神通と喧嘩をしてしまった。そう思った三日月はちゃんと謝りに行こうと思い、掴んでいた棒を離す。降りると、背後に人の気配を感じた。

 

 「……カワウチ?」

 

 「よっ、頑張ってるじゃん」

 

 背後の気配を警戒してすぐさま振り返ると、そこにいたのは川内型1番艦である川内が立っていた。

 

 「俺に何か用?」

 

 「うん。ちょっとね~。……時間いい?」

 

 「いいけど」

 

 「そっか! んじゃ、いこっか!」

 

 こうして、三日月は川内の後を追い、再び格納庫へと向かうのであった。

 

 ♢

 

 これが三日月と川内との戦闘演習にいたるまでに起こったことの顛末であった。




三日月って感情について少し鈍いところがあると思ったらこうなりました。
早く神通とは仲良くしてもらいたいものです。
では、また。
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