鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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忙しくなってきたので更新が遅くなると思いますが、頑張っていきたい
では、どうぞ。


第二十四話

 第三章「始動」第二十四話

 

 神通と別れてから少し経った頃、川内は鎮守府へと帰還途中にオルガに状況報告をしていた。

 

 「レ級が出たって言うのは本当なのか川内!?」

 

 「うん! 今、神通が私たちを逃がすために時間稼ぎをしてくれてるんだけど、もう……」

 

 「――くっそ!!」

 

 ドンッと通信越しに物が蹴り飛ばされたかのような音が耳に入る。ギリッと歯を食いしばるかのような音が聞こえるとオルガは川内に伝える。

 

 「わかった。今、その近辺に帰還途中の艦隊がないか連絡を取り合ってみる。お前たちはすぐに戻ってきてくれ」

 

 「……提督、アタシ」

 

 「ダメだ」

 

 ピシャリと言い放つオルガ。オルガの言葉に川内は声を荒げる。

 

 「どうして!? まだ何も言ってないじゃん!」

 

 「ダメだ! お前のことだ。どうせ助けに行ってもいいかって言いてえんだろ」

 

 「でも、このままじゃ神通が死んじゃうんだよ!? 救援が来たって間に合う訳がないじゃん!!」

 

 「わかってんだよ、そんなことはよ!!」

 

 「――ッ!!」

 

 通信越しのオルガの悲痛な声に川内は何も言えずにいた。

 ――そう、一番辛いのはその場に駆けつけることが出来ない提督自身なんだと。事あるごとに提督であるオルガは言った。

 

 『俺も……お前らのように戦えたら守れるかもしれねえのによ。いつも、すまねえ』

 

 川内はその言葉だけでも十分だと思っていた。だから頑張れるのだと。その思いに気付きながらも口に出してしまった自分が情けなくなった気がした。

 

 「……ゴメンなさい。アタシ、言い過ぎた」

 

 「……いや、こっちこそすまねえ。とにかくお前らは帰還してくれ。あとのことは俺たちに任せろ」

 

 「うん……わかった」

 

 これ以上何も出来ることはない。そう言われたことに悔しさを思いつつもオルガとの通信を切ろうとした瞬間――

 

 「オルガ」

 

 「……ミカ、お前」

 

 「『三日月』。アンタ――」

 

 通信に割り込んできた三日月の言葉に両者息をのむ。感情のこもってない声で三日月は話を続ける。

 

 「俺が出ようか?」

 

 「……ミカ、お前な」

 

 「――『三日月』。アンタ、ふざけてるの?」

 

 オルガが言うよりも前に、川内は三日月の襟を掴み上げると睨みつけた。その川内の様子に動じることなく目を合わす。

 

 「ふざけてないけど?」

 

 「アンタ、言ってることわかってる? アンタ一人で何が出来るの? 昨日のアタシにボコボコにされたの忘れたの?」

 

 「別に、忘れてないけど?」

 

 「だったら―!」

 

 「けどさ、それでいいの?」

 

 「――ッ」

 

 三日月の言葉に思わず息を詰まらせる。

 ……いい訳がない。いい訳、ないじゃない。例え実の妹じゃなくても、もうアタシにとってあの子は妹で、仲間で、家族なのよ。そんなあの子を見捨てて行けるわけない。けど、相手はあのレ級なのよ。アタシの練度じゃとてもじゃないけど勝てる相手じゃない。いや、アタシを含めて全員で勝てる確率はないに等しい。

 

 「……じゃあ、どうすればいいのよ。アタシじゃアイツには勝てない。この場の誰も勝てるような相手じゃないんだよ? アンタなんかじゃ太刀打ち出来るような相手じゃないんだ。そんな相手に……どうしたらいいって言うのよ!!」

 

 川内は掴みかかった三日月の襟を揺らし続ける。次第に揺らすのを止めると膝が崩れ海面に座り込む。そして、力なく手を離すと腕がユラユラと宙に揺れる。

 

 「……アンタ、俺に言ったよね」

 

 「……へっ?」

 

 「ジンツウを頼むって」

 

 「――」

 

 項垂れていた顔を上げ三日月の顔を見る。その瞳からは、絶望した様子など微塵も見せない様子を感じさせられる。そんな瞳から川内は目が離せずにいた。

 

 「オルガ」

 

 「……なんだ、ミカ」

 

 「俺はオルガが決めたならそれに従う。けど、俺はカワウチに頼まれたんだ。ジンツウを――頼むって」

 

 「……」

 

 数秒後。三日月の言葉にオルガは深いため息をこぼした。

 

 「……はぁ。わかったよ。けどな、ミカ」

 

 「うん?」

 

 「一つ約束しろ。こっちで救援を呼ぶからそれまで時間を稼いでくれ。決して無茶な真似だけはやめてくれ。……いいな?」

 

 「あぁ、わかった」

 

 「そっか。なら後は頼んだ」

 

 「ん」

 

 それだけ伝えると三日月はオルガとの通信を切る。そして、神通の元に駆け付けようと川内達に背を向ける。その後ろ姿に川内は三日月の名を呼ぶ。

 

 「『三日月』!」

 

 「なに?」

 

 「あの子を――神通を助けて」

 

 「あぁ、任せて」

 

 本来は行くのであれば自分が行かなくてはいけないはずなのに、まだ来てからそんなに経っていない三日月に託すのはあまりにも無謀にもほどがあると川内は思った。しかし、その後ろ姿にどこか奇跡を生んでくれるのではないかと期待してしまう。最悪の場合、どちらも戻ってこないかもしれないというのに。それでも今は三日月に託すしかないと思った川内は心の中で祈った。

 

 川内と同じく長月と菊月も三日月の後ろ姿に声を掛ける。

 

 「死ぬなよ!」

 

 「必ず、戻ってこい!」

 

 「うん。行ってくる」

 

 長月と菊月に返事を返すと艤装に取り付けていた鉄メイスを手に取る。後ろを振り返ることなく三日月は静かに口に出す。

 

 「睦月型 10番艦 駆逐艦『三日月』――出る!」

 

 そして、三日月は全速力で神通の元へと駆け付けるのだった。




次回からレ級との戦いになります。
……書いていますが結構な量になった気がする。
では、また。
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