鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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毎日投稿は難しいかもしれないですが、頑張りたいです


第二話

 第一章「序章」第二話

 

 「はっ……はっ……」

 

 大淀はオルガの指示により建造されて間もない『三日月』の手を引いて走っていた。時折走りながらも『三日月』の様子を確認するが、自身とは違い疲れているどころか、ケロッとした表情を浮かべている。

 目的地まであとわずかというところで走るのを止め、息を整えるためゆっくりではないが歩きへと変えた。大淀は後ろを向くと『三日月』に向かって話しかける。

 

 「すみません……先ほどは急ぎとは言え自己紹介すらままらないで。私は大淀型1番艦 軽巡洋艦の大淀と申します。あなたのことをずっと待っていました」

 

 「……俺のことを?」

 

 三日月の問いに大淀は「はい」と一言答えた。

 

 「あなたが来ることをここの人たちはずっと楽しみにしていました。特にオルガ提督は今さっきまであなたが来たことを喜んでいました」

 

 オルガが俺を待っていた。その言葉を聞いた三日月は久々に再開したオルガの言葉に胸が躍る。早く会いたい。また、昔みたいに一緒にいられる。そう思うとふと頬を綻ばせる。

 

 「そっか……オルガが」

 

 「えぇ……ですが、今は喜ぶのは後になりそうです」

 

 ……そういえば、さっきこいつが言ってたな。敵が来たって。

 

 「そういえばさっき敵が来たって言ってたけど」

 

 「えぇ、すぐ近くまで来ています。今遠征に向かっていた艦隊も帰還する頃だと思いますが……」

 

 三日月の問いに大淀は顎に手を当て思案していた。何やら気がかりでもあるのだろうか。あまり難しいことは考えるのが苦手な三日月だが、オルガもよく似たようなことをしていたのを覚えている。

 

 「……戻ってくるにしては少し遅いですね。もしかしたら、敵と遭遇してしまったかもしれません」

 

 「別動隊がいるってこと?」

 

 「えぇ、おそらくは。あまり悠長なことをしている暇はないですね。急ぎましょう」

 

 大淀は三日月に告げると手を握りしめ離れないように歩き続けた。三日月も特に気にすることなく大淀の行動に追及をすることはなかった。

 

 「着きました。ここが目的地です」

 

 「ここは……」

 

 目的地と呼ばれる場所にたどり着くと、そこには武器やら資材などの類が多く収納されていた。どうやらここは格納庫らしい。以前から見慣れている光景であったが、一つ違うとすれば大量の水が溜まっているスペースが存在しているということだろうか。

 

 「ちょっと、待ってて下さいね。今、あなたに会わせたい人物が――」

 

 「あ、大淀! 待ってたよ。お、その子が噂の『三日月』ちゃんなのかな?」

 

 倉庫の奥からひょいと顔を突き出すのはピンク色の髪に黄緑色の瞳が特徴的である。ニコニコとした表情で三日月達に近づいてくる。

 

「初めまして、私、工作艦の明石って言います。よろしくね」

 

「……んっ。よろしく」

 

明石は手を三日月に差出し、三日月も明石に手を差し出すが、ふと何かに気付いたのか手に付けていた軍手を取ろうとしていた。

 

「ごめん。こんな汚い手で握手しようとしちゃって。まあ、手袋をとっても汚いとは思うけど……」

 

「……いいよ。別に」

 

 三日月は明石が手袋を脱ぐ前に手を握りしめる。一瞬、驚いた明石だが頬を緩め三日月の握手に自身も握りしめる。無表情な顔にぶっきらぼうな言い方とは裏腹な行動にどうやら満足したみたいだ。

 

 「あなた、意外に見かけによらずいい子ね」

 

 「別に、普通じゃん?」

 

 キョトンとした顔をする三日月に明石はプッと口元から息を吹き出すと、クツクツと笑い出した。

 

 「あはは! いいね。好きだよ、あなたみたいな素直な子」

 

 「そっか」

 

 たった一言告げると、明石は満足したのか先ほどの明るい表情から真剣な表情へと変える。それもそのはず。今は呑気に話をしている場合などではないのだから。事態は思っているよりも深刻であった。

 

 「さっき、こっちにもビスケットさんから連絡が届いたわ。遠征メンバーは帰還途中に敵艦との遭遇、交戦に入ったって。それほど数は多くないし敵自体も倒せると思うけど問題はこっちに向かってきている方。相手の中にル級がいるって」

 

 「ル級ですって!? 今までの記録に出てきたなんてことはなかったはずです!」

 

 「でも事実イ級三体との四体編成でこちらに向かっているって!……いくら遠征メンバーが戻ってきても、イ級はともかくル級に勝てるとは思えない」

 

 ペタンと力なく座り込んでしまう大淀。絶望的な状況に明石も苦虫を嚙み潰したよう唇を噛みしめる。

 

 (――まただ)

 

 ここに来る前にもそうだった。三日月は自分の胸を掴み力を入れる。外側じゃない。 もっと奥に黒く渦巻く何かがあった。オルガや大淀たちの姿を見るたびに思い出す。

 ――あぁ、そうか。このイライラする理由はこれか。

 三日月は思い出す。彼らの姿を見て何とも言えぬ苛立つ理由を――何故俺はこんな場所にいるんだと。

 常に最前線で戦い誰よりも率先して戦ってきた自分が、出撃すら出来ず、あまつさえイマイチ状況も理解できていない。そんな無力な自分に苛立っていることに初めて気づいた。

 

 (俺の全てはオルガに貰ったものなんだ。だから俺の全てはオルガの為に使わなきゃいけないんだ――)

 

 オルガが守ろうとしているこの場所を守るために、俺が出来る精一杯のことするだけだ。

 なら――やることは一つだけだ。

 

 「ねぇ……アカシって言ってたっけ?」

 

 「え、な、何かしら」

 

 「あんたに頼みたいことがあるんだけど」

 

 突然の呼びかけに明石は驚いたものの、三日月のじっと見つめる瞳に目を逸らせずにいた。まだ会って間もない子だが、この子の一言一言が真剣を帯びているように思える。

 

 「……頼みってなにかしら?」

 

 「俺を――出撃させて欲しいんだけど」

 

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