鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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毎日は無理だった……というよりも月末は忙しいんで木曜日は投稿は難しいかもしれません。
それはさておき、今回から新たな展開に入ると思います。
では、どうぞ。


第二十二話

 第三章「始動」第二十二話

 

 午前10時。オルガの率いる艦隊メンバーは格納庫へと集まっていた。

 

 「集まりましたね。今日の訓練は巡回警備を兼ねて、少し鎮守府から離れたとこで訓練を行いたいと思います」

 

 「ん、わかった」

 

 「「……」」

 

 神通の話に三日月は返事を返す。だが、隣にいた長月と菊月はげっそりとした顔で立っていた。

 

 「……どうしたの?」

 

 「ど、どうしたんでしょうね?」

 

 川内の疑問に神通は目を逸らす。その様子に川内は「あぁ」と一言いって察する。

 

 「あんまりやり過ぎたらダメだよ?」

 

 「うぅ……き、気を付けます」

 

 川内が神通に注意すると、神通は恥ずかしそうに耳を真っ赤に染める。

 

 「んじゃ、とっとと用意して行くよー」

 

 パンパンと手を叩く川内。それによって各自艤装の用意をする。三日月もおやっさんに艤装の装着を手伝ってもらう。艤装と自身の体に繋ぐと胸を打たれたかのような感覚が襲ってくる。

 

 「大丈夫か?」

 

 「うん。問題ない」

 

 不備がないか確認すると三日月はおやっさんに報告する。全ての艤装を付け終わるとおやっさんは鉄メイスを運んでくるが、それを三日月は首を横に振る。

 

 「おやっさん。今日はいいよ」

 

 「まあそうかもしれないけどよ。万が一ってこともあるからな。こうしてやれば……」

 

 おやっさんは三日月の煙突のついた艤装の側面に鉄メイスを付ける。メイスの先端部は下を向いており歩くと、コンッ、コンッと地面と擦れる音が響き渡る。

 

 「それなら海で邪魔にならねえだろ。盾とは逆側に付けたから当たってやりずらさもそんなにねえはずだ。それに外す時は、艤装にロックを解除するよう頭で考えたら外れるからよ」

 

 「ありがとう。おやっさん」

 

 「気にすんな」

 

 それだけ言うとおやっさんは他の作業へと戻って行った。三日月も神通達のいるところへと向かうのであった。

 

 

 ♢

 

 

 ここは鎮守府から少し離れたところにある海域。神通達は普段行っていた実践訓練を、いつもとは違って、鎮守府正面近海で行っていた。鎮守府内でも出来ないことはないが、ここ最近の海域は少しおかしいということもあり、警備も兼ねて行われていた。

 

 ル級の襲撃に対する情報も少なく、もしかしたら偵察隊がいるかもしれないと思った神通はオルガに相談すると、了承を得たが条件付きであった。それはオルガのいる鎮守府には三日月を含めて5人しか所属していない。ゆえに、全員で近海警備に行ってしまうと、鎮守府内の警備が薄くなってしまうからだ。

 

 だから、訓練の時間は三時間ほどで切り上げるようオルガは神通に言った。これから新たに着任してくる艦娘がいると思うが、それまではなるべく鎮守府内でやるようにと強く言い聞かせたのである。

 

 本来であれば鎮守府正面近海に潜んでいる深海棲艦の類はイ級くらいしか現れない。まだそれほど実戦経験を行っていない艦娘はここで体験するのがほとんどである。しかし、オルガは過去の記録からも一度も出たことがなかったはずの戦艦ル級の出現に、不穏な空気を感じ取ると、早めに切り上げるよう伝えたのだった。

 

――鎮守府から出てもうすぐ三時間が経過しようとしていた。

 

 「よし……皆さん。今日の訓練はここまでにしましょう」

 

 神通は三日月達に訓練の終了の合図を送る。神通の合図を確認すると、各自それぞれの行動を取り出す。そして、神通は三日月の方へと視線を向ける。

 

 「……」

 

 (今日の『三日月』さん。なんだか素直だった気がする)

 

 昨日とはまるで逆だった。私の指示を嫌そうな顔をすることなく聞いて実行していたし、何より一生懸命やっていた気がする。不真面目ではないが、どこかやり方が気に食わなさそうな雰囲気は感じさせたけど今日は違った。必死にこの海上戦での戦い方を知ろうとしてくれた気がする。

 

 そう思った神通は昨日のことを振り返ると、自身にも思うところがいくつか思い浮かびあがった。

 

 (私、ちゃんと『三日月』さんのことを見ていなかったかもしれない。自分の意見を押し付ける感じになっていたかもしれません。それに、あの子とはそんなにまだ話が出来てないかも)

 

 現に神通は目の前の三日月と川内が話し合っている姿を見て思った。昨日姉である川内から三日月と少し話をしたと聞いていたが、ここまで話している仲になっているとは思ってもいなかった。

 

 (私は皆さんに戦いでの怖い思いをさせたくないように、訓練を厳しくしてきました。けれど、私が皆さんを失うのが怖くて無意識に遠ざけていたのかもしれない。もっと……皆さんと話さないといけませんね)

 

 もう、これ以上仲間が傷つく姿を見ないためにも――

 そう思い神通は川内達の元に行く。

 

 「……『三日月』さん。あの、昨日は……」

 

 「……ゴメン」

 

 神通が言葉を探していると、三日月は神通に頭を下げた。

 

 「え、いや、私の方こそ言い過ぎました。ごめんなさい……」

 

 神通も頭を下げると三日月は首を横に振る。

 

 「いや、神通は悪くない。俺、あんまり人が怒ったとか、そういうことがわからなくて。でもさ、俺とアンタはオルガのいう家族なんだろ?」

 

 「――家族」

 

 三日月の家族という言葉に神通は胸に手を当てる。胸の奥底からどこか温かい何かがあふれてきそうな感覚が芽生えてくる。

 

 「あれ? 違った?」

 

 「……いいえ、そうですね。私たちは家族です」

 

 「そっか。だから家族のアンタと喧嘩したと思ったから、俺は謝らないと思ったんだ」

 

 「そうですか」

 

 それだけ言うと神通は三日月に手を差し出す。神通の行動に疑問を抱く。

 

 「……ん?」

 

 「この国では『仲直りの握手』というものがあるんです。お互いに喧嘩したり、揉めてしまった時には、これをすれば元の関係に戻れると意味が込められているんです」

 

 「へぇー。だったらアンタとこれをすれば、もう仲直りしたってことでいいの?」

 

 「はい。これで大丈夫です」

 

 そう言うと三日月は差し出された手を取ると握手を交わす。傍で見ていた川内は昨日の三日月の言葉が嘘でなかったことに安堵する。妹である神通の表情も柔らかな笑みを浮かべていた。お互い許し合い仲直りを終えて手を離そうとした瞬間――前方から砲撃音が響き渡る。

 

 「――ッ!? 皆さん! 回避行動を取って下さい!!」

 

 神通の叫び声に一同はすぐさま離れる。突如、海面に一本の水の柱が立つ。すぐに柱が消えると周囲に大粒の水が降り注ぐ。

 三日月は撃ってきたであろう方向に、すぐに視線を向けると一つの影がそこにあった。

 

 「――嘘、でしょ?」

 

 川内の信じられないと言った口調に思わず神通も口元を塞ぐ。二人の様子からして、あれはかなりの強敵なのだとすぐに悟った。

 

 「ジンツウ。あれは?」

 

 「あれは――深海棲艦『戦艦レ級』」




仲直りの後からのレ級登場です。
次回からレ級遭遇編に入ります。
では、また。
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