鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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その四です。

次回で最後になります。

では、どうぞ。


第二十九話

 第三章「始動」第二十九話

 

 「――あ、れ?」

 

 レ級に接近しながら三日月はふと気の抜けた声をあげてしまう。それは突然であった。担いでいた鉄メイスの重みが一気に感じたのと同時に、体が思うよう動かなくなっていることに気付く。それは接近する前には感じられないほどの怠惰感が全身に襲ってくるほどのものであった。

 

 足から海面へと発せられる推進速度も徐々に落ちていくのが伝わってくる。接近する途中で止まることはないが、このままだと勢いを殺し終えたところ――つまりはレ級の目の前に止まる可能性があった。

 

 (この感じ……前にもあった気がする)

 

 段々と薄れていく意識の中、思い浮かんだのは最初の戦闘――戦艦ル級の戦闘後に起こった現象のことだった。

 

 (まさか……もう、燃料が……)

 

 思い当たる節があるとしたらそれしかないと思った。レ級と遭遇するまでの間の訓練の時、長月達から分けてもらった分、それに今の今まで行われていた戦闘のことを考えれば当然のことである。いくら燃費のいい睦月型とはいえ、これだけ激しい戦闘を補給無しで戦えばそうなるのも必然であった。

 

 艦娘が海に沈まない為の安全システムがこんな形で起動してしまうことに三日月は恨まずにいられなかった。

 

 (どうしよう……このままじゃ……!)

 

 速度を殺して接近するのを止めれば、その後の結末などたかが知れる。かと言って、このまま接近すれば目の前で止まって格好の的になるだけだ。なんとかこの状況を打破しなくてはいけないと思っているが、意識が薄れる中うまく思考することすらままらないでいた。

 

 「――ッ!? 『三日月』さん!?」

 

 三日月の異変に一早く気付いたのは神通だった。さっきまでの様子とは明らかに違うことに戸惑いを隠せなかった。徐々に失速していくのと同時に項垂れていく顔。以前、三日月がル級との戦いでの後、救助をした時に明石から聞いていた話と同じ症状であった。

 

 「……まさか、『三日月』さんも燃料がもう……!?」

 

 あと少しでレ級に接触する間近でシステムが作動するとは思いもしてなかった。いや――失念していたと言った方がいいのかもしれない。

 

 (……考えてみればあれだけ動き回れば無理もないかもしれません。通常では考えられない動きをするために想像以上の燃料消費をしていたはず)

 

 常に全速航海。急な旋回運動。思い当たる節などいくらでもあるが、この短時間でこれだけ動き回れば当然のことだと思った。

 

 「……どうしたら」

 

 このままではレ級に返り討ちに合うのは必然。自分が代わりに助けることが出来れば今すぐにでも駆け付けたいくらいだ。だが、もはやこちらも動ける状態ではない。出来るとすれば方向転換くらいしかない。

 

 (……考えなさい、私。今の状況で何が出来る?)

 

 接触するまであと一分も満たないこの状況を打ち破るにはどうしたらいいのかと神通は思案した。幸い、レ級には三日月の状態に気付いている様子はなかった。というよりもレ級自身も余裕がないのか、目の前のことに集中しているからか気付く気配を感じられない。

 

 自身は動けない。残りの兵装は魚雷のみ。しかも片方はレ級に捕まった時に使えなくなった。しかし、今魚雷を撃ってしまったら三日月にまで被害が及ぶのは目に見えている。その三日月も既に意識を失いかけている。そんな状態で避けろと言われて動けるのかと聞かれれば、おそらく無理であろう。

 

 「――うん」

 

 ――これしかない。

 

 そう思い神通は三日月に向かって出せる限りの声量で指示を与える。

 

 「――『三日月』さん! その武器をレ級に向かって投げてください!!」

 

 「……ジン、ツウ?」

 

 三日月は薄れゆく意識の中、凛とした声が耳へと入っていく。声をする方へとチラッと目を向けると、そこには神通がレ級に向かって指を向けていた。だが、声が聞こえただけであって何を言っているのかはよく分からないでいた。

 

 (……もう、意識が――)

 

 朦朧とした意識が失われようとした瞬間――声が聞こえた。

 

 『――三日月』

 

 「……」

 

 ――『三日月』か? 

 

 『うん。――あれ』

 

 「……?」

 

 ――あれ? 目の前の敵がどうした?

 

 『彼女が言ってた。――投げてって』

 

 ――あいつにか? 誰が言ってたんだ?

 

 『アナタの――守りたい人が』

 

 「――ッ!!」

 

 その言葉に三日月は意識を覚醒させる。目の前の敵――レ級に俯いていた顔を上げしっかり見据えると、最後の力を振り絞り速度を落とさないまま旋回する。その旋回によって生まれえた遠心力を利用して手にしていた鉄メイスをレ級へと投擲した。

 

 「ウオオオオォォォォォ!!」

 

 「――ッ!? レレ!?」

 

 まさかの展開にレ級は驚く。今までの戦い方であれば接近してきたところ、あの武器で殴るだけだと考えていた。なのに、ここまで近づきてきたはずなのに投げてくるとはレ級自身思いもよらないことだった。

 

 しかし、近づいて殴るも投げてくるも同じことだと思った。一番脅威とも言える武器を敵自ら投げてきたのだ。これを防ぎきれば勝ったも同然。迫りくる鉄メイスの衝撃に備えて構えていると――それはすぐに来た。

 

 ガキイィィィィィン!!

 

 「ギ、ギギギギギギィィィィィ!!」

 

 想像以上の威力にレ級は歯を食いしばる。あの駆逐艦にそれだけの力がまだ残っていたのか。そう思いつつ鉄メイスの威力に耐えるために必死に踏ん張り続けた。耐え続けた結果――レ級は倒れることは無かった。

 

 「――なっ」

 

 「――ヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒ!!」

 

 ――耐えた。耐えた。耐えた!

 目の前の少女は愕然とした表情でこちらを見ていた。そして、あろうことかその場で倒れ込んでしまった。防いだ腕を見るが前に出していた方の腕の骨が折れただけで、残った腕は折れていないことにレ級は安堵した。

 

 ――アァ、コレデヤットシズメラレル。

 長かった戦闘に大きく息を吐くレ級。目の前で倒れた少女は起き上がる気配を見せない。もう一人はさっき戦った時、動けないことは分かっている。後は簡単――深海へと沈めればいい。

 

 「レ、レ、レ~♪」

 

 さっき何か言ってた気がすると思い、レ級は神通の方へと振り向く。今頃は絶望した顔でも浮かべているに違いない。そう思い振り返った瞬間――

 

 「――レ?」

 

 ――目の前が光に覆われた。




遅くなってしまってすみませんでした。普通に書く時間というより内容をどうするのかと悩んでいたらこうなりました。

あと近々活動報告で宜しければですが、オルフェンズのキャラと艦これのキャラで合いそうな組み合わせを教えて頂けたらなと思っています。

……正直な話、オルフェンズキャラと艦これキャラの組み合わせが一番悩んでいるんでどうかお力添えをぉぉぉぉ。

次回「レ級との決着」

では、また。
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